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レンジャー班長

レンジャー徽章。

主に陸曹課程と幹部課程に分けられ強靭な遊撃戦闘員を要請するため陸自が行っているレンジャー課程というものがある。全自衛官の8パーセントのものしか保有者はおらず地獄のような訓練を耐え抜き、ダイヤモンドの如く魂を磨きあげる。

そういうものらしい。

四班長の名は海堂三等陸曹。

「そんなにこれが気になるか」

視線だけ動かして腕立ての姿勢を保持する俺にその人は急に話しかけた。歪な、何ものも寄せ付けない鋭い頑固を放つその人は、静かに語り出した。

「新隊員を見ていると懐かしく感じることもあるよ。陸教を出て三曹に任官、その時点で強靭になれたとも思える。それでもだ、レンジャーを受けてる最中はお前らと変わらず、裸一貫だったさ」

いや、昔語りはもういいからいっぺん止めてくんね?

「なに、そう案ずるな。時にくじけたくなる時もあるが、そんなもん人生の中で計算すればたった一瞬だ。俺たちはその、たった3ヶ月で魂を削った。それがダイヤモンドたる、所以なのさ。お前がもし、生き残っていればそういう視野を考えるのもありなのかもしれんな」

そこまで話すと、俺たちの反省は終了した。静かに、ただ静かに海堂班長は遠くを見つめていた。

ダイヤモンドって、あなた方はそりゃ素質があるから磨けば光るんだろうさ。だが俺たちはなんだ?本当にただの石ころかもしれないんだぞ。

「神崎候補生、ひとつ教えてやる。自分の存在価値なんて、自分で決めるものだ。他人の尺度は関係ない。そう思えば、それまでなんだよ」

そう言い残して、去っていった。

奥島が腕を庇って隣でひざまづいている。体も無駄にでかいから堪えたんだろう。それよりその辛そうな形相やめろ、どこの修業僧だおにぎり小僧が。

だけど、自分の存在価値か…。

そんなもの、意識したことあるだろうか。大してなにも考えずとりあえず大学行って楽しもうとか考えてたけど、俺にはなにも残らなかった。何の為に戦うかとか、そんなもんはあるわけなくて、今もこれからも恐らくないだろう。この人たちが言ってることはたぶん俺の考えてることの延長のそのまた延長戦なのかもしれない。今の俺にはただわけのわからない無理難題を押し付けられてそれをクリアできなければさらに痛みを与えられる、理不尽に対してただ苛立ちを覚えてるだけにしか感じられない。もう一度言おう、何の為に戦うかなんて、そんな崇高な目的は一切ない。国を守りたいなんて、誰が思うもんか。


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