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062.

「クリスマスパーティーに是非来て欲しいんだけど……ルイちゃん用事ある、かな?」

 と、誘われたときは正直すさまじく悩んだ。

 相手の学校はいうまでもない、エレンが通っているところなのだから、思い切り男子校なのである。

 どうにも、ほとんど生徒主催のイベントで保護者は参加せず、無礼講というような状態で例年盛り上がるらしい。

 そしてこのイベント、学外の女性を呼ぶことを奨励していたりするのだそうだ。

 いうまでもなく、エレンの所は男子校であって、女生徒はいない。見かけ上そうっぽいのは二人いるのだが、片方はあまり着飾らないしそもそも女子ではないので、いない、で正しい。

 そんな環境のクリスマスパーティーなので、学校側としても教育の一環としてとある試練を生徒に投げかけているのである。

 そう。良いところのお坊ちゃん学校であるということ。つまりは、主催者(ホスト)としての経験を積ませるために、知人の令嬢を連れてもてなそうというのがこのイベントの大筋なのだという。たいてい親戚や兄弟姉妹がいればそこらへんから、いない場合は知人を招待したりするのだそうだ。

 そしてエレンが招待する相手としては一番理想的な相手がルイでもある。

 エレンとしてはリハビリもかねてと思っているのだろう。でも果たしてそれがどの程度できるのか。学校にいるのはあそこの生徒の家族や姉や妹ばかりで、ルイと生活ランクが同じような相手はいない。そしてそれよりも多い数で男子がずらりとならぶわけだ。

 いちおうは、これでも彼らの一部に覚えられている自信はある。それなりに撮影をさせてもらったし和気藹々とさせていただいたのは、まだ二ヶ月も経ってない頃だ。

「用事はないよ? どうせ今年もクリスマスは家でゆっくりするか、イルミネーションの撮影しようかなって思ってたくらいだし」

 ルイのうちはクリスマスよりもお正月を重視する家だ。年末はおせちを一緒につくれと母親には言われるし、それなりに忙しいけれど、クリスマスだったらそうでもない。

「だめ、かなぁ?」

 上目使いの懇願の破壊力といったら、普通の女子であってもこれには逆らえないだろう。しかも誕生日を祝ってもらった席でのそんな提案なので、なおさら断りづらい。

 そんな経緯があってふたたびエレナの学校へいくことになってしまったわけで。

「寒い……」

 相変わらず大きな学校である。あのときは撮影のノルマもあって隅から隅まで見て回ることはできなかったけれど、校舎も三個はあるし、体育館になにかの研修施設なのだろうか、別棟もある。その中の一角、講堂の中がイベントの会場となるところだった。

 今日は、エレンの家から車で送ってもらったのだけれど、だいたいのところはお出迎えまでしっかりとやるらしい。もてなされるというのはここまでされることを言うのだなとカルチャーショックである。

 ドレスコードはないのだけど、ホスト側はタキシードだったり、スーツだったりいろいろだ。エレンはその中で少し浮いているようだった。パーティーのときもそうだけど、この子は平服で男っぽい服はそれほど着ない。なぜならば似合わないからだ。かといって女子服にするわけにもいかず、コスプレももちろんむりなので、やや柔らかめな感じのスーツ姿にしているようだった。それでも最近少しずつ伸ばしている髪のせいで、ぱっとみ男子には見えない。

 タキシード姿はきっとショタオーラがでてそれはそれでかわいいのだろうけど、本人は嫌だと言うのだから無理強いはできない。騎士とかは普通にやるんだけどこだわりがあるのだろう。

 さて。ではルイの格好はというと。

 おもいきり着替えさせられました。誕生日のパーティよりは大人しめだけれどそれでもベージュのワンピにブラウンのボレロを合わせている。ファー生地は食事の兼ね合いもあるし避けようと言うことでそこまでふわふわはしていない。エレナが言うには結婚式などでは殺生を連想させるので、生き物の毛や皮を使ったものはさけるのだという。

 キリストの降誕祭でもあるのだし、そういうのは避けておきましょうとなったのである。

 ここにくるまではさすがにそれだけでは寒いのでコートを上に着込んでいる。これもエレナの私物。いやコートくらいはこっちもかわいいの手持ちであるけれど、やはり生地の質だとかはかなりかわってきてしまうので、素直に借りたのだった。ライトピンクのコートと、茶のブーツをあわせて完成。さすがに会場内では脱ぐけれど、ルイにしてはちょっと甘めのコーデである。

 執事の中田さんはどちらのルイさまもおきれいですよと言ってくれていたけれど、本当かどうかはよくわからない。ちなみに中田さんにたいしては嫌悪感はあまりでなかった。威圧感はあまりないし自然な感じでいてくれるのである。下心のようなものが感じられないというか、見守られているようなほっこりした感じがするのだった。

 きっとあれは、エレナをいつも見守ってるからそういう感じになるのだろうね。

「会場の中はしっかり空調効いてるから、大丈夫だよ」

 さぁ、おいで。とエレナにちょこんと手を掴まれてエスコートされる。

 うん、まったくもってすべすべで可愛らしい手である。これならばいくらにぎにぎしていてもぷにぷにした感触がしてむしろ楽しいくらいだ。

「本日はご来場ありがとうございます。我々一同、みなさまに楽しんでいただけることを心より願っております」

 いらっしゃいと建物の入り口で、生徒会なのだろうか? 上級生が三人ほど立っていて来場者をエスコートしている。エレンはいったんそこでこちらの手を放すと、さぁイケメンさんにご挨拶してもらいなさいなと背中をぽんと押す。

 う。とことこと何歩か進むと、ちょうどそこで三人に取り囲まれるようになった。

 あれ、そこまでこわく、ない? そりゃたしかにあちらの方が身長は高いけれど、優しく手を引かれるのはけして悪い気分ではないかもしれない。

「これはルイさんではないですか。先日の学園祭の写真はありがとうございました。今日は楽しんでいってくださいね」

 そして、そのまま会場に入るとそこはもう別世界だった。

 コートは脱いでしまってよいほどの温度に整えられていて、実際来客達はつぎつぎとハンガーラックに衣類を預けている。そこらへんも生徒がきちんと対応しているようで、どこになにを置いているのかチェックして引換券のようなものを渡しているようだった。

「ね? 言った通りあったかいでしょ?」

「この広さをしっかり暖房するなんて大変でしょうに」

 この講堂はそれこそ木戸達の学校の体育館よりも広い。けれどもここはあくまでも講堂であって、講演やらのために使われるスペースであって、体育館は別にあるのだという。どう違うのかといわれると、体育用の設備が見当たらないところだろうか。バスケットのゴールもないし、地面に張られるコート用のテープなんかもない。

 そして前面のステージの上方なのだろうか。そこにはオブジェのようなものがでーんと鎮座しているのである。高そうだ。

「さて、ダンスパーティーが始まるまでは時間があるし、ちょっとおなかでも満たしておく?」

 上着を脱いで身軽になったのをいいことに、エレナは並んでいるビュッフェの山の前に向かった。

 今回のものは生徒が作ったものではなく、手配をして用意をしたもので、しっかりしたものだから、たらふく食べるといいと笑顔で彼は言う。どこまでルイを意地汚いと思ってるのだろうか。もちろんあるものはおいしくいただくけれど。

「お飲み物はいかがですか?」

 タキシード服の若い子がすっとお盆を差し出してくる。こちらも生徒なのだろう。そのさまは割と絵になっていて、なかなかうちの学校の男子ではこうはできないよなぁと思わせられる。かっこいい。

 そんな彼から少し白く濁った液体をいただく。シャンパングラスにはいっていて大変に美しい。

「あ、ナシだぁ。ナシで炭酸って初めてかも」

「いちおー雰囲気だすために炭酸系でシャンパンっぽくしてるみたいだよ。あとはスパークリングのグレープも個人的には好き」

 市販でも似たようなものが売っているのだが、こっちはフレッシュな感じでつくってるのだろうなぁと少しだけ遠い目になる。

 それから、料理をいろいろとつまんでいく。あまりにがつがつすると周りの視線を集めてしまうので、ほどほどに少しずついろいろなものを味あわせていただいた。さすがはお坊ちゃま学校である。どのご飯もすごくよいお味だ。

 エレンの誕生日の時とは違って、今回はお客も割と食事のほうに集中しているのも嬉しい光景だった。招待した相手をもてなしながら、好みのものを取り分けてあげたりとかしていて、そんな姿もほほえましい。

 ああ、右手が軽くうずいた。今日はエレンのお願いでカメラは置いてきているのだ。コンデジは持っているけれど、今はポーチの中にしまわれている。

 そんな時間がしばらく続いただろうか。そこでマイクを持った人達が現れたのだった。

 先ほど入り口でみなを出迎えていた三人だ。

「では、みなさまもご歓談が一段落したところで、イベントの華でもあるダンスの時間を始めようと思います」

 演奏者は、こちらの皆さんです、と、ステージの上で待機していたのは吹奏楽部の面々だ。男子校でもしっかりとメンバーは集まるものなのだなぁとしみじみ思ってしまう。どうしても吹奏楽は女子のほうが多い印象なのだ。

 そんな彼らは優雅な手つきでそれぞれの楽器を奏で始めた。まさかの生演奏でのダンスパーティースタートである。 

 まずは一曲目。ぱらぱらと参加者たちは会場の空きスペースとなっていた中央へと向かっていく。

 けれどもルイはその場を動けないでいた。

「んじゃ、踊ろっか?」

「んやっ。ちょ、無理だってば。フォーマルなダンスなんてわかんないよ」

 あわあわとしているのは、周りにそう多くはなかった。そのときの気分で踊りたいか踊らないかを決めるというような感じで、踊れないからやらないというような人はほとんど見受けられないのである。

「あわせてくれるだけでいいよ。引っ張ったりとかでリードしてあげるし」

 試しにやってみようよといわれて、でもと、自信なさげな声しかあげられなかった。

 ここは完全にアウェーである。改めて住む場所が違う所だ。

 それでもだめなら一緒に恥をかこうとまでエレンは言ってくれるのだが、それでいいのだろうか。

 運動神経はないではないけれど、初見で踊れるほどの才覚はない。そりゃエロゲの男の娘はハイスペックをほこるのだろうけれど、ハイスペックじゃなきゃ女装できないわけでもないこの世の中は、ルイみたいなのでも大丈夫なのである。完璧超人じゃないと女装が許されない世の中など嫌である。

「なら、一回転んだらそこまでね。怪我もしたくないし」

「それでもいいよ。じゃ、次の曲からまざるからねー」

 さぁおいで、と誘ってくるその姿は華奢なショタ少年という風情である。そのくせまったくもって男臭さがないので、怖いなんて思いは全くでてはこない。

 求められるままに手を添えると、新しい曲が流れ始めた。

 軽く手で指示を出してくれるし、足の動きも右足左足と、つぶやいてくれる。

 なので、なんとなくだったけれど、とりあえず様にはなったようだった。

 いちおう、今回はエレンが男性用のステップでルイが女性用ステップをやっていたらしい。

 一曲が終わる頃には、あまりの集中にどっと疲れがでた。楽しく躍ると言うよりは緊張が強すぎて身体に力が入りすぎてぎしぎしする。

「すごいよルイちゃん! 絶対転ぶって思ってたのにやりこなしちゃったね」

「指示が良かったからだけど……もう嫌だからね。やるなら来年きちんと覚えてリベンジとかで」

「もぅ……しかたないなぁ。でも、今日はルイちゃんゲストだし、その言い分には乗ってあげる」

 さ、壁際にいこうか、とエレナに連れられると、再びご飯がたっぷりのスペースに戻ったのだった。




 まだパーティーはつづいているのだが、トイレにいきつつ途中のベンチで休憩をすることにした。人が多いというのもあるけどやはり男子が多いのが少ししんどい。今回のトイレは今日だけ女子トイレと看板が張ってある所を使わせていただいた。

 その途中にあるベンチで一休みしながら、ポーチの中身に手を触れる。

 なるべくなら今日は、撮る側じゃなくて参加する側でいて欲しいな、というのがエレナの今日のお願いだ。

 だからまだ、手をだしてはいないのだけど。さすがにここまでくるとうずうずしてくる。学校で写真が撮れないのはしかたがないと思うけれど、ここでの撮影は別に禁止をされていないはずである。

「こんなところで一人でどうしたんだい?」

 寒いだろうにと、彼はすっと缶の紅茶をルイの首筋に当ててくる。

 ああ、温かい。

 でも、そういうことをする相手に心当たりがあまりない。

「写真部の先輩さんですか?」

「そ。正解。三年で元部長をやっておりました。それよりルイさんこそ一人でこんなところでどうしたの?」

 正直、休憩をとるか暖かさをとるかという位だったので、温かい飲み物がいただけるなら何よりだけれど、こんなところを三年生がうろうろしていていいのだろうかとふと思う。

 もう受験も目の前で、少なくとも木戸の学校なら三年の今なんて追い込みをかけている時期のはずなのだ。

「ちょーっと人に酔ってしまったので、脱出です。それほどパーティーになれてないし男子校となるとさすがにちょっと勝手が……」

「ああ、君は共学に行ってるんだっけ? タキシードばかりってのは不思議な感じかな」

「学校でそういう風景っていうのには慣れないところですね」

 かぱりといただいた紅茶を開けながら、少しだけ困ったように首をかしげる。

 いちおう男の人と一対一でもなんとかしゃべれるくらいにはなったらしい。相手が写真関係の人というのもあるだろうか。

「それより、学園祭の時の彼、その後大丈夫なんですか? とあるイベントで一回会いましたけど」

「ああ、まだわだかまりはあるにはあるんだが……考え方は人それぞれだしなぁ。俺はルイさんのわくわくしながら撮った写真も好きだし、自分で使い慣れたものを使うのも好きだし、あいつが安い機種でいい写真を撮るのがなにより大切というなら、それはそれで仕方ないなってさ」

 俺達は自分たちで選んだ機種で良いものを撮れればそれでいいって思っていると彼は言い切った。

「それはそうと、今日はルイちゃんはカメラ持ってないんだ? あれだけの写真馬鹿なのに珍しい」

「いちおうコンデジは持ってるんです。でもエレンが今日はごつくてむさいカメラは持って来ちゃダメっていうんです。いじめっこです」

 まったくもう、とふくれていると、まあまあと彼は宥めにかかってくれた。

 たしかにドレス姿にカメラはあわないとは思う。けれど楽しみの大半は撮影なのだからホスト側としては是非ともその意を酌んで欲しいものなのだ。

「そういうことなら、俺のカメラ使うかい? 部室にもう一台置いてあるし」

「え、いいんですか?」

 かなりのありがたい提案に胸が暖かくなっていく。暖かい飲み物の差し入れもありがたいけれど、それを使わせていただけるというのならばこれ以上ありがたいことはない。思わず男性相手に前のめりになってしまった。

 はい、どうぞと言われて渡されるとずしりと黒い重たい感触ににまりとしてしまう。普段ルイが使ってるのよりももう少しグレードが上の子で、重さもそこそこあるものだった。操作性は基本ルイが使っているものとあまり大差がない。けれどファインダーがついていたり、背面パネルが動いたり、おまけにレンズも各種そろっているようで、豪華の一言しかいうことができない。「これ、会場内も撮っていいんですか?」

「もちろん。たしかにドレス姿でカメラっていうのはどうかなって思うけど、さっきまでの君より断然そのほうが楽しそうでいいよ」

「ははっ。たしかにそうですね。パーティーのご飯はともかくとして庶民の身としてはそれほどに芸術がわかりませんし、ダンスなんてそれこそ小学生の頃にキャンプファイヤーで踊ったくらいなものですよ。最近の小学校はダンスも必須科目になってるみたいですけれど」

「そういう意味では我々はすべてのお客さんに楽しんでもらえるような会はできてないのかな。どうしても同じような人たちに対しての会になってしまうというか」

「それは仕方がないことですよ。やはり文化の違いっていうのはあるし、それにここに来ている人たちの九割くらいはそういう生活の人たちなのですから」

 育ちの違いが故に学校で孤立するなんていうことも、このてのお坊っちゃま学校を舞台にした物語にはありがちなものだ。全部の人対象にということを考え始めてしまうと、それこそ多種多様なものを用意しないといけなくなる。そんなことは無理だし、あとはこの学校というフィールド内でいかに相手が楽しめるのかだけ模索してくれればそれでいいのだ。

 そんな話をしていたら、彼はそういうもんかもなと、うなずいてくれた。

「さて、それじゃ撮影の邪魔をしてもなんだし、俺はそろそろいくよ。写真ができたら是非見せてくれ」

 君が見た景色を我々にも見せてくれよと言われると、その硬質的な感触に熱がこもっていくのがよくわかった。

 こんなに優しい人がいるなら、男の人だって怖くはない。きっと大丈夫なのだ。カメラと一緒にいれば自分は誰とだって打ち解けられる。

 そう思い直すと、ではさっそく一枚と彼の素顔を撮影した。むろん練習もかねてである。




 パーティー会場の中では元気な声が響いていた。タキシード姿と話ながらポーズを撮ってもらったり、来客としてきている生徒の親族の人達と服装について盛り上がりつつ、そんな光景を撮ってみたり。ご飯やら、吹奏楽部の全体構成までの写真までもを押さえる始末で、いままでめっきり撮れなかった分を補填するかのように、ひたすら撮影をしている姿は、一部からはほほえましいと言われ、一部からは鬼気迫ると思われているようだった。

 それを満足そうに見ながらエレナは、あのカメラの本当の持ち主に声をかける。

「ありがとうございます、先輩」

 グラスを片手に一人フリーになっていた先輩に声をかける。

 宣言通り部室からカメラを一台彼も持ってきていて、撮影などもこなしているのだが、今は休憩中でビュッフェから甘いものでもつまんでいる所だったのである。

 そんな彼も、ルイのあまりにも激しい動きっぷりに、うわぁと呆れ半分物珍しさ半分な表情を浮かべている。

「どうして三枝が直接ああしてやらなかったんだ? 彼女ならカメラだけ渡しておけばいくらでも大喜びだろう」

「うーん。僕以外の男の人からそうされないと、恐怖症がなおらないって思ったんですよ」

 そういう意味ではとても感謝していますと、エレンは言い切る。今のルイは客観的に見て、男性にも遠慮なく声をかけているし、ガンガン撮影をしていて、修学旅行前の彼女と同じような感じだ。もう吹っ切れたのだろうしこれなら今後の活動にも支障はでないだろう。

「恐怖症って……ルイさんなにか男にひどい目でもあってたのか?」

 最初の頃はびくびくしてて、らしくないと思っていたんだと彼も言う。エレンの学校の文化祭の時は先輩相手であろうと物怖じしないルイが、どこか精彩を欠いている感じがしたのだった。内気な女子という感じでそれはそれで可愛らしかったのだが、今みたいにポジティブなほうが魅力的なのである。

「彼女は僕のことを男として認識してないですし、それで優しくしてもせいぜい女友達が気を使ってる程度にしか思いません。それじゃ治りませんもの」

 ほとんど同じ理由でよ~じに頼むわけにもいかなかった。エレナに言われてやっているのだとなると、それはそれで男子の優しさというものが身をもって実感できない。

「でもこれで完全復活かな。さすがにあの状態では荒療治になっちゃうかもと思ってましたが、なんとかなってなによりです」

 本当にカメラの力は偉大ですね、とエレンが微笑みかけると、写真部の元部長さんは身体を硬直させながら、ま、まあなとぶっきらぼうに言うしかなかったのである。


 思えばルイって男の人から言い寄られたりはするけど、優しくされたことってあんまりないんですよねーということで。銀香のおっちゃん達は優しいんですけどね!

 さて作者の出身校は基督系ではないのでクリスマスパーティー的なのをやったことはないのですが、この学校も基督系ではないのでミサとかはやりません。ミッション系スクールとかだと、もっといろんな儀式をやるのでしょうね……

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