724.斉藤さんと志鶴先輩の場合4
☆山田さんメインキャラじゃないけど、レイヤーの方です。043が初登場です。
10.1さくらさんと志鶴先輩の関係値を現在確認中。少ししたら修正予定です。
→去年のバレンタインあたりの女子会で、志鶴先輩の写真、さくらさんと佐々木さん見てる件! いや、木戸くんだったら、そりゃ見せるよなぁと。
なので、それ前提で話をいじりましたが、ほっとんど修正しないでOKですた!
→10.11実は、女装の件はすでにゲロってたというお話が12月ゴロにありましてー! それを修正しました。やべぇ、ブランクやべぇ……はい。気を付けます。
「珍しいねー、いきなりちづちゃんからこういう連絡くるのって。まさかミステリーな予感?」
とりあえずチャイムを鳴らして出迎えを受けた佐々木さんは、開口一番言った。
いちおう女子会という名目で木戸家でのパーティなんかで会ってはいるものの、主催者が男子の女子会以外ではあまり最近は接点のない関係でもあったのである。
というか、お互いの交友関係もそれなりに広がっていて、高校時代の友達からわざわざ急に呼び出しをされるというなんていうのが珍しいのであった。
「なかなか珍しい人選というか……まあ、こういうときに頼ってくれるのは嬉しいけど」
「まー、久しぶりに千鶴ちゃんの顔見れたのは嬉しいかなー」
玄関から居間に向かう間で、さくらと山田さんが声をかける。
今回の招集で集まったメンバーは高校の頃の友人から三人。
いちおう演劇をやっていた関係もあって友達は多い斉藤さんだけれど、内容が内容だけに相談できる相手というのも自ずと限られてしまうもので、今回の人選となったわけだ。
「木戸君は呼んでないんだ?」
「んー、呼んだんだけど多分、あっちのほう優先かなーなんてね」
あ、メールきてるや、と斉藤さんはスマホを操作して簡単な返信をしておく。
歩きスマホは良くないので、いったん立ち止まっての作業である。
あっち? と疑問符混じりの声が聞えては来たけど、それには後で話すから、とお客さん達は、洗面所でうがい手洗いをしてもらう。
あの感染症はいまだに存在しているし、しっかりと予防をすることは大切なことである。
「おぉー、ちづちゃんのおうち、相変わらず綺麗にしてるなぁー」
ご両親共働きでこれだけオシャレなお家が作れるとはセンスがよいねーと、佐々木さんが小物を見ながら言った。
「ふふっ、いちおー私も家の美観については手伝ってるのです」
褒めてもらえるとうれしーと、お茶の準備をしながら斉藤さんが言った。
手洗いうがいを済ませたみなさんは、とりあえず一階のリビングに移動して、お茶の準備を待っているところである。
相談、ということで人を集めたけれど、正直焦燥というよりは「どうしてそこまで頑ななんだろう」という困惑のほうが強い斉藤さんなのだ。
サークル員に無差別一斉メールとか送っちゃうどこかの誰かさんに比べれば、そこまで余裕がない訳でもない。ゆっくりとお茶でも飲みながら聞いてくれればそれでいいのだ。
さらに、たぶん答え合わせ自体は木戸がしてくれると思っているので、その点では今回の招集はみんなとお茶飲んでお話しようという程度のものなのだ。
「おまたせしましたー、ウェルカムドリンクです」
「おおぉ、お紅茶っ! 香り高くて美味しそう!」
わーいと、三人ともにカップを両手で包み込むと、少しだけ冷えていた指先が温まる。
バレンタインが終わったあとのこの時期は当然まだ、気温も低いし寒いのである。
「紅茶の入れ方はいずもさんからレクチャーを受けた事があるから、それなりに自信はあるけど、どうかな?」
お茶請けは市販品で申し訳ないのだけど、といいつつ、お皿にいわゆるスーパーで売ってる系のクッキーやチョコ菓子が提供される。
「えええぇ、いつのまに千鶴ちゃんったらあのシフォレファンに……」
おおぉ、と山田さんはちらりと斉藤さんのお腹あたりを見ながら言った。
どんだけ甘い物食べても太らない体質ってやつですか? と言わんばかりである。
「最低月一回はいってるし、常連だからそれなりに声かけてもらったりはあるのです」
さすがにバレンタインのお菓子作りってなると、木戸君のツテでなんとかお願いできたけど、そこまで個人的にお願いできる関係値までは築けていない。
ちなみに後輩の澪さんは、シフォレで働いている千歳ちゃんと懇意にしていて、ときどきお菓子をもらったりしているのだそうだ。
羨ましい。
「ああ、あと千歳ちゃんとも割と仲良しになったかな。最初はちょっと怖がられちゃってたんだけど、名前繋がりのシンパシーといいますか」
「千歳ちゃんって、青木くんの彼女の?」
「うん。そのちーちゃんだね。あそこはいろいろサポートもあったんだろうけど、長いこと付き合ってるなぁって感じ」
くぅー、羨ましい! といいつつ、買い置きのクッキーに手を伸ばした。
チョコチップの甘苦い味が、紅茶とマッチしてちょっと幸せな気分になれる。
「あ、たしかに、千歳ちゃんと千恵ちゃんと、千鶴ちゃんで、千繋がりだ」
「そして、彼氏は志鶴さんっていうのだから、どんだけ名前にシンパシーがあるのかー!」
ふっ、名前とは最も短い呪とは、よく言ったものだ、とさくらがちょっとした演技を見せると、うぉ、錯乱さんがレイヤーっぽいことしてる! と山田さんが嬉しそうな声をあげた。
カメコも良いけどコスもやろう! っていいたいのだろう。
そんな感じで盛り上がっていたのだけど、その名前が出たときに斉藤さんは、あーあとため息交じりの声を漏らした。
「今回みなさんに来ていただいたのは、その志鶴さんがらみの事件となります」
さて、なにから話しましょうか、と両手を鼻のあたりにあてたゲンドウポーズを取ると、たはぁとため息がもれた。それを見た山田さんは、ん? と首を傾げる。
「ゲンドウポーズはもちっとあごのあたりに指がいくものだけど……どっちかというと困っちゃったゲンドウポーズかな」
「いや、山ちゃん。そっちじゃないから。とりあえずレイヤー的な思考はお預けにしよう。あたしも今日はカメラマン思考をお預けにするから」
この場に、どうしてもそれをお預けにできない、おばかさんがいないので、うちらだけはせめてやりましょうというと、はーいと、素直な返事が出た。
「えっと、志鶴さんって彼氏さんでいいんだっけ? 一年前くらいに教えてくれた」
「一年も続いているとは……」
ぼそっと山田さんから言葉が漏れた。
「そう。一年の記念もあって、バレンタインの昨日にチョコドーナツ作ってプレゼントして、いろいろ話をしたんですよ」
悩み事があるなら打ち明けて欲しいみたいな感じで伝えて、なんなら悩みの半分を背負わせて欲しいみたいなことも言ったんだけど、無理って言われてしまったわけですと、がっくり全体重を背もたれに委ねる。
ぐんにゃりといった感じである。
「……それはさすがに重い女すぎませんかね、ちづさんや」
「そうですかねぇ、さくらさんや」
反省はしたけど、言っちゃったモンはもう飲み込めないしなぁと斉藤さんは言った。なんとか話はして欲しいと思ったのだけど、なかなかに志鶴さんも頑固なのである。
「んと、ちづちゃん的には、すぐさま聞き出したい感じ?」
そういうの、もっとゆっくりでもいいんじゃないの? と佐々木さんから声が上がる。
「長い目で見るってのは、できないでもないんだけど、こう、ちょっとしたことでへこんだり、黙っちゃったりしてねぇ。心配だし、もうちょっと身軽になってもいいんじゃないかなって」
重たい一眼レフを十台くらい持ってるような重さじゃないかなぁと冗談めかしていうと、さくらはそれは重いね……と妙に実感がこもった声を上げた。
実際、石倉さんのところでアシスタントみたいなものをやっている身としてはカメラの持ち運びもお仕事の一つなのだ。
さすがに十台、はないけど重さは体感済みである。
さて。そんな会話を山田さんは一人無言で見守っていたのだけど。
どうやら、なにかぷるぷる身体を震わせているようだった。
「山ちゃん、どしたー? 具合わるいー?」
つんつんと佐々木さんが二の腕あたりをつつくと、がばっと山田さんは立ち上がっていった。
「はぁ!? なんつーヘタレどのですか! これがちづから聞かされてなかったら、まっさきに別れるの勧めるところ!」
「うわぁ、山田っち、珍しく素が出てる。ミステリーだねぇ」
ほわほわと、佐々木さんがすんごい不愉快そうな顔をしている山田さんに言った。
このメンバーの中では珍しく現実主義な発言である。
「さくらさんもそう思わない? やべー男と付き合うって、機会損失じゃない?」
もっとこう、将来を考えて一緒に幸せになれるような相手のほうがよくない? と山田さんは付け加える。
そろそろ恋愛じゃなくて結婚とかも考えていくお年頃では? と凄まじく現実的なことを言い始めている。さきほど話をしていたとおり、レイヤーとしての考えは封印しての発言のようだ。
「ごめん、あたしダメンズの方に惹かれるほうかもしれない」
というか脈がなくてもまあいいやぁって感じの恋愛の仕方だから、将来一緒になろうとかって考えはあんまりないのですと、さくらは言った。
今はまだまだお仕事の方に力を入れたいお年頃なのである。
「とはいえ、震える子鹿さんが好きかと言われたら、ないと思うけど」
どちらかというと、ぐいぐい世の中回るタイプのほうが気になるとさくらは続けた。
実際、石倉はそういうタイプだし、負けず嫌いだ。自分の責任とかいろいろ考えるタイプではないし、悩みはあってもそこで立ち止まるような人ではない。考えるより即行動、である。
「ははは、ちづちゃん、周りから男の趣味悪いって言われてしょぼーんとしてる。かわいー」
レアな反応だーと佐々木さんが斎藤さんの頭を髪型が変わらないくらいの力でなでなでする。
シャッター音が聞こえたけれど、もはや気にしないメンバーである。
カメラマン思考は捨てていても、指だけは勝手に動くさくらさんである。
「山ちゃんはしばらく合わないうちに急に大人びちゃったねー」
「いろんな人の姿見てるし、姉もちょっと結婚して失敗してバツイチだから、余計にいろいろ考えちゃうというか」
えっ、みんなはあんまりこういうこと考えないの!? と周りを見回しながら彼女は言った。
「ふむ、レイヤーさんだとむしろ趣味に全振りで、自分の活動認めてくれる人と付き合うとかのほうが多いんじゃない? って思ってたけど」
ま、あたしも最近あんまり撮影いけてないから、コスイベントの人たちの結婚観とかわかんないけど、とさくらが言うと、そこは、ちゃんと撮影しにきてちょーだい! と山田さんから声が上がった。
「できれば、ルイさんもつれて一緒に狂乱と錯乱コンビで絶影をぜひ!」
ふんふんっ、と鼻息あらく山田さんが前のめりになる。
先程までに結婚に冷めていた人とは思えない、ねばっこいまでの情熱である。
「恋愛と結婚を前提にしたお付き合いだと話は別ってことでいーの?」
「そんなところ。確かにコス活動が受け入れてもらえる相手といっしょに過ごすってのは魅力的だけど、受け入れてもらえても甲斐性がないとか、子供作るとか考えると話は別だし。将来性が期待できないってなっちゃうと、結婚するのは危険かなって」
「うっ、志鶴さんは将来性はたぶん……ここさえ抜ければ、多分……」
ぼそぼそ、と斎藤さんはうつむきながらつぶやき始めてしまった。
ある意味、地雷を踏み抜いた感じである。
「あーー! ほら、ちづ! ここはせっかくだから写真! 写真よ。もー志鶴さんの似姿などをここでばーんと出すといいよ!」
しょぼーんとしてしまった斎藤さんに、さくらが元気づけるように提案をする。
さくらは去年木戸家で、志鶴さんの写真を見せてもらっている。その場に佐々木さんもいたので、姿を知らないのは山田さんのみだ。
なのでここは、写真でも見ながら考えていくと意見も変わるというものだろう。
世の中、イケメンと美女に限るという言葉もあるほどである。
さくらとしては、新しい志鶴タソの写真かもんという勢いもあるのだが。
ここのところ、イベント会場であの方の写真を撮ったことがないのだ。
「そりゃ、あるけど……うーん、これとか、かな」
写真撮られるのちょっと嫌がられることはあるけど、絶対だめってわけではないから何枚かは撮らせてもらっている、ということで、スマホの写真を斎藤さんは取り出した。
そしてテーブルの上に置いてみんなに見てもらう。
「まっ、なんっ、なんというっ」
「うわぁー相変わらず美人さんだねぇ、しかも男前系の美人! わぁ、ミステリー」
「……これ、と、木戸くんが先輩、後輩、だものなぁ」
ふぅーんと、そりゃそうだよなぁと、さくら一人だけがなんだか邪なことを想像している様子だ。
他の二人は素直にそこに映し出された姿を見て、おぉっ! と前のめりである。
モデルもかくや、と言わんばかりの細身の長身という感じな上に、甘いマスクのイケメンなので、これで甘えられたらもしかしたら斎藤さんじゃなくても落ちるのかもしれない。というか、下手すると結婚詐欺とか普通にできてしまえそうな見た目である。(結婚詐欺さんは、見た目だけではないという意見もあるとかないとか)
「でも、やっぱりちょっと弱々しい感じはするかもー」
「守ってあげたい系男子。千鶴ちゃん昔っからこういうタイプには弱いよねぇ。まあもともと保母さん気質だもんなぁ。自分のことより周りを楽しくさせたいみたいな」
いつか、身を滅ぼさないか、とても心配です、と山田さんが噛み締めるように言った。
「さて。それで見てもらった感じ、どう、かな? 隠し事はなんだと思います?」
かく、しごと? と首を傾げながら冗談交じりに言うと、イケメン作家ですかー!? と周りから声が上がる。そういうのなら良かったのにというお話だ。
いちおう、二ヶ月前くらいに親父さんとの葛藤があるよっていう話はきいてはいるものの、それでもまだもんもんとしたものを抱えているというか。あれ以上なにがあるのか、と思うところだ。
一緒に結婚式に割り込んでぼこぼこにしてやろうぜぃ! とか話をしたのだけど、それでももんもんとしているのはどうしたことか。
むしろ、今は「父親の再婚相手との結婚式をぼこる相談」をしていていい時期のはずである。結婚式の予定日は今度の六月だそうで、まだ時間はあるけど、むしろ自分たちの結婚式だと思えるくらいに衣装選びとボディーメイクをしっかりしてやりたいところである。
「まー、普通に考えると、別に好きな人がいるーとか、それでもちづちゃんと付き合っちゃうところに罪悪感があるーとか?」
「……それだと志鶴さんそれでも私と付き合ってるげすやろーになっちゃうんだけれども」
「あはは、だよねー。それはないよねぇ」
しかも、木戸くんと連んでるんなら、なおさらその可能性はないよねぇ、ミステリーだねぇ、と佐々木さんが言った。うん。正解である。
「じゃあなんだろ? 莫大な借金がある、とか、人にいえない身体の特徴がある、とか?」
「親との確執とかもあるかも。御曹司の跡取りなんだけど、親と反目してるとか!」
そういう設定のお話もよくあるし、と山田さんは想像の翼を広げていく。
今まで読んできた物語の中にも、恋のスパイスとしてよく秘密を抱える登場人物がでてくるものなのだ。
あーだこーだと、いろんな想像をしてみるものの、斉藤さんが納得するような設定はでてはこなかった。親との確執は正解だけれど、それはもう秘密ではないのである。
「さくらちゃんはどー思う?」
さっきから静かだけど、どうしちゃった? と首を傾げる佐々木さんに、あっ、うんっと、さくらは戸惑いながらタブレットを取り出した。
そして、
「いやさぁ、志鶴さんのこと、あたし撮ったことあるっちゃあるんだよね」
「は?」
いやぁ、さすがにうちのボスとか木戸くんレベルの魔眼はもってないけど、これでもカメラマンなのでね、とみなさんに画面を見せながらさくらは言った。
珠理奈嬢と木戸くんのところの学園祭にお邪魔したときに、ネタばれをされているだけなのだけど、自分で気づいたのだぜ! と話を盛ることにしたさくらである。
「え、これ、が秘密?」
「……錯乱どの。たかが女装コスが秘密なわけないでござろう」
「でゅふふ。そう思われますかね、山氏」
「普通にめちゃくちゃ美人さーん! キャラはちょっとわからないけど、モデルさんかと思うくらいスタイルいいなー!」
きゃーんと、佐々木さんはタブレットの写真を見ながら黄色い声を上げた。
「……実際、その秘密はクリスマスあたりで聞き出しました。モデル組やってるって、お話で。っていうか木戸くんが一緒にいたのでなんとか吐かせました」
「もう聞いてるんなら、今悩んでいるのって、それではないんだよね?」
ここでも絡んでくるとかかおたんほんと主人公だよねぇ、ミステリーと佐々木さんは言った。
「たぶんそーだと思うんだけど、それからそのネタなかなか振ってくれないというか、会うときよりおどおどするようになったというか」
「って、それちづちゃん、普段はデートでどんな会話してるのさ?」
「留学してた時の話とか、あとは一般的な世間話かな。昨日、なに食べた? 的な?」
話題自体は一杯あるし、一緒にいるだけで癒されるから、ぽけーっと一緒にいるだけってこともあるし、と言うと、みなさんが目をキラキラし始めた。
これが大人か……とでも言わんばかりだ。
「あとは就職の話とかが最近は多いかな。もう卒業も間近だしがんばらないとーみたいなね? あ、私はちょこちょこ保育園のお手伝いに行かせてもらったりしてるーって話はしてる」
「ぐっ。社会人になるとレイヤー活動減るっていうけど、そっちも悩みの種だったりするのかしら」
さきほどまで、ヘタレだのなんだの言っていた山田さんは、仲間意識からか志鶴の肩を持ち始めるようになったようだった。
「えと、社会人になるってなると、一緒に住んだりってのは話にでないの?」
「今のところはまだ、そういうのはないかなぁ。っていうかこっちもまだ学生だし、一緒に住むにしても経済的な問題がね……」
あっちが乗り気ならがんばろう! とかは思うけど、こっちからはあんまりその発想はでないね、と斉藤さんが言う。そこまで金銭的余裕があるわけでもない学生さんである。
いくら志鶴さんが公務員内定してるからといって、安心できるようなものでもないのである。
「それで? ちづとしては、女装コスをしてる彼氏について、なにか思うところは?」
「……これを秘密にするって、とんだ肩すかし! って思ったね。木戸くんと一緒の高校生活をしてきた我らにとって、コスプレも女装も日常茶飯事ってもんですよ」
だよねー、と周りからも同意の声が上がる。
「でも、うちら感覚おかしいからアレだけど、実際やる側からすると、隠したい気持ちってのはあるのかなぁ」
というか、女装コスじゃなくてもレイヤーさんのリアルばれは避けたいって人もいるし、と山田さんが言うと、それなーとさくらが相づちを打つ。
撮影をする上で必ず、お写真撮らせていただいてよろしいでしょうか? と確認をとるのは、写真NGな人たちもいるからだ。
写真は良くも悪くも拡散力抜群のツールである。下手をすると今回みたいに秘密がばれるというような力も持つものなのだ。
「知り合いだと、会社に隠してレイヤーやってる西王子はるかお姉様とかもいるしなぁ。うちら世代でも、親バレを避けたいっていう子もいるし。他人から見たらたいしたことがない秘密って思っても本人は絶対ばれちゃあかんやつ! って思うこともあるだろうし」
そう考えると志鶴さん本人が、絶対に明かせないって思い込んじゃってるのって、割と難しいんじゃない? とさくらが言った。
「秘密の内容より、持ってる事実のほうが大事、か」
やばい! それじゃあさっきまで秘密の中身を話し合ってたのあんまり意味なかったのかも! と佐々木さんがため息を漏らす。
「いや。話し合いをするってなったらたぶん、あたりを付けておくのは大切だと思う」
木戸君がいれば正解を吐かせることはできただろうけど、今日は欠席だものなぁと、苦笑が漏れる。まあ居たら居たで、本人から聞き出してくださいと、ぷいってされるような気がするのだから、困る。
正直、女装コスの話と親父殿が花嫁になる、以上にやばい秘密があるとしたら、さすがに想像がつかない。
「じゃ、とりあえず、私の件はここまでにして……」
じぃーっと、役者じみたようすで、視線をぐるりと周りに向ける。
「せっかくなので、お三方、お・は・な・し、も聞きたいなぁって」
どう? ここに居るのは、珍しく! 女だけなのだぜ、と斉藤さんがいうと。
「あははっ。私まだまだそんなのわかんないよー!」
「現状を伝えても良いけど、おもしろい話はないし、収穫っぽいのないですが?」
「そもそも、将来性のある男性との、おつきあいが-」
相談相手三人は、明後日の方を向いてそれぞれ言ったのだった。
そう。恋愛相談とは、安心を得たいがための集まりであり、結果不毛と化すもの。
転じてなのかはわからないが、
恋愛関係のカップルに手を出すと、馬に蹴られるのだそうだ。
あとはそう、当事者同士の話し合いが上手くいくことを願うばかりである。
さて。木戸君のいない女子会ってどんな感じやー! って思ったら意外にわいわい話をして終わったかんじとなりました。正解にたどり着いているかというと、そんなもん話をきいてもらた、わーいでおしまいでいいのです。
名前つながりですが、つるつるコンビって言ったら、斉藤さんに喧嘩は売らないようにね? って笑顔で怒られそうだったので、ヤメマシタ。まあ、結局後書きで言っているのだけどねー。
はい、次話でこの二人決着予定ですー。
そろそろ春が来て欲しい。いろんな意味で。