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674.さくらさんと田舎周り3

「良いお手前で」

「気に入っていただけて何よりです」

 もくもくと、バスケットの中から取りだしたサンドイッチをほおばると、さくらは目をかっと見開いたあとにふにゃふにゃしながら、はわぁと吐息を漏らした。

 

 ころころ変わる顔を撮影しようと思っていたけれど、ルイの方も手が塞がっている状態なのでこればかりは仕方ない。


「にしても、お手製サンドイッチかぁ。なんか久しぶりね」

「お弁当って感じにしても良かったけど、この陽気ならお店の中よりも外でいいかなって思ったからね」

 それにさすがに持ち込みOKとは言ってもなにか頼まないと申し訳ないしなぁ、と以前使ったお店の事を思い浮かべる。

 学食なんかでは普通にお弁当の持ち込みはOKだけど、外のお店でそれを許してるところはそんなにないと思う。

 とはいっても、ルイたちが特別見逃してもらってるだけかもしれないけれども。

 数人で来ていて、一人だけお弁当という人が世の中ほとんどいないだろうしね。


「温かいお茶もあるよー?」

「いただきます。って、さすがに飲み物くらい自分で用意してきてるけど」

 ありがたいと、それでもさくらはコップを受け取る。

 温かいお茶は、桃のフレーバーのついたピーチティーだった。


「にしても、パンに具を挟むだけなのに、どうしてこうも綺麗に作ってくるかね、この子は」

「そこらへんは、具の量とか並べ方とか? 切り方とかも考えてるからねぇ」

 日々進化しているのです! と胸をはると、じぃとさくらの視線が胸のあたりに向かった。

 はるほどの胸なんてないでしょ? とでもいいたげである。


「でも、あんたのカメラやっぱり良いわよね」

「ん? さくらさんは新しいカメラ買う予定が?」

 ふむ、と問いかけると、んーと、複雑そうな表情である。

「欲しいといえば欲しいんだけど、今のところはこの子で十分ではあるかな。入れるとしたら新しいレンズが欲しいです」

 純粋に道具が変われば、銀杏の撮影も変わるだろう。

 そこらへんは、できればバージョンアップしていきたいものだ。


「なら、節約しながらお金貯めないとだね」

「そうねぇ。ま、あんたと同じく、がっつり働きます」

 うん。とさくらは言いながら、ハムチーズサンドを手に取って、かぶりついた。

 

「いつかは超望遠とかも必要になるかもしれないしね。さっき撮ってきた大銀杏さまとかはいくらでも接近できるし、物静かな方だから今の装備でも良いけど、レース系とかスポーツ系はでっかくて長いやつが必要だよね」

 テレビ中継とか見てる限りだと、みんなばばんと豪華装備! と言うと、あー、そうねぇとさくらも頷いた。

 こくんとサンドイッチを飲み込んでお茶をすする。


「佐伯さんのところは、対人のお仕事の方が多いイメージだけど、そういうのもやりたかったリするんだ?」

「機会と機材があれば、って感じかな。前にほら、体育祭の時に写真係やったときに、レース関連の写真撮るのもおもしろいなぁって思ったしね」

「あー、あんたが文化系の部活ごぼう抜きしたあれね。しかも、他の写真係が苦戦する中、コンデジでブレない写真撮ってたっけね」

「どうすれば、撮れるんだろう? って考えるのは好きだからね。もちろん対人の時は人の心をどうやって開くかっていうのを考えるわけで、そういうのも楽しいけど」

 上手く撮れた時はさらに嬉しいけど、過程も大事ですといいながらルイも、ライ麦パンで作られたBLTサンドに手を付ける。

 サイズとしてはどれもふた口くらいで食べ終えてしまえる小さめなものである。

 

「さくらだって銀杏撮るときに、なにも考えずにってことはないでしょ? さっきだっていろいろやってたようだし」

「あー、うん。散々撮ってきたって思うけど、場所とか角度とか、光の当たり具合とか、あとは背景との兼ね合いとかで、印象違ってくるしね。先輩方のマネをして一杯撮ってる感じで」

 そういう意味では、大銀杏様はいろんな顔があるから撮りがいがある被写体よね、とさくらはにっこにこである。

 それはルイも思うことなのでうんうんごもっともと頷いておく。


「高校の頃から撮ってて、まだまだ新しい顔がでてくるんだから、たいがいだよね」

「それこそ、同じ状態にはならないって感じなんじゃないの?」

 いくらでも新しい顔を見せてくれそう、と、先ほどの撮影を思い出しながら、二人でにまにましながらサンドイッチをどんどん平らげていく。

 ポテトサラダ入りとか、中にはカツサンドもあったりする。


「そだ。高校の話でちょっと思い出したんだけど。さくらはさ、その、弟くんは最近どうなの?」

「う……なかなか痛いところをついてくるわね」

 食後のお茶を注いであげながら、そう尋ねると、さくらは急に嫌そうな顔を浮かべた。

 さくらの弟さんは、三つ年下だから今年高校三年だ。

 中学校の卒業式の時に初めて会った彼は、礼儀正しいいい子だった。

 そして、その後、同じ学校にいる、女装娘の瑞季ちゃんとそれなりに仲良くしているのである。

 もちろん、先輩後輩としてって感じだし、本人が女装にどっぷりはまっているわけではないし、恋人関係というわけでもないのだけど。瑞季ちゃんには孝史くんがいるしね。

 

「い、いちおううちの弟はおかしなことやってないわよ。瑞季ちゃんともそれなりに仲良くやってるみたいだしね。孝史くんからはちょっと睨まれてるみたいだけど」

「あの二人、仲良しだもんね。一緒に高校の文化祭来ちゃうくらいには」

 そして、同じ学校に入って楽しい高校生活である。相当の仲といってもいいんじゃないだろうか。

 ちなみに、ルイには中学からの知り合いはほとんどいない。

 特に、素顔の事を知っている人というのは、本当に数えるほどだ。

 まあ、高校で友達いっぱいできたから、特別思うことはないけれども。


「でも、その反応を見るになにかしらの問題はあるんでしょ?」

「……はい。甲斐甲斐しくうちの弟が、瑞季ちゃんにかまうものだから、きっと二人はっ! えっ、薔薇っ!? みたいな反応を周りからいただいております」

「……BL疑惑は、つらいよねぇ……相変わらず、漫研あたりが主導で衆道について語っているんだろうか」

 うっ、トラウマが……というと、そんなことも有ったわね、とさくらはにまにま昔を思い出していた。

 あの青木(あほ)が、とっても残念な思考の上で展開したBL大作戦は、木戸に大変ダメージを与えてくれた大作戦である。

 なんというか、青木×ルイで噂になるのならば許容範囲内なのだけど、青木×木戸で噂になるのはどうにも、居心地が悪かったのである。

 別にBLを批判したいわけではないけど、青木は男が好きってわけじゃないだろっていう思いと、ルイが告白されたあとの暴走だったからだろうという推測からなんだけど。

 

 本当。馬鹿すぎてorzってなりそうな感じである。

 がっくりと膝から崩れ落ちるというやつだ。


「さすがに弟氏が悩んでいたら助けてやってよね」

「あー、ま、あいつの場合は、ほんと親切心っていうか、素直に瑞季ちゃんみたいな子を応援したいだけみたいよ」

 澪のこともあるし、あの学校の上の学年の子は、男が可愛い格好とか綺麗な格好することに対して、かなりキャパシティが大きいしね。伝説のかおたんの事もあるし。

「それにほら、人と人って恋愛感情だけでそばにいるわけじゃないでしょ? あんたはそれこそ親愛とか友情とか尊敬とか、恋愛以外の感情で他の人と付き合っていくじゃない」

「それを言われるとその通りなんだけど……でも、あたしだって恋愛感情が、まったくないってわけではないんだよ? ただそれ以前に、良い被写体だなーって思っちゃうのと、普通のデートはちょっとなって思ってるだけで」

 実際、青木に告白されたときはかなり、動揺したし、というと、ほう? とさくらは興味深そうにこちらの顔をのぞき込んでくる。

 初耳ですが? というような感じだろうか。

 確かに、あのとき相談に行ったのは、斉藤さんと澪だったから、さくらには後日にちょこっと話しただけなんだよね。

 告白されたけど、振ったよーくらいのさらっとした話で、さくらも、あーまー、そうよねーみたいな感じで流してそこから撮影に入ったのである。


「斉藤さんと澪に意見を求めたら、具体的にお付き合いしてデートするってなったら、カメラ握れないスポットも多いのではなんて言われて、あーなら、無理だ! となりました」

「お断りの理由が、結構ひどいわ。あ、でも、珠理さんのこともそういうことなのか」

「まー、そういうことかな。一緒に撮影してわーいって楽しんだりはできるけど、それって恋愛なんですか? って感じでね」

 それでもいいって言うなら、それはそれでいいんだけど、そこのところが大丈夫な人っていうのがいるのかどうか、といいつつ、じーっとさくらの顔を見る。

 崎ちゃんはかなり我慢してくれてはいたけど、最終的には自分の事を見ろ! こっちを見ろーー! な感じな子だと思う。

 ええ、思う存分見ますよ、レンズ越しで! って答えたら、ボコボコにされそうな感じで。


「そういえばさくらだって、石倉さんに彼女扱いされてないよね? そこらへんは気にならないの?」

「ばっ、ちょっ、いきなり何を言い出すのよ」

 話をさくらに振ると、彼女は盛大にわたわたし始めた。

 彼女自身は、石倉さんの事を好きだと思っているのだろう。そういうのは伝わってくる。


「そこは、ほら。価値観の合う同志って感じだから。そりゃせっかく一緒に居るんだから恋人っぽいことしようよって思うけど、今は一番親しい師匠って扱いでいいの」

 愛情はなくても、愛着さえ沸いてくれれば、それでいいとさくらはいいつつ、それでも、あーと言いながら言葉を続けた。


「別の男に浮気するとか、そっちが本命ってなったらさすがに泣くけれど」

 そうして無残にも捨てられるんだわっ! とさくらはがくっと肩を落とした。

 いつでも振られる可能性を考えながら、生活しているらしい。


「うーん、なんと言って良いのやら……うん。さくらは頑張ってるよ? うん」

 久しぶりに友人ががっくりきているのを見て、ルイは珍しくフォローに入った。

 上手くいくようにセッティングしたり、振り回したりはしてきたけれど、付き合ってる人へのアドバイスなんていう高度なことはでいないルイさんである。


「ま、あんたにそこらへんで、気の利いたことが言えるならきっと、あいつらももんもんとしないのよね」

 まー、人は人だから、知ったこっちゃないけど、とさくらは最後のサンドイッチを口に入れると、んー、と嬉しそうな声を上げた。

 気分が落ち込んだら、美味しいご飯を食べる。大切なことである。


「では、ごちそうさまでした。んで? 午後は神社の方でいいのよね?」

「その予定でございますよ。さくらはあそこ、そんなに行ってないんだっけ?」

「まー、どちらかというと、銀香町では銀杏とか、森とか、町並みの方が中心かな。野良猫の撮影なんかもやるけど」

「野良猫っ! くっ、あたしが近寄ると猫さんたち結構動いちゃう……」

 逃げるんじゃなくて、動くだからねっ! というと、さくらは、あーそんなに上手くなかったよねぇと、ちょっと得意げな顔を浮べた。


「きっと美人オーラが小動物を怯えさせるんじゃないの?」

「そこがねー、わかんないんだよね。香水とかが悪いのかなぁ。男の格好のときは時々なでさせてもらってるんだけど」

「ほー。あっちだと大丈夫なのか。これはうかうかしていられない」

 頑張らねば、となぜかさくらはぐっと拳を握った。


「ま、移動中にいるようなら、是非撮らせていただく方向で」

「そうね。猫は被写体として大人気だしね」

 町の散策しながら、もしいたら撮らせてもらおうと、さくらは元気にそう言ったのだった。

 ピクニックにはサンドイッチ! ということでお食事しながらお話をしました。

 最近、なかなかこういうことできないから、せめて! せめて物語の中では楽しくわいわいやりたいのです。


 ちなみに、サンドイッチを綺麗につくるコツは、切る断面のことを考えて作ることだそうですよ。そこにソース類がつかないようにするといいとか。下にはひらべったいものを置いて、一番上がレタスなどの立体物だそうです。


 猫と香水は、あんまり良くないみたいですね。ルイさん動物撮影そこまで得意じゃないのはなんでだろうってことで、それを出してみました。撮影と香水とどっちを取るのだろうか! 答)猫も気に入る香水を使う。きっとこれだっ!


さて、次は神社行って、町回り終了な感じ。でも何を語るかはノープランでござる。

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― 新着の感想 ―
[一言] 崎ちゃんには悪いけど、コンビで見るなら狂乱錯乱コンビが一番好きだなぁ
[一言] 料理の見た目がきれいなの、男の娘!って感じですね。 自分は味さえよければ見た目はいっかみたいな感じなので、もう魂がちゃうねん・・・。 まあ本人がかわいらしい見た目なのに、出てきたのは男料理!…
[一言] お猫様が気に入る匂い・・・またたび? 餌付けというのはちょっとダメだろうし。
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