18 白鳥走獣変身セット
ダルマを倒すと、めっきりモンスターが現れなくなって、ものすっごくスムーズに森の中を歩けるようになった。
「うわー、すごい、この森に住んでるモンスターのカードは全部手に入れられたんじゃないかな? わ、このカードすごい便利そう。これも、これと組み合わせたら、結構いい感じなんじゃないかな。それに……」
俺の肩の上の弟が、ワニ顔をニマニマさせて、さっきからずっとカード辞典をみてぶつぶついってる。
確かに、所持しているカードの種類や枚数はかなり増えた。
『大いなる蟻 ジャイアントアント』、『病みつきスパイス』、『炎を纏いし狼 ウルフレイム』、『一匹狼の衣』、『溶解仙人 ヌメリヒョン』、『動かざるもの ナマケモーニャ』、『熟成肉』、『肉球サンダル』、『フォックモフスの頭飾り』、『モフモフ安眠枕』、『白鳥走獣変身セット 嘴』、『白鳥走獣変身セット 翼』、『白鳥走獣変身セット タイツ』、『分銅の奮闘手袋』
それに惰眠のグレンデルのカードを含めて15種類のカードが集まった。
しかもグレンデルのカード以外は全部5枚以上ある。
弟がぶつぶつ言うのをやめて、俺に3枚のカードを渡してきた。
「見て! ショウ兄ちゃん! この『白鳥走獣変身セット』の一式。この3枚のカードを装備すると、姿が白鳥走獣に変わって、早く走れるようになるみたい。しかもプレイヤーを乗せられるんだって! 白鳥走獣って分かる? グレンデル戦の時にでてきた白いダチョウみたいなモンスター。しばらくあれになれるみたい。これ使って、そのまま次の町まで突っ走れるんじゃないかな?」
俺がカードを見て見ると白いダチョウみたいな絵が乗っていた。あー、あの時は、ただこん棒振り回してるだけだったから、よく覚えてないけど、確かにこんな奴いたな。
カードを見てると、弟がそのままカード辞典の内容を読み上げてきた。
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<白鳥走獣変身セット 翼>
種類:装備カード
クラス:銀
効果:単体では何も出来ないが、白鳥走獣変身セット嘴、白鳥走獣変身セットタイツのカードをそろえて同時に装備をすると、白鳥走獣に変身し、対象者のATKを0にする代わりにその分をAGIに振ることができる。また、白鳥走獣の背に別のプレイヤーを乗せることも可能。乗せられる人数はATKをプラスされたAGIの数値に依存する。AGI200ごとに一人(1プレイヤー)乗れる人数が増える。
装備カードではあるが、消耗が激しく1度や2度の使用ですぐに壊れる。
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「ATKをAGIに振るって、なんだ?」
「ATKは攻撃力みたいなもので、AGIは素早さだから、攻撃が出来ない変わりに早く走れるってことだと思う。ATKの数値をプラス……かー」
弟はそこまで言うと、エステルのほうをチラチラと見てきた。
エステルは弟の視線を受けてはっとしたような顔をする。
「あ! 私が、白鳥走獣に変身します! ATKの数字は、多分私の方が高いですし、だから私が変身したほうが速く……」
何言ってんだ!
「女の子にモンスターの姿にさせて運んでもらうなんて、そんなのダメに決まってるだろ、弟よ、それはジェントルマンのすることじゃないぞ! こういうのは兄ちゃんがやるよ」
「でも……そうするとこのカード使ってもAGI400以上にならないと思う。AGI200ごとに乗れる人数が変わるって書いてあるし、僕とエステルさんを乗せるってなると400は必要になるよ。兄ちゃんレベル上がったと思うけど、今ステータスどんな感じになったの?」
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レベル:23
種族:獣人(猿)
職業:無職
HP:492
MP:89
STR:129
VIT:129
DEX:172
AGI:177
INT:10
LUC:special
特殊スキル:神々に愛されし者
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「なんか、レベルが23になってる。ステータスは上から、492、89、129、129、172、177、16……ゲフン! みたいな感じだ」
「ゲフン? どうしたのいきなり咳なんかして。まあ今回LUCは関係ないからいいけど……ATKとAGIの数値を足しても306。“美の妖精の痩身おやつ”のカードを使って、AGIを上げても届かないな……。やっぱりショウにいちゃんだと人を2人乗せられないよ。それにしてももうレベル23なの? 僕はまだ18だよ。経験値の振り方がちがうのかな」
「コウジは、トカゲワニなんだし、乗る人数にはいらねぇだろ。エステルと一緒に乗れるじゃないか?」
「いや、わざわざプレイヤーと表現してるから、多分僕も人数に入ると思う。ゲームの世界だし、そういうのはきっちりしてるんじゃないかな。ちなみに僕のステータスだと合わせても80だよ。僕致命的にATKとAGIが低いんだよね」
弟がそこまでいうと、顔を真っ赤にしてるエステルが話しに割って入ってきた。
「あ、あの! 私、ぜんっぜんっ! 大丈夫ですから! 人は乗せたことないですけど、急ぎのときとかそのカードを装備したことありますし! 慣れてます! 私、大丈夫です!」
「いや、だめだろ、エステルは女の子なんだから」
と、俺がいうと、エステルの顔がさらに真っ赤になって、手で顔を隠した。ど、どうしたんだ。
「あの! あんまり私、優しくされるとっ! 女の子扱いとかされるとっ! ほんと、ほんと、ほんとやばいんですー!」
そう言って顔をフリフリしている。
何? 何がヤバイんだ? エステルどうしたんだ? と思って、近寄ろうとした時、肩の上の俺の弟が大きな声を出してきた。
「ショウ兄ちゃん! だからむやみに近づいちゃダメだってば!」
え?
近づいたらダメってどういうことだ? と思って右肩の弟の方を見た瞬間、左頬にすごい衝撃が走った。
―――俺は宙を舞った。




