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  夏のイベント参加3

本日は、クロやん視点のため、ナンバリングなしです。

さぁ、ご飯をたべるのだー!

「はーい、視線こっちにお願いしまーす!」

「おまたせしました、本日の酸素ですっ」

 きりっと、俺はその役柄に入りきって、段ボールを前に突き出した。

 本日は、夏の祭の日。

 周りにはそれぞれ自分の、自分がやりたい衣装を身にまとって、着飾っている人達が集まっている。

 

 熱気は夏の日差しもあいまってすさまじく、参加者の汗で雲ができるとまで揶揄されるほどだった。


「んはー、やべーな、クロさん。最近ちょー可愛くなってるというか、今日は生足見せ放題というか……」

「あれで、男とかほんと惜しい。ってか、隣に居るノエルさんもちょーかわいい」

「だよなぁ、あの身長の低さがむしろ、あざとかわいい感じで」

 園児。園児だー! とカメコさんたちが騒いでいるけれど、隣で合わせをやっているのはノエさんである。

 園児服のような、水色のワンピース姿で、誘導用の赤い棒とホイッスルがチャームポイントである。


 え、お前は誰だって? ああ、俺の名前はクロキシ。一介の女装レイヤーである。

 エレナさんとは違って、俺の場合は男の娘縛りなんてことはしない。

 なので、女性キャラをやるときはもちろんやるし、ノエさんが男性キャラで合わせをやりたいといったのなら、男キャラももちろんやる。

 ちなみに、男キャラでも化粧をするところは、はずせないところである。


 女キャラをやるときは男性からの声かけが多く、男キャラをやると、黄色い声がきゃーきゃー集まったりする。

 まあ、もちろんどっちにしても原作をどれだけ再現できているか、というのが重要なので、そこをしっかり抑えておけばそうおうに評価はしてもらえるのだけど。


 でも、今日のノエさんはことさら可愛い。

 普段は、男嫌いが炸裂して、言葉が片言なのだけど、今日は別の意味で片言というか、ようじょつよい、みたいな感じの話っぷりなのだ。

 低身長のノエさんがやるともう、可愛すぎて鼻血噴きそうな感じなのだった。


「露出では、クロさんの半分以下なのに、あの可愛さ……いいや、これは庇護欲ってやつなんじゃないだろうか」

 さぁ、視線こっちにくださいー! といわれて、二人で話をするような感じにしながらも写真を撮られていく。

 そんな時間は午前いっぱい続くわけで。

 カメコさんを変えつつ、ポーズをとり続けるとその時間はあっという間で。

 やっぱり、ここでの時間は楽しいなぁと思ってしまう。

 ん? ちょいちょいと、ノエさんに袖をひっぱられた。

 じぃーと物を言いたそうな顔をしていらっしゃる。


 う……

「とりあえず、目の前の撮影、がんばりましょう?」

 ね? といってあげても、ノエさんは、むぅーと、不満げな声を上げるばかりだ。

 撮影されてるときは、表情を作るけど、明らかに不満顔である。

 そして、それは、お昼まで続くことになったのだった。 

 


 さて。コスプレ広場を離れた俺達はとりあえず昼休憩を取ることにしていた。

 広場は撮影されまくるけれども、会場の方に入ってしまえばそこで絡んでくる人はあまりいない。

 コスプレに興味のある人は広場の方に集まるし、同人誌のブースの方はそっちが好きな人が集まるからだ。

 まあ、もちろん、こっちにもコスプレの人はいるし、絶対別れてるってわけでもないのだけど。

 

 それでもそれなりに、演技をしながらご飯は食べることはする。

 たとえば、俺の場合はキャラの性別は固定する、とかだ。

 自分の気持ちの中では、俺といっていても、話し言葉は女性の、というかキャラのそれに合わせるようにする。

 今日のキャラで言えば、少し元気だけどおっちょこちょいな女の子という感じだろうか。

 ちなみに方向音痴だったりもするのだが、どこかの誰かさんと似ているなぁと思う。


「クロくんは今日の弁当なに持ってきたの?」

「特製サンドイッチと、酸素をお持ちしました!」

「……おねぇちゃん。酸素もらっていい?」

「どうぞどうぞ。でも、ノエちゃんにこうして、お姉さんっぽい姿を見せるのは、なんか不思議な感じ」

 実を言えば、ノエルの方が年上なので、キャラクターとしても実はちっちゃいけどお姉ちゃん! みたいなキャラも多くやってきたのだけど、今日はどこからどうみても、ノエさんが年下なキャラなのだ。


「でも、設定上、赤血球のおねーちゃんって感じかな。むしろ寿命が12倍とかなんだから、むしろ長老?」

「うは、その話はなんかいろいろと夢が……」

「血小板が幼女ばっかりなのは、そういう理由」

 ふんっ、となぜかノエさんが胸をはって、偉そうにした。

 普段は、ぼーっとしてるような人なので、こういうところにくると元気になるのが見ていて可愛い。


「ハムと、チーズの酸素ウィッチ美味しいねー、おねえちゃん」

「酸素ウィッチときましたか……でも、それだと運び中の荷物に手を出してるみたいな感じがするけど」

 まあ、いっか、とはむりとサンドウィッチを口に入れる。

 ちゃんと密封してきたので、パンもふんわりしっとりで美味しい。


「そういえば、クロくん。午後はルイさんこれそうなの?」

「あー、うん。広場にはくると思うけど……我らを撮ってくれるかは謎!」

 ただいま、会場の外のベンチで一人ほっこりお弁当タイムだってさ、というと、ルイのお弁当……食べたい、とノエさんがぼそっと言った。

 ちなみに、別にこれはルイねぇにメッセージを送ったわけではなく、リアルタイムで、ルイさんのイベント参加記録なんていう、実況掲示板が立っているだけのことだ。

 正直、個人の実況をやるとか、ストーカー一歩手前なのだが、ほぼ黙認されているのはイベントの時しか会えないレアキャラだからというのもあるのだろう。

 それにこの情報は、撮って欲しいと突入するときには、大変に貴重なものだ。

  

「そこのところはちゃんとしないと。この晴れ舞台であの人に撮ってもらう……なんたる幸せ」

 きっとルイのことだからこんな人気作も知らないで、どういうキャラなのー? とか聞いてくると思う、とノエさんは身体の前でお手々をぐーにして、ぷるぷるさせていた。

 はぁ。ほんと、この会場で撮られたいという気持ちはよくわかる。

 というか、ノエさんが午前中ぶーたれてたのも、ルイねぇの姿が見えなかったからなのである。


「っていうか、ノエさん午前からルイねぇが来るの期待しまくりだったじゃん? あれはさすがにそわそわしすぎじゃない?」

「仕方ない。春先の事件から、復帰するかどうかって気にしてた。あのときだって、いろいろと外野が騒ぎすぎ」

 ほんと、ひどい話、とノエさんはサンドイッチをはむつきながら、ぷぅと頬を膨らませる。


「レイヤーにとってすればあの子は今まで見たことない自分を撮ってくれる最強の子。それなのに、男ったらしとか女ったらしとか、あの見た目でずいぶんルイは損をしている」

「レイヤーやるなら美人なのはいいんでしょうけど。撮る側としてはあそこまでキラキラしてると困っちゃうかなぁ」

 そこらへんはルイねぇが着飾りすぎなのもよくない、と俺も言っておいた。

 なんだかんだで、あの人は撮影が大好きという割に、自分の見た目もよくわかっているのである。

 女子に見えればいい、というレベルではなくて、誰が見てもかわいいというレベルにまで持っていく残念美人なのだ。


「午後は、ルイを見つけて撮られる。頑張って酸素を運ぼう」

「どうでしょうね……狙ってる人は多いし、ここはマクロファージさんとかに譲ってあげても良いんじゃ」

「えぇー。せっかくのイベントでルイが来てて、撮られにいかないとか……」

「そうは言っても、こんだけ人が居て倍率高いんだし、無理だろ……っていうか、俺はルイねぇがもみくちゃにされるのとか見たくないし!」

「だって、ルイおねえちゃん、全然撮ってくれないんだもん……」

 クロくんと組んでいればいつかはって思っていたのに、特にここ最近は……ぜんぜんだぁーと、ノエさんはわーと、子供らしくがっかりした声を上げた。


 普段のノエルさんなら絶対やらない顔、か。

 こういう顔を見れることも、コスプレならではというやつなのかもしれないとも思う。


「去年は散々撮られたくせに……」

「あれは、ルイにではないのです。確かに腕は悪くなかったけど、私たちはルイさんに撮られたい、違う?」

「違わないけど、それなら同人イベントを小さいのやって、そこに呼んだ方がまだ現実味があるような……」

「それをやれる、クロくんが羨ましい……」

 っていうか、あんな綺麗なお姉さんが、アレとか、クロくんはいろいろ危ないと思う、となぜか手をつながれた。

 まあ、作中でも、手を握ってたカットはあったかと思うけど、それでもこれはどうなのだろうか。


「と、ともかく今は、ご飯タイムだってさ。お、ウィンナーはたこさんらしいよ」

「たこさん……火星大決戦?」

「ルイさんウォッチャー大決戦かなぁこれ」

 書き込みが半端ないわ、と俺は一人従姉妹の姿を思い浮かべながら、はぁとため息をついた。

 しかもみんなやたらと描写が細かいのだ。


 確かにルイねぇはご飯を食べるのがすっごく美味しそうで幸せそうなわけなのだけど。

 それを見られてるというのはどうなのだろうか。

 いや、もしかしたら外でご飯食べてるときも見られてるとかあんのかな。

 というか……銀香町とかでベンチでお弁当をほおばる姿というのは、ちょっと想像しただけでやたら可愛い気がする。


「でも、まだ一人目は出てない。それに、私たちはなるっ!」

「ちょ、ノエさん。どっかの海賊王みたいな言い回ししても、ルイねぇは多分知らない子を一人目にすると思うよ。超初参加か、クオリティ高い子か。うちらみたいな120日で消えちまう存在より、ぴっちぴちなフレッシュなのを撮るってば」

「そこをなんとかするのがクロくんの仕事だと思う」

 あ、酸素ウィッチもう一個とねだるので、トマトサンドを口に入れてあげた。

 あーん、というやつなのだが、個人的には餌付けのようなものだ。

 というか、ノエさんはこっちが弁当を作ってくるのをわかっていて、自分の分は作っていなかったりするのが、ここのところである。

 

 まあ、こちらも二人分作ってるあたり、あれ? 自分、ルイねぇの影響受けすぎでは? とか思うものだが。

 それでも午後もまだまだ撮影は続くのだ。

 ちゃんとご飯を食べておかないと体がもたないというものなのである。

というわけで、ルイさんのご飯風景は、ご想像にお任せしつつ! クロやんメインのお話となりました。レイヤーだから二人も参加してるよね! ってな感じです。

そして、コスの内容は去年の誘導係さんと丸被りなのですが、私がクロやんの生足を見たかっただけなのさ!


さて、次話はそろそろコス会場へという感じです。


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