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082.

 二月も下旬にさしかかったころ。

 生徒会室の空気はこれでもかというくらいに重たかった。

 ホワイトボードには、卒パイベントなにすんべ、という文字が書かれている。

 いまの時期で決まってないという時点でそうとうまずいのは今期の役員も重々承知だ。先代からは楽しみにしているとプレッシャーをかけられ、教師達からは楽しいけれど羽目を外しすぎないものにしてくれというような言葉がかけられている。

 なかなかこれが決まらない。

 去年のときは確か十二月くらいから決まって、十分な準備期間があった。

 今年もそうなるだろうと誰しも思ってはいたのだ。けれども。

 生徒会長の一言が、混迷の第一歩どころか百歩くらいになった。

「例年、立食パーティーとかだけど、もうちょっとこうパンチのある企画やりたいよな」

 そう。例年のパーティーというと余興が入れ替わったりはあっても、ベースラインは変わらなかった。

 たぶん変えようとして途中で無理とわかって歴代の人達は、例年通りを維持したのだろう。

 けれども、今年の会長はなかなかに偏屈な人なだけに、ずるずると二月にもなってまだ何も決まっていないという状態になってしまったのだった。

 腹案自体は副会長の自分にはある。けれどもそれをおおっぴらにやってしまっていいのか、といわれるとどうしても二の足を踏んでしまっている状態で、なんの提案もないままに時間だけが過ぎて行っているのであった。

「そういや、この子って、ウチの学校に出入りしてるんだよなぁ」

 会長がスマートフォンをいじりながら、ホームページを巡回している。本人はいいアイデアがないか検索検索といっているが、もう、引き出しは全部がらがら開いてしまっているので現実逃避に入っているのである。

 そんな彼はネット上でなにかを見つけたらしい。

「コスプレ……コスプレかぁ。今から準備していけるかなこれ」

「なっ」

 いきなりな発言に副会長がびくりと声を上げた。

 さきほどまでいっていた腹案というのがまさにそれだからである。

 この学校は、なんだかんだでコスプレイヤーの数は多い。そこらへんのコネとスキルを総動員すれば今からでもパーティーはできると踏んでいる。立食パーティーのほうはある程度の手配は済んでいるし、それにプラスすればいいだけだから、手間もかからなくて済む。

 今からでも十分に間に合うだろう。

 副会長(じぶん)はこの学校のレイヤーの相談役であり、連絡手段などを作ったてまえ、みんなにお願いをすればそれなりにスピーディーに動いてくれるだろうことはわかる。

 けれども、学校でこれはやっていいのか?

 そりゃ、おふざけの宴会芸は学校という場でもあるだろう。

 でも、ガチだ。こちとらガチである。笑われるつもりなんて毛頭ない。やるならほぅと息を吐くくらいのクオリティで行きたいのだ。我らの愛を穢されてたまるか。

「会長が先生達を黙らせるなら」

「ああ、そこはうまくやるってばー。表面いいのは君もしってるじゃーん」

 へらへらーというのだが、これで表への対応は完璧なのだからうちの生徒会長も恐ろしいなと思ってしまう。

 その言葉は確約として、いいだろう。あとは自分がどれだけこの学校のレイヤーに協力して貰えるかだ。

 正直、レイヤーの学校バレって問題は、厳しい。本名でのやりとりではなくハンドルネームって言う人もおおくいる。

 でも、「みんなが」コスプレするってことなら個人のことまではせっつかれないのではないだろうか。 

「じゃあ、今年の卒業パーティーイベントは仮装舞踏会で行きましょう」

 コスプレパーティーと銘を打たないのは、教師のための言い訳である。

 仮面舞踏会(マスカレード)とのコラボ。

 コスしない人にも仮面をつけて貰って、会場の空気を一つにしよう。

「それと、できるならでいいんだが」

 会長のその後の言葉に、どうだかなぁという声を彼は言うしかなかった。





 三月に入ってまもなく、その告知は張り出されていた。

 卒業式前日。例年このスケジュールで卒業パーティーが行われる。

 式当日はどうしても保護者やらが参加する関係で生徒同士の交流が減ってしまう。

 そんなわけで、例年、自由参加での開催がされているわけなのだけれど。

「なあ、八瀬……俺がやったこと、間違ってたんだろうか」

「いや。別にいいんじゃね? コスプレの偏見が少し薄れたならさ」

 廊下の張り紙を見上げながら少し頭痛がした。そこには仮装舞踏会の文字が書かれている。ようはコスプレパーティーだ。

 例年、吹奏楽部の合奏だとか、落語研究会の発表だとかステージ系のイベント中心だったのに、今年は妙なものになってしまったなぁと思う。

 出席義務はないにしても、かりにも学校のイベントでこれというのはいいのだろうかと思ってしまう。

 少なくとも、あのときもいったけれど、結局のところ、アニメやオタク文化というものにたいして、世間的には現実逃避だとかという反応をするものなのだ。それを大々的にやっていいものだろうか、と思う。

 普通なら考えついてもやろうとはしないだろう。けれど、先月撮った動画が元でやってしまえということになったのは、あおり文からよくわかった。あのアイドルも体験した、仮装を君もやってみようとか書かれている。コスプレという単語ではなく、仮装と言っているところは学校向けの言葉選びなのかもしれない。

「それにこのイベント、保護者はあんまり参加しないのが暗黙の了解っていうしな。卒業式のあとの懇親会のほうが保護者があつまるイベントでこっちは在校生と卒業生の最後の交流の場所ってわけで」

「じゃあOGとかもくる、と」

 去年のこのイベントに、木戸は参加していない。というのも休めるなら休んで撮影に行きたかったからなわけだけど、卒業生が来るというのなら参加してもいいかもしれないとも思う。

「いやいや、お前がいうならOBの方がいいんじゃね? それとも女の卒業生で知り合いいるのか」

「うちの姉とか青木の姉とかここの卒業生だからな。参加するーってこともあるんかなぁと。まあうちはこないだろうけど。里帰りだって年に数度だし」

 実際は写真部の先輩方と会いたいのだけど、彼女達と交流があるのはルイのほうなので、姉たちの話を持ち出しておく。さすがにあいなさんはこのシーズンは忙しいし、これないだろうけど。

「へぇ、お前にねーちゃんいたんだな。ちょっと興味あるから詳しく」

 掲示板から離れるように歩き出しながら、八瀬が目を輝かせた。

 こんな男の娘の姉なのだから、きっととか想像しているのだろうが、残念ながら八瀬よ。うちの姉は貧乳でも幼女でもないのだ。

「ご想像におまかせします」

 それだけ言って教室の席に戻ると、八瀬も前の席にどかりとすわった。昼休みもあるしお話をプリーズといったところだろうか。

「このイベントの元凶になった人物の姉となると興味深いだろ? さぁどんな人なのか白状するんだ」

「俺は元凶じゃーないよぅ 濡れ衣だよう」

 小声でひそひそという八瀬にこっちもとぼけた反応をする。それに姉だってわりと残念な感じな人だ。確かに胸だけはでかいけれどそれ以外はそうでもない。きっと。

「しっかし、結局あのマネージャーさんの一人勝ちなんじゃないかと思ってならないよ」

 こんな田舎の高校にまで、あの動画の効果が浸透したとなると、さすがに頭も痛くなってくる。もちろんそれを見たのは偶然なのかもしれないのだが、それでも人の目には入るということだ。あの弁明会見は。

「別にいいんでない? 無事に落ち着いたんだし。でもさすがに公式の写真見たときはあまりのできの良さに唖然としたけどな」 

「エレナのプロデュースだしな。イケメンを美少女に変えるくらいならやってみせるさ」

「つっても、ネットのオタたちはみんな、アイドルもなかなかやるじゃねーか、姫の笑顔をあんなにだしやがって、っていってたぞ」

「演技指導は半端なかった。でもあいつも俳優やったりしてるだけあって、飲み込み早くてさ」

 いま思い出しても、あの時のエレナの演技指導は半端なかったと思う。

 そういう感じじゃなくて、顔はこうでとかあの騎士状態で対応するわけだ。ちなみに設定は記憶喪失になってしまった姫様で、そんながさつなことはいたしません、だなんてあの騎士状態での叱責が幾度も飛んだ。

 しかもそれで衝撃となるのがエレナの表情なのだ。本当に姫様が以前と違うということを心底悲しいという様子で、状態が違うとしょぼんとし、うまくできるとぱぁっと微笑んでくれる。なにあのプレイと普通に関心してしまったほどだ。影のヒロインと言われるゆえんがわかる。

「俺も誘えよぉそういうのー」

「いーやーだ。おまえ、エレナにあったら絶対股間つかむだろ。あったかいですね、とかいうだろう、このど変態」

 木戸も、というかこの場合はルイというべきか。八瀬に襲われた時にしっかりと股間はさわられている。ぶにりと。本当にぶにりと。あの感触はきっと何年たっても忘れないだろう。

「ふっ。俺の女神にそんなことするわけないだろう。大切に、ちらっと下からのぞくだ、うぶっ」

 すこんとチョップをかますと、剣呑な視線を向ける。

 これだから、男は、というような蔑みの視線である。

「で? 木戸はコスプレしねーの?」

 いたた、と頭をなでながら、八瀬は話題を変えてくる。そう強くはやっていないのだが、少し幸せそうなのはなぜなのだろうか。打ち所が悪かったのだろうか。

「どうしようかな。正直あんまり乗り気ではないんだよ。写真撮るんならいいんだけどさ」

「でもメイドさんとかわりとノリノリだったじゃん」

「いや、学校で女装はしない。危ないから」

 なにが危ないかって、いろいろだ。青木のこともあるし、普通に今じゃルイは有名人である。女装の木戸との共通性を見られてしまったら、それこそ何を言われるかわからない。

 ルイとして参加するというならやぶさかではないけれども、さすがにそれもどうかと思う。関係者ではあっても部外者には違いないのだ。

「たまには男装コスでもいいんじゃね? それとも観客になるん?」

「仮面舞踏会みたいなノリで目の回りを覆うのはみんなつけるっぽいしなぁ。今回は観客でもいいかも。そもそも衣装も……俺はアテがあるけど、二週間たらずでどうこうなるもんなのか?」

 コスプレ衣装を自分で確保するとなるとそれなりに大変だと思う。

 いちおう今回のイベントの参加条件としてコスプレをするか仮面をつけるかというのがあるのだけれど、衣装を用意できる人間なんてそう多くはない。衣類を作るなんていうのは大変な作業なのだ。木戸にはエレナがいるからいくらでも衣装を借りようと思えばできるのだけど、なかなかレイヤーの知人がいるというようなのはいない。

「あと本場っていうか本家っていうかコスプレイヤーさん結構この学校いるけど、どこまでだしちゃっていいかってかなり悩むと思うんだよなぁ。気合いいれまくって自分だけ浮いたら、さすがに生きていけない」

「あ、その話はあたしもからむよっ」

 コスプレイヤーという単語にひかれて寄ってきたのは山田さんだ。修学旅行で同じ班になってからというもの、少しずつ話すようになった相手の一人だ。彼女は自分がレイヤーなのをそこまで隠していないのでこういうときにはきちんと話してくれるから情報源としてはありがたい。

「いちおう、こっちのコミュニティに入ってるうちのガッコのレイヤーさんとは協議中でね。キャラコスにするか一般にもわかるのにするかっていうので、ちょっと揉めてて」

「一般人向けってなるとメイドさんとかナースさんとかか」

「オタ向けのキャラやってもわかんないだろうしねぇ。でもなんのキャラかわからなくても、きれいな服一杯あるから、それはそれでいいかもって思うし」

「確かに。そこそこ人数がいれば、内輪の会って感じにはならないのかな。衣装の貸し出しもするよ的なの書いてあったけど、あれってレイヤーさんたちから大放出なの?」

 イベント概要のところに、衣装貸し出しの件も書かれていたのでついでに聞いておく。

「レイヤーのみのつるし上げ会みたいになっちゃうのはちょっとヤなんだよね。だから一般の人もやってくれるといいんだけど。それで衣装は供出しますってことになったって副会長が言ってた」

 どれくらいの人がやってくれるかなぁと山田さんは眉をひそめた。あまり良い未来が想像できていないらしい。

「演劇部とかは声かければ普通にやってくれるんじゃないか? あと漫研とか」

 衣装をつくるかどうかは別として漫研はやることには抵抗はないんじゃないだろうか。演劇部はいうまでもなくそもそもいろんな衣装を着こなしているから、澪あたりはノリノリでやるだろう。

「写真部は?」

 八瀬からそんな提案がくる。少しだけそうぞうして首を横に振った。

「どうだろう。撮る側にまわりたいって遠峰さんとかはいいそう」

 ルイもそうだがあそこの人達は基本的には撮る側であって撮られる側にはあまりなりにくいのだ。

「部活系でうまく話がまとまれば、それなりに盛り上がるんじゃないかな。卒業生の先輩のためにーなんてなればさ。有志の参加ではあるけど、せっかくだからみんなにコスプレしてもらいたいな」

 山田さんがまだ不安そうに、それでも素直な願いを告げた。確かに特殊なこと、から普通に楽しめるものっていう風な認識になってくれれば、レイヤーさん達も嬉しいだろう。

「それで木戸くんはどうするの? やっぱりメイドさんとかかな」

「こいつ、女装はしねーっていうんだよ。あんだけのものを持っておきながら」

 彼女からきらきらした視線を向けられたのだが、残念ながらモブ18くらいをやらせていただく予定である。生徒会支給の厚紙で作ったマスクをかぶってレイヤーさんたちをわんさと撮影するのだ。コンデジでな……

「そうはいっても、無理なもんは無理。ぶっとんだキャラならなんとかって感じ」

「ほう。なら男の娘キャラですかー」

 そうきちゃいますかー、と山田さんはテンションを上げる。ぶっとんだでそっちに振れちゃいますか。

「少年役ならあるいは。でも衣装用意が大変だし、仮面の一般人でいいんじゃないかなと」

「ふふん、そういうことなら山田ねーさんに任せなさい。あーでも合わせするなら、身長高いイケメンが欲しい」

 ほわんと完成図を頭に浮かべながら、彼女はくっ、とうめいた。

 なんとなくその長身イケメンっていうのでなんの役なのかがわかってしまった。ここのところ下火ではあるけれど、会場でコスしている人もいるし、ルイとして撮影したこともある。

「まさかとは思うけどさすがに眼帯だよね。右目を髪で隠してお花いっぱいとかじゃないよね」

「おっとぅ。長身のイケメンってところでそれに行き着くとはなかなか。でも、どっちも似合いそうなんだよねぇ。男の子をやるなら下はぼっちゃまパンツになりますが」

 スカートとどっちがいいかなぁという想像を浮かべながら山田さんがうっとりする。

「別に毛深くないし、足を見せるのは問題ないんだけど。でもパートナーの長身イケメンは欲しいよな」

 頭に思い付くのは、先日のあいつくらいだけれど、さすがに声はかけられない。それと。元キャラの身長に比べれば木戸のほうが大分高いのだ。そうなると対比の意味合いではそこそこ身長のある相手が欲しい。実際、撮影しているときでも木戸よりも身長が低い女の子がぼっちゃまをやることが多いのだ。

「作品としてはまだまだ人気あるから、運動部とかの子でもスカウトしてみようかな」

 是非、見てみたいとにんまり極上の笑顔を浮かべられて、身体をびくりとさせる。

「って、山田さんこっちは確定ですか」

「希望としては、声変わりしてない少年ヴォイス出してほしいなぁ」

「声優じゃあるまいし無理だって。女子声と少年声は違うんだよ。なんつーかなんだろ八瀬?」

「俺に振るなよな。まああれじゃね? 女子っぽい高い、鋭い、氷のような成分を少し落としてやればいいんじゃないかな?」

「そうはいうけど、鼻の響きでだしてるだろあれ。鼻の開き方を変えたりするのか……声帯で出す音そのものを下げるのは物理的に無理だし」

「うは、専門的だなぁ。わりと少年コスの子は少しうつむく感じで低めの声を出してるもんだけど」

「二段で変えないといけないからなぁ。これでも女声だすのはわりと難しいんだよ? しれっとやっちゃってるから、すんごい楽そうにみえるかもだけど」

 八瀬もそうだろというと、いやそーな顔をされた。ああ女子の前でその話題を出して欲しくないってことなのか。

「えっ。八瀬くんも両声使いなの? それは是非とも聞いてみたいっ」

 へいへい、プリーズときらきらした笑顔の山田さんを前にして、くぅ、こんにゃろうとこちらに恨み言をいいながら八瀬は眼鏡をはずして。

「はじめまして、山田さん。今年一年よろしくねっ★」

「おおぉ。なんか、なんかなんか。両声類って選ばれた人って感じ持ってたけど、木戸くんも使えて八瀬くんもつかえるとなると……」

 ふむぅと山田さんが、えーっとそのうと考え込んで、ピコンと指をたてた。

「感染性」

 ずるり。

 さすがにそこでそういうぼけはどうなんだろうか。

「人を菌扱いしないでよね。こんなの技術なんだから。もちろん天然さんも知り合いで一人いるけれど。全然なんとかなるんだってば」

 あえて女声に切り替えて苦笑を漏らす。

「でも木戸くんのほうが甘いよね。あまあまでとろとろで、すっごい女の子って感じの声」

 うらやましいなぁと山田さんがうっとりした声をあげる。

「でも、正直なところこの声の出し方って、テンション高いキャラのほうがやり易いんだよね。そう考えると今回の少年役ってテンションはいつも低いし社交性も残念だし。むしろ喋らなきゃいいのかな? 話しかけられても、うるさい、とかなんとかいって、手をぱしってするとか」

「ああ、それっぽいかも」

 じゃあ、そういう路線でいきましょー! と言われた瞬間携帯がぶるぶると震え始めた。

 メールが来ているらしい。

「うげ。その日、いけなくなったかも」

「まじで!?」

 かぱりとメールを開いてみると、そこに書いてあった内容に、すこしめまいがしたのだ。

 そう。ルイへ。というタイトルと遠峰さんからのメールであることをつげる文面が表示されているのだ。

 そこにはこう書かれてあった。写真部のつてで、あんたにコスプレイベントの審査員やって欲しいって打診がきている、と。そうなってきたらどちらで出る方が喜ばれるのか。残念ながら、ルイはとてもわかっているのである。

「せっかく、木戸くんのかわいい姿が見たかったのになぁ」

 山田さんががっかりと肩をおとす。よっぽどコスプレさせたかったらしい。

「まあイベントができるだけで、いいんじゃないかな」

 楽しんでちょうだいなと彼女にいいつつ、それと、と、八瀬に向かって確認しておく。

「八瀬は、どうすんの? 解禁しちゃうの?」

「どうすっかなぁ。コスプレっていう隠れ蓑があるなら、女装もありかなぁ。いやでも僕なんかが男の娘コスしてもいいもんなんだろうか」

「やりたいときがやるときだ! って我々は考えてるけど。衣装が無理っていうならなんとか都合はつけたげますよ?」

 ふっふっふと山田さんが含み笑いをする。やるなら協力しまっせという感じだ。

「それにあえて男の娘じゃなくて女の子やっちゃってもいいんでない? このお祭りムードならきっと、汚装でなければいけるって」

 それにはならないだろ? というと、無論だという答えが帰ってきた。

 ようやく八瀬も、女装デビューをすることになるようである。


 すべてはこのコスプレイベントのためにっ。

 というわけで、学校でやっちゃいましょーという企画です。ルイ状態で学校の大勢の中に出るのは初めてなので。そしてコスプレもさせます。眼帯ぼっちゃまは似合いそうなんだけど、うってつけのコスがあるので。

 いやぁー、どういう衣装きせようかーとか、考えるの楽しいですよね。


 さて。明日の更新ですが、夜更新予定です。今晩送別会で自由時間がないのですよ……

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