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美的センス

「いやホント、助かったよ。なんてベストタイミングなんだ、危うく僕は、おじいさまに殺されるとこだった」

疲れ切った表情で物騒な冗談を、苦く笑いながらユーリーが言う。

「困った方ですね。・・漆黒の審判者たる方に、十分扱かれましたか?」

呆れ半分気の毒半分、散々にだめ出しを食らったらしい若い主に、わざと聞こえるように溜息をつく。

「あの方に比べたら、貴方は十分大人になってから伯爵家をお継ぎになったのに、情けないですよ」

もっとしっかりなさい、と本気で忠告されている。

・・十分大人って?どういう意味だろう。

19歳で、おじいさまの後を継いだユーリーも、十分早い方なのではないのだろうか。それとも、19歳が十分な大人認定出来てしまうほど幼い時期に、おじいさまはすでに伯爵になっていたということだろうか。

いったいおじいさまは、何歳で伯爵家の当主になったのだろうか。

訊いたら答えてくれそうだけど、なんだか聞きづらい。

なのに、

「何かしたの?」

私の口がまた、余計な詮索をしてしまう。慌てて、唇を覆い隠したけどもちろんもう遅い。

ユーリーは苦く笑いながら、

「おじいさまと僕じゃ、考え方が大分違うから、僕の手腕がお気に召さないんだよ」

どうせ僕は、おじいさま程の天才じゃないしね~と、溜息混じりでぼやくように呟く。まるで子供のような笑みに、魅力的なウインクを沿わして肩を竦めて見せる。どうやら、口調のわりに気にしていない様子だ。

「ところで、どこか部屋借りていいかな」

「え、良いと思うけど、どうして?」

きょろきょろ見回しながら適当な部屋を探していたユーリーに、一番先に仕上がっていた部屋へ、請われるまま案内する。

そこは他の部屋に比べたら、こぢんまりとした手頃なサイズの部屋だった。

「へぇー、良い感じになったね」

一歩足を踏み入れたとたん、満足そうにユーリーが呟く。

「ここなら、仕事場に丁度良い」

・・はぁ?今、このいとこは何と言ったのだろうか。私の聞き間違えでなかったら、丁度良い仕事場と言ったような気がしたけれど。

まさか、おじいさまに続き、ユーリーもこのままこの屋敷に滞在する気なのだろうか。

「この部屋、僕が使わせてもらうよ。じゃ、また後でね」

ユーリーはさらに魅力的に微笑むと、私の頬にキスを一つして、秘書をつれて当然の権利を行使するように、その部屋に消えていった。




「どんどん、人口密度が増えるわね」

あの様子では、ユーリーがこの家にオフィイスを開設するのは、ほぼ間違いない。

こうなったら、ロンドンの屋敷の使用人達も、このままここに滞在するのかもしれない。そもそも、いくら優秀なハウスキーパーを自負しているローリーも、貴族の世話はしたことがないだろう。おじいさまが、この屋敷に居座るつもりなのだから、彼女のハウスキーパー歴もここでお終いだ。

そこで私はあることに気付いた。

ロンドンが、留守のままでいいのだろうか。

仕事は別に、ロンドンでなくてもどこでもできるのだろうが、緑の館に、正式な主が一人もいないのはどうなのだろう。社交界のお客様が欧州中から、新年の挨拶を兼ねて沢山尋ねてくるだろうに。

おじいさまが滞在されるとなると、その奥様であるソニアおばあさまも、ということだ。

どちらにも会えないで、追い返されるお客様達がこぞってアメリカまでやってきたら、さすがに困る。私の素性は、母の名誉のためにこのまま秘密にしておきたい。

一人で思い悩んでいたら、

「あっ、やっと見つけた。ねぇ君、僕の仕事にまだ付き合ってよ」

と、建築士の彼がやってきた。





「君は、ホントにセンスがいいよ」

建築士の彼は私に、嘘のない笑顔で賞賛の言葉をくれる。

「君のお陰で、大分装飾のほうの仕事も進んだんだ~」

彼は上機嫌で、用意の済んだ部屋から順に案内してくれる。どの部屋も以前の様子が思い出せないほど、違和感なく仕上がっている。しかも、どこもかしこも美しい。

「用途とかも考えて、部屋のインテリア仕上げたいんだよね。君、伯爵様の孫なんだろ?大体の家族構成とか仕事ぶりとか、知ってること教えてよ」

ニコニコと、もの凄く期待を込めた視線で見詰められる。

「いいけど、大して参考になるかわからないわよ」

そんなに期待されても困るのだ。私だって、まだ、おじいさまをほとんど知らないのだし。

私の内心の心配など知るよしもない彼は、まるで浮かれた様子で、手にしたタブレットでまた何か検索している。

「まだ、何か買うの?」

買っても、まったく困らないだろうけど。

「うん?違うよ、君に見て貰いたくて、さ」

彼は、画面に映し出された超大型のベッドを私に見せた。

「これさ、君のおじいさま、気に入ってないと思うかい?」

え、どれ?、と画面を覗き込む。そこにあったのは、現代風のキングサイズの高級ベッドで、おじいさまが宿泊中のお部屋にあるベッドだった。

「これさぁ、良い感じで現代的なんだけど、クラシカルなデザインを踏襲しててさ、・・美しいだろ?」

だけどさ、執事のあの人は、取り替えてほしいって言ってたんだよ。と、悩ましげに呟く。

じーと眺めると、確かにかなり良い感じのデザインだ。

すっきりした飽きのこないデザインなのに、天蓋がついている。その天蓋のレースがとにかく美しい。

「確かに、綺麗なベッドね」

「だろ?」

なのに、どうしてこれじゃダメなのかなぁ。たしかに、シェークスピアじゃないけどさぁ・・・良いと思うんだよね、と低く唸っている。

「我が家の執事が、取り替えてって言ったの?」

「うん、これだけ、指定されてきた」

指定という言葉に、執事の強い意志を感じる。どうしても、取り替えてほしいということなのだろう。私よりおじいさまに詳しい執事の指示なのだから、きっとその通りにしたほうが良いと思う。と、素直にそのまま伝える。

「そっか・・」

まだ、このベッドに未練たらたららしい彼は、口の中でぶつぶつ文句を言いながら、別の写真を見せてくれる。

「じゃぁ、これ、どう?」

「これ、本物のクラシカルなベッドじゃない」

装飾の具合も、天蓋のレースも、さっきのベッドに負けず劣らず、本当に素敵だ。大きさも、ほぼ同じらしい。

「これ、良いと思う。すぐに手に入るの?」

「うん、君も会った営業マンの彼から、どうかって」

それとも、他の部屋にあるベッドとの交換でインテリア考えようかなぁと、呟く。

仕上げの絵図を書き直さないといけない。彼女が目の前に居るだけで、どんどんインスピレーションが湧いてくる。この子がこんなに魅力的なんだから、この子の祖父であるまだ見ぬ、いや、多分合うことのない伯爵様も飛び切り魅力的なんだろう。

だから、僕も全力で仕事に当たらないといけない。

素材が良いため、どうしても諦めたくなかった例のベッドを泣く泣く諦めて、彼女の手を借りてもう一度インテリアの配置からやり直しだ。この部屋が僕の未来を決めると言っても過言じゃない。

僕は、彼女の援護を受けて、ネットで用意した様々な家具や調度品を点検し直すことにした。




建築士に請われるまま、私は彼の仕事の手伝いをまたすることになった。

彼が書いたデザインを、私が感覚のまま手を入れていく。

壁紙を貼っていた職人たちは今はもう半数ほどになり、運送業者の人たちと共に、家具を決められたどうりの場所に配置していく。

「うん、もうちょっと右かな」

細かい修正を入れながら、壁紙の模様も気にしながら作業が進む。その精巧な仕事ぶりに感動した私は、休暇の邪魔をした申し訳なさを引きずる自分が間違っている、ということにようやく気付く。ここで生き生きと仕事に打ち込む職人たちは、誰も休暇のことなど気にも留めていなかった。

寧ろ皆、心から感謝して仕事をしていた。

だから私ももう遠慮せずに、細かな違和感も許さず意見を出した。そのたびに彼は真剣に私の意見を聞いてくれる。そして嫌な顔一つせず、私の出した提案を考えて、納得がいったものは確実に実践してくれた。

そのお陰か、ただ明るくて真っ白だった各部屋部屋は、使う人の用途や好みの事を考えた機能的だが落ち着ける、華やいだ美しい空間に生まれ変わっていく。

シェークスピアの生きた時代の貴族の屋敷が、ほんの少し現代的にアレンジされて確実に再現されていく。

ときどき顔を出す現代的な造りのシャープな家具が、空間を引き締めるアクセントとして卒なく収まっていく。

そのバランスが絶妙だった。

「君、本当に才能あるよ。君が選んだものばかりで、この空間出来上がっているんだからね!」

ルンルンと鼻歌交じりに建築士の彼が、笑いながら私を褒めてくれる。

私は恥ずかしくて、何とも返事がしずらい。大体、確かに選んだのは私だけど、検索してリスト化したのは私じゃない。建築士が、シェークスピアというキーワードに気づいたお陰なのだ。だから今回のリホームの功労者は、勿論私ではなくて彼なのだ。もし、おじいさまに褒められるような事になったら、確実に彼の功績だと伝えると約束する。彼は、何故だか不思議そうに眼を見開いたあと、嬉しそうに微笑んで、

「じゃ、よろしく頼むよ」

と口笛を吹きながら、私の肩に手を置いた。



リホーム工事が始まってから、早くも半日が過ぎていた。

どこからか、鼻をくすぐるいい匂いが立ち込めてくる。

作業に没頭していたはずなのに、誘惑に駆られる。

その香りの正体は、執事が料理人に運ばせてきた料理だった。

美味しそうな匂いに誘われて、作業を中断して職人たちが集まってくる。いい匂いを漂わせている大鍋を覗きこむと、ボルシチ風のスープがたっぷり入っていた。

「皆さん、どうぞ召し上がってください」

執事のよく通る優雅な声が、お腹を空かした職人たちの歓声に消える。

執事は、左手の人差し指を唇にそっと押し当てると、

「お静かに」

と低く注意する。

その優雅な所作に圧倒され、食事で舞い上がっていた職人たちの歓声が一斉に鎮まる。

「私の主は、騒々しいのが大変お嫌いですので、どうか、お静かに願います」

と微笑んだ後に、一人一人にスープとサンドウィッチが盛られたプレートを、溜息が漏れそうなほど優雅に手渡していった。






私もこの場所にいたことに執事に驚かれながら、職人たちと同じものを受け取ると、適当に場所を捜した。建築士の彼が私を手招いている。呼ばれるまま彼の傍にいくと、同じところに腰かけて一緒に座って食べる。私の周りには、一緒に作業をした職人たちが和気藹々と振舞われた食事に舌鼓を打っている。

「さすがお貴族様だねぇ、なんてことないスープもサンドウィッチも、唸るほど旨い」

「そうだな、こんな旨いサンドウィッチ、食ったことない!」

「スープも、俺らが食ってる材料と同じものを使っているはずなのに、なんでこんなに味が違うんだかねぇ~」

皆嬉しそうにほおばりながら、口々に声を潜めて私に感想を告げる。

だから私も気になっていた休暇のことについて尋ねてみた、皆、一様に同じ返事を返してくれた。

「俺たちみたいな、愚図を、こんな高給で雇ってくれるなんて、ほんと感激だよ!」

よくよく聞いてみると彼らは、とあるNGOに所属していた。

そのNGOは、過去に軽微な犯罪経験のある人たちとその支援者たちで構成されており、二度と犯罪行為を行わない事を確約した者を、登録し、再教育している。必要最低限の教育を与え、面談やカウンセリングを重ねたうえで進学の支援や、職業訓練や住居の提供並びに就職支援まで行っており、真っ当な社会人になれるように自立へ導いている団体、らしかった。

その団体の中でも特に優秀な人材が、今朝早く、今回のリホーム工事の為に急遽選ばれたそうだ。

今回選ばれた職人たちは過去五年以内に再犯歴のない人たちで、その生真面目な仕事ぶりからNGOの中でも最高の評価を受けた人ばかりだった。

「伯爵様なんて人種と俺達じゃ、生きてる価値がそもそも違うだろうに、・・本当にいい人だよなぁ。俺達みたいなクズでも、こうして真っ当に雇って下さるなんて、なぁ?」

ずずと、鼻を啜りながら、感激に咽いでいる。

「あんたもお嬢様なのに、俺らみたいなクズと、気さくに口きいてくれるしなぁ・・」

声が大きくなり過ぎないように気を付けながら、嬉しそうに話す。

その姿だけで、この人たちがどれだけおじいさまに感謝しているのか伝わってくる。

騒々しいのがお嫌いな、人を前科のあるなしで判断しない奇特な伯爵様の為に、自分達ができる一番の行動で感謝を表そうとしているのだ。

「あんたたちみたいな金持ちがもっと増えてくれると、俺らみたいな貧乏人も、もっと住みよくなるんだがねぇ」

皆、にこにこ笑いながら、温かいシチューを美味しそうに食べる。

「こんなに旨い食事も、出してくれるなんてなぁ」

ありがとうよと、最大限に声を落として、皆それぞれに感謝の言葉を呟く。

なんだか私まで、褒められたようでくすぐったくなる。

私はおじい様を少し誤解していたのかもしれない。

おじいさまは、本当は誰より他人を正当に評価できる人、なのかもしれない。

「私・・じゃないわ、私のおじいさまよ」

なんだか気恥ずかしくて、つい否定的な発言をしてしまう。そんな私をお見通しな彼らが、なるべく声を立てないように気遣いながら豪快に笑う。

不思議な一体感に包まれて、工事は再開されていった。





どっぷり日が暮れたころ、ようやくすべての工事が終了した。

どこもかしこも、美しくて豪華で、かつ繊細な仕上がりだった。

執事の手で、一人一人に分厚い封筒が手渡される。皆大喜びで、でも静かに、受け取っては返してもらったスマホを持って、意気揚々と引き揚げていく。

最後に残ったのは、今日の一番の功労者の建築士だった。

「どうですか、僕なりに魅惑のシェークスピアを表現したつもりです」

彼は疲れも見せずに、胸を張って執事に出来を尋ねた。

執事は優雅に微笑んで、返礼のためにそっと頭を下げる。

「気に入って頂けますか、その・・、伯爵様に」

彼は何故だか食い下がって、執事に問う。

執事は微笑みながら、彼のスマホを手渡して、

「依頼料と報酬は、既に口座のほうに振り込んであります。後ほど、ご確認ください」

とあくまで事務的に応える。

建築士の彼はなんだかとても肩を落として溜息をつくと、私に振り返り疲れた表情で力なく笑う。

「本当にありがとう、君のおかげでいい仕事ができたよ」

と言って、私の肩を軽く叩いた。

彼は力尽きたミイラのような青白い顔で執事に向き直ると、物凄く無理して笑い、名残惜しそうに握手を交わす。そして、ようやくすべての仕事を終え、彼は自分の世界に帰って行ったのだった。


「せっかく頑張ったのに」


せめてもう少しだけでも、愛想よくしてあげても罰は当たらないだろうに、・・気の毒に。

途中から気付いたのだが、どうやら彼は、我が家の執事に個人的に物凄く関心があったらしい。それこそ今回の出会いを機に、個人的に親しくなりたいとこっそり熱望していたぐらいに。

あれはいつのことだったか、確か二人でベッドルームのインテリアについて真剣に討論をしていたとき、何を思ったのか彼が、大真面目に私の顔を見て訪ねてきた。

「ね、君の家の執事さんって、誰か特定な人って、いる?」

特定な人・・・つまり、恋人ってことだろうか。

私は返事に固まった。

何故なら執事はああ見えて、ちゃんと結婚歴があるのだ。

しかも、3人も息子がいる。

私は会ったことがないので息子たちの事は殆ど何にも知らないのだが、5年前までは、確かに奥さんがいた。ただその奥さんも今はもういない、聞くのが悪くて理由は定かじゃないけど、他界したらしい。

そんな超個人情報、いくら気安くなったとはいえ全くの赤の他人に話せない。

「物凄く、美人だよね・・そそられちゃうんだよね、僕。ちょっと、怖いかんじだけど」

恋人がいないなら立候補したいとこなんだよねと、嘘か本当かわからない声で、ニヤニヤしながら呟く。

「恋人が無理でも、一時しのぎの相手ぐらいになれないかなぁ」

どこまで本気で言っているのかわからないが、遠い目をして彼が幻想に戯れる。

しかも子供の私を相手に。

どうして、私の周りの大人は、私がまだ十分すぎるほどの子供だという事実に気付かないのだろうか。

頭がくらくらする。

取り敢えず彼の目を覚ますために、最低限の個人情報を言ってみる。

「執事は妻帯者だから、無理じゃない?」

「え、嘘」

「何んで私が嘘なんてつくのよ、本当に、奥さんがいたの」

私だって数度しか会った記憶はないけど、確かに奥さんはいた。

執事とはお世辞にも全く似合わない、地味で小柄でちょっとふくよかな、決して美人でもかわいくもない普通な感じの女性だった。ただ、その人の持つ雰囲気はとても素敵なもので、どこか月のようにミステリアスな執事にはある意味似合いの、穏やかな陽光のような人だった。

「そっか・・・、男じゃ、ダメなんだ」

残念そうに漏らした彼は、本気で落胆していた。


「ねサム、彼の視線に本当は気付いていたんじゃないの?」

涼しげにたたずむ執事に聞いてみる。

彼は、自分を誘惑しようと画策していた建築士に気付いていたはずだ。執事のオーダーに、真摯に取り組んだのはもちろん仕事だからであるが、それ以上に、執事そのものとの接点が欲しかった彼の気持ちに。

それなのに、ものの見事に無言のまま振ってしまう執事は、本当の所、どう思っていたのだろうか。

いつもの愛想笑いのその横顔に、ほんの少しでも彼への感情が浮かんでいないか探したけれど、徒労に終わる。

「お嬢様が、彼の仕事を手伝っていらしたのはどうしてですか」

私の質問には答えるつもりはないらしい。

執事は彼にはこれぽっちも関心はなかった様子で、質問に質問を返した。

「どうしてって・・、単純に興味があったから」

センスがいいと褒められて、純粋に嬉しかった。

私が選んだ品々が、面白いぐらい馴染んでいくのが心地良かった。真っ白いキャンパスがとても綺麗な色彩で埋め尽くされていくようで、心の底から感激した。まるで、バレエを踊っていた頃のように心が躍った。楽しくて、楽しくて、いつの間にか夢中になっていた。

また機会があれば、同じように手伝いたいと感じるほど。

「そうですか、・・・彼への報酬を間違えましたね」

くすっと、執事の唇が笑みを形どる。

「大変に、美しい出来栄えですね。これならきっと、我が主もお気に召します」

と、いつも私には厳しい執事が、珍しくも最大限に褒めてくれた。



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