5 ヨーロッパについた
村に着いた。なんていうか、外国とかの家っぽい。レンガの建物ばかり。アマゾン川に流れて、ちょっと歩いたから、ヨーロッパ辺りについたのか。
村の入り口らしき門があったからそこを通ると、門の前でうろうろしていた男が、こっちにやってきた。
「ようこそ! ここは、ムルクの村さ! 僕は、クリス。君、獣人? ここらじゃめっずらしいネー! その肩に乗ってるのはペット? いやー旅人が来るのは久しぶりで、テンションがあが……」
なんかいきなり馴れ馴れしい感じで離してきたお兄さんが、俺のおでこの当たりを見て、絶句した。
そして、わなわな唇を震わせながら、人差し指で俺を指しながら「君、もしかして……プレイヤー、なの?」とつぶやいてきた。
「いや、俺、ショウジだけど」
そう言って名乗ってあげたのに、そんなの聞いてないみたいな顔で、クリスは、俺のおでこあたりを凝視している。そういえば、このクリスのおでこにも、なんか緑色の宝石みたいなものがついてる。もしかして、俺のおでこにも何かついてるのか? そういえば俺の肩に乗ってる弟のでこにも青い宝石のようなものが埋め込まれている。
俺は、思わず自分のおでこに手を置いてみると、ビー玉ぐらいの大きさのツルツルしたものの感触があった。なんかついてるっぽい。
「いや、間違いない、青い宝石。伝説の説明書どおりだ! す、すごいぞ! ぼくらの村に、プレイヤーがやってきたー!」
クリスが思いのほかに大きな声出すもんだから、村の人達がわらわらと集まりだした。
「まあ! ほんとだわ! プレイヤーよ! どうしましょう! 私何を言えばいいんだっけねぇ。もう一度説明書読み直さないといけないわ」
「わしもじゃ……まさかわしが生きてる間にプレイヤーが拝めるとは思わなんだ!」
「クリスはすごいわ、ちゃんと村の名前を教えてあげてたわよ」
「あいつは、この時を待ちわびて毎日門から離れなかったからなー」
なんか俺らの話をしてるみたいだけど、蚊帳の外……。
肩に乗ってる弟を見てみたけれど、弟もびっくりして固まってる。うちの弟は、びっくりすることがあるとすぐに固まるんだよなぁ。
「お、おい、さっきから何の話だよ!」
俺が、とうとう我慢できずにそう言うと、村人が俺達のほうを見てきた。やばい。なんでこんなに見られてるんだ? なんかこええ。
「いけない! お怒りじゃぞ! 皆は位置につけ! 冷静にじゃ! プレイヤーは、わしが、案内をする」
なんか威厳のありそうな爺さんがそう言うと、こちらをチラチラ見ながら集まっていた村人が離れていった。そして爺さんが一人、俺の前にやってきた。
「よ、ようこそ。旅のもの。小さな村で、宿屋はないのじゃ。もう、夜もふけた。良ければわしの家で泊まって行かんかね?」
爺さんがそういったから、空を見上げてみたけれど、太陽は真上に来ていて、真昼間。全然夜更けじゃない……。
「やだよ。よく知らない人の家には行くなって言われてるんだ」
「な、なんと……! すると、素通り、されるのかな!? この村を素通りしてしまうのですかな!?」
爺さんが焦り始めた。すると俺の肩の上の弟が、何か思いついたように『カード辞典オープン』と唱えて、何かを探してるそぶりをし始めた。
「ショウ兄ちゃん、ここは泊まらせて貰おう。多分、これイベントだ。この村で、カードが手に入るみたい。ランクは低いけど」
「いや、だめだ。弟よ。子供は知らない大人にほいほいついていってはいけない!」
「それはそうだけど、ここはゲームだから。早くカード集めて、もとの世界に帰りたいでしょ? それに、もうショウにいちゃん、見た目だけは大人になってるよ!」
「あっ! そうか、おれ既に毛の生えた大人だった! なら、いっか!」
俺は咳払いをして、大人らしい顔をして、爺さんを見下ろした。よく考えれば、今まで出会った村の奴らも俺より身長が低い。コレが大人か。すごくいい気分だ。
「やっぱり泊めて貰う事にする。あとなんかご飯食べたいんだけど、なんかある?」