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672.さくらさんと田舎周り1

学校でしのさんファンクラブができて、しかも学園祭までその影響を受けるという事実に愕然としたルイさんは、現実逃避のために撮影にでましたよ! という感じで。

学園祭の話はまた後日!

「そんな感じで、ファンクラブができてたという怖い話があってね」

 本人の前で非公式とか言っちゃうのはちょっと、どうなのさ! とルイがぷんすこしていると、カシャリとカメラのシャッター音が鳴った。


 本日は、憂さ晴らしもかねて、撮影にでも行きませんかと、さくらに泣きついて久しぶりに銀香町で撮影会だ。

 どうしてそこでさくらなのかと言えば、まぁ……部外者だというのと、久しぶりに交流を持とうと思ったからである。

 ここのところ、あまりさくらと一緒に撮影というのはなかったし、春先の石倉さんのところの旅行に混ぜてもらった時は木戸としてだった。なので、久しぶりに狂乱と錯乱のコンビで撮影に出たかったのである。


「相変わらず、女装の方は大人気ですねぇ、ルイ先生?」

 ほら、こんなにお美しいのだからファンができるのもしょうがないのでは? とさくらは先ほど撮った写真を見せびらかせながら言った。

 う。小さな画面に映し出されたそれは、確かに普通に年頃の女性に見えるし、ちょっとしょんぼりしてるところも、魅力的に映るかもしれない。


「別に人気になりたいわけじゃないんだけどね……むしろ写真の方を評価して欲しい」

「石倉さんは評価してくれてると思うけど?」

 ああ、あいな先輩も、とさくらが言うもののルイとしては、ん? という顔になる。


「石倉さんはどうなんだろ。というかあの人の場合はあたしには手厳しいからなぁ。かといって馨の方は写真家同士っていうよりは、後輩を生暖かい目で見守ってる感がひどいというか」

 助かるには助かるけど、まだまだ認めてもらってる訳じゃないんだよね、というと、さくらは、贅沢なやつめと恨めしそうな視線を向けた。

 ちなみに、ルイ、イコール木戸というのがばれているという話は、さくらは内緒にすることにしている。

 ばれたら、きっとこの美人は、石倉さんへのガードが緩くなって誘惑を始めるに違いない。しかも無意識なのだから本当にひどい。


「そういうさくらは、石倉さんに認められたりはしてるの?」

「う。まだまだ先は長そうです……」

 というか、あくまでもアシスタントというような感じで、お仕事はもらえませんとさくらが言う。

 そういう意味では、お仕事の依頼を受けているルイの方が、一歩前進という感じはあるのだろうか。

 

「でも、動物の撮影はだいぶ上手くなったよ。空き時間に動物園に行ったりとかね」

 やっぱり、動物園は癒やされるわーと、さくらはほおを緩める。

 その顔はしっかりと撮らせてもらった。

 さくら相手なら、基本撮影するのもされるのもお互い様なので、承諾を得ないでもばんばん撮るのが普通だ。

 こういう相手はレアなので、ちょっとほっこりする。


「動物園か……興味はあるけど、どうしても田舎に来ちゃうなぁ」

「ま、あんたは銀香のルイだし、田舎が似合ってるんじゃない?」

「と、都会も最近はある程度慣れてはきたんだけども……」

 地図アプリのおかげで迷わなくなりました、というと、えらいえらいとさくらに頭をなでられた。

 ウィッグごしに彼女の手の感触がくすぐったく感じられる。


「でも人混みはちょっと苦手というか。結構じろじろ見られるのはなぁという感じはあるかな」

 春先の事件のせいってのもあるだろうけど、これがまたちょっとなぁって感じとルイが言う。

 銀香みたいに町の人はだいたい好意的! みたいな関係値になっていればいいんだけど、まずは物珍しそうな視線を無遠慮に向けられるというのが、結構精神的にくるのである。


「有名税って言っちゃえばあれだけど、あんたの場合は、それ抜きでも男の視線は集めそうよね」

 こういうのは美人税っていうのかな? とさくらが苦笑気味に言った。

 うう。そうは言われてもおしゃれ関係で妥協はしたくないルイさんである。

 着飾るのは楽しいし、可愛い! って思うアイテムはゲットしてしまう派だ。


「かわいいは正義! って思ってるけど、男の視線を集めるのは思わぬ弊害です、はい」

「なら、女子ウケだけを目指す格好とかすればいいんじゃないの?」

 森ガール風とか? とさくらが首をかしげながら言った。

 なるほど。一部の男性には受けそうな気はするけれど、確かに露出度が少なければ割と向けられる視線は減るかもしれない。


「あとは、逆に振り切ってロリータとか」

「……あの、さくらさん? どうしてそこでそっちに振っちゃいます?」

「バイトの時のあんたをみたら、これはこれでありだなと思って」

 クマさんのアマロリはとてもよかったです、とさくらはにっこりいい顔である。

 うっ。良い被写体を見つけたぞ、といった感じだ。


「いまくらいの服装の方が、やっぱりしっくりくるかな」

 ワンピースはそこまで着こなしません、というともったいないとさくらに言われてしまった。

 そうはいっても、ああいう服装は特別な日にだけにしたいと思う派である。

 ふわっとロングスカートでまとめるというのは露出を抑えるためにありかなとは思うけれども。


「さくらこそ、ドレスな感じは着ないの?」

「結婚式とか、エレナたんの誕生日とかなら着るけど、町中でドレスはちょっとという感じ」

 ロリータは着る方じゃなくて、撮るほうがいいです、と素直に言うので、それでよろしいとルイも苦笑を浮かべる。

 似合わない、ということはないけど、ここら辺は個人の趣味の問題だ。

 好きな人は着飾って町に出ればいいし、撮られてくれれば嬉しいばかりである。


「あとは、ほら。男装とかしてみたらいいんじゃないの?」

 ふふふっとさくらが意地悪なことを言い始めた。

 自分で言っていて、おお、これはっ、とか自慢げな顔をしているのを一枚撮影。

 うんうん、なかなかにいい表情ではないですか。


「男装もねぇ。黒縁さん使えば完璧だけど、断然着飾るなら女物の方がいいかなぁ」

 やっぱりこっちのほうがコーデしやすいです、というと、まぁ、あんたはそうよね、と肩をすくめられてしまった。

 そうはいわれても、こればっかりは仕方がない。

 むしろ田舎でオシャレを楽しむくらいがちょうどいいのである。

 え、パンツスタイルに行けばいいじゃないかって? 残念ながらルイさんはスカート派なのだ。


「さて、それで、今日はどういうルートでいくの?」

「初心に戻ってって感じでいいかなぁって。町並みを撮りつつコロッケ食べて、大銀杏さまにご参拝という感じで」

「あー、コロッケいいね。久しぶりに食べたい!」

 ゴージャスに牛すじコロッケとか行きたい! とさくらが言うと、太っ腹だね! とルイは答えた。

 高校生の頃はそんなにお金に余裕がなかったので、たいていはメインである普通のコロッケか、野菜コロッケ、カレーコロッケあたりだったんだけど、まさか最高級品の名前を出してくるとは。

 ずいぶん二人とも大人になったものである。


「石倉さんのところのアシスタントはそこまでお給料いいのか……」

「そこは、他のアルバイトも入れてるから。ルイだって撮影依頼と、コンビニバイト両方やってれば結構お金に余裕はあるんじゃないの?」

「前よりは、って感じかな。撮影依頼とゼフィロスの顧問もあるから、そういう意味では懐は潤っているけど……しっかり根付いた貧乏性は取れないね」

 高い買い物はカメラ関係だけです、というと、まーそーよねー、とさくらはほっこりしながら言った。


「ちなみにお昼はお弁当作ってきてるので、公園でランチね」

「お、お昼は気にしないでいいって言ってたのはやっぱりそれかぁ。OK。楽しみにしております」

 ごちになります、とさくらが言うと、カシャリと一枚シャッターを切った。

 貧乏性ではあるものの、お弁当のお裾分けは割とやってしまうルイさんなのである。

 おいしいご飯を作るのだって、撮影の助けになるのだから、ここらへんで節約はしない。


「じゃー、それまでは小腹を満たすためにおばちゃんのところのコロッケというわけで」

「もちろん道中も撮りながらね」

 久しぶりの銀香だー! と言いながら町の散策を始める。

 ここに来始めてからもう五年を過ぎるけれども、町の景色は当初よりも少しばかり緑が減って家が建つようになった。

 でも、やっぱり田舎は田舎で、

 畑や田んぼがまだまだそこら中にある感じなのである。


「もうちょい早ければ、黄金の稲穂が撮れたんだろうけど、これはこれで」

「収穫後の畑に感謝を捧げつつ、かな」

 季節で顔が変わるっていうのは、風情があっていいものですと、ただの空き地状態の田んぼを撮影していく。

 何もないところを撮ってどうすんのと言われそうだけど、これはこれで楽しい。


「新しいお店とかはできてなさそうだけど、家は増えた?」

「前に来たときに、調整区域がどうのって話は聞いたよ? 家を建てて良い許可が出て、それで新築物件が増えたんだってさ」

「ほー。最近は都心からのUターンも増えてるって話も聞くし、田舎に住もうって人も増えてるのかな」

「学校もあるし、あたしはこの町好きだから、そういう人は大歓迎です」

 まー、家ばっかりになっちゃうのは、寂しいけどねー、というと、それは同感とさくらも答えた。


「そういえば、あんた人工物の撮影ってそこまで好きじゃないわよね」

「まーねー。レイヤーさんとかの撮影は好きなんだけど、どっちかというと自然撮影派です」

 そもそも、最初に興味を持ったのは草花の写真だったもので、とルイは言った。

 興明さんの撮ったあの写真集に興味を引かれたから今があるのである。


「でも、新築の家ってのもデザインが斬新だったりしておもしろいなぁと思うけど」

「ほー、さくらさんはそちらの方にも興味が?」

 動物以外にも手をだしましたか! と言うと、さくらはいい顔で言った。


「いろいろ手を出すことにした感じであります。石倉さんにもいろいろと勧められてんの」

 あの人も、男性の写真ばっかり撮ってるわけじゃないし、とさくらは言った。

 

「どんな需要にも応えられないとねってことね。ルイも人工物嫌っていってないで撮ってみればいいんじゃないの?」

「んー、そういうことなら、家も撮っていこうかなぁ」

 もちろん、きちんと家主さんには許可を取ってからね、と言うとルイは一歩前に出た。


「そこはちょっと面倒くさいけど」

「ちゃんと、言ってから撮ろうね。お写真撮らせていただいてよろしいですか? ってね」

 さすがに盗撮は、駄目ですっ、といいつつルイはさくらにカメラを向けた。

 すでに双方で許可済みなので、思う存分という感じである。


 こんな感じで、さくらさんとの田舎周りは始まったのだった。

さぁー久しぶりにさくらさん登場!

最近一緒に撮影行ってないよねぇってこともあって、二人でわいわいやらせてみました。

どういう服装すれば、もてないのか! を考えるというのもどうかと思うのですが。

そもそも服装ってもてるために着飾るところも大きいと思ったり思わなかったり。


でも、ふんわりワンピ系も森っぽくていいなと思ったりする昨今でございます。特に秋コーデだと多いような気がする。まあ、癒やし系かわいいを目指して欲しいところです。

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― 新着の感想 ―
[一言] おぉ、久しぶりにさくらが登場して銀香町で撮影会とは、なんだか高校編の頃を思いだしますね。 まあ、話の内容事態は、大人?というか年相応?な感じも増えてましたけど(苦笑)
[良い点] 狂乱錯乱コンビはいいですねー! 男装というか、塚というか、かっこいい系のレディースコーデいいんじゃないですかね? 女性としては大人っぽくなったと評判ですし……。
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