21 雪山キャンプ
「ショウジ! そっちにモンスターが逃げたわ!」
「任せろ!」
俺は、誘い出されたでかいうさぎ?のモンスターの頭に向かって、拳を振り下ろした。確かな手応えを感じた瞬間、ポンっと音を立ててモンスターがカード化した。
今俺は、ダルマモンスターを倒したときにもらえた装備カード「分銅の奮闘手袋」というグローブみたいなのを装備して戦闘をしている。なんかこれを装備すると心なしか、力が強くなった気がする。
クエストとやらを攻略するために登っている北の山には、この前歩いていた森よりもそこそこ強いモンスターが出るけれど、パワーアップした俺の前では通用しないようだ。
それに、仲間も増えたし。
エステルの冒険者仲間だというエスメラルダは、大きな盾を持って、敵を追いやったり、俺たちを守ったりしてくれる。
ものすっごい頼りになる。
もうひとりのフィーは、カードを使って、いろんな魔法みたいなものを使ったり、細い剣で魔物を倒したりと、なんか器用に戦う。
「あ、また『モフホワイトの毛皮』のカードか。羽織るとあったかくなる効果って、もはや魔法のカードでもないんだけど」
と、文句をいいつつ弟はすごすごと雪の上に落ちたカードを拾い始めた。
「でも、ここ雪山だし、コウジはもう一枚ぐらい羽織ったほうがいいんじゃないか? 兄ちゃんが着せてやろう」
「もう、いいよ! そう言って僕すでに5枚も着こんでるし。なんかモサモサしすぎて動きにくいし」
「いや、子供は風邪をひきやすいんだ。俺はもう大人だから平気だけど。コウジは子供だからな。それに、どうせコウジはあんまり動かないんだから、動きにくくなっても問題ない」
「いや、まあ、確かにそうだけど。でも、もういいよ。十分あったかいから」
そう言って、嫌がる弟に無理やり、もう一枚のモフホワイトの毛皮を被せようとしていると、エスメラルダの視線を感じた。
「はは、仲がいいんだな、二人は。獣人族も魔人族もどちらかといえば、兄弟間で生きるために争ったりする事の多い種族だから、新鮮だ。……といっても、君たちはプレイヤーだから、一般的な獣人や魔人と同じにとらえてはいけないか。なんだか変なものを見たような気がするよ」
エスメラルダが、大きな盾を背中に背負いなおしながらそう言うと、ここから少し離れたところをみた。そこでは、誰かが、戦闘をしているような様子が見える。
「誰かさんのおかげで、雑魚しかこっちに回ってこないな」
エスメラルダがそう言うと、隣にいた妖精族のフィーもちょっと背伸びをしてエスメラルダと同じところを見ながら、うなづく。
そこには大きなハンマーを振り回しながら、多分ボス級のでかいモンスターを倒しまくっているエステルがいた。
エステルは、大きなモンスターを、大きなハンマーを振りおろして倒し終わると、慌てた様子で、森の中に走って行って姿を消した。
「なあ。なんでさっきからエステルは俺たちの周りでうろちょろしてるんだ?」
「多分、あれ、エステル的にはこっそりついてきてるつもりなのよ。結局心配で、ついてきちゃったんでしょうね。見なかったことにしてあげるのが、優しさよ」
フィーがそんなこと言うもんだから、すでに優しさの塊であるジェントルな俺は、とりあえずうなづいた。
やっぱり、一緒にいきたかったんじゃないか。どっちにしろついてきてるなら、一緒にいればいいのにな。
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クエストとやらを攻略するためには結構長旅みたいで、雪山にかまくらを作って、何度か寝泊りをした。
装備カード「白うさぎの毛皮」を何枚か羽織ると、ほとんど寒さを感じないので、特別寒いわけじゃないけど、周りが雪景色だから、なんとなく寒いような気がしてくる。
それにしてもすげえ雪。俺は暇さえあれば雪だるまを作っては遊んだ。弟のためだ。弟が雪だるまを見たいと思っているに違いないと思って、作った。すでに大人な俺は、雪をみて別にテンションが上がったりはしないんだ。弟のために仕方なく、雪だるまを作ったに過ぎない。うむ。
「もう少しで山頂だ。明日、少し歩けば、例の人攫いにたどり着く。今日のうちに、装備を整えるなり、カードを確認するなりした方がいいかもしれない」
そう言ったのは、いつも先頭にて立って、俺たちの案内をしてくれるエスメラルダだ。かまくらの中でみんなで火を囲っていると、盾の手入れをしながらそう言った。エスメラルダは、すごく頼りになる。やっぱり大型犬て、いいよな。
モンスターを倒したときに落ちるカードの中には、結構食料があったりする。俺はその中の一つである『スノウビーの雪蜜という甘いシロップみたいなやつを、お椀にすくった雪にかけてかき氷みたいな感じのデザートを作って食べながら、うなづいた。
甘くてうまい。
「もうすぐか。結構ながかったね。野宿なんて初めてしたよ。僕は日本にもどっても絶対にキャンプになんか行きたくないね。ショウにいちゃん、一応カードの中身を確認しよう。それで戦闘に使えそうなものはカードホルダーに入れてすぐに取り出せるようにしとこ」
弟はそう言いながら、手元を動かしてる。たぶんカード辞典を開いてなんかやってるんだろう。
俺も弟に習ってカード辞典を開いて、残りのカードを確認した。
とっておきの秘密兵器らしい『海神の放られた小指』は、あのダルマモンスターを退治した時以来使ってない。使おうとすると弟にが怒るから。
それにしても、明日は、ボス戦ってやつか。確かにいろいろ準備しないとな。カードホルダーに入れるカード……。
お、この『熟成肉』のカードはホルダーに入れとこ。これ使うとちょううまい肉が出てくんだよな。うん、これはカードホルダーにいれとこ。
「ちょっと、ショウにいちゃん! さっきカードホルダーにいれたカードはなに!?」
「え? 熟成肉のカードだけど。うまいからすぐに取り出せるようにカードホルダーにいれとくんだ!」
「いれる必要ないでしょ! 戦闘に使う、カードをカードホルダーに入れよって、僕はいったの! もう、僕がカード選ぶから、にいちゃんは手元のカード出して!」
おいおい、プリプリしすぎだろ。弟よ。
俺は、ものすっごく怒っている弟をこれ以上刺激しないように大人しくカードを弟に提示してあげることにした。
すぐに癇癪を起こすとは、弟もまだまだ子供だなぁ。
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スノウビーの雪蜜
種類:生活カード
ランク:白
効果:甘くておいしい密。疲労状態を回復する。
モフホワイトの毛皮
種類:装備カード
ランク:白
効果:装備するととても温かく、状態異常:凍傷を防ぐ。




