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3 トカゲワニな弟

 しばらく歩くと、川に突き当たった。

 この川から、流されたのかな。


 バーベキューの時河原で遊んでたもんな。


 んじゃあ、川に沿って登るか。

 川は上から下へ流れる。

 つまり、流れてきたんだとしたら、もともと俺がいたのは上ってことだ!

 名推理! 俺すごい! 頭いい!


 ということで、川に沿って進んでたら、変なのがいた。

 巨大なミノムシだ。


 1mありそうな巨大なミノムシが、地面に横たわってた。その上を見るとロープみたいに巨大な糸がなんか、切れてるっぽかった。


 糸が切れて落っこちたのかなこのミノムシ。

 ブフっ!だせっ!


 虫好きな俺は、いてもたってもいられなくなり、近くに長い気の棒を見つけると、ミノムシをつつく。


 なんの反応もない。こうなると中を暴きたくなる。


 俺はおもいっきりついてみた。でも、なかなか固くてミノムシの鎧を貫通しない。


 すげーなこれ、これを持って帰ってクラスの奴らに見せ付ければ、俺は一躍学校のヒーローだ!


 ただなんか気になるのが、ミノムシの上に表示されてる

 横長の線みたいなもの。ミノムシをつつく旅に、緑色のその線が削られていく。

 なんか、チュウ兄ちゃんがよくやるゲームの体力ゲージとかいうやつみたいだ。


 つつくとその線が削られてるのが面白いから、つつきまくってたら、とうとう緑の線がなくなった。


 するとさっきまでいたミノムシが突然消えた。


 そして、どこからか、レベルがあがりました! という声が聞こえたような気がしたけど、それどころじゃない。


 お? おれのミノムシは!? 俺がヒーローになるためのミノムシは!


 そう思って目を凝らすと、ミノムシがいたあたりでカードが一枚落ちてた。内容を見ると、さっきのミノムシの絵が乗ってた。


-----------------

ぶら下がりし災厄 ミノムッスン

使用回数5

その糸は粘り強く、あらゆるものを絡め取る。

-----------------


 さっきガチャガチャでひいたカードみたいなものだ。


 なにこれ、よくわかんねーけど、いいじゃん!

 今まで貰ったカードの中で一番いい! 虫だもん!

 俺は意気揚々と、カード辞典を開いて、ぶら下がりし災厄の引きこもりをタッチした。


<ぶら下がりし災厄 ミノムッスン>

種類:魔法カード

クラス:青

効果:使用すると、粘性の糸が出現する。一回の使用で長さ1mの人の親指ほどの太さの糸を取り出せる。粘着力は、大人(ATK50以上)が力一杯引っ張ってどうにかはがせる程度だが、何層も重ねることで強力になる。

使用回数は7回。必要MP:3


<詳細>ミノムッスンはモンスター大毒蛾の幼虫形体であり、お尻から粘着性のある糸を放出することができる。

 ミノムッスンは親の蓑の中で生まれ、生まれた瞬間外に放たれる。粘性の糸は、お尻から出し入れ自由であり、その糸を駆使して、木から木へと移動し、気に入った場所を見つけると、蓑を形成する。

 蓑の下は穴が開いており、下を通った虫や小動物を糸で捕らえて引っ張りあげ蓑の中で捕食する。

 メスのミノムシは蓑の状態で一生を終える。雄のみ羽化し毒蛾になり、雌の蓑に種を植え付けるため彷徨う。蓑があると毒蛾がやってくるため、街でこの巨大蓑が発生すると、すぐさま処分される。

 滅多にないが、糸の強度よりも重い獲物を捕らえてしまい落下してしまう場合がある。その場合、蓑から外に出ることもできずにのたれ死ぬ。


----------------------



 すげー!昆虫図鑑みてーだ!

 ていうか、『滅多にないが、糸の強度よりも重い獲物を捕らえてしまい落下してしまう場合がある』ってことは、俺が見たとき既に落ちてたから、重たい獲物狙いすぎて落ちたのか? ばかだなー!


 なんか、よくわかんないけど、とりあえず虫のかっけーカード手に入れたから、辞典に入れとこ。


 ふと下を見ると、地面にさっきのミノムシの糸っぽいのが下に落ちてて、少し先まで伸びているのが気になった。


 その糸を伝って見ると、10メートルぐらい先に、なんかいる。

 大きいトカゲっぽいのが、おびえた様子でいた。


 俺が近づくとジリジリと、下がっていく。


 トカゲってよりもワニっぽいな。ワニにしては小せぇけど。

 糸で口の周りをぐるぐる巻きにされてる。


 なんか、俺に怯えてるような、助けてほしいような顔をしてるけど、口が開けないらしく唸り声みたいなのしか聞こえない。


 ていうか、なんか、この雰囲気の奴見たとある。

 このトカゲワニ、もしかして……。


「お前、コウジだろ? なんでワニみたいなトカゲの格好してんだ?」


 そう言うと、ワニトカゲは、めちゃめちゃ驚いた顔をして、動きが止まった。


 ああ、あの驚き方間違いない。コウジだ。

 小2の俺の弟、なんか頭が良くて天才とか神童とか言われてるけど、実はアホなんだよな。

 だって、小2のくせに小6の通信教育を受けてやがる。

 自分の学年間違えるとか、やばいよな。ドジすぎる。


 て言うか、コウジの奴まだ俺に怯えてる?


 あーそうか、俺毛深い大人になったからわかんないのか。


「俺だよ! ショウジだよ! 大人になったんだ! 毛のおかげでな! なあなあ、他の家族はどうしたんだ?」


 するとまた、ものすごくびっくりした顔で、俺を見てきて、前足で口の中を指すような仕草をした。


 ああ、あの糸とって欲しいのか。


「分かった! ちょっと待ってろ!」


 俺はなんかねちょねちょする糸に触れて掴んで思いっきり引っ張ると、結構あっさり糸が千切れた。


 弟は、口をパクパクさせて具合を確かめると、おれを見た。


「ショウ兄さん! ? 本当にショウ兄さんなの?」


「たりめーだろ! 俺以外の誰が俺なんだよ! なあ、父さんは? かあさんは? あとユカリは俺がいなくて泣いてなかったか?」


「まだ、合流出来てないんだ。 多分みんなバラバラの場所に転送されたみたい。場合に寄ってはすごく遠いかも。ところで兄さんは何で僕がコウジだと分かったの? そう言うアイテムを装備してるの? それともカード効果?」


「ん? 転送? アイテム? 何言ってんだよ。弟のことぐらい顔見ればわかるだろ?  まあ、確かになんかちょっとお前顔かわったけど、雰囲気で分かるよ。俺、お前のにいちゃんだからな!」


「そう、か……。ショウにいちゃんは野生の勘で判断できるのか。ショウにいちゃんだもんね。ところで、兄さんは現状把握してる?」

「うーん、まあな。あれだろ? 俺、川に流されちまったんだろ? 心配かけたな! おかげでちょっと毛深くなったけど、もう大丈夫だ!」


「違うよ! 川に流されたぐらいでそんな猿っぽくならないよ! 僕達、ゲームの世界につれてこられちゃったんだよ!」


「ゲ、ゲーム? あのよくチュウ兄がやってるような奴か?」


「そう! ショウにいちゃんは水浴びで聞いてなかったかもしれないけど、バーベキューのとき、母さんが謎の手紙を持ってきてて、そこにゲームを作ったのでテスターになって欲しいみたいなことが書かれてて、ゲームの世界に飛ばされたんだよ。その後、妖精に説明されなかった?」


 お、おいおい。大丈夫かよ……。こいつアホだアホだアホだとは思ってたけど、スッゲーアホだったんだな。ゲームの世界に飛ばされるとかありえるわけねぇだろ。


「お、お前、やばいぞ。そんなわけないだろ。どう考えてもこの状況、BBQしてたら、アマゾン川の方まで流されて、ジャングルに辿りついたとしか考えられない。ちょっと頭を使えばわかるだろ?」


「いや、確かに、ゲームの世界に飛んでいったなんて信じられない気持ちはわかるけど、日本の川はアマゾン川には繋がらないでしょ!? それに、姿形だって変わってるし!」


「アマゾン川なら、姿形を変えることだって余裕だよ。アマゾン川だぞ?」

「兄ちゃんのアマゾン川に対するその信頼はなんなの!? それに、ステータス画面とか、見た? 取り扱い説明書は読んだ? 案内人の妖精はでてこなかったの?」

 おいおい、そんな興奮するな、弟よ。何個も一気に質問されても、流石の俺も答え切れんよ。


 弟は、アマゾン川に流されて、多分もう疲れてんだな。ここは兄として、俺がリードしてやんないと。


 俺はおもむろに弟の肩、らしき頭部と胴体の境目辺りをポンと手を置いた。


「安心しろ、コウジ。俺がいるんだから、大丈夫だ」

「いや、ショウにいちゃん絶対俺の話し信じてないでしょ!?」

「分かってるよ、弟よ。みなまで言うな。とりあえず母ちゃんとか父ちゃんを探そう、な?」

 俺は兄らしく、優しげな笑みで弟を説き伏せてあげた。



-------------------

■手に入れたカード■


<ぶら下がりし災厄 ミノムッスン>

種類:魔法カード

クラス:青

効果:使用すると、粘性の糸が出現する。一回の使用で長さ1mの人の親指ほどの太さの糸を取り出せる。粘着力は、大人(ATK50以上)が力一杯引っ張ってどうにかはがせる程度だが、何層も重ねることで強力になる。

使用回数は7回。必要MP:3

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