12 ジャイアントアント(小)って小さいの?大きいの?
地図が見れるらしい弟に言われるまま、森を突き進んでいく。
トカゲワニになった弟を肩に乗せて歩いてるけど、大人になった俺は、疲れ知らずでどんなに歩いても大丈夫そうだった。大人ってすげー!
あ、違うのか、ゲーム用に身体が変わっただけなのか? まあ、よくわかんないけど、まあ、もともともうすぐ大人と言っても過言ではなかった俺だし、ほぼ大人みたいなもんだろ。
「ショウにいちゃん、この前みたいに、隠れたところにレアカードが隠されてるかもしれないから、なんか気になるものがあったら言ってね」
「あーあのうんこカードみたいなものか。わかったー」
森をしばらく進んでいると、少し先の茂みがガサゴサ動いたから、そっちに目を向けると、そこからおっきい蟻が出てきた。
柴犬ぐらいの大きさか? あんな大きな蟻がいるとはさすがヨーロッパ! いや違うか、ゲームの世界だった。
それを証明するように、蟻の近くには緑色のゲージが見える。チュウにいのゲームみたいだなって思ってはいたけど、マジでゲームだとは思わなかったな。アレが多分体力ゲージとかいう奴なんだろう。
「う! うわ! 魔物だよ! ショウにいちゃん! おっきい! おっきい蟻だよ! どうしよう!」
慌てやすい弟が、慌て始めた。おっきいっていっても、蟻にしては大きいけど、そうでもないだろ? まったく。まあ、しょうがない。ここが兄と弟の差って奴だな。
俺は、蟻のところまで進むと、脚で踏みつけた。
意外と固くて、びっくりしたけれど、何度かアリを踏み続けてたら、体力ゲージっぽいものが減って、アリが消えた。そして、カードが一枚落ちた。
「うわー、ショウにいちゃん、容赦ないね。あんなでかいアリ踏みつけるなんて……信じられない」
「別に普通だろ。蟻だし。蟻なんてお前が知らないだけで、結構踏んでるぞ」
「そういわれるとそうだけど、なんか違うよね!? それにしても、思いのほかにモンスターが弱くてよかったかも。えっとさっき倒したモンスターは……」
そういいながら、また手っぽい動きをする前足でもってトカゲワニな弟はカード辞典を操作し始めた。
「へー。さっきのモンスターはジャイアントアント(小)っていうんだって。このあたりでよく出る弱いモンスターらしいよ。やっぱりあれはモンスターの中でも弱い方なのか……。強いモンスターってどれくらい強いんだろう? それにしても、ジャンアントアント(小)を倒してドロップしたカードが『病み付きスパイス』とか、使いどころが分からないカードだね。ジャイアントアントを炒って粉にした中毒性のあるスパイスなんだって」
弟がカード辞典を操作しながらぶつぶつ語ってくる。
へー。それにしてもジャイアントアント(小)って、ジャイアントなのか小さいのかどっちなのかよく分からない名前だな。
俺もカードを拾って、絵柄を見てみた。
“病み付きスパイス”
“生活カード”
“一度食べるとまた食べたくなる身体に良くないスパイス”
そして、胡椒みたいな黒い粒が山盛りに盛られている絵がついてた。
なんて、魅力のないカードだ。
「カード辞典の説明みると、このカードを何枚か使うと、状態異常『毒』にすることができるらしいけど、このカード単体じゃ、効果はほとんどないみたいだよ。まあ、弱いモンスターから落ちるカードなんてそんなものなのかな」
「それよりさ、お腹すかねぇか? そろそろ村長の婆さんがくれたお弁当食べようぜ」
「えー、さっき村旅でたばかりだよ! 次の目的地までまだまだあるし、最悪野宿も考えてるんだから大事に食べないと」
「えーでも腹減った。なんか腹減ったということに気づいた瞬間、ものすごく腹が減った! ここジャングルだし、なんか食べ物あるんじゃないか? バナナとか。あ、違うか。ここジャングルじゃなくて、ゲームだったか。いや、ゲームでも木がいっぱい生えてたらジャングルだ。バナナがあるはず!」
俺はそう言って、周りの木を見上げる。うーん。それらしいものはないな。いっそ木にでも登ってちょっと遠くの方を見てみようか。
そして、「えーいいから先急ごうよー」という弟をなだめて、地面に置くと、一番近くの大きな木によじ登って、ちょっとまわりを見渡した。
すげー。想像以上にジャングルで、想像以上にいい景色だ。あ、なんか近くに、赤い実をつけた木がある。おお、なんかあそこに、まわりの木より5倍ぐらいは高い木があんぞ。お、向こうの空に、スッゲーでかい鳥っぽいのが飛んでる。モンスターかな。
とりあえずあの赤い実がなってる木のところに行きたいな。食べれそうだし。
大体の方角を確認してから木からスルスルと下りていくと、トカゲワニな弟の叫び声が聞こえた。
「ウワー! こっちくるな! くるなってばー!」
弟の近くに、さっき出てきたおっきなアリが4匹迫っていた。
俺は慌てて、アリの上に着地して、2匹その衝撃でカード化させて、もう一匹を蹴り上げる。そして、最後の一匹を始末しようとして、弟を見ると、こっち来るなーと言いながら、パクパクしている弟のワニ口の中に、アリが突っ込んでいった。
あ。
涙目の弟はガリって言う音をさせてアリを噛み砕いた。
すげーや。俺の弟は。俺も流石にアリを食べるという発想はなかったぞ。
涙目の弟は、口の中でカード化したものをペッと吐き出すと、何も言わずにカード辞典に収納した。
俺は、蟻を食べた弟にかける言葉が見つからなくて、しばらく動かない弟を見守っていると、ぶるぶると震えだした。
「ぼ、ぼく、蟻を……蟻を食べちゃったよ……」
「……う、うまかった、か?」
「味なんてわかんないよー。でも口の中でなんか、こう、もぞもぞって動いて……ウー。思い出すと吐き気が」
「婆さんがくれた弁当でも食べて気分転換するか?」
「そんなしっかりしたものは食べれそうにないよ。さっぱりしたものなら……」
「じゃあさ、コウジ。向うに赤いりんごっぽい果物がなってる木があったから、そこで口直しするか? な?」
「……うん」
俺と弟はとりあえず、赤いりんごっぽいものがなってる木のほうへ行くことになった。




