714.巫女さん達とお買い物1
おまたせしましたー!
R5.7.19加筆修正しました。冒頭部分に巫女さんたちの服装について入れましたよ!
電車に揺られながら、年下二人の子と一緒に町へと向かう。
片方は巫女さんで今日はパンツスタイルである。コートは女性もののそれなのだけど、さすがに今日みたいな日はちょっとボーイッシュに仕上げたいという思いでこうなったとのことだ。
まあ、とはいっても前に腐女子イベントに行った眼鏡を変えてる馨みたいな感じで、華奢で可愛いイメージが強い。
そしてもう一人。沢村くんはと言うと。
「しかしーまー、なんというか、沢っちも随分攻めたよねぇ」
学校の友達と会うのに、その恰好はなかなかにすごいよなぁとルイがいうと、うぅ、ここまではさすがに僕も恥ずかしいんですっ! と顔を赤らめていた。
背後に気を付けながら車内でも写真を撮る。
うんうん。ちょっとうつむき気味の顔が大変かわいらしいかと思います。
「えー、大丈夫だよ。クラブのみんなは知ってることだし、それに生足が出てるわけでもないし」
というか僕の方こそ普段女子制服姿で生足をさらすのに抵抗があります、と巫女さんが言った。
そう。巫女さんって町の要請もあって学校では女子制服なんだよね。
そうなると巫女服のそれと違って思いっきりふくらはぎとかが露出されるわけでありまして。
「巫女さんのミニスカ……うふふ。ダイジョウブ。アングルはそんなに下からにしないから」
ぜひとも見てみたいなぁというと、巫女さんは、お巡りさん犯人はこの人ですとか言い始めた。
いやー、若いテンションが楽しいものであります。
「生足……でも、タイツもわりとこう……足元が不安というか」
くぅ、じーちゃんなんでミニスカを選択してしまったのか、と沢村くんが愚痴る。
うん。今日のコーデは、スポンサーでもある沢村のじじいさんの意向がかなり入ったものになっているので、攻めたスタイルになっているのだ。
「まあまあ、ハーフコートとかじゃないだけマシなんじゃない? 個人的には可愛くて好きだけどね」
ハーフコート+ミニスカ+タイツというスタイルは、女の子感が倍増で大変に良いものかと存じます。ハイウエストに見えるし男女の骨格の違いを隠すには無敵のアイテムである。
「それはルイさんが、女性だから言えるんですっ。タイツっていっても膝のあたりとか結構気になるんですから」
「そこは厚手のタイツを信じるといいんじゃない? それとあたしなら可愛く撮ってあげられると思うよ?」
ほらー、一部で専門家って言われてるわけだし、そこは信じてもらうといいと思いますというと、プロのお墨付きか……と沢村くんはつぶやいた。
いや。別に男女の撮り分けを生業にしているわけではないんですけどねー。
「沢村くんはまったく問題ないと思うよ。僕も保証するから自信もっていこう」
「うぅ……めぐー」
頼りになるのはお前だけだー、と言わんばかりに彼はそう言ってしまったあとに、ちらりと周りを見渡した。
町の年寄衆に聞かれたら不信心だとか言われるので、公衆の場では巫女さん呼びにしている彼である。
「ま、今日一日たっぷり過ごせば、きっと自信もいや増すばかりかと思います」
ふふっ、それを信じさせるだけの写真を撮ってやるぜ! っといったところで、目的地の駅に電車が到着した。
「あけましておめでとうございますー!」
「おめでとー!」
「巫女ちゃん、相変わらずかわいー!」
さて。電車に少し揺られて巫女さんと沢村くんと一緒に待ち合わせの駅前広場に到着すると、巫女さんのところの学校の子たちはすでに到着していたようだった。
わいのわいのと冬休みに会えなかったメンバーとは挨拶を交わしているようで、端から見ていると女子会のようなノリにも見える。
そんな姿をとりあえず指でフォトフレームを作りつつ眺めていると、みなさんは困惑したようにルイを見つめているようだった。
なんだか場違いなのがついてきたな、というような感じである。
「もう一人、友達を連れてくって話をしたとおり、こちら今日は僕たちに同行予定のルイさんです」
ちょっと微妙な空気になったところで、巫女さんがみんなに紹介をしてくれる。
同行者がいることはすでにみんなには連絡済みで、許可はいただいている。でも、誰か、というところまでは教えてなかったようなのだ。
「うわわ……これはまた……」
「ええと、あのルイさんですか?」
あの、と言われて、んーと首をかしげつつ、とりあえずみなさんに名刺を配っておくことにする。
「どこのルイさんかはなんともですが、本日同行させてもらいます豆木ルイといいます。カメラマンです。巫女さんとは意気投合しちゃって、出かけるっていうからついてくることにしました」
突然押しかけちゃってごめんなさいねー、なんていっていると、みなさんがなんか夢心地のようなふわーっとした感じになってしまった。
これはなんというか、大人の魅力でも発揮してしまったというやつなのだろうか。
「あー、ルイさんが考えてるのとはちょっと違うかもしれませんよ」
いちおー、みんなルイさんのことは知ってるので、と言われて首をかしげる。
ルイさんの醜聞に関しては正直なところみんながみんな知ってて当然というわけではないし、そこまで自分が有名という風にも思っていない。
コスプレ業界やら銀香町という場所であればある程度知られているとは思っているけど、さすがに地方の中高生にまで知られているはずもないだろう。
ならば、なぜに知ってるのだろうか。
「ほら、うちの神社が聖地扱いになってるっていう話題が学校ででて、それでエレナさんのホームページはみんなで見たことがあって」
ああ、僕のゲームの話は内緒ですけど、と巫女さんがこそっと耳打ちしてくる。いちおう18禁なので紹介はごまかしているらしい。
「まさにサイトに載ってた写真の人だー! ってちょっと感動してました」
でも、ちょっとあの写真の方が若いですか? と女の子たちから質問が来る。
エレナさんのサイトには一応、専属のカメラマンですってことで紹介文なんかを載せているのである。
「なるほど! それで顔を知ってたって感じだったんだね」
あそこに載せてるあたしの写真、ちょうど高校生の頃のだから、そろそろ撮り直さないとかなぁと言うと、ああそれでとみなさんは納得したようだった。
ちなみに、佐伯写真館の方に載せている写真はこの前撮ったやつなので、最近のものである。
そちらで使っているものを流用してもいいし、だれかに一枚撮ってもらったやつを使ってもいいのかもしれない。
幸い、お願いできるカメラマンの知り合いはそれなりの人数だし、場合によってはじーちゃんに頼むのもありなのだ。
おっほー! ルイちゃんの写真撮るの楽しみじゃーとか喜んで撮ってくれるような気がする。
「まあ、たんなる同行者だと思ってくださいな! それで今日はどこに行くの?」
寒い中立ち話もなんなので、とりあえず歩きながら話そうと提案をする。
いちおう、ショッピングとお食事と聞いてはいるものの初めてくる町なので、土地勘はないルイさんである。
「そですよね! みんなっ! 最初の目的地のデパートに向かおっか!」
デパート、百貨店。少しその言い方に違和感を覚えたものの、ルイはみんなの前を歩く、巫女さん……いいえ、めぐみくんの姿を、ほぅと見つめていたのだった。
神社に居るときとは違う顔をいろいろ見せるのである。さらには巫女服でないのもとても新鮮。
んーーっ! こういうのほんと、いいと思う。
ひとえに環境の変化による感情の変化と、周りとの関係性の変化。新鮮な表情がいくらでも見えてくる。
ただ歩いているだけなのに、あちらの町にいたときの巫女さんとはまったく違うのである。
カシャカシャとシャター音が聞こえた。
あー、うん、歩行の邪魔はしていないよ? わーいって変なところに集中して、時間がかかったりしていないよ?
「ああ、今回はルイさんのカメラは無慈悲にみんなを襲うからね? 嫌だったら避けたりとかしてもいいけど。あの人のカメラは一度張り付いたら離れないと思ってください」
「もー、めぐみ君それ、あんまりじゃない? あたしだって撮るけど、残すかどうかは被写体の許可は取りますー!」
ぷんぷんとしていると、撮るのは撮るのか、とみんなから言われた。
そりゃそうである。
「っていうか、みんなだって、なんかすげーもんに出くわしたら、スマホのカメラでいろいろ撮らない? そこで相手の了承は取るの?」
「……それを言われると、なんとも言えないですが……」
「思わず撮っちゃうかもしれないですー」
うん。みんなの反応はルイの思いにもつながることである。
撮りたいと思う対象があるなら、シャッターを切る。人間とはそういうものだ。
「ん。だから、大切なのは事後承諾ってね。あとでみんなが駄目っていうのがあったら消すので」
あー、でもスマホだとクラウドに保管されてしまうのかぁ、そっちも消してもらわねばならないねぇ、とおどけて言うと、はいっ、と男子の一人が手を上げた。
「ルイさんが被写体として撮影されるときの金額を教えて欲しいです!」
「!? ちょっ、なんてことをいうのか」
巫女さんがちょっとかっこいい声を出して、彼をいさめた。
「あはは。モデル業は全然やってないから、被写体として撮影っていうのはどれくらいのお値段かわからないかなぁ」
知り合いに頼まれて振り袖とかのモデルはしたことあるけど、あのときは金一封って感じだったよというと、あーやっぱりモデル経験とかもあるんだ-、と女の子達が盛り上がっていた。いや、そんなに経験は……いや、あれか。女子高生的には読モとかでもすごいことって思うところはあるんだろうか。
「ちなみに撮影する側としての料金は、写真館のホームページに載っているので、ご依頼があるようなら是非に! といっても活動拠点が銀香町とか結構距離あるから、なかなかこっちにはこれなかったりするんだけどね」
出張撮影となると、ちょっと特別料金が発生するらしい、というと、あー、確かに都会の人って感じですもんねー、と言われてしまった。
住んでいるのはそんなに大都会というわけではないし、むしろ都会だと迷子になるルイさんである。
「あー、でもじゃあYOUはなにしにこんな田舎まで?」
「もう、そのフレーズ使いたいだけじゃないの?」
女装クラブの男子と女子がそれぞれ掛け合いをしている。
ふむふむ。なかなかに仲がよさそうな二人だ。
「実は巫女さんの町に、写真館のオーナーの兄弟子さんがいまして。年始は誰かしら挨拶にいく感じでねー」
しかも緋榊神社っていったら、縁もないわけでもないから、遊びに行ったらこうしてめぐみくんと仲良くなったわけですよ、というと、おぉーと周りから声が漏れた。
「緋榊くんを下の名前で……しかもくん付けで呼ぶとは……」
「珍しい知り合いができたんだねー、なかなかできないことじゃん」
「あはは。町だと巫女さんとか巫女さまって呼ばれるけど、せっかく離れてるんだから、そっちで呼んでもらうように僕からお願いしたんだよ」
「町のご老人に聞かれたら、そりゃもうめちゃくちゃ怒られそうだけどねぇ」
ほんとみんな信仰心が強くてねーというと、巫女さんがかわいがってもらってます、と照れ隠しにほおを掻いていた。
可愛いのでもちろん撮った。
「みんなは、めぐみ君のことをなんて呼んでるの? 沢っちは巫女様固定だよね?」
「そうですね。誰かに聞かれていたら、奥座敷で正座させられて、神社の歴史の音読が何回になるか」
あぁー、とため息を漏らしている沢村くんとはもう、こちらに来るまでの電車で自己紹介などは済ませているので沢っち呼びである。
彼はあの町の住民なので、どうしても巫女さんの呼び方は気を遣うのだ。
「えー、そんな他人行儀じゃ無くて、めぐ、めぐみとか言ってくれればいいのに」
お友達なのにー、と巫女さんがからかっている。
「ここは、ほらーぜひともめぐみんって呼んであげるといいんじゃないのー?」
ほらー、爆炎とかでちゃうよー? というと、みんなはほー? と軽く首を傾げていた。
どうやら、みなさんあんまりアニメとかマンガとかには興味が無いらしい。
それでいて、巫女さんの事は知って……いや、ただ「しきたり」と「異性装」っていうのが珍しくてみんな興味を持っただけか。
そういやエロゲの話はしてないってさっき言ってたっけね。
ちなみに、そんなかけあいをしていても、沢村くんはあわあわと手をわたわたさせているだけだ。まあいずれ下の名前で呼ぶくらいのお友達になるといいだろう。
「はいはーい! あたしは、巫女ちゃんって呼んでるよー! 女装クラブ臨時会員の紀人あやっていいますー! あー、そんでこっちは、彼氏の社めぐる君でっす! めぐくんは……めぐくんだったっけ? 同じ名前だーって!」
「めぐるとめぐみで、似ているし、社ってなんか神社の関わりもあるなーってんで興味があってね」
本日唯一の男の子である社くんが、ま、あやに引っ張られてクラブには入ったんだけど、と言った。
ふむ。確かにあやさん活発そうだしなぁ。
「そうなると、めぐくんだと、あだ名が被りそう?」
「そこは、俺、やっしーとか名字の方が呼ばれることが多いので……めぐみん、の襲名はこいつにおまかせかなぁ」
俺の図体でめぐみんはどうなのよ? と社氏にいわれて、ルイは、んーと少しだけ考える仕草をする。
「めぐるだから、めぐみん! ちょっと音が外れるけど、それだけ知り合いの強度が強まりそうな気はするかな」
あだ名って、距離感もあることだからね、というと、えー、いいのー? と社くんから返事が来た。
まあ、呼ばれてしっくりくる名前でいいんじゃないかな?
ルイさん的には、用途で呼ばれ方が変わるので、そういう意味合いで名前というのは関係性の表れでもあるのだ。
「んじゃー、最後はそちらのお二方! 自己紹介もかねてプリーズです」
というか、こういう強引な仕切りをするために、おねーさんが呼ばれたのですよー、というと、残りの二人の女子高生はええぇ、と困惑しているのでありました。
「んー、そこんところは二人には言ってなかったけど、ほら、人見知りな巫女ちゃんと一緒に町巡りをしませんかー? っておさそいしたじゃん? その通りだよ」
あやさんがこのお出掛けの企画者だったのか、そんなことを言った。
「年上の美人なおねーさんがくるとか、聞いてなかったので……」
うぅー、と二人から声が上がっている。
ちょっと内気というか人見知りする子達なのだろうか。
「っていうか、俺、一緒で大丈夫か? 確か男苦手とかなんとか」
「あー、この状態だと社くん一人男子って状態だし、女の子多ければ大丈夫っ」
うんっ、とその子は、ちょっと手を握りしめながらそう言った。
けなげな感じというかちょっと弱々しいのだけど、がんばろうって感じがして可愛かった。
ので、撮った。
「きゃっ」
「あの、ルイさん? ちょっとぶしつけなのではないですか?」
お? おや。先ほどまでぽやーとしていためぐみ君がすっとカメラの前に体を挟み込んでいた。
そしてカメラ越しにみても巫女さんがすっと男の子の顔をして、こちらに向かっていたのであった。
ああ。
今度は、めぐくんに向けてカメラを向ける事にした。
「これぞ、人身御供じゃー! はっはっはー!」
こんな風にごまかしの言葉も入れておけば、まぁ、ごまかされてもくれるだろう。
なんというか。
巫女さんの撮れ高が上がるのは良いけど、お好きな相手の写真を……
うん。うっかり撮ってあげようと思ったルイさんなのでした。
巫女さんが好きな子ってどういう子? というのがぜんっぜん浮かばなくて時間がかかってしまいました。
ちょっと奥手な子という感じの仕上がりです。仲良くなれるとよいですねー!