19 目安箱でご意見承ります!
なんか眩しいと思って目を開けると知らない部屋にいた。
ベッドの上? どこだここ?
すぐ横を向くと、トカゲワニがいた。
目をつむって丸まってズイズピーと言って眠っている
……一瞬だけ、アマゾン川での日々が夢で、日本に帰ってきたのかと思った。
やっぱり夢じゃないんだな。
俺の弟はトカゲワニのままだし、俺は毛の生えた大人だ。
俺のことは、いいとしても、トカゲワニな姿の弟のことはどうにかしないとな……。このまま小学校に戻ったら教室じゃなくて、飼育小屋に連行されてしまう。
アマゾンは、何て恐ろしいところなんだ。姿かたちを変えてしまうとは……いや、違うか。ここは、ゲームの世界だった。
ゲームって俺、苦手だからあんまやったことないけど……弟のことは俺が守らないとな。きっとなんかすれば、姿も戻ることができるに違いない。弟が飼育小屋にいく未来だけはどうにか回避しなければ。
とりあえず、おれ、今どんな状況なんだ? さっきまで森の中で、モンスターとか倒してたはず。
ズイズピー言って気持ちよさそうに眠ってるけど、弟は起こして、なんでいつの間にかベッドに寝てるのか聞き出さないと。
「おい、コウジ!」
そう声をかけてワニがおに手を置くと、ピクッと爬虫類っぽい目が開いて俺をみた。
「あーーー! ショウにいちゃん、起きたの?」
「おう、コウジ、おはよ! ここどこなんだ? あとお腹減った」
「ここはベルグ村の宿屋だよ。とりあえずステータス見てみて! HPはある? 異常ない?」
「またステータスかよ。なんも悪いとこないけど。見ればわかるだろう?」
「いいから早く見てよ」
弟がなんか強く言うもんだから、一応みてみるけどステータスのHPに問題ないし、状態異常もなんもない。
「問題ないぞ!」
「状態異常も? 怪我(小)も消えてる?」
「状態異常もなんもない。消えてる」
「よかったー! 一時期、にいちゃんやばかったんだよ! 気絶状態だったらしくて、声かけても起きないし。急いで村に入ったはいいものの、村には病院とかないか焦っちゃった。村人の話だと宿屋で一泊すればだいたい治るって聞いて、半信半疑だったけど本当だったんだね」
「ふーん? なんで俺、気絶したんだっけ?」
「覚えてないの? エステルさんにむやみに近づくから張り倒されたんだよ。それで、いっきにHPが削れたみたいで、気絶。もう勝手にエステルさんの半径2m以内には入っちゃダメだよ」
「あーーー、そういえば、なんかそんなことがあったような。ていうか、なんで俺、エステルに張り倒されたんだ?」
「男の人が苦手だから、張り倒しちゃうんだってさ。苦手だからって張り倒す意味は、僕もよくわかんないけど、とりあえず近づいちゃダメだよ!」
「ふーん、なるほど。わかった!」
「その返答の仕方は絶対ショウにいちゃん何もわかってないね……」
「そんなことねぇよ」
張り倒されなければいいんだろ? まあ、どうにかなるだろ。
「それより、起きて早々で悪いんだけど、ちょっと試してもらいたいことがあるんだけどいい? ステータス画面の中にある『目安箱』って書かれてるところをタッチしてほしいんだ。」
メヤスバコ? ちょうどステータス画面開いてるし
俺はそのまま弟がいう場所をタッチする。
ブワワッて画面が光って
そこから妖精が現れた。
あいつだ。俺が森で倒れた後に出会った話を聞かない失礼妖精だ。
「目安箱のご利用ありがとうございます!私に向かってゲームに関するご意見ご感想をお願いします。今後のゲーム運営に役立たせていただきます。それでは、 ご意見、ご感想をお願い致します」
そう言って、さっきまでふらふら揺れるように宙を舞っていた妖精は動きを止めた。
「え!? か、感想っていきなり言われても困るんだけど! ……カードの絵がダサいとかか?」
……。
突然のフリに、俺が疑問を投げかけても妖精はピクリとも反応しない。なんだこいつ!
「いや、聞いてる!? なんか反応ないんだけど。目をぱっちり開けたまま微動だにしないの怖いんだけど!? ちょっと! 聞いてる!? なんで、動かなくなったんだ!? いや、俺出会ったときにも思ったけど、もうちょっと言葉のキャッチボールができないとやばいぞ。妖精と人間ではなんか色々違うのかもしれないけど、もうちょっとあるだろう、こう会話っぽいことができてもいいと思うんだけど! 俺の弟はだってトカゲワニになっちまったけど、ちゃんと会話できるんだぞ! まったく……ていうか、弟の姿って元に戻るのか? それに、家族がどこにいるか知っーー」
「はい、ご意見ありがとうございました。頂いた感想やご意見、個人情報についてはゲーム製作のためにのみ活用され、他のことには一切使用いたしませんのでご安心くださいませ。それでは引き続きゲームの世界をお楽しみください」
妖精は俺の話を途中で遮ってそう言うと、ドロンという感じで煙をだして消えた。
まじ、なんなんだ、あいつ……。
「ショウにいちゃん、試してくれてありがとう。5レベル上がるごとに、目安箱機能で運営に意見を言えるって説明書に書いてあったから、試したかったんだ。僕たち結構もうレベル上がってるからね。意見を言えるって、ああいう感じで、一定時間話を録音する仕組みなのか。ということは意見を言う時はある程度まとめとかないといけないね……」
弟はそう言うとちょっと考えるように左上を見てから、ステータス画面をタッチした。
するとまたあの妖精が現れて、さっきと同じようなことを言ってきた。
妖精、こわい。なんかもうむしろこわい。
「まず、勝手に許可なくゲームの世界に連れて行くというのはよくないと思います。しかも家族をバラバラにする意味がわかりません。あと姿形がまったく違うのもいただけません。せめて、家族の所在地がわかる機能や、連絡と取れるような通信手段を用意すべきです。また、すぐに元いた世界に帰れる仕組みは絶対に必要です。あまりにもやり方が野蛮すぎると思います。ゲームを楽しむ以前の問題だと思います」
「はい、ご意見ありがとうございました。頂いた感想やご意見、個人情報についてはゲームの製作のためにのみ活用され、他のことには一切
使用いたしませんのでご安心くださいませ。それでは引き続きゲームの世界をお楽しみください」
妖精はさっきとまったく同じことをいって消えていった。
「うーん、この意見がちゃんと通って、改善とかしてくれたらいいんだけど……」
妖精が消えたあたりをみて、弟がつぶやいてるんだけど。
俺、もしかしてだけど、さっきだしに使われたんだろうか……。
「弟よ、メヤスバコとやらをまず俺にさせたのは、どういった理由だ?」
「いや、どういうものかなって思ってまずショウにいちゃんにやってもらっただけだよ」
「それってにいちゃんをだしに使ったということなんじゃないか?」
「まさか、そんなことないよ。僕がにいちゃんをだしに使うはずないじゃないか」
……。
ん、確かにそうだな!
俺に、頭の回転が早い方だから色々考えちゃうんだよなー。頭の回転が早すぎるのも考えものだな!
あーなんかスッキリしたところで思い出したんだけど……。
「なんかお腹すいたんだけど。ご飯ある?」
俺がそういうと弟よはワニ顔で笑って、この宿屋は一階が食堂になってるから
下に降りればご飯が食べれるよ!と教えてくれた。
まじか。
それ早く言えよ。腹へったー。
よし、一階おりるぞ!




