25 ゲーム攻略の道筋
気を取り直して戦闘を再開しようとした時に、さっきまで黙り込んでいた弟が声をあげた。
「いや、勝負はしなくていいや。もう、僕たちカード集めしなくて済むかも!」
そう言って、さっきまでずっとカード辞典をにらめっこしていた弟は、ワニ顔を満面の笑みでこっちを見てきた。
「え? どういうことだ? 村の娘はどうなるんだよ」
「村の娘はさらわれていることになってるだけで実際は攫われてないから、平気。ただのイベントの設定だよ。それよりも、カード辞典に乗ってるログアウトのカード『邂逅と流転の契り』を見てみてよ!」
弟が喜々として言うので、俺は元タコ足に「悪いけどちょっと待ててくれ」と言って了解をもらってから、辞典を開いた。
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<邂逅と流転の契り>
種類:特殊カード
クラス:金
効果:対象者をゲーム世界から離脱させ現実世界へ戻す。
使用回数は3回。必要MP:0
ゲーム世界の離脱を可能とする特殊カード。
邂逅と流転の力を発動することができる。
★主神と邪神(主神は8神、邪神は7神)をモチーフにしたカードを種類問わず4枚集めることで、邂逅と流転の契のカードを取得するためのイベントを発生させることができる。
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なるほどな。カードの名前の漢字の意味がよくわかんないけど、あれだろ、ログアウトができるカードってことだな。
俺は読み終わってから、弟に顔を向けた。
「なんだよ、これがどうかしたのか?」
「これがどうかしたのかじゃないよ。このカードがあれば日本に戻れるんだ!」
「それはわかるけど、まだ手元にないし。なんか神とかのカードを8枚揃えないといけないんだろ?」
「普通ならね」
そう言って、ニタリと笑うと得意げな弟は話し続ける。
「ショウにいちゃん。このカードって、ランクが金なんだよ」
「それがどうしたんだよ」
「ショウにいちゃんはさ、最初のガチャガチャでランプの魔人っていうカードを手に入れてるでしょ? 情報が図鑑に載っているカードの金以下を入手することができるってカード。つまり、邂逅と流転のカードはすでに、図鑑に情報が載ってるから、ランプのカード効果で入手することができるんだよ!」
「ま、まじかよ! じゃあ、もう、帰れるのか!?」
「うん!」
よっしゃー! 帰れる! 給食のカレーは間に合うか!? えっと、俺はここに来て何日目だったか……。えーっと、えっと、たしか……まあいいか!
いや、でも待てよ。俺たちだけで帰るわけにはいかないぞ。
「でもこの世界には俺たち以外の家族も来てるんだろ? 家族探さないと!」
「うん、わかってる。実はさっきのアップデートで、家族の居場所がだいたいわかるようになった。INT500以上あったから、神理眼っていうスキルを手に入れたんだ」
「つまりあれか。えーっと、かあちゃんやゆかり達がどこにいるのかわかるってことか?」
「うん、さっき僕そういったよね。ゲームの地図をみると、指定したプレイヤーの場所がわかるようになったってこと」
「まじかよ! 父ちゃん達今どこにいるんだ? 歩いて5分ぐらいか? 妹は?」
「思ったよりもみんなバラバラだよ。5分とかそんなレベルじゃなくて、すごく遠い。でも、場所がわかったから探しに行ける。それに、ゆかりはお父さんと一緒にいるってことがわかった。お姉ちゃんは、お母さんと一緒に行動してるみたい」
よかった! 姉ちゃんはともかく、ゆかりは、一人だと心配だったけど、やっぱり父ちゃんはジェントルマンだぜ!
父ちゃんと妹のゆかりが一緒にいて、母ちゃんと姉ちゃんが一緒にいて、俺とコウジが一緒にいるってことは……あ、じゃあチュウにいは一人でいるってことか?
まあ、チュウにいは、ゲームすごいやって慣れてるだろうし、なんといっても、俺たち小学生よりも上の段階である中学生だからな。一人でも大丈夫か……。
「チュウにいは? どこにいるんだ?」
「あー、うん。実は、チュウ兄ちゃんだけ、居場所がわからないんだ」
「え、なんで?」
「家族の場所を探すとき、プレイヤー名を入れるんだけど……。チュウ兄ちゃんだけ名前を入れても、反応がないんだ。そんな名前のプレイヤーはいないみたい」
「そ、それって……つまり、どういうことだ?」
「つまり、チュウ兄ちゃんは、このゲーム自体に参加してないか……ゲームオーバーをしているか、だと思う。多分だけど、僕たち全員がゲームに入っているのに、チュウにいだけ来てないってことはないから、もしかしたら……」
さっきまで、元気が良かった。弟の顔がこわばってきた。
ゲームオーバー?
「名前を入れてもチュウにいの居場所がわからないって、名前はなんて入れたんだよ」
「え? もちろん、ゴウダ チュウジでいれたよ」
そこで俺は合点がいった。なるほど、そういうことか……。
「……そうか。弟よ。実はな、これはチュウにいに秘密だって言われてたんだがな……」
俺はそう切り出して、真剣な顔で弟と向き合う。
「チュウにいには、名前がもう一つあるんだ!」
「え?」
「ただ、ちょっと長くてな。あとなんか難しい単語だから、俺覚えてないんだけど……なんか、封印された第三の目を何とかかんとかする感じで、カタカナだった」
弟にそう告げると、口をあんぐり開けて驚愕の表情をする弟。そうだよな。自分の兄ちゃんにもう一つ名前があるとか、驚くよな……。
チュウにいごめんな。秘密って言われてたけど、今は緊急事態だからな。
「あーそっか。チュウ兄ちゃんは、自分の中二ネームで登録してるのか! 僕としたことがそんなこともおもいつかなかったなんて! 絶対そうだ! チュウ兄ちゃんのことだから、きっとよくわかんない中二ネームでプレイしてる! そうとわかれば、とりあえず宿屋に戻って、適当に中二ネームを入れていこう!」
そう言うと、弟は、早く行こうよ! と言わんばかりに、雪の上をノッシノッシと歩いていく。
「いや、ちょっ! 待てよ!」
俺たちの後ろから、焦ったような声が聞こえた。
振り返ると、元タコ足が二つしかない足をジタバタとさせている。
「私との戦闘があるだろう! この色欲の邪神ゲッヒャー様との戦闘が! このクエストをクリアするとすごいレアカードが手に入るんだぞ!」
さっきまで、見守ってくれていた元タコ足が慌てて弟を引きとめようとしていた。




