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8 かわいい孫娘

 朝起きてみると、なんか村長宅内がすごく騒がしかった。すすり泣きみたいなものが聞こえる。

 俺は、弟を肩に乗せて、啜り泣きが聞こえる部屋まで行くと、大人5人が、中央のベッドに集まって、泣いていた。ベッドの上には、女の子が眠っている。


「どうしたんだ?」

 俺がそう声を掛けると、村長がビクって肩を震わせ振り返る。なんかよくわかんないけど、わざとらしい感じの悲しそうな顔を作っている。


「おお、ショウジ殿、聞いてくだされ。一緒に住んでおるわしの可愛い孫娘が、毒におかされてしまったのです!」


 泣きながらな感じを出しつつ、なぜか涙を流していない村長はそう説明するけど……一緒に住んでる孫娘なんて、昨日いたっけ? 爺さんと、婆さんしか見なかったんだけど。


「昨日は見なかったけど、孫娘なんかいたのか、爺さん」

「えっ! あ、その、昨日は、ほら、あれじゃ、孫娘旅行してて、今日帰ってきたんじゃ! そして毒じゃ!」

 あたふたと村長爺さんがなんか言ってるけど、旅行って……。旅行して体調悪くなるってことは、あれか? エコノミー症候群? いや、時差ボケとかいう奴かもしれない。

 それにしても、俺って何て博学なんだ。状況だけで大体の病名を言い当ててしまうとは。


 そんなことを考えながら、ベッドに横たわってる女の子を見てみる。

 すごい、髪の色が、綺麗な銀髪だ……。

 長い銀の髪の毛を三つ編みに編んだ女の子が、顔を赤くさせて苦しそうに呻いていた。


 なんか爺さんの様子がおかしいから、アレだけど、女の子は本当に苦しそうだ。風邪薬とか飲ませたり、病院に連れて行ったほうがいいんじゃないか?


「爺さん、ベッドに囲んで泣いてる場合じゃねぇよ。病院に連れて行ったほうがいいぞ」

「おお、ご心配ありがとうございます。孫娘は、おそらく毒の状態なのですじゃ。毒消し草があれば、助かるのです」


「え? マジかよ。それなら昨日行ったゴンザレスさんの店で売ってたぞ? 買いにいかねぇの?」

「えっ、いや、そうゴンザレスの店で売ってはおるのですが……えっと、ほら、わし! 足腰が弱くて、ちょっと、そこまでいけんのじゃ!」


 いや、昨日、ゴンザレスの店に来てたよな……?


 どうしたんだこの爺さん、と思っている俺の耳元で、弟が口を開いた。


「多分、これこの村で起こるイベントなんだよ。昨日買った毒消し草を渡せば終わるから、渡して」


 イベント? 祭りってこと?

 よくわからん。でも、女の子、ホント苦しそうだし。爺さんは意味わかんないけど、毒消し草とやらをくれてやろう。

 しかし、なんていうか、使い方が……。


「カード辞典開いて、取り出して! それでカード名を告げて対象を女の子に選択して『カードを使用する』って言うだけ」

 弟が、俺が使い方を分かってないと勘違いしたらしく、横からギャンギャン吼えている。

 べ、別に使い方が分かってないわけじゃないんだからな!


 けど大人な俺は、大人しく弟に言われるままカード辞典を出して、毒消し草のカードを取り出し、「カードを使用する」と叫んだ。


 するとカードはいきなり消えて、孫娘の顔色が一気に良くなった。そして、ピクリとまぶたを動かすと、ゆっくりと開いた。


 え、まさかもう治ったのか? すごい回復力。

 それとも、さっきのカードみたいな薬のお陰か? ヨーロッパの薬ってすげぇなー。


「ああ、なんていい気分なんでしょう。さっきまで苦しかったのが夢のよう」

 女の子は歌うようにそう言って、上半身を起こした。

 だ、大丈夫かよ、そんないきなり起きて。


「あなた様が毒消し草を下さったのですか?」

 さっきまで苦しそうにしてたのに、銀髪の女の子はすっごい綺麗な顔で笑った。

 笑った顔、ちょっと……ていうか、結構、可愛い。


「え? ああうん。昨日買ってたからな。それより、安静にしてろよ。さっきまで死にそうだったんだから」


「ありがとうございます! よろしければ、感謝の気持ちとしてこちらをお受け取りください。私が編んだ花冠です」

 そう言って、女の子はどっから取り出しのかわからないけど、白い花を編んで作られたっぽい冠を差し出した。

 マジでどこに隠してたんだ、こんなもの。


 少女から、花冠を受け取ると、花冠が突然カードに変化した。


---------------

“孫娘の花冠”

使用回数:--

感謝の花冠は身につけたものに守りの加護を与える

----------------

 絵柄は、さっきの白い花の冠だ。



 ―――ピコーン

『ムンク村 お使いクエストを達成しました』


 そして、どこからか、知らない女の人の声を響く。


 え? 何だこれ? って思って、顔をキョロキョロさせてから、ベッドに座っているはずの女の子に視線をもどそうとしたら、もうすでにそこには誰もいなかった。


 え? どういうこと?


「おお! 無事にクエストを達成されましたなー!おめでとうございますショウジ殿―! いやー、まさかわしが生きている間に、クエストを発動させるような出来事が起きようとは! いやー感慨深い!」


「え? いや、さっきの女の子は? いないんだけど」


「ええ、彼女はクエスト専用孫娘、いわゆるえーっと確か、『NPC』という者でございます。クエストが無事達成したので、いなくなったのでしょう」


「エヌピーシー?」


「ノンプレイヤーキャラクターのことだよ、兄さん。ここはゲームの世界だから。さっきの女の子は、つまり、ゲームの女の子なんだよ」


 ゲームの女の子?

 何言ってるんだ……ゲーム? とか、そんなわけ……。


 でも、いきなりカード化した花冠、ステータス画面という謎の画面、トカゲっぽくなってる俺の弟、消えた女の子……。


 それらの状況が示す答えは……一つ!


「お、弟よ、驚かずに聞いてくれよ。どうやら俺達はゲームの世界にいるらしいぞ!」


「いや、だから、僕が最初っからそう言ってるでしょ!?」


 そうか、俺達、アマゾン川に流されて……ゲームの世界、二次元の世界にきちまったんだな! アマゾン川ってすげぇ!



---------------


手に入れたカード

カード名:孫娘の花冠

種類:装備カード

ランク:青

使用回数:--

効果:装備するとVITが5上がる。





年末年始は、予約投稿で不備がなければ、毎日更新予定です!

よろしくおねがいします。

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