馴れ合い
慣れないことをさせられたせいで筋肉痛が早くも現れた。班長班付がいない居室は平穏な、はすだった。
「てめ、みんなに迷惑かけてんのわかんねえのかよ!謝れやコラァ!」
相変わらずチンピラみたいに眉をひそめるそいつは有無を言わさず俺の襟首をつかんで地面に無理やり叩きつけた。
「いてえな…!なんで俺がこんな…」
最悪な気分だ。一年ニート生活を送ってきた俺にはとてもじゃないが耐えられたもんじゃない。泣きそうな気分だった。
「おいやめろよ。さっきだって言われたじゃないか、誰がいつそういう役職に付くかなんてわからないんだから人の失敗を見て攻めるんじゃなく学べってさ」
そこへ救いの手が差し伸べられる。今回班員の中でも最年長の日高 仁。年齢は25歳。大人しそうながらもこうやって出てきて大人の威厳を見せてくれるのはありがたいし尊敬の対象だ。
そう言われると痛いところを突かれたのか気に入らなそうな顔をして卯月はケッと吐き捨て出て行った。
「カス野郎だな」
谷口が体を震わせながら言った。怯えてんのか貶してんのかはっきりしろよ。
入隊式は未だ行われておらず準備期間に俺たちはいる。にしてもこういう時って普通入隊式終わるまでは弱めで行くもんじゃねえか?
俺がここで逃げ出したらどうする気なんだろう?疑問ばかりが募っていく。あと体痛い。
食堂へ行くときも風呂へ行くときも内務が引率していくことになっている。最初は班付が監視しながらの引率で俺の頼りない歩調に班員は縦隊を組んで命令に従い動く。俗にここら辺は基本教練の訓練になっており予令と動令に分けて指示は出し、予鈴は明瞭に長く、動令は短節に短く発する。引率途中他部隊の陸士陸曹幹部と出くわしたらしっかり敬礼する。初歩の初歩から修行なのだ。
食堂は陸曹から幹部まで様々な階級の人が行き来する。よって騒いだりとかはできない。
飯は三食ついていて定時に食堂は開放される。
飯を食う時は班員全員で食う。今日はカレーだった。日高が笑った。
「ここの飯は上手くていいな。なんでも他の駐屯地だと食えたもんじゃねえとも聞くからな」
「ほんとそうだな。まだ入隊式終わってねえのに、もう帰りてえ」
ポツリと出たその言葉に日高は苦笑した。
笑うしかねえよな、こんなの。