エピローグ
「わあ! 大変! 私このハンマー持ち上げられません! 重くてっ! 重くてっ! 持ち上げられないのですっ!」
何度か今まで装備していたハンマーを持ち上げようとしていたエステルが、満足そうな顔でそう言って、ふーっ! とひと仕事終えた職人みたいな晴れやかな顔をした。
カードの効果で、ATKの数値を大幅に抑えられたエステルに、大きな重量級の武器を装備することができなくなっていた。
しかしエステルは嬉しいらしく、何度かハンマーをこのように弄んでは、か弱い自分を楽しんでいる。
「エステルさん、もういい? そろそろ僕たち出発したいんだけど」
ワニ顔の弟が、楽しんでいるエステルに水をさすように、呆れた声で話しかけた。
「お、おい、コウジ。せっかく楽しんでるんだからおまえ」
「す、すみません! 私も嬉しすぎて、調子になってしまってっ! すみません!」
弟を叱ろうとする、俺の声を遮って、エステルはガバッと頭を下げた。
「やあね、ワニちゃん、ピリピリしちゃって!」
そう言ってフィーがツンツン弟をつついていた。
「や、やめてください」
そう言って、つつかれたことが照れたらしい弟が、ワニ顔なりに顔を赤くさせて、そっぽを向いた。
「それにしても、お前たちとはここでお別れか。短い間だったけれど、やっぱり別れというものは寂しいな。それにエステルのことは、妹のように思っていた……。ショウジ、エステルのことを頼むよ」
エスメラルダがそう言って、俺に右手を差し出してきた。
握手だ。俺はすかさずその手を握り返す。
「おう! エスメラルダ達も元気でな!」
今日は、とうとうこの街を旅たつ時がきた。
エスメラルダとフィーが見送りに来てくれて、ついでに今まで話したことないような町の連中も、プレイヤー様が出立するらしいとか言いながら見物している。
俺と弟は、早く家族を見つけ出さなくちゃいけない。
家族がいる場所が大体わかるようになって、早く駆けつけたい気持ちがある。
結局チュウ兄ちゃんの名前はわからなくて、まだ居場所がわからねぇけど。まあ、チュウ兄ちゃんなら平気だろう。きっと、ほかの家族を探してる間に、見つかるさ。
「そうだ、エステル、この私のレイピア、あなたにあげるわ」
「……え? いいんですか?」
「いざとなったら、重りを解いて、力を増幅させれば素手でどんな魔物もイチコロでしょうけど、一応護身用に剣の一つでも持っていたほうがいいわ」
恐る恐るという感じでエステルは差し出されたレイピアを受け取る。そして、鞘から剣を引き抜いて、感触を確かめるように振る。
「すごい、レイピアを持っても、壊れない」
「ふふ、よかったわね。私知ってたわよ。エステルったら、レイピアにすごく憧れてたでしょ」
「だ、だって、レイピアみたいな細い剣は、私が持つとすぐに壊れちゃうから……。だからフィーがすごく羨ましかった」
「私と逆ね。私は、こんな重いハンマーを軽々と扱うエステルが逆に羨ましかったわ。このハンマーもカードに戻して、持ち歩いておいたほうがいいわよ」
「うん、そうする。ありがとうフィー」
二人は軽く抱き合うと、エスメラルダとも同じように別れを惜しんだ。
エステルも俺たちと一緒に町を出る。
俺たち兄弟が家族を見つけ出すために、旅に出ると聞いたら、エステルが一緒に行きたいと言ってきたからだ。
エステルは、心強いし、来てくれたら嬉しいと思ったから、簡単に喜んで、一緒に行くことにしたけど……。
「おい、本当にいいのか? 俺たちと一緒にいくんで……」
「はい、あの、ご迷惑じゃなければ」
「いや、迷惑じゃないし、ありがたいけど」
「まあ、いいじゃん。ショウにいちゃん。エステルさんいてくれたらいざという時心強いし」
いつの間にかエステルに抱き抱えられていた弟が、なんかまんざらでもない顔をしている。
今まで力がうまくコントロールができなくて、生き物に触るのもためらってたらしく、ワニ的な弟を抱っこできて嬉しいようだ。
……コウジめ。ちょっと、だけうらやま……いや、俺はジェントルだから、別に、羨ましいとは思わないぞ!
「それじゃあ、エステル、改めてよろしくな」
「はい、こちらこそ!」
旅のメンバーも確定して、改めてフィーやエスメラルダ、街の奴らに挨拶をして、俺たちは、出発した。
目指すは、妖精の国というところらしい。
そこに、お母さんとお姉ちゃんがいると、弟はなんか地図を見ながら言っていた。
妖精族が住んでる、自然豊かな楽園だとか。俺たちがいるところから、比較的近い場所らしい。
それに、妹には父ちゃんが付いてるし、急がなくても大丈夫だ。俺の父ちゃんはすごい父ちゃんだからな。
アマゾン川に流されて、変なとこに来ちまったって、最初はげんなりしたけど、このゲームみたいな世界から脱出方法も突き止めたらしいし、早く家族揃って日本に帰りたい。
いや、帰る。絶対だ。
……給食のカレーには間に合わないかもしれないけど。
甘いカレーを想像したら、なんかお腹すいてきた。
お腹がすいたから、弁当を食べようとしたら、弟に、まだ食べちゃダメと叱られた。
弟はどんどん母ちゃんに似てくる。
エステルが俺と弟のやり取りをみて笑ってる。日差しが暖かい。
すごく穏やかな気分だった。
アマゾン川に流されて、ここに来たときは、驚いたけど……悪くない。そんな気がしてきていた。
FIN
ということで、FIN!です!
最初から、ここまでのプロットは考えてはいたので、ここまではなんとか書きりました!
この先の展開もギリギリまで考えていたんですが、
余りにもこの二人のチートが強すぎて、いい展開が思いつかなかった!チートってすごい!
あと、ショウ兄ちゃんの一人称に疲れて…ゲフンゲフン…小学生男子の一人称は私には荷が重かったようです。
ただ、厨二病を患っている兄の話はそのうちかこうかなと思っているので、それが続編みたいな感じになるかなと思います。
ここまで読んでくださって、ありがとうございました!




