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590.妹を心配する姉からの相談3

遅くなりました! でもその分ボリュームアップということで。

「まさかルイ先輩にドール趣味があるとは思ってませんでした」

 こんなところで会うだなんてびっくりです、と久しぶりに会った千恵ちゃんはにこやかな顔を見せてくれた。

 いちおうは、他の後輩に比べれば会ってる方ではあるけれど、それでも千歳との交流のセットという感じなので、実際に会うのは結構久しぶりといっても間違いじゃないのだ。


 ちょっと見ないうちに女っぽく……なってることもなく。

 相変わらず、胸のあたりは成長していなくて、ほっこりする。

 べ、別に後輩に抜かれるのがヤとかそういうのではなくて、純粋に姉がトラウマなのである。

 おっぱいなんて、無い方がほっこりなのだ。


「ええと、お客様はルイさんとどのようなご関係で?」

 ちょっと親しく話をしていたからか、店長さんが、えっ、知り合いなの? という驚きの顔を向けてきた。

 まあルイの存在自体はかなりプライベートは謎と言われているから、そこで親しい人発見みたいな感じで少し気になったりもしたのだろう。


「ええと……どう言って良いんでしょう? 以前お世話になった人?」

 姉ともども、と千恵ちゃんは首を傾げながらそう言った。

 関係性の具体的な説明はこちらに丸投げしようということみたいだ。


「お世話……モデルさんとかなのかな」

「ちょ、モデルは……ないですよー。私みたいな一般人がそんなことないです」

「撮られる気になったのなら、撮影はしてあげるけどね」

 いけるいけるっ、とはやし立てると、無理ですーと千恵ちゃんは困ったような顔を浮かべた。

 うんうん。可愛くてつい、一枚シャッターを切ってしまった。

 店内撮影禁止なわけだけど、ここはスタジオ扱いなのでいいだろう。


「はいはい、お二人のことはなんとなくわかりましたけど。ええと、お客さんはスタジオを使いたいとのことでしたが」

「はい。その……ちょっと、初めてお迎えしようと思っているのですが、果たして本当に私なんかが一緒で大丈夫なのかなと思って」

 是非とも、おうちに連れて行きたいのですけど、と千恵ちゃんは少し自信なさげな顔を浮かべた。

 はまっているらしいという話は聞いていたけれど、まだ購入には至ってなかったようだ。

 ずっとウィンドウショッピングだったのだろう。お金が自由にならない学生の身だとよくあることである。


「ああ、自分との相性を見てみたいということですね。時々そういう方もいらっしゃいますよ」

 そして大体みなさんお迎えいただいています。と店長さんはいい顔をした。

 販売ができて嬉しいっていうのもあるだろうけど、これは素直に人形好きな子が増えて嬉しいなんじゃないかな。


「そちらのドール用のソファーにおいて愛でるのもいいですし、こちらの人間サイズの椅子に座ってドールを抱っこするのもありです」

 そしてその姿を撮影することもできるのです、と店員さんがドヤ顔を浮かべる。

 でも、実を言うと……だね。

 ここに三脚がないというのは、スタジオとしてどうなのかとも思う。

 そりゃ、スマホでやるってことが多いのだろうけど、それだったらスタビライザーとかあってもいいんじゃないかなと思うのです。

 お客さんはカメラ初心者さんが多いのだろうし、手ぶれ防止なんかにも役立つはずだ。


「ええと……撮影って、オートでやる感じですか?」

「なんでしたらスタッフが撮影させていただきますよ?」

 チェック写真ということでしたら、声をかけていただければばっちり撮らせていただきますと店員さんは言った。

 なるほど。

 スタッフが撮影係になって、いいよいいよと気分を盛り上げていくという感じになるのかな。

 購入を迷ってる人にとっては、背中を押す感じになるかも知れない。


「もちろん、カメラ三脚もちこみで撮影って方もいらっしゃいますけど」

 見たところ、お客様はお持ちではないようですから、撮影はお任せくださいと店長さんが声をかける。

 いちおう先ほどはルイのカメラを使っていたけれど、備品としてのカメラはきちんと用意はしてあるようだ。

 だったら最初から三脚とか置いておいてくれてたほうがいいのに。


「ええと……もしよかったら、ルイ先輩が撮影してくれませんか?」

 さて、そんな店長さんたちの質問に千恵ちゃんが答えたのはそんな内容なのだった。

 まあ、そりゃ知人のカメラマンがいて、お願いすれば撮ってくれそうというなら、それは提案してみていいとは思うけれども。


「商業利用不可、三枚まで、なら、くらいしか言えないかな」

 できれば、もうちょっと撮ってあげたいところだけど、ここで安売りするわけにはいかないのです、というと、千恵ちゃんは目を丸くして、普段はあんなに頼まれていないのに大喜びで撮るというのにっ、と驚いた。

 うーん、これがね二人きりっていうなら別だったんだよ? いくらでも好きなだけ撮ってあげてたし、こっちも楽しくてあちらも大喜びというWIN-WINの関係に違いなかったんだ。

 でも。

 ここには、他の人達もいるわけで。


「おぉ、プロの写真家さんにただで撮影してもらえるとなると、うちもかなり助かります」

「です。いっそのこと、プロが撮影担当するドール屋さんってことで宣伝できますね!」

 ほら。

 無料で撮るよっていうと、すぐにこういう話になってしまう。

 もともと佐伯さんからもぶっさぶっさと釘は刺されているのだ。

 プライベートの撮影まで禁止はしないけど、お願いされて撮る物にかんしてはちゃんと対価を取るように、とね。

 でも、千恵ちゃんからお金を取るなんて真似はもちろんできないわけで。

 

 うん。知り合いの紹介での仕事などで、お金とることはもちろんあるんだけど、いわゆる新人であるルイの撮影価格であっても、千恵ちゃんにとっては結構な負担になってしまうはずなのだ。

 だから、妥協して三枚だけ。しかも拡散禁止というくらいが限度なのである。


「ここで専属で雇ってもらうということなら、一日あたりこれくらいはかかっちゃいますけど」

 ちらりと、タブレットで値段表を見せると、うぐっと店長さんは喉をならした。

 気楽にお願いしようと思ったら、正規の値段がでてきちゃいましたー、という感じだ。


「もちろんこれは、記念日やお祭りなどの特別な日の撮影ですから、週三回とかっていう継続的な契約になるならもうちょっとお安くはなると思いますけど……ちょっと続けてってなると厳しいと思います」

 まあ、例えばイベントで三ヶ月に一回とか、大撮影会! みたいな感じなのをやって、そこに呼んでもらうとかなら、あるいはとは思いますが、というと、ファンの集いみたいな感じか……と店長さんはふむんと顎に手を当てた。

 もしかしたら、ドール関係でイベントでもやろうとか思っているのだろうか。


「そんなわけで、千恵ちゃん。三枚とは言ったけど、こんなのが欲しいみたいなの、打ち合わせしてから撮ろうか」

 そもそも、どうしてドールなのかというのを聞いておきたい! と切り出すと、彼女は、ん? と首を傾げた。


「こんな可愛い子を前にして、どうしてもなにも。そこにドールがいた。手に取った。だと思います」

「……なるほど」

「ですよね! もうこんなに可愛い子がいっぱいなら、立ち止まってじぃーっと見て、呼ばれるがままにお迎えするしか無いですよね!」

 ルイが一人、えぇーその反応と思っていると、店員さんはきゅっと千恵ちゃんの手を握りながら、わかりますー! と全力で同調した。

 うんうんとそんな光景を店長さんは満足げに見守っていた。

 こりゃ、ルイだけ一人アウェーな感じである。


「それと……あとは、私だけの趣味を持ちたかったっていうのもありますしね」

 お姉ちゃんばっかり先に進んでいるから、そろそろ私も自分のことをね、と千恵ちゃんはすさまじく柔らかい表情を浮かべやがりました。

 うん。一枚カシャリと撮りましたよ。

「ちょっ、ルイ先輩!? 今のは!? まだ全然準備とかできてないのにっ」

「ああ、ごめんごめんあまりに千恵ちゃんが緩んだ顔をしたものだから。今のはあたしのコレクションになるだけなので、枚数制限の外です」

 お仕事ではなくプライベートです、というと、じゃあ、プライベートでもっと撮ってくれてもいいじゃないですかー、と彼女は言ってきた。

 まあ、それはね。


「千恵ちゃんがあたしをその気にさせたら、シャッターは切られます。さぁいい顔をした分だけ撮影枚数は増えますよ」

 まあ、もちろんそれをプレゼントするかどうかは別ですが、と言っておく。

 勝手に撮ったものなので、それを彼女に渡す必要はないのである。

 場合によっては姉の方にプレゼントしたとしてもいいというわけなのだ。

 

「……意識してそれができるほど器用じゃありませんからね。三枚にすべてを注ぎ込もうかと思います」

「えぇー、お客さん。いい顔すれば撮ってくれるんだったら、こー、にっこりーとか、いえーいってピースしたりしてみたらどうです?」

 もったいない、と店員さんが首を傾げる。

 撮りたい写真の条件がそろえば撮ってくれるのなら、それを表に出していけばいいじゃないか、というのは決して間違いでは無い。


「どうせ、ルイさんって狙ってやった顔で満点をたたき出せるのは、被写体(パートナー)であるエレナさんか、恋人(パートナー)である珠理奈さんくらいですもん。うちら素人はうっかり出たいい顔を拾ってもらうってくらいでいいんですよ」

 下手に演技でもしようものなら、すぐに興味なくしちゃいますから、この人、と千恵ちゃんが割と的確な事を言ってくる。

 でも、いちおうは必死に演技をする子は撮影していて楽しいよ?

 初参加のレイヤーさんとかは、ちょっとびくびくしているけれど、そのキャラが好きな姿とか見せられるとほっこりするし。


「個人的にはポーズをとってない顔のほうが好きではあるけど……だいたい、両方とも撮るよ?」

 依頼ならね! というと、ぐっ。昔のルイ先輩ならいくらでも撮ってくれたのにー、と千恵ちゃんはぎゅーっとドールを抱きしめた。


「一枚はぎゅって抱きしめてる絵でよさそうだね。背景はどうする? 今入ってるのは、さっき見た感じだと船からの海の夜景とか、草原とかって感じだったけど」

 この部屋、プロジェクターで背景も写せるんだけど、と言うと千恵ちゃんはううんと声を上げた。

「えっと、ルイさんが持ってる写真から背景を使うことはできますか?」

「それは……ああ、店長さんもいろいろ見たい感じですか?」

 今日はそんなに背景画像ないよ? といいつつ、タブレットに写真を表示させていく。

 もちろん、公開不可のものは無理だし、そもそもルイのプライベートに関わることは削除してある。

 姉様の結婚式のはそもそもカメラすら違うのでこちらに紛れていることはなかった。

 そりゃまあ、うっかり女物のパンツが荷物に入っていたりしたことはあるんだけど、こっちは大丈夫だ。


「これっ。なんですかっ。めっちゃお洒落なカフェじゃないですかー」

 うわっ、うわーー! と、店長さんたちが声を上げる。千恵ちゃんは、ああシフォレですかーと、場所を理解している感じだった。

 まあ、姉が働いているお店だしね。 


「あの……これ……背景画像として譲っていただいたりは?」

「それは、店の持ち主と交渉になるかと思います」

 連絡先は教えてあげるので、まずは、一回お店に行ってお茶してくるといいんじゃないですかね? というと、それは……ぜひっ! とお店の二人はテンション高めに答えた。

 どうやら、あの雰囲気だけで、良いお店っぽい! と判断したそうだ。実際ケーキもおいしいし、すっごく良いところではあるけどね。


「で、ルイ先輩はなにしてんですか?」

「さっきの反省をいかして、ちょいとレタッチだね」

 未先さんに比べるともはや足下どころか、かかとの皮にかするくらいなのですが、と、その写真から余計な部分を削って、サイズが適正になるようにする。

 今回は、千恵ちゃんも一緒に写るので、スケールとしてはそんなにいじりはしない。

 あくまでも千恵ちゃんをメインに据えて、彼女が抱きかかえている人形という形にする必要がある。

 

「おまたせ、これでいけると思うから一枚目はこれでいこうか」

 んじゃ、プロジェクターセットしましょう、と店長さんにお願いする。

 彼女は、いいなぁーと言いながら機械を操作していった。

 そして千恵ちゃんを椅子に座らせて、その傍らにドールを持ってもらう。

 こちらは、店長さんのとは違ってちゃんとした女の子のドールである。

 

「そういや女の子のドールなんだ?」

「それは……はい。好きっていうのもありますけど、姉の目もありますから」

 さすがに、男の子のをお迎えしたら変な誤解とかさせそうと千恵ちゃんは言った。

 それは考えすぎでは? とも思うけど可能性は潰したいのかもしれない。


「お姉さんもこっちの道に呼び込んでしまえばすべて解決だと思うのですが」

「あー、姉は無理ですね。いまやリア充ですから!」

「だよねぇ。まさか今みたいになるとは昔は想像もできなかった」

 うんうん、と言いながら少し柔らかい顔になったところを一発撮影。

 千恵ちゃんは千歳の事を話してるときが一番表情が緩むと思う。


「そしてリア充にはお金もかかるんです。先日は一緒に旅行でデートですよ? 服とか旅費とかだいぶ抑えたみたいですけど、それでもけっこうかかったみたいで」

「さすがにドールにはまるっていう余裕はないと思います」

 はい。と、いいつつ、一枚目の写真ができたので、それを見せておく。


「おぉー。シフォレの中でドールとご一緒感でてますね! シフォレに連れて行くことはできますか?」

「いづもさんならダメとは言わないだろうけど。でも、女性同伴の枠には入れません! っていいそう」

 例えば男性が女の子ドールを連れてきてこれで、女性同伴って言い切るのは無理だろうと言っておいた。

 まあ、当然のことなのだ。いづもさんは女装の子とかが入りやすいように女性同伴のシステムを採っているわけだから、そこでドールを連れてきて同伴です! なんてことはできない。

 なんにせよそれもお店に確認が必要なことである。席が埋まっちゃうってのもあるしね。


「さて、それじゃー、次は草原にて、ということで」

 良い感じの田舎の背景をごらんにいれましょう! というと、あぁもう、次から次へと良い背景がでてくると店長さんは言った。

 いちおう気に入ったのがあったら、背景画像として使っていただくことは考えている。

 でも、お値段をどの程度にしたらいいものか。そこらへんはまだまだなルイなのであった。




「ええと。調査の結果ー。千恵ちゃんは自分の趣味を見つけ始めた、ということで」

 シフォレでお茶をいただきながら、今回の依頼人である千歳に調査の報告をすることにした。

 今日のお茶は依頼料ということで彼女のお支払いである。ま、そうはいってもケーキはこっちもちだし、それこそ数百円という話なんだけどね。手術でお金使うのがわかってるのでそんなに無茶な要求なんてルイはしない。


「自分の趣味……」

 どうよー! このドールさんの群れは! と、あの後許可を取って店舗内の撮影をしてきたものがタブレットに映し出された。

 各種いろいろなものが並んでいるあのお店でも、千恵ちゃんお気に入りの種類のところはさらに重点的に撮ってきている。

 

「いっつもお姉ちゃんお姉ちゃんってついてきたあの子が……一人でなんて」

 いったいなにがあったのー、と千歳は複雑というか、心配そうな声を上げた。


「それはほら。お姉ちゃんが未来に歩き始めてるから自分もって思ったみたいよ? いつまでもお姉ちゃんお姉ちゃんってべったりはできないって」

 これが姉離れというやつですねー、というと、けっこーさみしいです、と千歳が言った。

 結局あの後、千恵ちゃんは撮影につかったドールさんを大変気に入り、裸体でお迎えすることはできないので! と、今月のお給料日を待っているような状態だった。

 そうそう。千恵ちゃんも高校のころからアルバイトをしていて、積立貯金をしていたそうなのだ。

 ま、これに関しては千歳には内緒なんだけどね。

 そして積み立て以外の分でいろいろ身の回りのものにお金を使っていたそうで。


 なんの積み立てかっていうのは、いつか来る手術の日のためにってことみたいで。本当に泣かせる妹である。

 高校一年からはじめてもう四年くらいになるんだったかな。月一万ずつ貯めていって、今では五十万くらいは溜まってるのだそうだ。

 そっちに手を付けてしまえという思いは、まったくでないあたりが、お姉ちゃんっこである。

 まあでも、ある程度働いていれば貯金の額としてはやれる範囲だと思う。

 高校生で自分以外のためにお金を貯めるということはちょっと、かなりレアだとは思うけれど。

 これが双子のなせる技かーなんて思ってしまう。


 千歳にこれが内緒になっているのは気を遣わせないためだし、もし手術する時に足りなかったら助けられるための貯金であるとも言っていた。基本的には千歳自身でまかなうべきというのはあちらの家族の考えなのだそうだ。


「いづもさんはどう思います? 女の子の人形好きのセンスって」

 ちょうど厨房から出てきたいづもさんに声をかけておく。

 今の時間は、お昼が終わっての休憩時間帯だ。別にあんたなら関係者みたいなものだから、とこの時間にお邪魔させてもらったのは、千歳の休憩時間に話をするためである。いづもさんもある程度の仕込みは終わったようで、会話に混ざってくる気まんまんなようだった。

 すでに手にはカップがあるわけだし。


「どうなんだろう。あたしはバービーとかリカちゃんとか、そういうの持ってる子がうらやましいって思ったことはあるけど、今じっさい、それを見て欲しいかっていわれると、悩ましいのよね」

 お人形遊びはちっちゃい子がやるものっていうイメージとこの店のオーナーである彼女は言った。


「いづもさん。昭和で歴史止まってる感じなんで補足しますけど、いまのドールやばいですよ。かわいいですよ。ほらほら、こんなにいっぱい種類あるんですから」

 やっばいですよーと言いながらドールを見せると、たしかにこれは可愛いわね、といづもさんはため息を漏らした。

 昔もそれと違って最近のは作り込みが半端ないのだ。

 値段も確かにすさまじかったけれど、すっごい可愛かった。


「でも、ルイ先輩、これっ。これもかわいいっていうんですか?」

「……その言い分はあたしもわかります。でも、ほら」

 いえーいとドールとご一緒な店員さんはもう幸せでたまらんという顔を浮かべていた。

 ちなみに店員さんが持ってるドールは目がやたらと大きい子である。


「好きな写真が違うように好みは人それぞれっていうじゃない?」

 それに千恵ちゃんが選んだ子は、美しいと思うけど、というとそれはそうですがと千歳はいった。

 千恵ちゃんと一緒にドールが写っているのだけど、その女の子はリアルな造形で関節もしっかり動くタイプの子である。

 相当な美人さんという感じである。


「そうじゃなくて、ですね。って、ルイ先輩もちょっとダメな感じですか?」

 おや。なにやら千歳がちょっと目を輝かせ始めている。

 いづもさんはというと、最近はいろいろあるのねぇと、ちょっとおばちゃんな反応なようだった。


「ルイ先輩でそれなら、うーん。いいのかなぁ、別に」

「ちょ、それ、どういうこと?」

 千歳の反応がちょっと不思議で、首を傾げておく。


「つまり、その……ドールの趣味の問題ですね。妹が選んだのは割と男女両方ともにウケがいいんですけど、さっきのお店の人? が持ってたのって男性ウケが悪くて……」

「それで、ちーちゃんは自分の感覚でも微妙と思った、と」

 迷いまくりなお年頃ねぇと、いづもさんが紅茶をすすりながら言った。

 なんというか……最近のいづもさんは千歳のお世話をしているからか、ぐっと保護者な空気感が増した気がする。

 おばちゃんっていうと、怒られそうだけれども。


「そこは個人の趣味じゃない? たぶん女子でもあのドールさんはちょっとって人いると思うし」

 それを言ってしまうとそもそも、女子だったらみんなドール大好き! なんてことないじゃん、というと、そう言われるとそうかも、と千歳はため息を漏らした。


「もう五年以上女子やってるんだから、いい加減そういうところ考えるなって言ってるんだけどねぇ」

 好きなもんが全部女性向けじゃないとダメなんてことないんだし、といづもさんが言うと、気になっちゃうんですってばと千歳が答えた。

 ま、そこらへんはまだまだ悩んでもらうとしよう。

 さすがに助言をするような事はできないとルイは思う。


「さて。まあそんなわけで、千恵ちゃんのドール騒動に関してはこんな感じ。あんまり心配しないでも大丈夫だから」

 見守ってあげるといいよ、と言ってあげると、ちょっと複雑ですと千歳は漏らした。

 なかなかに妹ばなれをするのは、まだお時間はかかるようだった。

ドール編もうちょっとコンパクトにと思っていたんですが、すっかり長くなってしまいました。

無事に千恵ちゃんはご購入になりそうで、新しい扉が開きそうですね。

おでかけに連れて行って一緒に撮影とかすると楽しいと思います。

話中では男女差を出しましたけど、まー、人形の趣味って性差より個人差だよなぁとしみじみ思うばかりですね。愛でたい子と出会えることを祈ります。


さて、次話はどうすんべ。


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