2 妖精との意思の疎通は難しいと学ぶ
機械的な笑顔で自分の名を明かす妖精。
さっきまで頑なに名乗らなかったくせに、どんな気持ちの変化だ!
これがねーちゃんが言ってた乙女心と秋の空か!
『それでは、システムの説明をいたします。庄司様は、ザワールドオブゴッドカードというゲームの世界の住人です。
カードを集めるコレクター、モンスターを倒すハンター、庄司様の世界は無限に広がっています! 庄司様は現在猿の獣人として、この世界に生きています。
初期の種族や姿形はランダムです。特定イベントをクリアすると自分で選ぶことができますが、種族によって覚えられるスキルが異なる場合があり、種族変更の際は一部スキルを失う可能性がありますのでご注意ください。
初期パラメーターや初期の保持スキルは、庄司様の元の体のポテンシャルや経験をもとに作成されております。
ステータスオープンと言えば、自分の状態を確認できますのでご覧ください』
「え? ステイサムオーブン? 何? 俺、横文字苦手なんだけど、もう一回言って!」
『ステータス画面では、レベルや自分の状態、所持金額まで色々なことが分かりますので、必ずみてください。それでは話しを進めます。この世界に存在する特定のアイテムはカードとして保管し、使用することが可能です』
しかとか!
『カードにはそれぞれ様々な効果があります。しかし、その効果はカードによって使用回数が決まっており、そのカード自体に記載されています。使用回数が尽きればカードは消滅しますのでご注意ください』
こいつさっきからスゲーしゃべるな。よく考えたら俺こんなところで、妖精と話してる場合じゃないんだ。家族探さないと。
「いやいやいや、なんかめっちゃ話してるけど、俺ね、妖精さんにかまってる暇ないの! それよりさ、俺の家族知らない?」
『カードの効果や逸話その他入手の仕方などの詳細内容は、カード辞典に記載されます。
カード辞典は、通常の場合、最初は白紙です。カードの入手、もしくは特殊なイベントをクリアすると表示されます。
それでは、お手元にカード辞典を出してください。』
「いや、俺の話聞いてる!? なんで、俺の言ってること聞いてくれないの?」
なんなの? やっぱり妖精と人間の間じゃ意思の疎通ができないの?
『カード辞典オープンと唱えると目の前に現れます』
こ、こいつ! とまらねー! 我が道を行くタイプ!
そいや父ちゃんが、女はお喋りだから、落ち着くまで話を聞いてやるのがジェントルマンだって言ってた。
こいつも妖精だけど女っぽい。一度こいつの気がすむまで話を聞いてあげることにしよう。俺、ジェントルマンだから。
「それで? なに? 取り敢えずカード辞典オープンって言えばいいの?」
と言ったら、目の前に半透明なパソコンのディスプレイみたいなのが表示された。
さっきので、『カード辞典オープン』って言ったことになるのか。
表示された画面をみても、なんかずっと同じ英語がズラ~と並んでるだけで、よくわからん。
『庄司様は、まだ一枚もカードを手に入れておりませんのでカード辞典の目次はすべてunknownと表示されています』
え? アンドウ? この英語アンドウって読むのか。へー。
『カード辞典の目次の順番はいつでも変えることができます。右上の設定から、変更可能です。現在は入手順になっています』
へー! ていうかなんか眠くなってきた、この妖精? リンカーンだっけ? もう話聞かなくていいかな。飽きてきた。
『カードの入手法は様々です。
基本的には、ダンジョンでカードアイテムを見つけたり、イベントをクリアしたり、モンスターを倒したり、ショップで購入、もしくはカードガチャを引いたり、トレードすることによって手に入れるものです。カードガチャはガチャチケットを7枚消費することで使うことができます。
初回は、特別にカードガチャを3回無料で引くことができます。お手元のレバーを回してください』
妖精がそういうと、突然目の前にガチャガチャらしきマシンが出てきた。
ど、どっからわいて出てきたんだ……。まあ、妖精がやることだし、ここジャングルだし……ありか。
「なあ、ガチャガチャひいていいの? 何でんの? 俺、今、ブナの木の妖精ブナッシーのキーホルダー集めてんだけど、これでる?」
『ガチャガチャのレバーを回してください』
なんだこいつ! 言葉のキャッチボールができねー!
まあ、いいや。 なんかよくわかんないけどガチャガチャひかしてくれんならひいとこ。
ガチャガチャは好きだ!
俺は、ドキドキしながら、レバーをひねると取り出し口から、カードが出てきた。
金色に光ってる。
カードを取り出して覗いてみた
-------------------------
“いやしの女神の微笑”
“使用回数:5”
“どんな痛みも苦痛も美しき女神の微笑みの前では消え果てる”
---------------------------
って書いてあって、翼の生えたおばさんが笑ってる絵が載ってた。
『おめでとうございます。金のカードは大変レアです。ガチャで弾ける確率は10000分の1です。』
そう言うと妖精はパチパチと拍手をしだした。
でも、おばさんみたいな奴の笑顔のカードなんて、ハズレじゃん。
なんかもっと、ロボットとか妖怪とかがいいんだけど!
まあ、いいや、
ガチャガチャあと、2回ひけるみたいだし。
俺は気を取り直して、レバーをひねると、また金色のカードが出てきた。
“放られた海神の小指”
“使用回数:4”
“海神を怒らせてはいけない。すべてを海の怒りが飲み込むだろう。”
そして、でかいフォークを持った爺さんがめっちゃ怖い顔して、海の上に浮かんでる絵が付いてた。
じじいかよ。またハズレだ。
すると、妖精がまたパチパチと大袈裟に拍手をしてさっきと同じ言葉を放った。
なんかイラっとした。
俺は最後のガチャをひくと今度は虹色に輝くカードがでてきた。
-------------
“偏屈なランプの魔人”
“使用回数:3”
“自由を求める魔人はどんな願いも3つだけ叶えてくれる”
----------------
そしてランプの絵。
物かよ! 物だったらせめて超かっこいい剣とか、そういうのがよかった!
『庄司様、虹色のカードは、カードの頂点。ガチャで出て来る可能性は100000分の1です! おめでとうございます!』
そう言ってまたあのわざとらしい笑顔でパチパチ拍手をしだした。
やっぱりイラっとくる。
『それでは三回引き終わりましたので、カード辞典をご覧ください』
俺はなんか妖精の言うことにいちいち反論するのも面倒になって、大人しく言われた通りに見てみると、さっきまでアンドゥとか言う英語がかかれてただけだったけど、今はさっき手に入れたカードの名前が載ってた。
『カードを使用する時は、カードをかかげて、カードの名前を口にし、カードを使用すると宣言してください。また、カードは、腰に掛けられたカードホルダーに収納することもできますが、辞典に収納することもできます。
辞典に収納した場合、カード効果による破損や盗難の心配はありませんが、カードホルダーの場合は他者のカード効果を受ける可能性がありますのでご注意ください。
カードホルダー場合は、そのまま手でホルダーに収納してください。カード辞典へ収納するときは、カードをかざして“収納”と言えば収納できます。』
へー、辞典の方が安全ってこと?
じゃあとりあえず三枚とも辞典に……。
「収納!」
すると手に持ってたカードが消えた。カード辞典を見ると、三枚のカードの名前が記載され、その横に保管中という文字と使用回数が書かれていた。
『カード辞典にカードの名前が記載されたら、そこをタッチすることによってより詳細なカード情報を入手することができます。』
ふーん。
俺は、試しに癒しの”女神の微笑み”をタッチしてみると、思った以上に長めの文章が載ってたから読む気を無くした。
俺、本読むの嫌い。
画面の右下に、取り出し口ってかかれてるとこがあるので、ここをタッチすればカードが取り出せるっぽかった。
『ゴウダ ショウジ様は、テスターでございます。こちらのゲームのルール、テスターとしての役割をお聞きしますか?』
「え、いやいいよ。もう話し聞きたくない、疲れた。それよりさ、俺の家族しらない?」
『それでは、ザワールドオブゴッドカードの世界をお楽しみください!』
そう言って、唐突に妖精は消えた。
「え! 家族のことは? しかと!? 俺あんなに話し聞いてあげたのにっ!」
なんだよ、一方的に話して終わりかよ!くっそ!
これでまた一人。
どうすっかなー。まあ、なんか、邪魔なのはいなくなったんだし……とりあえず家族探すか……。
「おーい! ショウジはここだぞー!」
------------------------------------
■手に入れたカード■
カード名:癒しの女神の微笑み
種類:魔法カード
クラス:金
効果:怪我や病気などの状態異常を完全に回復させる。ただし、病気の場合は、数年後に再発する可能性あり
使用回数は5回。
カード名:放られた海神の小指
種類:魔法カード
クラス:金
効果:指定した範囲に、海水がなだれこみ、対象物を激流で押し流し、大ダメージを与える。HPに関わらずVITが200以下のモンスターは戦闘不能となる。
使用回数は4
カード名:偏屈なランプの魔人”
種類:特殊カード
クラス:虹
効果:クラス金以下のカード効果を発動することができる。ただし自分の辞典に情報が載っているカードの効果しか選ぶことが出来ない。
使用回数は3
HPが体力で、VITが防御力な感じです。