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708.お正月の里帰り6

巫女さんとのだべりがじみーに長いなぁ。

前話の続きーって感じなので雰囲気は似てますー。

お茶うまー

「おせんべいとお茶はほんと最高の組み合わせだよねぇ」

 新しいお茶を入れてもらうと、お代わりのお茶菓子に手を伸ばす。

 先ほどは少し甘めのものではあったけど、今度は定番のおせんべいである。

 ちょっと渋い趣味とも言われてしまうかもしれないけど、昔からよく合うといわれているものだ。

 実際、固焼きされた上にじゅわっとあまじょっぱい醤油がしっかり塗られているおせんべいは、咀嚼するだけで幸せになれる味である。

 わいのわいのとお話をしてきたけれど、お代わりを巫女さんが持ってきてくれたのでとりあえずゆっくりお茶を味わっている最中なのだった。


「なんか、すごくまったりしちゃってるけど、いいんだろうか?」

「いいんじゃないですか? 僕はまだお仕事の時間までありますし」

 それとも、なにか用事でもあります? と聞かれてふるふると首を横に振っておく。

 お昼の時間まではまだあるし、もうちょっと話をしておきたい。

 高校のクラブの話はでたけれど、まだまだ学園生活とか好きな相手の話なんかも聞いておきたいこと満載なのである。


「それじゃー、そろそろ恋バナといきましょうか。好きな人の写真とかがあったら是非に!」

 さぁーほらほらー、というと、なんか木戸さんそれ、おばさんくさいですーと少し距離をとられて嫌がられてしまった。

「おばっ……」

 さすがにおばさん呼びされるのは慣れてないので、えー、と声を上げると、親戚のおばちゃんと似たようなことを言ってくるからー! と言われてしまった。 

 ああ、なるほど。巫女さん割と恋愛話聞かれるのは嫌な人なのかな。

 神社のこともあるし、はやく跡取りがーとか、そういう話で好きな人は? なんて話になるのかもしれない。

 ん? あれ? 女系が継ぐということなら、おばさんっていうのはお父さんの姉か妹ということなのだろうか。


「あー、親戚のおばちゃんがいうような、あんたいい年なんだから結婚しないのー? まだなのー? っていうのとは違うよ? 純粋な女子学生も大好物な恋バナなのでございます」

 ほんと、早くくっついちゃいなさいとか、そういう思いはまったくなくって純粋な興味です、というと、あーうー、と巫女さんは恥ずかしそうにうつむいて変な声を上げていた。


「そ、そういうことなら……話してもいいですけど」

「やったね! じゃあぜひとも写真とかあったらプリーズなのです」

 さぁと、両手を開いておよこし下さいとせがむと、彼はこそこそと私室のほうに荷物を取りに行ったようだった。

 目の前にスマホはあるので、もしかしたら現像した写真を持ってるということなのだろうか。


「……うぅ。これ……です」

「わわっ、スマホに入ってるわけじゃないんだ?」

 そしてさっと差し出してきたのは学生手帳なのであった。胸ポケットに入るくらいのそれには、巫女さんの学生証がつけられてある。

 あれ。苗字って神社の名前と同じなのか……

 そう。ついぞ名前は出してなかったけど、ここは緋榊神社という名前なのであります。

 音としては神主さんがもってるばさぁってやる、大幣の素材にも使われるサカキがもとになってるのかな。

 サカキの代用品として、ヒサカキが使われる地方もあるというけど、なにかしら魔を祓う的な意味合いもあるのだろう。


「緋榊さんっていうのか……そして名前がめぐみさん。おぉ、これはメグミンって呼んでおけばいいのかな!?」

「ちょっ、名前でからかうのはなしですよ!? っていうか、いまさらですか? ずっと巫女さん呼びだったのはそういう趣味なのだとばかり思っていたのに」

「プライベートなら、名前で呼びますよー? 巫女服着てたら巫女さんだけども」

 神社の名前は知ってたんだけど、宮司さん一家の苗字までは知りませんし、というと、くっ、これは町に一つしかない神社だからこその弊害というやつですかーと目を白黒させていた。

 というか、じーちゃん達もずっと巫女さま巫女さまって言ってたから、名前まで知らなかったんですよね。名前しらなくても個人が特定できてしまうんだもの。

「ちなみに、学校ではなんて呼ばれてるの? 巫女様呼びはさすがにちょっと周りから浮きそうだけど」

「あー、沢村くんからはめぐって呼ばれてます。町中でその呼び方してたらご老人にぼこぼこにされるとかで、こっちでは呼んでくれませんけど」

 この町にいる間は、巫女さん呼びが多いですねぇ、とめぐみくんははぁとため息を漏らした。

「あとは、うーん、今年になってからはあだ名もちょこちょこつけてもらえるようにはなりましたね。っていっても苗字もじりで「ひさっち」って呼ばれたりとかかなぁ」

「あー、それは割と呼びやすいかも。でも、うちのじーちゃんもなぁ……その呼び方は危険かもしれない……」

 うむむ、なんならめぐみんで決まりなのだが……というと、もう巫女さんで通してください、お願いしますと言われた。

 そういうことなら、巫女さん呼びで通そうではないか。

 さすがに彼の学校に撮影に行くっていうことはないだろうし。フラグ? いや、よっぽどいろんなことが重ならないとそのイベントは難しいんじゃないかなぁ。個人的に学園祭に遊びに行くーっていうのも楽しそうではあるけど、さすがにそこまではつながりができていないのだ。

 誘ってもらえないと、カメラマンはその敷地に入れないのである。学校なんて特に、部外者の侵入を禁止なんてところも多いのだし。


「ちなみに、木戸さんの生徒手帳とかはどうなんですか?」

「あー。うちはカード式だね。こんなやつ。出席とかはカードリーダーにかざす方式だね」

 顔の認証とかはしないから、代返はし放題でございます、というと、かなり緩いんですねーと言われた。

 確かに、講義の代返を頼んでいる人もいないではないし、そこらへんは割と緩いのだけど……木戸としてはどうしてお金を払っているのにさぼるのかというのが疑問でならなかった。

 最終的に単位が取れればそれでいいというのも、考え方ではあるのだろうけど。

 もったいないなぁという思いでいっぱいなのである。 


「まー、お金もらって教育を施して学位を販売するーってところだからね。教えないといけないっていうよりは、自分のお話聞きに来たお客さんたちに向けてしゃべってる感じかな」

 別に相手の質を向上させようっていう場所じゃないからね、というと、ふーんと言われてしまった。

 ここらへんの話は長谷川先生の受け売りである。大学生生活は自己責任だし告知はするけど卒業まで尻を叩くことはしませんということらしい。

 というか、巫女さんは大学とか行くんだろうか。

 ちょっと興味はあるところだ。

 仏教とかだとそういうところがあるっていうのはわかるけど、神職もあるものなのだろうか。


「それで、その……スマホじゃなくて手帳を取り出したということは……」

「えと……その、学生証の裏側にこっそりと」

 うわっ、人にいうの初めてで恥ずかしいと、思い切りうつむいてくれたので、そこは数枚激写をさせてもらった。

 うんうん。すごく恋してるというかー、ものすごく感情が表にでていていい感じである。

「初めてって、他の人には内緒なんだ?」

 え、沢村くんも? と驚いた声を上げると、は、はいと思い切り小さな声で答えてくれた。

 うう、なんか純情というか感情を持て余しているというか。

 青春してるなぁーって感じがとてもする。


「だっ、だから、他の子には内緒ですよ? ルイさんだから教えるんですからね?」

「はいはい、わかりましたよ。光栄でございます巫女様」

 秘密を打ち明けてもらえるなんて嬉しいです、といいつつ写真はよっ、と急かしておく。

 まあ、内緒な写真を出してくれるというのは、木戸さんが外の人間だからなのだろうと思うし、そこのところは特に深堀りをするつもりはない。

「それと、ルイさん呼びはなるべく控えてね?」

 そっちも内緒でございます、と指を口にあてて、しーっていうと、はいはい、わかっておりますと巫女さんは言った。

 そしてそのまま、プリント済みの写真を取り出してくれた。

 写真プリントをしたもので、折らないようにしっかりと手帳に隠れるくらいのサイズの真ん中に微妙にぼけてる彼女の姿が写っていた。


「……隠し撮りはダメだよ?」

「いちおう、クラス写真からなんですが……」

 隠し撮りじゃなくてちゃんと公式ですと言われて、ああ、なるほどと思った。

 木戸とて高校生時代に、歴代のイベント委員の写真を見たりもしているので、目線がまるでカメラに向いてないような写真というのもあるし、ちょっとぼけてるようなところもしかたないのかなと思う。

 個人的にはちょっともやっとしてしまうのだが。まあ、公式というならいいということにしたい。


「それにしても……写真だけ見ると、普通というか、特別巫女さんがラブラブ! ってなるかーっていうのはよくわからないかも? なにか面白エピソードがあったりするの?」

 ほれ、きっかけとかがあったら、白状するがいい! というと、言いぐさがひどいー! と巫女さんにぷんすこされてしまった。

 いや、うん。巫女さんが好きになる子っていうのが、いまいち想像できなかったので、普通だなぁって思っただけだったんだけども。

 巫女さんがこうだから、逆にボーイッシュな子とかはたまためちゃくちゃ美人さんとかっていう風に思っちゃってたのかもしれない。

 うーん、なるべくフラットにいようと思ってるけど、案外そういう男女観みたいなものを木戸も持ってしまっているのかもしれない。


「蓮見さんはすっごく美人さんだし、いい匂いもするし、なんていうか、もう! この子だ! って感じなんです。っていうか、木戸さん恋愛音痴なんだから、いろいろ言われたくないです!」

 いろんな人たぶらかすけど、誰とも付き合ってないっていう話、おじいさまから聞いてますよ!? と巫女さんに冷ややかな視線を向けられてしまった。あ、そういう表情もいいっ。数枚撮らせていただきました。

「蓮見さんっていうんだね。まぁ……うーん、俺の場合は一緒にいて楽しい友達どまりって感じなんだよね。いちおう付き合ってみるっていうことには興味がないわけではないんだけど、こー、撮影が一番だからそっちに関してはなんとも言えない的な」

 いわゆる、カップル的なことにそんなに興味がないのです、というと、それなのに僕の恋愛のことは気になるんですか? と巫女さんが首をかしげていた。

 たぶん、恋バナっていうのはお互いにこう、赤裸々な話をしながら甘酸っぱい思いを共有するようなものなのだろう。

 でも、残念ながら木戸さんは話を聞いてきゃーきゃーはするけど、自分でとなると、とたんに面倒になってしまうのだった。


「人の恋愛については、それなりに興味はあるんだよねぇ。その時の表情撮るのも好きだしね」

 あっ、こういうところはおばちゃんって呼ばれることなのか! というと、うわーと巫女さんはなんだか諦めたような顔を浮かべた。

 こいつになにを言っても無駄じゃないか、と思われたのだろうか。

 ううむ。

「ま、今のところはめぐさんのいろんな表情が撮れて満足です」

 うんうん。とりあえずそういうことにしておきましょう、とおせんべいをもう一枚いただくことにした。

 今度のは、昆布が上にのっていて海の香りである。

 

「えぇー。僕ばっかり話させられてちょっとそれは、不公平じゃないですか?」

「そうはいっても、俺の恋バナはかなり残念だしさ……」

 しかもオフレコなものが満載で、あんまり話せることはない。それこそ中学生のころの告白劇くらいなものじゃないだろうか。

 でもそんなの話しても面白いわけでもないし。

 青木のことは……んー、こっちもこっちでいま掘り起こしても、あんまり良い感じではないし。

 それだったら、ちーちゃんたち現役でラブラブしてらっしゃる方々の話をしたほうが、まだましなような気がする。


「それよりこれから進展とかのほうをいろいろと聞きたいところです」

 さぁさぁこれからどうやって仲良くなっていくつもりなのです? と聞くと、うぅーそれはーと、巫女さんは困ったような顔を浮かべる。

 なんというか、悩ましいお年頃というか、初々しい感じがとてもたまらない。

 もちろん数枚撮らせていただいた。


「……はぁ……そううまくいけば困らないですよー」

 ほんと何から手を付ければいいかもわからないと、

 しかも、誰にも相談はしたくないという条件付きである。

 なんというか、このままずーっと片思いして終わりそうなENDだ。

 そりゃめぐみくんなら四十路になっても巫女さん似合うのだろうけれども。

「んー、誰にも相談せずに心に秘める思いというのは、美しいかもしれないけど、それじゃあ実らないんじゃないの?」

 お前がいうなと言われそうだけれど、それはある意味真実なのだろうと思う。

 困ったことがあったら、友達に相談! とあるアニメでもそんな名台詞があるのだとクロキシが言ってた。

 クロやんは女装もするけど、コスプレは割といろいろやる子なので、キャラクターの幅は広いのである。


「じゃ、じゃあ、木戸さん……いえ、ルイさん! 秘密を教えた相手としてフォローしてくれないでしょうか?」

「えええっ、あっちに相談になるんだ……」

 いちばんそれ、相談しちゃいけないヤツじゃんとセルフ突っ込みをしながら、まじかーと木戸は固まった。しかもさっき思いっきり恋愛音痴と言っていたはずなんだけど……これが背水の陣というやつなのだろうか。溺れる者は藁をもつかむってやつだろうか。

「ええと、フォローっていうのは、LINEをつなげておいて、連絡を取り合おうとかそんな感じ?」

「それは、もちろんなんですけど! そうじゃなくて、お正月明け六日に学校の友達数人と遊びに行こうって話がでてまして……そこに参加とかして欲しいなって」

 背中を押す係! と巫女さんはじぃっと目をしっかり見つめながらお願いをしてきた。

 うう、清純かわいい感じがたまらない。

 さて。六日というと、じつはまだこちらに滞在している日である。

 あらかじめ店長には、年末年始は休みますよ! というのを一か月も前から言ってあるのでコンビニのお仕事は問題はない。

 大学はお正月はがっつりとお休みがある。

 ということで、今回の里帰りはなんと二週間程度を予定していたのである。


 父さんは仕事があるから、三日の夜に家に帰るけれど木戸自身は長居をすることになっている。

 というか、じーちゃんが、かわいい孫と一緒にいたいんじゃー! とか駄々をこねるものだから、こうなったのだ。

 そして母さんとじーちゃんとの協議のすえ……前半は馨として。後半はルイとして過ごすみたいな感じになってしまったのである。

 木戸家にルイさんがいるのはいいの? という話にもなったんだけど、そこは佐伯さんの恩人であるじーちゃんのところへ、泊まり込みであいさつに来ている体にするらしい。いささか強引な話だ。

 そしてルイでいるうちはじーちゃんのことは先生呼びである。木戸先生って試しに女声で呼んだら、じーちゃんでれでれしていました。


「いちおう、スケジュール的には地域の散策の予定だったから、大丈夫だと思うけど……そこは祖父と相談って感じかな」

「色よいお返事をお待ちしています」

 さぁ、大人の恋愛を教えてくださいね! と巫女さんは笑顔でいったのだが。

 そう。彼はまだ知らないのである。

 それがどういう波乱をおこしてしまうのかを。

くっ、あーあ、やっちまったぜ巫女さんという声が聞こえる……

さて。巫女さんについに名前がついたー! ということで、めぐみんです。

女性的な名前なのは、妊娠時の性別チェックの時に、あれこれがありましてね……という裏設定が!

あとは純粋に町にめぐみをーって意味合いでございます。


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