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638.プライベートビーチに行こう5

今回は温泉回! 施設まで行かせたかったのだけど長くなりそうなのでまずは導入というところで。

「さて、水遊びの次はお湯遊びと行こうかね」

「お湯遊びって……まぁ、個室借りてるだろうなとは思っていたけど」

 三年前のあそこに入れるなら、まあ悪くはないけれども、と崎ちゃんは少しだけ懐かしそうに頬を緩める。

 その姿は一枚しっかり抑えさせてもらった。


 うん。

 エレナが言っているのは、プライベートビーチのそばにある温泉施設のことだ。

 以前、千歳のリハビリというか、女性陣達でいってもらったあの場所である。

 そこに向かって、みんなで移動しているところなのだ。

 ちなみに、クロやんは一人、え、温泉なの? え? わたしいまジョソウダヨ、とか言っている。

 あんた……自分一人が男の娘だと思っているのだろうか。

 

「んー、クロくんの不安を解消するために言っておくと、今回は二つの貸し切り風呂を手配してるよ? もちろん女性陣の方のお風呂に行くって言うのはありなんだけど……今回はあれかな? よーじとルイちゃんだけ、女性風呂の使用禁止ね?」

 それもあって、ボク達が借りたところよりも女性陣の方が広いお風呂なんだよ! とエレナがなぜかドヤ顔をした。

 みなさん、すごくうなずいているけれど、よくわからないルイである。


「よーじ君はともかく、あたしが個室の女性用のほうに入れない理由というのはどうなの? エレナだったら入れるっていうのに疑問です」

 まあ、普段の女湯の公衆浴場なら自重するけど、今回は貸し切り二つじゃん! 二つとも堪能したいじゃん! というと、なぜかぷるぷるしている崎ちゃんと、うん、しゃーないと肩を軽くぽふぽふしている楓香の姿が見えた。


「一応表向きの理由を言っておくけど、今、ルイちゃんと珠理ちゃんが一緒のお風呂に入るのは駄目なので、ルイちゃんの二号室の方への入室は禁止です。逆に、一号室のほうに他の子が遊びに来るのはありね」

 従姉妹さんとかは、遊びに来るときは、よーじには一般風呂に入ってもらうので先にいってくださいね! といわれた。


「一般風呂……ここ、広いお風呂あるんだっけ?」

「そこは……うん。ボクとルイちゃんとクロやんは諦めよう?」

 まあ、クロやんは最初から女装をしてなければ問題なかったんだろうけど、受付の段階で堂々と今の姿ならば無理というやつだろう。

 今の格好って水着なのかって? それはさすがに着替えていていますとも。ま、旅行にきたときの格好のままなので、もちろん女装状態なわけだけど。


 さて、そんな会話をしていたら、温泉施設に着いた。

 海岸からそばという立地はしているけれど、あちらは三枝家所有の私有地なので、両方を楽しむというわけではなく、温泉の方を主体とした施設だ。駐車場も広くとってあっていろいろなところから来て下さいという、大きな温泉施設である。

 ルイは以前来たときはこちらに来なかったので、改めて見ると海に来てお風呂に入りました! 感が大きいかもしれない。

 

「海水浴できるビーチがうちのものなので……一般開放じゃないんだよね。なので、どちらかというとこの町の人気スポットはこっちの温泉なの」

 なので、みんなにも水着から着替えてもらったのです、とエレナさんはちょっと申し訳なさそうに言った。

 水着からの、そのまま温泉っていう姿も贅沢で素敵とか思ったのだろう。


「エレナ殿。温泉は周りの汚れを拭ってから入るもの。水着を着るにしても海の汚れのまま入るわけにはなりますまい……」

 ごごご、とエレナに迫ると、ちょっとびくつきながら、ルイちゃんったらお風呂には一家言あるよね、とため息をつかれてしまった。

 でも「温泉」である。大切に使っていくことが必要なものなのだ。

 もちろん、温泉ではない銭湯とかでも、汚れたまま入るというのは、よろしくない行為だろう。

 海から来たのだから、なおさら、きちんと清めなければならない。


「ルイ姉は、普段お風呂はいれないから、そういうところうるさいんだよ。風呂の話題になるときに必ず、正しい温泉の入り方みたいなことを言うんだ」

 家の風呂だったら、気にしないのにとクロが呆れたように言うものの、温泉の入り方のマナーはきちんと守りたいところだ。

 

「そんなルイちゃんのうざ講座を聴きたいのなら、是非、一号のほうにいらっしゃいませ。そうじゃなかったら、そっちの部屋で遊んでね。時間は一時間半の予定!」

「それくらいなら、貸し切りだけでもいいのかなぁ」

 みんなからはそんな声が聞えてくるのだが。

 温泉施設に来ているのに、大風呂に行かないだなんて、とルイはわくわくしてしまう。

 まあ、仕方ないことではあるんだけどね。


「ちなみに、ボクとルイちゃんとクロやんは貸し切りだけの利用になるんだけど、他は大浴場に入るのもOKです! え。なに恨めしそうな顔してるの?」

 入れないの解ってるでしょ? とエレナに言われて、ルイはえぇーと、不満声を浮かべた。

 解ってはいるけど、だからといって納得できるかといえばそうでもないのである。


「なら、そんな格好しなければいいじゃないの」

「……しないでも、割と危うい昨今」

 うん。気づかない人は気づかないんだけど……ウィッグ外しててもちょっと微妙というと、体格とか肌質でしょうか、と彩ちゃんが言った。

 まあ、そこらへんもあるとは思う。


「どうせ、ちょっとしたところから仕草ででるんじゃないの? 男の人に肌の質がわかるかどうかわからないし」

 もう、ばばーん! っていけばいいんじゃないの? と崎ちゃんが豪快なことを言ってくれる。

 それでいいなら、もちろんそうしたいのだけど。


「あー、それは珠理ちゃんがルイちゃんと一緒にお風呂に入ったことがないから言えるのかも」

 一回入ると、いろいろ納得できると思うけど、とエレナが言った。

 実際、一度偶然居合わせたことはあるのだけど、あちらは気づいていないし、あれは墓場までもっていく秘密である。

 ばれたら、枕あたりが飛んでくるだろう。 

 ちなみに、なぜか彩ちゃんはうんうんと頷いている。


「……まだ混浴は無理。今回だって別のお風呂になってほっとしてるくらいだもの」

 まったく。この年で裸の付き合いを気楽にできるカップルなんて、あんたらだけだわ、とエレナ達に崎ちゃんはため息を漏らした。

 とはいえ、成人している身なので、二人とも早いとは思っていないようだけれど。


「なら今日は、それぞれの個室で楽しんで。その気になればまぁ、コテージの方にもお風呂はちゃんとあるからね」

 ここほど立派じゃないけど、といいつつ、さぁそれがいつになるやらとエレナさんは煽っていた。

 

「それより、風呂の受付は大丈夫なんでしょうね? 以前の経験はあるけど、それは千歳みたいな比較的大丈夫そうな人だったからで、あんたたち……うん。大丈夫なのかしら?」

「貸し切りの風呂と部屋とで過ごすつもりだからね。大風呂に行きたければいける人が行けばいいんだよ」

「……大風呂いける人……」

「こんな風にちゃんと首根っこ捕まえてるから、みんなは安心して大風呂も堪能してね」

「むがー首筋はこそばゆいー」

 わしっと、エレナに後ろ首を捕まれて、情けない声が上がった。

 まあ、ちょっと冗談というかなんというか。大風呂行きたいなぁ、いいなぁという気持ちがころっと言葉に出ただけで、本気でそちらに入ろうと思ったわけではないのだ。

 だって、女湯に入るのはNGだし、男湯だって何があるかは正直わからないのである。

 気づかれない可能性ももちろんあるんだよ? 男湯なんてそんなに周りの人を見たりはしないものだし。

 実際、高校で青木に変なことをされなかったら、お風呂も入れた可能性はあるわけだし。


「いちおうエレナに聞いておきたいんだけど、エレナは女湯に入ろうって気はないの?」

 男の娘で行きますとは聞いてるけど、そこらへんどうなのかな? と訪ねると、あー、それねーと、エレナはあっけらかんと言った。

「大きなお風呂を貸し切りできる財力を手にいれる所存です」

 ま、それ以外でもお金は稼がないとなんだけどね、と苦笑混じりだ。


「さすがエレ姉さまですっ。あ、でもお風呂の経営とかしたら、関係なく入れる感じですよね」

 お風呂の経営かぁと、彩ちゃんが言った。

 たしかに、自分がルールを決める側になれば、自由にお風呂入り放題である。

 

「ん? ルイちゃんカメラやめてお風呂屋さん経営する気になった?」

「さすがにそれはないけど。エレナさんや。株主優待とかあったら、お願いします」

 持つべきは資産運用のうまい友達! ときゅっと抱きつくと、なにそれと言われてしまった。

 ちなみに、崎ちゃんはぶすっとした顔をしていた。


 でも、考えても見て欲しい。

 他力本願ではあるけれど、友人のつてで大きなお風呂を独り占めなんていう贅沢なことができるかもしれないのだ。

「そういうことなら、株式会社になったら出資をお願いしたいけど……まだ、よそから出資を募る段階ではないかなぁ」

 手を広げるよりは、まずは堅実な商いをしないとね、とさらっとエレナに返されてしまった。


「……若手起業家がこんなにそばにいるとは思わなかったわ」

「そこは、目的を持ってるかどうかじゃない? 珠理ちゃんだって起業する志があれば、元手はあるでしょ?」

 マンションを自分名義でさらっと借りれるわけだし、とエレナはちょっといじわるそうな顔で言った。


「そりゃまあ。豪遊してるわけでもないしね。資本金という形では手持ちにあるけど、今はこの仕事以外考える気はないわよ」

「なら、いずれはうちの最重要株主候補だね!」

 お金の使い道がないなら、うちに融資してみないかい? とエレナは蠱惑的な顔を浮かべる。

「それ、あたしに何のメリットがあるのよ」

 まあ、金銭的には増えるかもしれないけど、と崎ちゃんはいいつつ、メリットを促す。


「増えるのは確定なんだ? それでも投資しないってのはどうなの?」

「しないとは言ってないわよ。あんたらの、たぶん目的、目標っていってもいいのかな。それにあたしが噛む理由が明示されてないだけ」

 もちろん、お金の心配は芸能人なら、あるのだ。あるのだが。

 だからといって、投資してといわれて、ほいほいとのる珠理奈でもない。


 友達からねだられて、の破産なんていうのも聞いては居るのである。

 慎重になるのはしかたない。


「ボク達が主体的にやろうとしているのは、男同士でも子供ができるようにしたいっていう、そういう技術革新なんだけれど……うん。そこらへんは不妊治療の支援からって思ってるのね。いきなりやっても敵しかできないから」

 残念ながら、この世の中は、男の娘の相手は、女学園の生徒会メンバーだけなんだって! とエレナがおどける。

 他の作品だと、はらぽてエンドなんかもあるようだけれど、「現実で」できるわけもないのは現在のテクノロジーの問題だ。


 そこをエレナは金の力で推進をしようと思っているのだった。

 目的がきちんとしているのはとてもいいと思う。


 さて。そんな会話をしていたのだけど。

 黒木姉妹が呆然としながら話し始めた。

「なんというか……庶民と隔絶した話をしているような。お兄ちゃん」

「大丈夫だ……ルイ姉だけでおかしいと思ってたけど、おかしいってのは飛躍して、どこまでも飛ぶんだ」

 俺達はモブだ。うん。と、温泉にいくのをきょどっていたクロは、妹の頭をぽふぽふなでながら、諦めろとつぶやいた。

以前も行った例の温泉施設です!

貸し切り温泉は今回は二つ! 部屋割りは……こればっかりは仕方ないですね。

どっちみちクロやんは正気を保てるのか悩ましいのですが……


次話は温泉施設に入ります! せっかくなのでイベントを起こそうかと。

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― 新着の感想 ―
[一言] そのままを見てくれる子というのはある意味危ないのかもと思ったりしましたね。男の娘には秘密はつきものですから。 恋愛対象は本能的なものですから、かわいくても男だと無理ーっていう人も多いんでし…
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