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608.夏のイベント参加5

ちょいと間があいてしまってすんません。

さぁやっとコスプレ広場だよ!

「あぁ、お姉さま……」

「素敵ですぅ……」


 さて。コスプレ広場に戻ってきたルイだったのだけど。

 実を言えば、時間が押しすぎて一人目の撮影というやつを、すっかり断念するはめになっていた。

 まあ、撮ろうと思えば撮れるけれど、スケジュールを考えると自粛したというところなのであった。


 そう。エレナとの待ち合わせは一時半。

 それまではルイちゃんのファンのために解放ね! なんてことを言われていたのだけど。

 結局は、今まで撮影らしい撮影はできていないのであった。

 

 というか、割とみなさんカメコさんがついていて、一人こっそりコスプレしてますー! みたいな子があまり居なかったというのもあるのかもしれない。

 べ、べつに音泉ちゃんにかまっていたからってわけじゃあないのだ。

 ……うん。今度町で写真撮らせてもらいます。くすん。


「来る話は聞いてたけど、これはいいのかね……」

 エレナさん、恐ろしい子、と思いながら、目の前にある光景にシャッターをき……らないようにした。

 さて、どんな光景かといえば、エレナがどこかの女子校のような緋色の制服を着ているのは見てわかるわけだけど、そのほかに二人ほどデザインの違う制服に身を包んだ子が居たのであった。


 二人。一人はやや長身といってしまっていいのだろうか。

 180センチはないけれども、すらっとした高身長の、まるでモデルみたいな仕上がりの娘がいた。

 うっすら顔にはお化粧が施され、いつものイメージよりも柔らかい印象を周りに見せている。

 唇は深紅ではなく、淡いピンク色でつやっと輝いているのは、当然エレナの仕込みに間違いはない。


 そしてもう一人は……はい。毎月ご一緒させていただいている崎ちゃんでございます。

 こちらも女子校の制服姿という感じなのだけど、二人が深紅の制服なのに比べてこちらは、薄い桜色の制服だ。

 胸元には赤いリボンがあしらわれている。

 スカートの裾にはフリルがついていたりするのだけど、なんとまぁ大胆というか、あの短さだとすーすーしてちょっと心細くない? というくらいの丈なのだった。ルイだったら正直あの長さは履きたくないレベルである。


「ごきげんよう、ルイさま。このような暑い中、お越しいただいて」

 そんな三人のうちの一人、高身長な娘は緋色のワンピースタイプの制服を着こなしながら、ルイに声をかけてきた。

 普段のキャラとは全く違う、清楚なお嬢様風の話し方にはある種感動のようなものすら覚えるほどだ。

 ()の着ている制服もエレナのそれと同じく赤なのだけど、こちらはスカートの裾が膝下まである気品のあるお嬢様学校風というような感じである。


「声まで完璧とか……なんというか、壮大な隠し芸だよね、これ」

 周りからきゃーきゃー声が上がっているのは、有名芸能人がお姉さまなコスプレをしているからである。

 それを作り上げてしまったのが、自分と友人なわけで、良かったんだろうかという思いがちらついてしまう。

 本人が楽しそうなので、まあ良いことなんだろうけどね。


「それでこれ、タイが曲がっていてよ? とかいえばいいのかな?」

 ちょっと対応に困るとエレナに言うと、どうよこのできと、ドヤ顔である。

 もちろんこの二人がコスプレに造詣があるか、といえば翅はちょっとかじったくらいで、崎ちゃんに至ってはハロウィンで仮装をするのが関の山というくらいなのである。

 きっと昨日かなり、演技指導を受けたことだろう。


「ちょっと、ルイちゃん。それは作品違い。今日は女装潜入系の女装キャラ合わせなんだから」

「なるほどね。それで制服が違う、と。潜入系女子校に通う男の娘のうっぷん発散会ということか」

 やれやれ、普段は女の子ばっかりで気が静まりませんみたいな? というと、んー、どうだろ? と視線を二人に向けた。


「今日の演技指導としては、可愛い女の子の中に僕一人だけ男でいいんだろうか、っていう感じにしろって言われてるわね」

「それでその制服かぁ……すっごい可愛いよね、それ」

「……服だけ?」

 ぎろりと睨まれて、おおうっ、と言葉を詰まらせる。

 そうね、崎ちゃんも可愛いです、はい。


「たいへん、可愛いと思います。中の人も」

 でも、と、そこでため息を漏らす。

 そう。今の会話は全部素のものなのだ。

 レイヤーであるなら、びしぃっとキャラを演じて欲しい。


「そのキャラは、ご飯大好き料理人で、寮生活でご飯の面倒を見る感じの、包容力ありタイプでしょう? 正直、崎ちゃんがお嬢様をやるなら、縦巻きロールとか、攻略対象のほうじゃないの?」

 どうして、こんな無茶ぶりをしているの? とエレナに聞くと、えっへんと胸を張った。


「二人がどうしてもイベントに参加したい! というからボクなりに合わせを考えたってわけ。そして生まれたのがこの「違う作品の男の娘キャラの集い」というやつでね。せっかくだから普段の自分と違う子になってみよー! ってな感じなの」

「そうなのです。ですからルイさま。わたくしの美しさをばっちりと撮影してくださってもいいのですよ?」

 ずいと、長身美女が身体を乗り出して言った。

 こちらは役に入っているらしく、丁寧な女声での口調をしている。

 ぱっと見だと、まさかコレが人気男性アイドルだとは思わないだろう。

 しかしだ。


「一日の付け焼き刃ではどうしようもないものもある、というか……」

 もうすこし、密やかにしていただいていいのですよ? と首を傾げると、あー、うーん、とエレナさんは苦笑を浮かべた。

 演技指導したのに! というところなのだろう。


「女装潜入系の男の娘というのは、基本的にみんな目立たないようにするものです。それでも隠していた才能がみんなに見つかって、きゃーきゃー言われるものなのです。だから、俺が俺がー! みたいなのはダメなのです」

「でも、この見た目でぐいぐい行かないのはあり得ないっしょ。珠理ちゃんもそう思うだろ?」

「そうね。せっかくこういう格好してるのに、アピールしまくらないのは、あり得ないわ」

「うぅ。原作の崩壊っぷりが……素材はいいのにどうして演技がダメなのか……」

 しょぼんと、エレナさまは肩を落として天を仰いだ。

 夏のひざしが、あつあつだぁーとか、つぶやいている。

 あばば、ルイちゃんがきたらこれかい、とかぷるぷるしてるエレナさんも一枚カシャリ。


「芸能人さんが、控えめな性格っていうのは結構レアなんじゃないの? 二人ともがつがつやったから今の位置なんだし」

 それを隠せっていうのは、もうちょっと台本まで作ってキャラを演じないと無理なのでは? と言ってあげると、エレナさんはさっきまでは上手く行ってたのと恨めしそうな視線を向けてきた。

 はて。どうしてそんな顔なのだろうか。


「でも、実際、潜入系で押しが強い男の娘キャラって割とレアじゃない? あたし知ってるのって、二人くらいしかいないよ? 片方はレズビアン満載、男アレルギーの子が、いろいろ巻き込まれるアレとか、同級生に迫りまくるやつは……あれは普通に女子の制服着てるだけだから、潜入じゃないのか……」

 女子校で、っていう縛りだとそうとう少ないなぁと言うと、そりゃその状況じゃ隠す方向に行くに決まっているとみなさんうなずいた。

 潜入していて、ぐいぐい行くというのはよっぽど自分の女装に自信があるか、バカかのどちらかだということだ。

 お前はどうなんだって? それは……どうなんだろう。撮影の指導の方で頭がいっぱいで、あんまりそこらへん意識してないや。

 そもそも、行き慣れちゃってるし、特別そこが女の園である意識は薄い。

 も、もちろんね! そこに潜入してる子のことには気を配ってるんだけどね? こちらのうっかりで破綻してしまったら、咲宮のお祖父さまから、ちょー絶怒られるから!


「俺様系、女装潜入か……うぅ、そう言われるとアリだったかもしれないけど……」

 でもっ、せっかくやるなら、男の娘だよ! とエレナに拳をぎゅっと握られてしまった。


 好き過ぎてもう、他のコスなんてやりません! くらいな勢いである。

 まあ、あの作品で合わせるなら、メイドさんだとか、残念レズビアンっことかを出さねばならないし、そう言われるのもわかる気はする。


「ルイさま? こんな女狐とは違って、わたくしはおしとやかにキャラに入り込めます。せっかくのイベントですもの。是非とも撮ってくださいませ」

 ふぁさりと髪を指で揺らしながら、その緋色の服を着たお姉さま……翅は妖艶な視線をこちらに向けた。

 撮って良いのなら撮るけれども。

 

 カシャリ。カメラの音が鳴って完全に女子高生な翅の姿が写される。

 制服の仕上がりもかなりのもので、すらりとしたその姿は男性的というよりは、やはり凜々しいお姉さまのような感じだ。

 

「ぐぬ……ここはおとなしく昨日の演技指導をしっかりこなすしかないか……」

 仮面を被るのよ……というような声が聞こえたのだけど、ルイさまっ、そんな風に連写はなさらないで、なんていう翅の撮影に今は必死なルイさんである。


「ルイさん。せっかくだから、ぼ……私の事も撮ってくれない? バームクーヘンおごるから!」

「バームクーヘンときましたか……いいけど、キャラにちなんで美味しいのお願いするよ?」

 ほらほら、栗色のウィッグもかわいいねーといいつつ、崎ちゃんを撮る。

 翅が、むー、という顔をしているけれど、そこは仕方ないところだろう。


「やっと演技指導が少しは役にたった……」

 俳優のくせして、どうしてこんなにルイちゃんの前だと素がでるのか、とエレナさまは天を仰いでいた。

 いままではしっかりやってたのに、というような顔である。


「こちらが撮っていただいているというのに、横入りするとはどういうことかしら」

「自然にカメラが向いただけ! 甘い物につられてるんだから、撮られる権利はこちらにあると思うけど?」

 バチバチ。

 二人の中で火花が散るようである。

 崎ちゃんもここまでくるとキャラに入っているようで、ちょっと女の子口調より、キャラによせているようである。

 

 というか、二人を見ていて思うけど、女装の在り方も千差万別なんだなぁと思ってしまう。

 翅がやってるキャラは、いわゆるハイソサエティなそれで、口調もお姉さまというのが似合う、丁寧でお淑やかなそれなのだ。


 それに比べると、崎ちゃんは演じていてもお嬢様とはちょっと離れてる感じというか。

 きっと、庶民からハイソサエティまでもがいる学校なんじゃないだろうか。

 そういわれるとゼフィロスもお嬢様っぽい人はそんなに多くないって話だったし、案外普通の口調の子が居てもいいのかもしれない。


「そもそも今日は私とエレナで合わせる予定だったのに、どうしてあんたが来るのよ」

「あら。師匠との付き合いは私の方が長いのですから、一緒に合わせをするのは当たり前でしょう」

 どうよ! と翅が胸を張った。シリコンのパットでも入れてるのかそれで胸がぷるんと震える。

 ふむ……毎回思うけど潜入系の女装主人公はおっぱい大き過ぎだと思います。

 沙紀矢くんもかなりでっかいの使っていたし……


「ぐぬっ……人工物のおっぱいのくせに……」

 さて、崎ちゃんはというと、こちらはまったく底上げ無しでの姿である。

 これはこれですらりとして綺麗だと思うけど、どうしてもそこには目が行ってしまうようだ。


「人工物っていうと、男の娘コスをやる女の子って、潰してからのパットだったりするのかな」

 んー、どうだろう? とエレナに話をふると、ボクは潰すほどないので、と肩をすくめられてしまった。

 まあ、そこまでこだわるかどうかは本人次第かもしれない。


「それで、ルイ? どうして撮影の手が止まっているの?」

「こんな相手じゃなくて、私を撮るべきです」

 ほれ、撮れと言われて、はぁと軽くため息を漏らしてしまった。

 そりゃ二人の仲がよろしくないことは知っているけれど、こんなところでぎゃーぎゃー言い合わないで欲しい。

 せっかくなのだから、三人でポーズ取ってもらってそれを撮りたいのである。


 さて。そんなやりとりをしていたのだけど。


 ひそひそひそ。

 周りの注目が集まっているのがよくわかる。

 ちらりと、え、なに、ルイさんって結局三角関係なの? とか、翅さんったらルイさんラブなの!? とか悲鳴が上がっていたりする。

 うん。こんな人数がいるところで、諍いはやめて欲しかったんだけれども。


「お二人とも、お話は事務所でおねがいできますか?」

 さて。ヒートアップした二人を止めたのは、額に血管を浮き上がらせながらも、笑顔を絶やさないイベントの実行委員の方でありました。

 問題行動を起こした人、起こしそうな人を確保していく人達である。

 

「ちょっ……えっ」

「別に違反のようなことは……」

 がしっと運営スタッフの女性に肩をつかまれた二人は、一気にヒートダウンして、え? なんで? なんでーーーと、戸惑いながら、ドナドナされていったのであった。

 ちょっと戸惑いと哀愁が漂っていたので、一枚撮らせてもらった。喧嘩したときに使わせてもらおう。


「すみませんね。本来ならこれくらいの言い合いなら放置するのですが……テレビで話題になるレベルの話だったので、早めに介入させてもらいました」

 もう一人のスタッフは、すみませんとエレナとルイに頭を下げてくれた。

 周りからは、続きが聞けると思ったのにと、ちょっとトーンダウンしたような声が聞こえた。


「いえいえ、ボクからも会場でははっちゃけちゃダメだからね、ってお願いしていたのですけど、ダメでしたね……」

 ほんと、愛されすぎだねぇと、エレナがうりうりと脇腹に攻撃をしてくる。

 うぅ。確かに二人から好かれているのはわかっているけれども、だからといって、はい喜んで! とは言えないのである。


「って。なんか連行されていきましたけど……」

「大丈夫なんです? あれ」

 入れ替わりというような感じで、巫女さんたちが合流してきた。

 午後は合流するって話してたから、それ自体はわかっていたけど、まさかこのタイミングとは。


「ちょいとばっかり、ヒートアップしすぎちゃったみたい。少しすれば戻ってくると思うけど……」

「なんとかなるかなぁ。それよりも君が噂の巫女さまだね? うわー、ほんと作品から抜け出たような感じだね」

 いいねぇいいねぇと、エレナはもう巫女さまの方に興味津々のご様子だ。

 まあリアル男の娘を愛でられる機会があるというのなら、飛びつかないわけはないのである。


「えと……エレナさん? あんまりぐいぐい行くと嫌われちゃうからね?」

 そこらへんは抑えるようにというと、是非ともツーショットをご所望ですっ、とエレナはぴょんと軽くはねた。

 緋色のミニスカートがひらりと揺れて、うっかり大切なところが見えそうになるものの、そこらへんはしっかりとなんとかできるのが男の娘を現世に再現するコスプレイヤー、エレナさんというところである。


「沢村くんもせっかくだから、一緒に入る? キャラがどうとかよりは記念撮影的な感じで」

「……まずは二人だけでどうぞ。さすがにそのオーラの中に一人で入る勇気はないです」

「そうかなぁ? オーラに関してはこっちでなんとかするよ? 上手いこと輝かせてあげるよ」

 ほらほら、両手に華って感じでさ! というと、そんな恐れ多いっ! と沢村くんは萎縮してしまったようだった。


「ならコスプレとかしてみるとどうかな? 女の子コスとかすれば、うーん、あんがい美人になりそう?」

「ひっ、さすがにこんな大都会で女装は……」

 町ならまだしもここでやるとか、恥ずかしい……と沢村くんは頬を染めた。

 おぉ、この反応はこれはこれで可愛いように思う。もちろんここも一枚撮影させてもらった。

 

「むしろ逆だと思うんだよね。ここは女装レイヤーさんも、男の娘コスの人もいるんだし、田舎でやるよりもよっぽど安全安心だと思うよ?」

「いや、でもその……うちの町はちょっと特殊というか。巫女さまの影響で女装はむしろ推奨されているというか」

 僕もじーちゃんに女装させられてお正月は回りましたし、と沢村くんはちょっと困り顔である。

 結局、あのときは二人の写真を撮ったものだけど、沢村のじーさまはあの後もこの子を連れ回していたようだ。

 こっちはこっちでルイの正体をじーちゃんに打ち明けたりして、そちらのほうは気にはしてなかったけれど。


「それじゃ、まずは二人で行こうか。エレナはせっかくだから、巫女さんのボディーガードね」

「……どちらかというと、この子は暗殺者の方なんだけどなぁ」

 はいはい、仰せのままに、とエレナは巫女さまを背にしてかばうようなポーズを取った。

 いきなり、この人なにやってんの? というきょとんとした巫女さまは、ちらりとエレナに視線を向ける。

 よし。それでよいのです。数枚連続でシャッターを切っていく。

 一枚きりじゃないのは、モデルが一般人を含むからである。


「でも、どうして守護者(ガーディアン)のほうじゃなくて、そっちにしちゃったの?」

 めっちゃサブキャラじゃん! 男の娘だけども! といってやると、さすがボクのお姉さまですー! と可愛い声で子犬のような仕草をする。

 うっ。上目使いがしっかりしていて、サブキャラとわかっていてもとても可愛い。

 どうして攻略できないのか! とみんながくずおれた瞬間である。


「最初は、こっちで珠理ちゃんと合わせを考えてたの。でも、翅が自分も混ざるとか言い出したから、いろんなタイトルからキャラを登場させようってことになってね」

 残念ながら、三人も男の娘がでてくる作品なんて……そう滅多にあるものではないのです、とエレナさまはしょぼんと肩を落とした。

 全部攻略対象が男の娘というゲームも世の中にはあるのだけど、せいぜい一人いるかいないかというのが一般的なことなのである。


「そしてなんだかんだで、二人の潜入系女装男子はドナドナをされていると」

「さっきまではそれなりにちゃんとやってたんだけどねぇ。制服のできもすっごいよかったでしょ?」

「それは、たしかにできばえは良かったとは思ったけど」

 二人とも、制服ちゃんとしてたよねぇと、先ほど撮った写真をチェックしながら答える。

 作品が違うから制服のデザインも違っていて、それもそれで三人でそろうと不思議な印象だ。


 なんというか、もともと同じ中学校に行っててそれぞれ別の高校に行った子が集まってるとかそんな感じにも見える。


「そういえば巫女さんは、今は女子の制服で学校に行ってるの?」

 それとも神社の中でだけなのかな? とエレナがキラキラした目を向ける。

 憧れの作品のモデルの子と話せるというのがだいぶ嬉しいみたいで、いつもよりも三倍くらい表情が緩んでいるように思う。


「えっと、それはその……」

「これが、普段の巫女さま!」

 ドヤァとそのとき、沢村くんがスマートフォンを取り出して、写真を表示する。

 あら。スマホで撮影しまくりな子なのですね。


「おおぉ、制服かわいー! エロゲの制服にはない安定した可愛さ!」

「エロゲの制服は見ると可愛いんだけど、ちょっとコスプレ感が出ちゃうよね」

 うんうん。可愛いっす! と言うと、ちょっ、なに見せてるの!? と巫女さんがあわあわしつつ、沢村くんはどうですか!? うちの子はっ! というような感じの胸の張りっぷりだった。


「ふふふ。ルイちゃんもコスの制服着たいなら言ってね。似合うのいっぱい用意しちゃうから」

「えぇー、コスプレは……必要な時にしかやりませんって」

 可愛い服は好きだけど、演技は苦手ですと言うと、えぇーと、エレナは唇を尖らせた。

 可愛いので、一枚撮影。


「二人も、コスプレしたかったら是非言ってね! っていうか、そっちのそばのコスプレイベントとかあったら、遊びにいくよ!」

 男の娘をあがめる町だなんて、絶対行ってみたいし、とエレナさまは嬉しそうに満面の笑みである。

 ほんと、男の娘好きをこじらせているだけのことはある。


 はぁ、やっと日常だなぁなんて思ってそれを眺めていたのだけど。

「あの……」

 唐突に、ルイに声がかけられた。

 どうやらイベント参加者のようだけれど、なにかあっただろうか。


「ルイさん。もう一人目は撮ったということでいいんでしょうか!?」

「おっふ。いちおうあとで三人そろったらもう一回撮るけど、確かにこの時間しゃべってるだけってのももったいない、かな」

 さてと。巫女さんたちはエレナに預けて、こちらはこちらで撮影を始めることとしよう。


「では、お写真を撮らせていただいてよろしいですか?」

「はい、喜んで!」

 それでは。

 声をかけてくれた子に、ポーズを取ってもらって撮影を始めることにした。

 ずいぶんとここに来るまで時間がかかってしまったけれど、ようやくお待ちかねの時間である。


あたしのために争わないで! とか絶対に言わないルイさんは撮影に夢中でございました。

それにしても、コスプレしながらの喧嘩ってキャラ崩壊をどこまでさせるのかすっごく悩んだのですが、ご覧の通りに。


そして今回の三人のコスは有名なところから連れて参りました。

エレナさんサブキャラですけどね! こうやってみると、緋色とかピンクの制服多いよなぁとしみじみ思うばかりです。


次話は掲示板回にします。

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