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 学園祭二日目1

さぁ、今回はかおたんお留守なので、ナンバリングなしです。お待たせしました。

久しぶりに他者視点でお祭りを楽しもう! という感じで、学園祭いこうかと思います。


「ここが大学かぁ……」

 ほへー、とあたしこと、遠峰さくらはその大きな敷地と建物に驚いていた。

 今日は友達と一緒に学園祭にお邪魔をしましょうというのがコンセプトである。

 もちろんカメラも持参しているし、お祭りの写真はばんばん撮るつもりでいる。

 あの木戸くんが通っている学校ということで今日は思う存分お祭りを楽しむつもりだ。


「大きいでしょう?」

 そして今日の同行者はなぜか胸を張ってそんなことを言っていた。

 普段の服装よりはおとなしめな学生風の服装に身を包んでいる彼女は、確かに一見、理系の学生さんのようにも見えた。


「想像してたよりは大きいですかね。じゅ……」

「しっ、そちらの名前ではないっ。以後私のことは、サキと呼ぶよーに」

「うわぁ……」

 同行者が、思った以上にこじらせたキャラ設定になっていて、あたしはドン引きした。

 ちょっとねっとりした言葉遣いなのは、役に入りきってるからなのだろうか。


「ちょっ、あんたたちこういうキャラ好きでしょう?」

「うっ、なんか非オタが、オタク業界のうわべを見ただけで、こういう感じでしょって言われてる感じがしてつらい」

 しくしく、と泣き真似をすると、えっ、違うの? とそのお方は首を傾げて可愛らしくそう言った。

 ちくしょう。可愛くて一枚撮った。今日は、一緒に行動する報酬として、一日フリー撮影権というものをいただいているのだ。

 あの、崎山珠理奈を独り占めして、フリーで撮影をすることなんて、どこかの木戸くんくらいしかできないことを自分に任されているのは、大変にありがたいことなのだった。


 さすがに一般の学園祭にゲストでもないのに彼女が参加するのは、トラブルの原因になってしまうところなのだけど、それも踏まえて本日は変装をしての参加となっている。

 先ほども言ったとおり、服装は理系の学生のような感じで、華やかさはあんまりなく、さらに極めつきなのがこの。

「でも、眼鏡をくいっとあげるのとか、好きでしょう?」

「イケメンのそれは好きですがっ。寄りにも寄って黒縁眼鏡はどうなのかと」

 そう。彼女が付けているのはモサ眼鏡として知人たちの中では共通認識がある、黒縁の眼鏡さんなのだった。

 いわゆるオシャレ眼鏡という感じがあまりしない存在感を放っている存在だ。


「馨のあの素顔があっさり隠せるんなら、この黒縁眼鏡の威力たるや、恐ろしいものがあると思うのよ」

「あー、確かに。性別が違うってことでかなりフィルターがかかるにしても、あれの守備力は高いかも」

 まさか、放課後あんな姿で街をさまよってるとは私も思いませんでした、と言うと、でしょー! とサキさまは満足そうだった。


「ちなみに、サキだと、咲宮の家の方々と被るけど、大丈夫なので?」

「あー、あちらは沙紀矢くんって呼ばれてるから大丈夫でしょ」

 混乱したりはしないって、とサキさんは胸を張った。

 そこまで大ぶりではないけど、さすがは女優だけあって背筋が伸びていて美しく見えるのはすばらしい。また一枚撮らせてもらった。


「しっかし、まさかサキさんから連絡がくるとは思ってなかったですよ。学園祭に遊びにいこう、だなんて」

 ま、私もそんなに忙しくないのでいくらでも都合を合わせられますけど、といいつつ、反応を伺う。

 この学校にわざわざ遊びに来ているのは当然、木戸くんが居るからに違いない。

 そうじゃなければここに来る理由なんてないのだ。まあ、男子の格好をしてるかどうかは謎だけど。


「去年はゲストとして招かれたんだけど、今年はぷらっと寄ってみようかなって思って」

「実は撮影の合間というやつで?」

「そうね。別にわざわざスケジュール調整をしたわけじゃないの」

 ちょうどスケジュールの空きがあったから、誘っただけとさらっというものの、その頬は少し赤らんでいるようにも見える。恥ずかしそうな顔とかレアなので、もちろんいただいた。


「うう、確かに一日撮影していいって言ったけど、撮りすぎじゃない?」

「それは、サキさんがいい顔をするからいけないんです」

 あいつなら、絶対さっきまでの顔も写真撮ってるはずですから、というと、ぐぬぬと悔しそうな声があがった。

 だって、こんなにコロコロ表情を変えるこの人なんて、多分滅多に撮れないはずのものなのだ。

 プライベートにしてもずいぶんと表情豊かな感じなのである。


「それで、今日はいきなり、えっと、特撮研? にいかなくていいんです?」

「寄るとしても最後ね。騒ぎになってもいけないし。それに今日はじっくりと学校というものを散策したいし」

「サキさんも大学入らなかったんでしたっけ?」

「まあね。もちろん芸能人で活動をしながら大学に行く人もいるけど、いつ入ってもいい場所だし、今のところは撮影とお芝居に集中したいから」

 そのまま高校生からするっと入らなくてもと、サキさんは言う。

 まったくの同意見なので頷くことにする。


「でも、ちょっとこういうところくると、キャンパスライフってのも楽しそうだなーなんて思ったり」

「そうね。ちょっと別世界みたいな感じはあるし」

 だから今日はお祭りにかこつけて、学校を回りましょうとサキさんは言った。

 あたしは石倉さんについて、お仕事をしているから大学は別にいいやと思っていたけれども、実際に来てみると興味を引かれることはいくつもある。

 建物の数にも圧倒されるし、その中でどんな講義がされてるんだろうか、というのも気になった。

 

 とはいえ。やっぱりあたしはカメラを持ってるのが性に合っている。というか、木戸くんはカメラ持たずに講義を受けられるなんて、信じられないのだけど、大丈夫なのだろうか。もともと学業はちゃんとやる人ではあったけれど。まあ、成績さがったら女装禁止になるっていってたからだろうけど。


「あいつと一緒の学園生活などというのはご所望で?」

「ぐっ。したくないといったら嘘になるわね。でも、それはそれよ」

 やろうと思えばできるけど、一緒にいただけじゃ、きっとあいつにとってはただの友人止まりでおわってしまう、と思い切り肩を落としていた。

 どうすれば攻略できるだろうか、というような感じである。


「にしても、サキさんも未練たらたらなのが、なんというか……」

 こっぴどく振られたって聞いてましたけど? というと、女優様は、くわっとただでさえ大きい目を見開いて、言った。

「答えを迫ったら、めちゃくちゃ困った顔してこっちを見てきたから、いったんお付き合いをやめただけよ。諦めたとは言ってないし、振られてもいない」

「今はまだ、ってやつですか?」

「そうよ。だって馨ったら写真にばかり夢中なおこちゃまじゃないの。だからもっと親密になりながら、時期をまとうと思って」

 焦るのはもうやめたの、と彼女はいうものの、それでもまだまだ木戸くんを狙ってますというアピールはしているみたいだった。


「これは一般論なのですが、女性の方が恋愛は引きずらないで次に行くらしいですよ。本能的な問題で」

「あら。じゃあ、あたしは女性的な本能してないってことかしらね」

 そんなこというなら、さくらはどうなのよ? と問いかけられて、うぐっと表情をこわばらせた。

 いや、まぁ……うん。


「確かに石倉さんはガード堅いし、一緒にいさせてくれるだけって感じではありますけれども……」

 恋愛っぽいことはそういや、一切ないなぁというと、あー、とサキさんは同情混じりの声を上げた。

「石倉さんって、あの石倉さんよね。女性モデル撮ってるのにほぼ無感情で、男性モデル撮るときは大喜びの人」

「サキさんは以前、撮影で一緒になったことがあったんでしたっけ?」

「そうよ。このあたしを前にしても、あーとか、はぁーとか言いながら撮影してたわ」

 どんだけ男の写真撮るの好きなのよと、サキさんも呆れ気味である。

 でも、それこそがあの人の持ち味なのだから仕方が無い。


「さくらはどうしてあの人なの? 他にもいくらでもいい人いるじゃないの」

 馨はダメだけどと、サキさんが釘を刺してくる。別に木戸くんは女友達だと思っているので、あんまりそういう気にはならないのだけど。

「恋仲というよりは、同盟ですからね、うちらは。天才にあらがうために結託しているんです」

 佐伯さんのところは天才肌ばっかりなんですよ、ほんとと肩をすくめると、あぁ、あの佐伯さんかぁとサキさんからも返事が来た。

 以前、写真集の撮影で一緒になったことがあったらしい。


「なので、他の人ってのは考えられないんですよ。そういうサキさんこそ、どうしてあいつなんです? 他に言い寄ってくる男は多いでしょう?」

 特に、一緒に撮影とかしてると、と言うと、あー、うー、と彼女は困ったような声を漏らした。


「前から共演者から、ご飯に行こうって誘われることはあったけど、最近は女性の役者さんからも一対一で飲みに行きましょうっていうお誘いが……」

「あー、それ、思いっきりルイとのやらかしが元ですね。大人気だっ」

 サシでの飲み会は注意ですね、とにこやかに言うと、あああーとサキさんは頭を抱えた。

 

「魅力ある女性は大変ですねぇ。そんなに多いのならお眼鏡にかなう人はいるのでは?」

 ほら、女は切り替えて恋愛をするものですよ? とからかうと、むぅーとほっぺたをぷっくり膨らませたサキさんは何か言いたげな顔をした。うし、レア顔ゲットだ。


「いませーん。っていうか、あたしを特別視する人はまず除外だもの。言い寄ってくる時点でアウトでしょ」

「これまた、特殊な感性をお持ちで」

「仕方ないでしょ。恋に恋するお年頃に仕事してたし、そりゃ演技が上手い先輩達に憧れることはあるけど、それが恋愛感情かっていわれたら違うんだろうし」

 だから、あいつだけが今のところ特別なの、と少し恥ずかしそうに彼女は言った。


「それに、別にがっついて恋愛したいってわけでもないしね。身を固める歳ってわけでもないし」

 今はお仕事の方に集中したいのです、と言う彼女の姿は特別力がほどよく抜けてるようだった。

 前に会ったときは、木戸くんのストーカーにでもなりそうな勢いだったのに、ずいぶんとすっきりしたものだ。

 

「だから、今日は馨に会うためじゃなくて、学園祭を楽しみましょうってことで」

 一緒にいろいろ見て回ってくれると嬉しいわ、と彼女はいつもの女優スマイルを見せてくれた。

 そうなら、しっかりとあたしも楽しまねばとカメラにきゅっと力を込める。新しい景色がこの先にあるのなら、撮らないわけにはいかないのだ。

さくらさんはこの前も登場してるのでお久しぶりではないのですが、崎ちゃんはなんか久しぶりだなー! って感じですね。

過去どんな感じだったっけ、というのを読み返していて時間かかりました。うぅ。

女子二人で大学の中をわいわいやろーというのが今回のストーリーでございます。数話くらいやる予定!

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― 新着の感想 ―
[一言] 馨君も割と遠慮がちで崎山さんを撮影してることはそんなにない気はしますね。 この二人がそろって馨君を尋ねに行くのって何も知らない特撮研の人たちからするとすごく怪しそう・・・! 確かに違和感を…
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