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713.巫女さん達とお買い物 準備

やっとールイさん復活ですよー!

やったー!

「ふぅ。なんか久しぶりにこっちの格好をしている気がするなぁ」

 祖母が使っている鏡台の前で、メイクを終えるとふぅと体の力を抜く。

 じいちゃんの家にきてからもう、一週間近く馨の姿だったので、それこそ一週間ぶりのルイさん降臨である。

 じいちゃんから、昨日の夜に明日はついにじゃなー! とキラキラした目を向けられたり。

 健や楓香からも、やっとかー! という反応を受けてみたり。

 まあ、あの二人に町中で会うときもルイであることの方が多いから、今日は馨兄なんだーみたいな反応になってしまうわけで。

 

 本日は一月四日。

 昨晩、木戸家の両親が仕事の関係で家に戻ることになったので、今までの封印もなくなり自由に女装できるようになったわけなのだった。いちおう内緒というわけではなく、そこは静香母様も納得済みのお話である。

 まあ馨としての生活も巫女さんと遊べたので、それはそれで楽しかったけどね。撮影もしたし。


「あらあら。やっぱりそっちの顔を見ると、お婆ちゃんほっこりしちゃうわー」

 一年ぶりに、いらっしゃいとばあちゃんが声をかけてくる。 

 鏡台を借りてるということからも、ここはばあちゃんの部屋でもあるのだ。

「どう? 去年と比べてなにか変わった感じある?」

「そうねぇ。ちょっと大人になった?」

 っていっても去年は、おじーさんが一人じめしてたから、私はあんまり喋れなかったけど、とばあちゃんが苦笑を浮べている。

 去年は確かに、いろいろ突発的に事件が起きたので、わたわたしたお正月だったように思う。

 今年はそれに比べれば、もともと予定通りというような感じである。

 巫女さんに出禁を言い渡されるのは想定外だったけれども!


「馨の方だと、高校生の方ですか? とか言われるけどこっちだったら歳相応に見えるよね?」

「うんうん。子供か大人かっていわれたら、十分大人に見えるわよ」

 高校生に見えるかっていうと、見えないかなぁーとばあちゃんが言ってくれた。

 うんうん。久しぶりに会う祖母にそう言ってもらえると、成長が実感できて嬉しいものだ。

「写真の方もちゃんと成長してるからね? だんだんお仕事も増やしてきてるし」

「そうかいそうか。あー、でもそうねぇ。本職の方での仕事経験が表情とかにも出てるんだろうねぇ」

 詳しいことは、おじいさんじゃないとわからないだろうけど、あの人も、ううむ、いいのういいのうと言っていたし、とばあちゃんは嬉しそうだ。

 じーちゃんとはわいわい写真の話はしているけど、さすがのじーちゃんも馨姿の前ではルイの写真を出してきておっほーと言い始めたりはしていないので、そういう反応をしてもらっていると知れて嬉しい限りだ。

 木戸としての写真の成長に関しては、すでにいろいろ教えてくれているけど、ルイとしての部分もきちんと育っていると評価してもらえるのは本当に嬉しいことである。


「でも、こちらからお願いしておいてなんだけど、ルイちゃんが町を歩くのは大丈夫なのかい?」

 正体は隠しているという話を思い出しているのか、ばーちゃんは少し心配そうな顔を浮べた。

「そこはほら、いろいろと言い訳用意してあるから大丈夫だよ。いちおうあたしは佐伯さんのところの門下生なわけだし。その兄弟子にあたるじーちゃんのところに挨拶に来て、そのまま泊まり込みでわいわいしてるっていうことにするつもりだから」

 じーちゃんと気が合うのはもちろんのこと、そもそもじーちゃんは大のルイちゃんファンを公言しているのである。そうなってくると佐伯さんのところからの縁があって、そのまま引き留められるというルートは違和感なく、むしろ必然とすら言えるくらいの話になるのだ。


「それ、太陽ちゃんも知ってる話なの?」

 あの子に迷惑かかるのは……とばーちゃんがいうので、ふるふると首を横に振っておいた。

「もう話は通してあるし。それに佐伯さんとしてもあたしの正体がばれる方が、会社に迷惑かかるっていう感じだね」

 雇うって話になったときに、いろいろ話をしたけど、ばれたら自己責任ね! って言われたからというと、太陽ちゃん……いっぱしの大人になってしまったのね……とばーちゃんは少しさみしそうにしていた。

 昔の佐伯さんはどんな感じだったんだろうか。

「従業員の生活もかかってるからって言ってたけど、まー、気を付けなさいっていう意味合いが強いんじゃないかな」

 やってるお仕事がお仕事なので……と、少しだけ苦笑を浮べる。

 他のお仕事は影響がそんなにないにしても、ゼフィ女の件は一般にばれるとかなりのリスクがあるものである。

 学院長先生は事情は知ってるっていっても、かばいきれるかといわれたら無理のように思う。

 触れあったことのある生徒本人達は、まーしゃーないかーとか言ってくれそうだけど、触れあったことのない保護者の方達からは思いっきり叩かれる事になるのだろう。

 信頼を勝ち取るにはやはり、対面を繰り返すことにあるというのは、本当の事のようである。


「明日は隣の市までいくっていうけど、そっちも大丈夫なのかい?」

「それはねー、巫女さんとは仲良しっていうか、実際お友達になったわけだし」

 いろいろと総代とかには言われそうだけど、そのときは言い負かしてやりますというと、ほどほどにね、とばあちゃんに言われた。

 むーん、そうはいっても総代と会うなんてことそんなにないと思うんだよね。

 神社だったらもしかしたらあるかもしれないけど、町中でばったりというのは考えにくいように思う。

 ちなみに、総代がちょっとこじらせてるのは、昔いろいろあったからだというのはばーちゃんの言である。


「それに、巫女さんと二人ってわけでもないしね。学校のお友達でお出かけするのに混ぜてもらうって感じだから」

 あくまでも撮影係としてのポジションですとカメラを見せびらかせながらいうと、あらあらとばーちゃんは楽しそうに笑った。昔じーちゃんも似たようなことをやっていたんだろうか。

 今回のショッピングのお誘いは、巫女さんがちょっと気になってる女の子と仲良くなれる雰囲気を作れるように、というのが本題である。

 参加するのは、巫女さんと沢村君。そして、女装クラブの関係から二人。

 そして、巫女さんがちょっと気になってるお相手のグループの人達数人という感じらしい。

 買い物に行くならもうちょっと少人数でもいいんじゃないか? とも思うのだけど、ダブルデートみたいな感じはむりぃーと巫女さんがあわあわしていた。可愛いので撮った。

 うん。青春というやつである。


 というか、買い物に一緒に異性と行くくらい、もっとこう、スマートにこなして欲しいと思うものだけど、こればっかりは恋愛中の子の場合は、あわわわ、あばばば、となってしまうものなのだそうだ。

 正直ルイの周りにいる人達は、わりとあっさり恋愛して、オッケーを出したりするようなタイプが多いので、恋愛で悩むというのをそんなに見たことはない。

 まあ、崎ちゃんと翅は、めちゃくちゃ悩んでるからさすがに可哀想と、従姉妹殿から聞いたことはあるのだけど。しかしこればっかりは二年も経てば落ち着くものではないだろうか?


「そういや、ばーちゃん。母様になにかこそこそ話をしてたのは、あれ、あたしのことだったり?」

 なんか、ほら、勘当話があったので、じつはちょっと疎遠な姑さんなのかなぁと思っていたのですが、とおどけていうと、あー、そっちだとそういう反応になるのねぇと、ばーちゃんは苦笑気味である。

「間違いではない、というかそのまんまかね。最初は、写真に関することを相談してきたんだけど、その後は……ね。うちの子が、ルイっていう、新生物におかされているー、とか言い始めて」

 まー、静香さんもお酒入ってたから、本音がわけわからずでてきたんだろうけどね、とばーちゃんは言った。

 ううむ。母様にはいろいろ迷惑はかけているけど、そこまで心配されてるとは。


「母親なりの心配だと思って受け止めておけばいいと思うよ。子供の事は心配だもの。それが自分の常識外のことをして、世間的にも常識外で、石を投げられるかもしれないってなったらなおさらね」

 まー、この町でそんな罰当たりなことをする人はいないけどねぇ、とばーちゃんは苦笑を浮べている。

 巫女さんフィーバーしているここで、ルイの正体がばれたとしたらむしろみなさん一丸となって守ってくれそうな勢いである。一人でダメなら二人で、二人でダメなら四人でってやつである。


「でも明日は隣の市だっていうから、そこはちょっと心配ではある……」

 巫女様に関しても普通に買い物とかならあれだけど、変な男に声をかけられないか、とかねとばーちゃんは少し心配そうに言った。さっきも大丈夫といったのだけど、心配はつきないらしい。

「そこは、大人としてあたしがちゃんと追っ払うよ。変な事すると撮るよ! ってね」

 カメラを向けたら大抵の人はそこでひるむから、とルイが言うと、はいはい、そうでしたね、とばーちゃんが苦笑を浮べる。


「まあ、ルイちゃんならいつかはなんとかなるのかしらね。自分がしっかりできてるっていうのを見せつけ続ければ、女親なんていうのはそれで安心するもんだから……ルイちゃんが男引っかけまくって、それで玉の輿! みたいになったら、静香さんはそのまま放心するだろうけど」

 でも、それはないんでしょう? といわれて思い切りこくこく頷いた。

 やりたいお仕事がちゃんとあって、そこに進むのである。魔性とか言われるけれども、別に悪い事は一切していないのである。

 というか! 世の中の男性諸君はわかっているだろうけど、可愛い子に目を向けてしまうのは男のサガというものではないだろうか。

 ま、ルイというか、木戸としても、可愛い子が居たらシャッターを押せという感じになるのだが。


「いくら、静香さんがルイちゃんの事を、まともにしようって動いても、それはルイちゃんの本意ではないんだろう?」

「んー、言いたいことはわかるけど、ここまで来たら、もうま・と・もに価値なんてあるんだろうか? なんて思います」

 今更普通の生き方を、っていうのが無理筋でしょー、というと、ばーちゃんは、そうだねぇと頷いた。


「静香さん的には、自分もまともじゃないって思ってるところあるから、それで子供にはーっていう思いもあるんじゃないのかね」

「あー、母様大人気で求愛されて、父様が略奪婚をしたーってやつでしょ。もはや昔の話って思えばいいのにねぇ」

 別に叔父さんももう気にして……気にはしてるけど! でも子供二人いるんだし吹っ切れてはいると思う。

「恋愛の熱量が切れちゃったあとは、いろいろ思うところもあるんじゃないのかね。ま、間違いとまでは思ってないだろうけど、でもなるべくなら穏便にっていう考えになるのは、あるんじゃないかね」

「ううむ。好きな事を仕事にしようと考える身としては、穏便とか普通とか言ってられないんですけどねぇ」

 みんなと同じやり方で成功できるか、といわれるとなにかしらの強みみたいなものは持っていないとなかなか上手くいかないものである。

 そして、今のところルイとしてのカメラマン活動は比較的順調に進んでいるところである。

 この強みはちゃんと扱っていかないとむしろもったいないように思う。


「ま、時間はかかるかもしれないね」

「そうですねぇ。ま、とりあえずは明日のおでかけで粗相がないようにがんばります」

 こういう積み重ねがいつか、母様にも届くといいなぁと思っていると、じーちゃんの声が外から聞えた。

 ルイちゃんはまだかのうー! という明るい声である。


「あらあら、あの人もう待ちきれなくなってるわ。もうちょっとおばーちゃんもお話していたいけど、行ってあげて?」

「ふふっ、じーちゃんずーっと楽しみにしてたからね」

 それじゃ、今度はお茶でも飲みながらおしゃべりしましょうとばあちゃんに伝えて、部屋を出ることにした。

 残されたばーちゃんは、そういうところは女の子っぽいのよね……とぽつりとつぶやいていた。

巫女さんとわいわいするのは次話からという感じになります。

いちおうおねーさんなので、ルイさんが後輩達を守ってあげないといけませんね!

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