若葉
若くひたむきな正義は、揺るぎなく根をはる悪の前で、抗うほどに深く引き裂かれる。
それでも、なおも正面から立ち向かうそのエネルギーは、善も悪もなくただ大人への憧憬と軽蔑をないまぜにした不確実さと、有り余る生命力とから、無尽蔵に湧き出でる。
戦術も戦略もなく、純白の真実を唯一の武器に、若者はただひたすらに茫洋たる道なき不安の道を行く。
柔らかな皮膚に受ける擦過の痛み。
くずおれ、口惜し涙をのむその道すがら、痛みは若者に行き先を寡黙に指し示す。
志を両腕に抱え、夢を風に乗せ、震える足を叱咤し口笛を吹いて歩いた青春の在りし日々を、彼らは日記の間にしまいこんだ。
筆跡を遡って辿ったその先には、いつでも眩いばかりの若葉が、風に揺すられしなやかに戯れる。
褪せた日記の合間から零れる微光に、思いを過去に馳せる時が訪れることなど、真っさらの頁に溌剌と空の青さを綴る若者には、思いも寄らぬことなのだ。
完