表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
786/793

726.ゼフィロスの卒業式1

ついに、顧問の先生としての初めての卒業式です!

え、大学の方はどうしたって?

そっちは、一話だけちょろっとやる予定であります。

「んー、良い感じに晴れていいお天気だね」

 これは絶好の撮影日和だと、カメラを構えると、視界に写真部のメンバーに囲まれているほのかの姿があった。

 卒業生はフリーパスで卒業式に入れるというのは去年の件で理解している。

 そんな姿をとりあえず撮影しておく。


 今回の式は、写真部の引率と撮影補助という形での参加になった。

 思い出を作ってもらうというところもあるし、写真部の顧問としての形の方がいいだろうという配慮である。

 部室の前では一年生と二年生が集まってそれぞれカメラを装備している。

 ほのかさんは二年生達とは面識があるので、お姉さまーと囲まれているのだった。


「大人気だねー、さすが元部長どの」

「それを言えばルイ先生もじゃないですか? ルイ先生に教わってるんですーって、ドヤ顔されましたもん」

 ぐぬぬっ、私も一年下だったらルイ先生の生徒をやれたのに、とほのかがむぅーとうなっている。

 それならそれで、あのときの奏さんとの出会いもなくなってしまうので、結果的にはより深い付き合いにはなったと思うのだが。

 それはそれ、これはこれなのだろう。


「非常勤ではあるけど、きっかけをいろいろ与えられたなら、いいことかなーとは思うかな」

 思えば、ルイとてあいなさんと出会ってスキルがかなり上昇した自覚はある。そういった出会いの一つと感じる人が一人でも多くいればうれしいなと思うルイさんである。

 技術をみっちりというよりは、楽しいを見つけられるようになるきっかけになれれば、と思うところだ。

 

「ルイ先生は、ほのかお姉さまとお知り合いだったのですか?」

「実は去年の卒業式の時の依頼者でね」

 かなり深いお知り合いです、というと、おぉーと無意味にみんなに強い反応をされた。

 さすがはお姉さま! なんて言われているけれど、ほのかお姉さまは、ぷぅーとルイ先生と一緒にいれて羨ましい! なんて話をしている。

 そう、ほのかとは個人的にお知り合いではあるけれど、顧問と生徒の関係というのをやったことがないのである。ぶーたれてる姿が可愛いので一枚撮っておいた。


「さて、では次期部長どの、今日の撮影についてどうするか聞いてみようかな」

「ひゃ、ひゃい。その……先日決めた担当通り、二人一組でお姉さま方と在校生の写真を撮っていくのが今日の目標です」

 卒業式の思い出をばっちり撮る必要がありますと、次期部長どのは緊張した面持ちで他のスタッフに声をかけている。

 ちなみに若葉ちゃんはというと、撮影に参加はするけれど合流は少しあとになる予定だ。明日華ちゃんが卒業ということもあって、いろいろ打ち合わせがあるとかいう話だったと思う。

 もしかしたら若葉ちゃんの転校の話なんかもしてるのかもしれない。

 もう二年もこの学院にいる若葉ちゃんは本家の提示した条件をクリアしているので、もうこの学院にいる必要性がない。

 というか、そもそも、明日華ちゃんのために一年間学院にいる期間を延ばしたという部分があるので、ほぼほぼ転校する方向に話は進んでいるのだろうと思う。


「卒業生のための撮影でもあり、在校生との間の撮影でもあり。いいと思います。ちょっと寒いけど、リラックスして撮ってきてね」

「おおぅ……あのルイさんが先生っぽいことをしている……」

「……ほのかさん。そこ、驚いた顔浮かべるところじゃないからね」

 後で覚えておいてください、というと、はいはい、と気安い声が返ってきた。


 さて。そんな話をしていると時間も過ぎていくわけで、写真部の面々はそれぞれの撮影場所に移動をしていった。

「それでほのかさんは、今日はどうする予定で?」

「んー、いちおう後輩で知り合いもいるからそちらに行くつもりでいますけど、ルイさんの先生姿を見ていたいという思いもありつつ」

 ちょこっとついててもいいですか? と問われてはいはいと答えておいた。

 ルイとしては本日は、生徒の写真を全部撮るというのを依頼されている身ではない。なので写真部の顧問として写真部の生徒たちの活動を撮影すればいい感じである。


「いちおう、途中でばったり知り合いに会ったら挨拶はするから、それだけはご了承いただければかな」

「知り合いというと外部のってこと?」

 内部の知り合いってなると基本写真部だと思っているほのかは、首を傾げていた。

「そ。とりあえずは今日の卒業生の撮影担当の、あいなさんとはばったりあったらご挨拶だね」

 いちおう、お仕事の先輩でありいろいろ教えてもらった先生なので、というと、そういう人脈があるのですね!? と驚かれた。

 そういえば、高校生組はあいなさんとの交流を知ってるけど、下の世代についてはあんまり知らないんだなぁと思ったルイである。


「これでもいちおう事務所所属のカメラマンなのです。いろいろとそっちの伝手はあるのです」

「おおぉ……もさ眼鏡がプロっぽいこと言ってる……」

「……Mさんのことは知りません。っていうか、ほのかは将来プロになる気はあるの?」

 そういや聞いたことはなかったけど、と問いかけると、んー、と彼女は少しだけ考えるしぐさをした。もちろんその姿は撮影をしておいた。

「プロになりたいかっていえば、私はルイさんみたいにヘンタイではないので、普通に食いっぱぐれのない仕事をしたいな、と思ってます」

 働きがいとか贅沢なことはいえないと、先輩方もよく言っていますしというほのかに、ルイは首を傾げる。

「ん? ほのか、他の生徒ってか、先輩とも仲良し?」

 え? 写真にぞっこんじゃ無いの? というと、いやぁ、そこはねーと、ちょっと申し訳なさそうにほのかはいった。

「普通の学生というモノは、そこまで一直線じゃないものです。手探りをして、見聞きをして、自分の可能性と限界と生存確率をチェックして動くものです」

 っていうか、先輩が猪突猛進なだけです、とこそっと小声でいわれて、ああ、そうですかと反省をした。

 というか、そもそもである。


 あいなさんだって「写真好きな人が増えるといいなー!」くらいで、いろんな人にわーいと声をかけているのだろう。

 それに反応したルイという対象が希有なだけといえば、そうなのだろう。

「あらためて、たねまき……いや、同業者増えちゃうと困るとかもあるのか……

 写真好きな子が多いのは良いけど、なんというれじ……れじ……」

「レジって、コンビニ業務染みつきすぎです! そういうのは、ジレンマといいます!」

 先生なのに、残念ですと言われて、ちょっとばかりほんわかしてしまった。

 

 ルイとしての付き合いは、さくらとはわいわいやってるけど、新しい感じの掛け合いなのである。

 普段、ルイとしてあんまりほのかと会ってないので、遠慮無く言ってくれるところは好ましいと思う。


「まーでも、生活していくためにはお金が必要で、そのためには仕事が必要で、腕が必要とされないといけないのはあるよね」

 幸い、あたしの場合はいろいろコネがあったりでなんとかなったところはあるけど、みんながみんなプロカメラマンとしてやってけるなら、プロの概念自体が無意味になっちゃうもんなぁ、とルイはつぶやいた。

「なので、私の撮影活動はあくまでも趣味の範囲ですよ。来年あたりから就職も考えながらいろんな会社見たり、インターンいったりする予定です」

 写真はやめないって話はしたけど、仕事としてとは言ってないですもんと、ほのかが言う。

「さすがほのかお姉さまはしっかりしていらっしゃる」

「結婚相手にすべてを委ねて家庭に入るっていう時代でもないですしね。この学院がそういう人材を輩出していたのは過去の話だと思います」

 今は、自活した女性を育む感じの教育ですからね、とほのかがドヤ顔を浮べている。

 

「学院長先生も割とそんな感じだったしなぁ。正直自分が高校生だった頃よりもみなさん賢いと思います」

 才色兼備だと思います、というと、まぁーそれはルイ先生相手だと色はともかくみんなまともだと思いますと言われた。ひどい話である。

「あ、でもルイ先生の高校時代の話はちょっと知りたいかも」

 あ、いや、でも脳内保管の女子高生活済みルイさんというのもありなのか……と戸惑った顔を浮べた。

 ちょ、女子高に通ったことはせいぜい一週間かと記憶をしていますが。


「はは、ごめんなさい。私の刹那の友人と、一緒に学生生活をしていたらどうだったかって、ちょっと思うことはあって」

 ま、それに執着しているわけではなくて、イフ小説? みたいなの? とかほのかが言う。

 うむん。その範囲での想像なら、許してもいいんだろうか。


 ううむ、ルイとしての女子高生生活か……ゼフィ女でそれなら、写真部のカメラ使い放題は、プラスポイントだけれど、撮影規制はちょっとなぁと思うところだ。自由に何枚でも撮影はしたい。

「やー、この学校にまともに入ってたら、入ったところからしきたり改正だわ……ないわー」

「その節はお世話になりました」

 でも、一緒に通いたかったなーとでも思ってるのか、ほのかさんは少し上目使いで、ふふんと唇を結んでいる様子だ。

 はいはい、撮って欲しいんですね、カシャリ。


「ぐぬっ! 本当に年の差が惜しい! どうして先生は二歳も年上なんですかー! っていうか、三年と一年で一緒に学園生活一緒にやって、てとりあしとりお姉さまプレイをご所望ですよう!」

 くぅー、タイミングの神様本当にひどいと、ほのかは地団駄を踏んでいた。

 さて。そんな反応を楽しんでいたら、声がかかった。


「あれ? ルイさん、ごきげんよう?」

「そか、ルイさん、写真部の顧問になってたんだっけ」

「……あんまりごきげんではないですが、今年も参戦なんですね、お姉さま」

 そして、前々回の依頼者様、と伝えると、ほのかは、どちらさまが来たのです? と首を傾げた。

さぁ誰が現れたのかは、次話でわかるよ!

というわけで、今年はちゃんと時が進みます。

ええ、進みますとも……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ