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ep.15_1 蠢

一話にまとまらなかったので分割です。

次話は早めに……早めに上げたいー。

 目の前に白い粉が舞っていた。

 それは周りに広がっていき、もわりと吸い込むと、こほりと咳が漏れる。

 思い切り粉を被っている翅も、思い切り粉を吸ってしまったようで、げほげほとむせているようだった。


 はぁ。これが人気男性アイドルだというのだから、外見をよく見せる力ってのは大切なものだなぁと思う。

 さて、俺の名前はHAOTOの(しゅん)

 どうして、こんなことになってしまったのか。それには少し時間を巻き戻す必要がある。


「なぁなぁ、蠢。今月なにがあるのか、おまえわかるか?」

「いきなり何を言い始めるんだよ。普通にイベントと地方周りと仕事たんまりだろうに」

 事務所でいきなり翅に思い切り後ろから腕を回され、そんな話を振られた。

 翅は昔からこういった、ふれあいスキンシップが大好きだ。

 彼の師匠がこんな姿を見たら、いい顔をしながら親指をびしぃっと上げて、三次もいいものなんじゃないかな? これはご褒美って猛るお姉さん多そうとか言い出しそうである。


「違うって。十一月といったら、ルイさんの誕生日がある月だっての」

「……おまえ、まだ諦めてないんだ?」

 うわー、とげんなり言ってやると、そりゃまあ、と翅は照れていた。

 HAOTOのメンバーの中で翅はお茶目な少年のようなキャラクターを出しているけれど、ここまで一途にルイさんを追いかけているというのは、なんともピュアなことである。


「だって、ルイさんどんどん綺麗になっていくし、性格も良い意味でぶっとんでるしさ。おまえだってずいぶん助けられた訳だし」

 プールの一件ではほんと惚れ直したわーと、翅は言った。

 たしかに、あのときは本当に助かったし、助け方はどうであれ、かっこいいとも思った。

 そして、翅はというとそんな馨の隣に居て、水着姿はんぱねぇとか言っていた。同意である。


「それなら誕生日くらい祝ってもいいじゃん?」

「去年は、誕生日関係なくプレゼント攻勢して、もう余計なもの送ってこないでって言われて撃沈してなかったか?」

「くっ……それは、確かにそうなんだが。でも俺がやれるアプローチなんてそんなにないっていうか」

 この前の円卓会議だって、ケーキの作り方を習う! っていう以外はろくな案がでなかったと彼は言った。

 というか、なんだ円卓会議って。


「被写体として、思う存分撮らせてやんよっ! とか言えばあいつは飛びつくと思うけどな」

「……うぐっ。その提案は魅力的だが。うちのマネさんから絶対止められるし、それに……なんつーか、それだけはやっちゃいかんと思うんだわ」

 そこらへん珠理ちゃんも同意見だと思うけど、その瞬間に被写体と撮影者の関係になっちまう、と翅は言った。

 なるほど。お友達で居ましょう以前に、ビジネスライクで居ましょうね、という感じだろうか。

 友達として、撮影される分にはよくても、被写体を撮らせるという関係性は嫌なのだろう。

 そういうところから始めないと、いつまでも今のままのような気もしてしまうのだが。


「それで? 誕生日はなにかやるつもりあんの?」

「それなんだけどなぁ……本当にどうしようかなぁ。お誕生会をしましょうね、ってサプライズはあいつ嫌がるだろうし」

「主催が同性なら、楽しく集まってわーいってやるだろうけどな。男か女かわからんけど」

「はっ、俺か珠理ちゃん以外が主催だったら、割と喜ぶの……か?」

 なんてこった……と、翅はがくりとこちらに体重をかけてきた。

 がっくりといった感じだ。正直重いからやめて欲しい。


「まあ、そうだなぁ。場所を選べば喜んではくれそうな気はするかな。スイーツの店とかで……気心が知れてるところか、逆に隠れ家的なところかなぁ」

 あいつ本人は騒がしいのに、周りが騒がしいのはあんまり好きじゃないんだよなぁ、というとそういうところはあるよなぁと翅は言った。

 馨の面白いところは、本人は面倒くさがりながらも、見て見ぬ振りができないところなんだろうと思う。

 だから、いつだって騒がしいやつなのだ。


「隠れ家的なところ……っていうか、どこかの店を貸し切りとか……」

「それ、思いっきりパパられるフラグだと思うけど」

「一般女性を連れて、飲み会か? ってか?」

 つーか、さすがにサシで誕生日会をって感じにはならんぞ、と翅は言った。

 いくらなんでも誕生日デートはまだ早い! と照れる感じだ。


「そうじゃなくて、気心しれたメンバーを集めて、わいわいご飯を囲む感じっていうかさ」

「それ、一般女性じゃなくて、ルイさんだってばれたら速攻でまた炎上だよ?」

「なら、馨のままで来てもらってもいいんじゃね? むしろ男だらけの、誕生日パーティーみたいな?」

「へぇ。翅は馨の方にも興味があるんだ?」

「つーか、同一人物なわけだし。んで、眼鏡が邪魔だな……とかやりたい!」

 どアップでルイさんの顔を見たいー! と翅は変なことをいいだした。

 きっと、いろんな想像が頭をよぎっているんだろう。

 しかし眼鏡が邪魔って、それを取り上げたら、馨は怒り出しそうなんだけどなぁ。

 きっと、翅が想像してるような展開にはならないような気がする。

 それにだ。


「それは、師匠に影響されすぎじゃないか? 男性同士のいきすぎた友情の影響を受けすぎというか」

「いきすぎっていうか、俺、馨だったらむしろそのまま、押し倒したい」

「……んで、翌朝、味噌汁作ってもらう展開ですか……」

 いや、あいつなら作ってしまうのだろうけれど、とその光景を想像して、表情筋がこわばった。

 翅ならきっと、馨のことをまるまる大好きなのだろうけど、どうしたって性別を行き来するその生き様は頭をバグらせてくる。というか蠢としては、片方だけを望んでいるわけだから、どっちもという発想は正直受け付けられないところもある。

 男らしさ、女らしさではなく、自分らしさがイインダヨ! なんていう言葉が世の中に溢れて漏れ出して氾濫しているけれど、変わりたいと思い続けた身としては、それに素直に頷けない。

 進む方向に壁を置かれた人間に、その壁が見えない人達がどこに向かっても君の自由だ! なんて言っても無責任でしかないじゃないか。


「もちろんエプロン装備でウィッグも付けてくれていたりするととてもどうにかなりそうではあるけど、そこにいたるにはもう少しこう、親密度アップが必要なわけでだな」

「夜、一緒に過ごしたら、きっと写真撮られまくるだろうけど、それはいいの?」

「あー、まあ、寝顔はほら、被写体っていうには無防備だろ? だからなんつーか、それはいいかなって思う」

 っていうか、暗闇でも映るカメラとかで動画を残しておきたいと翅は言い始めた。

 はぁ。ルイのことになると、このバカは変な風に思考が飛躍して困る。

 といっても、たとえばルイさんと朝チュンを体験したら! という妄想エッセイの類いは掲示板上なんかでそれなりにあるというのだから、なんか、みんなルイなら怒らないとか本能的に思ってるところはあるのだろうか。


 まあ、馨はルイの掲示板系は好き勝手やっていいよってスタンスだし、いろいろな妄想にしたって十八禁ものに関しては自浄作用が働いている。

 あいつは男だけではなく、女性にも人気はあるし、それこそなにかトラブルになったときに味方になってくれる人も多い。それこそHAOTOとルイさんの記者会見の時みたいに、外に押しかけるくらいはやってくれるファンが実際にいるのである。一個人に。

 はっきりいって、愛されすぎだろそれはと思ってしまう。


「でも、あんまり無茶なことすんなよな? 誕生日会をやりましょうっていうのはやっぱ無理だろ」

「えぇー。HAOTOスペシャルシークレットバースデーパーティーとか、どうよ?」

「ライブハウスとかでも貸し切るつもり? てか、馨相手にそのパーティーは……」

「一人じゃダメってんなら、友達とかも……ああ、でも女性はダメだよなぁ……」

 んー、性別の壁と周りの印象ってのは、あるよなぁと言うと、男女が集まったら色恋ってなるのはマジ勘弁して欲しいと翅に泣き言を言われた。


「でも、馨の男友達とか……一緒に呼べるようなのあんまりいないし」

「……俺、木村くんには連絡取れるけど、他はなぁ……師匠も女子枠だしなぁ」

 いまさら男装でいっても、逆にネタを提供するだけだよって可愛くいいそうだと翅はいった。


「師匠がらみだと春井くんは呼べるだろうけど、なんかこう……すげぇーこう、なんかコレジャナイ感が半端ない」

「あー、確かに話す内容とかはめちゃくちゃ困りそうだね。ルイさんを囲む会とかにするなら、ワンちゃんありそうだけど」

「なんか、誕生日会でうぇーい! ってやって楽しくなるのかが……想像ができないな」

 あー、もう、被写体になる以外であいつが楽しめそうなイベントがな……と、翅は椅子にもたれかかるように脱力をしていた。


「ま、初心に戻るしか無いんじゃ無いの? お菓子でつる作戦するって話じゃん?」

「そうなるかなぁ。それなら……オーブンレンジを買うところから始めないと」

 そういや、うち、普通の電子レンジしかなかった、と翅はにこやかにいった。

 あの。ケーキ作りを習っているのに、調理器具がないとか……

 まあ、レンジで作る系はあるけど、買わないとということはがっつりそういうものなのだろう。


「まったく。そういうことなら、うちのキッチン使うといいよ。無駄に家具だけはそろってるから」

 ほれ、セキュリティレベルが翅たちより高いから、というと、ありがてぇ! と翅は思い切り手をとって感謝を伝えてくる。

 実を言えば、いままでメンバーを家に呼んだことというのはない。

 話をするのは事務所で事足りるし、飲み会なんかは外で済ませることの方が多いからだ。

 昔は、あまり友達を家に誘うなんていうことを、したがらない、というか嫌だった自分がこんな風になるというのも、成長の一つなのだろうと思う。


「材料は買ってくるように」

「りょーかいだ。多めに買ってくよ」

 教わったはいいけど、失敗しそうだし、とへんにゃりした翅の顔を見て。

 あーあ、本当に自由人だよなぁと俺は思った。

というわけで、今回はちょっとBLみをだしたいぞということで、男二人でスキンシップをとっていただきました。

まー、ここまでくれば蠢も嫌がらないだろうなぁと。

次話は、おうちでお菓子を作ります。男子二人でな!

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― 新着の感想 ―
[一言] 馨くん相手は果たしてBLなのだろうかー。 家だけ馨くんになっちゃうと、面倒になってウィッグじゃなくて髪伸ばし始めたりして、ますます男度が減りそうですね。同窓会とかで久しぶりに馨くんで外にで…
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