584.男友達と、夏旅行15
遅くなりましたが、とりあえず更新。
「ポンっ、この先、300m先、左です」
その案内に従いながら、アクセルを軽く踏み込む。
なんというかこう、車内の空気はずんと重くなってしまっていた。
「でもこの配置になったのは初めてだけど、さすがに広い車はいいっしょ」
暗い雰囲気に耐えられなかったのか、白沢氏が明るい声を上げた。
さて、今の席順は木戸が運転なわけだけど、助手席が早見くんだ。そして二列目の席に白沢氏が座っている。
美鈴はどうしたってことなのだけど、実は一番後ろの席で外の風景を見ながら物思いにふけっている。
先ほどのびわの道の駅での突然の告白はもちろん、彼女に少なからない衝撃を与えるにいたった。
は? え? へ? と固まった顔はもちろん撮影させてもらった。
本人はいやがるだろうけれど、もちろんその顔も撮影済みである。
後でいやがったら、消す? そんなことはしない。ひっそりとライブラリに保管するだけだ。
もし、いろいろがうまくいかなくて、それで双方から願われたら消して上げようかと思っている。
「まあ、ちょっと考える時間はいるよね」
さて。告白された美鈴はそんな感じだったわけだけど、その後の答えはといえば。
もちろん「考えさせてください!」という一言なのだった。
美鈴としてはいきなり言われて、え? と硬直してしまい。
最終的にはびわパフェのシャーベットをつっこんでやっと正気に戻ったという感じで。
そしてそのあとは、物憂げに車で外の風景をみるばかりという感じなのだった。
「物思いにふけっても、トイレはちゃんといいなよね!」
さすがに大きい車といってもトイレはついていないから! と美鈴にも聞こえるように言うと、わかってますぅーと、返事が来た。
オペをすると一般女性よりもトイレの我慢がしにくいというのがあるので、そこを配慮しての声かけだったのだけど。
悩み事に夢中な美鈴さんはそれどころではないらしい。
ちなみにいづもさんは、トイレは行きたいと思ったときに行かなきゃよ! と言っていました。
どんなに混んでいても、行きたいときは行きますときりっと宣言をしていた。
もちろんいった後は消毒体制はしっかりしているようだけれど。
骨盤底筋の体操ちゃんとやらなきゃ、と言うのも聞いているから、オペが終わってるといっていた美鈴には、勧めても勧めたりないのがトイレのお話なのである。
「そこはさすがに言うから! てか、かおたんいろいろ無粋」
ほんともう、シリアスが消し飛ぶよもう、と美鈴は苦笑混じりに言ってくれた。
ちなみに男子たちからは、あの美鈴たんから返事を引き出すとは、なんていう意見がでたのだけど。
木戸としては、注意事項をしっかりと伝えただけだ。
人は、悩んだり苦しんだりしても、出すものは出さねばならないものなのである。
「そういや、ちょっと思ったんだけど、かおたんって女装して歩き回ってるんだろ? そのときトイレどうしてんの?」
もうちょっとで左に曲がるぞ、というところで白沢氏が、お? と何かを思いついたようにそう聞いてきた。
「そこは想像にお任せします、じゃだめ?」
「いや、だめだろー。かおたんレベルの子が男子トイレ入って、周りがどう反応するのかとか気になるし」
少なくとも、俺は、出るもんも出なくなるね! と、白沢氏が言った。
「早見くんは、あたしが男子トイレ入るとどうなると思う?」
ほら、同窓会の時だってさ、とちらりと、ぐったりしている幼なじみに声をかける。
早見くんは、今のところ執行猶予というか、告白待ちの状態で、実を言えばかなり情けない顔をしているのだった。
そわそわしているのはもちろんだけれど、あまり周りが見えてない。
美鈴が困惑するのは当たり前だけれど、早見くんまでそんなにダメージを受けなくてもと思ってしまう。
「同窓会の日は、普通に職員用の女性トイレつかってたよな、おまえ」
「うん。あたしはさすがにトイレに入るときにカメラのバッテリーは抜くんだけど、他はそこまで気にしないもん。てか、君たちがトイレに入ってて、今の状態のあたしがはいってきて、どう反応するの?」
「ぶはって、焦るかな」
「いやいや、早見っち。大人だったら、襲われたい痴女かなと」
「今だけ、男子、今だけ男子って?」
大阪のおばちゃんでさえ、それが許されない昨今なんだから、やっぱ女子は女子トイレに入ってて欲しい、といいつつ、あれ? と早見くんは首をかしげた。
見た目があれなので、ナチュラルに女子扱いをしていたけれど、木戸はあれで男子なのである。
「一日その格好で過ごしてるのを見ると、まさか男子だとは思わないよな。こんなかわいい子が男の子のはずがない」
「それをいうなら、こんなかわいい子が女の子なはずがない、だよと友人なら言うだろうけどね」
なんだよそれーと言われたけど、まあ、この符丁は知ってる人しか知らないかもしれない。
『ポンッそのさき、百メートル先、左折です』
さて、カーナビを見ると、木戸にはなじみのマークが表示されていた。
トイレなんていかないんだからっ、という美鈴さんの意見とは別に、コンビニに寄りましょうというような、完全に独断な発想で木戸はウインカーをつけた。
まあなんだ。一回お茶でもすれば、いくらか空気もよくなるんじゃない? というような配慮でもある。
「って、コンビニいくんかよ!」
「まあね。お腹はいい感じだろうけど、お茶でもしよ?」
ほれ、男子の前ではいえないこともあるでしょ? というと、まあそういうもんかも、というような声が漏れた。
みなさん、それなりにこのちょっと重たい空気を勘弁して欲しいと思ったらしい。
ま、やだって言われても、休むためによるつもりではいたけど。
「女子特有の、カフェな理論はあれだけど、どうしてコンビニ?」
「はぁ? コンビニはカフェも兼ねるんだよ? ってか、あたしたちがどんだけ豆を……」
というと、みなさんぽかんとした顔をした。
ちょ。えっと、木戸さんコンビニで働いてて、カフェの方のお仕事もやってるって認識だったかと思うのだけど。
うーん。女子的なお茶とコンビニはちょっと印象違うか、な?
「んし、駐車もうまくいったし、さくっとお買い物タイムといきましょう」
「かおたんが強引だ……」
「そりゃそうだよー、地域限定品とか気になるし、レイアウトどうしてるのかなーとか。店長からも遠出するなら是非見ておいで! って言われてるし」
「それ、店長さんあきらかにかおたんのこと、店に引き留めたい気まんまんじゃね?」
バイトにそれを求める店長ってどうよ、と白沢氏は言うけど、うーん、黒羽根店長は誰に対してもそんなんな気がする。
もちろん、入ってすぐのまだわたわたしている子にまでは言わないけどね。
そっちには、早く仕事を覚えよう! っていうのが大きかったりする。
まあ、早く仕事覚えさせろっていうオーラも見え隠れするわけだけれども。
「ま、とりあえずお店入るけど……美鈴はどうする? 車で待ってる?」
「うーん。まってるー」
あ、ジャスミン茶買ってきてー、と言うので、とりあえず美鈴のことはこのままちょっと放置しておこう。
さすがにあれだけどんよりした顔を人目にさらしたいとも思わないだろうし。
「俺は行くけど……ああ、早見っちもくるか」
そりゃそうか、とドアを開けたのを見ながら、白沢氏が言った。
さすがに車の中で二人きりというのは、いろんな意味で気まずいに決まっている。
三人でコンビニの前に立つと自動ドアが開いた。
いらっしゃいませ、と定番のあいさつと、あー、どこもかわんないなーという気分。
来店すると、ぴろんぴろんと音がなるのも、慣れ親しんだ光景である。
「なあなあ、かおたん。かおたんってコンビニバイトはじめてどんくらいなんだ?」
「高校一年からだから、もう五年半くらいになるかな」
「今みたいな格好で接客したりは……さすがにしないか」
「ま、男の姿の方がちょっとバズった時に緊急避難で女装してたときもある……よ?」
まあ、バレンタインイベントの時とかクリスマスとか思いっきりやらかしているのだけど、そこまで白沢氏に言う必要もないだろうということで黙っておくことにする。
「男姿がって……なんかあったん?」
え? と彼は不思議そうにじっと木戸の体を上から下まで見回した。
こっちならわかるけど、あっちで? という疑問顔である。
「こいつ、去年の春は男性芸能人から告白受けてな。黒縁めがねのMって言われてたんだ。モブのMらしいけど」
「自衛のためにーって女装してたんだけどねぇ。これがもう、ひどいんだよ? 黒縁めがねかけてればみんなMだろーとかなんとかいっちゃってさ」
えん罪受けた人結構おおかったんだって、というと、そりゃ木戸は黒縁めがねがアイデンティティだから、とかなんとか言われてしまった。
まあ、黒縁さんは相棒だけれども、そこが本体みたいな言い方は是非やめていただきたいところだ。
「へぇ。正直今の格好してるなら話題になるのはわかるけど、男の姿でってのはちょっとびっくりだな」
すげー-! と白沢氏は素直に感嘆しているようだった。前から思ってたけど、彼はなんというか、さっぱりした人だなぁと思う。
感情表現が素直ってのはもちろんだけど、あんまり否定っていうものをしない。
マジで!(驚愕)はあっても、マジで!(ほんとかよ)ってのがあんまりない。
早見くんが美鈴を好きってことも、するっと受け入れている、割とすごいやつなのである。
「今の格好なら、話題になりそうなんだ?」
「……そりゃまあ。飛び抜けて美人だなぁとは思うしな」
ま、まぁ、深い意味はないぞ? と彼にしてはちょっと歯切れの悪いような言葉が返ってきた。
おや。さすがにこの服装は露出が多すぎるだろうか。
「あのさ、かおたん」
「ん? どしたの? 早見くん」
さて。そんな感じで、白沢氏と話をしていたわけだけど、くいくいと服を引っ張られて早見くんの方を向いた。
だいぶげっそりとしているようで、これじゃ運転とか任せられなさそうである。
「胃薬とか売ってない?」
「……そんなにやつれて……かわいそうに」
胃薬か、とちょっと思考を巡らせる。
いちおうは、深夜酔っ払ったお客さんのために、そこらへんも知識はいれているし、黒羽根店長からも、夜勤やるなら覚えなさいよね! とかなんとか言われたりもした。
実際、今のシフトは高校の頃の延長で、深夜に入るかっていうとそんなことはないんだけどね。
だって、夜寝ないとお肌が! とはいわないけど、むしろ店長がうるさいのです。
クリスマスとバレンタインであんだけ稼いでくれた子に、徹夜とかやらせられない、とかなんとかいうのだ。
個人的には、深夜で割増料金になるのならという思いはあるのだけど。
「ここらへんが胃薬コーナーだね。ビタミン剤とかと一緒に栄養ドリンクの脇に置いてあることがおおいかな」
でも、なんだったらドラックストアまでいくけど? と伝えておく。
これも店長の受け売りではあるのだけど、症状ひどかったら薬局へ誘導した方がいいんだっていう話だった。
コンビニで扱える胃薬は、医薬部外品。ある程度安全性もあるけど、効果も低めというものが扱われる。
マジで胃がやばいなら、薬局行きましょうというのが店長の口癖みたいなものだった。
最近は深夜までやってるドラッグストアも増えたしね。
そこでもだめなら病院てはなしだけど、まあ、店内で倒れたら救急車呼ぶくらいしかできないよ、と店長はいっていた。
木戸が働き始めてから、そういうケースにお目にかかったことはない。
もしかしたら、もうちょっと繁華街で夜の町みたいなところだと、そういうこともあるのかもしれない。
ちなみに彼女は、お酒を飲むときに薬局で売ってる方のお酒対策アイテムを飲んでいくらしい。
そこまでするなら、酒のむなよと思うのだけど、そこらへんは大好きな人からでも言ってもらいたいものだ。
「気休めでもいいから、ちょっと買っておきたい」
告白すんのこんなつらいとか、と早見くんはげっそりした顔でいった。
なんというか、目の前でそんな顔をされてしまうと、こう。
「なんか、すんません」
しばらく崎ちゃんの告白をすっぽかしていた件については罪悪感みたいなものがでてしまう。
結局、結論のようなものは出てないし、なし崩し的に今の関係になったというのが正直なところだ。
でも、言わせて欲しい。
崎ちゃんのことは、嫌いじゃない。一緒にいて、とてもいい被写体だと思っている。
笑った顔も、すねた顔も、怒ってる顔も。
そして、仕事に臨むときの、あの真剣な顔も。
いつだってシャッターを切りたいと思える、最高の被写体なのだ。
でも、じゃあ、男として彼女が好きか、といわれたらそれは、正直よくわからない。
わからないまま時間だけ進んでしまって、結果あんな感じになった、というわけだ。
罪悪感はあるけれど、だからといって、「じゃー! とりあえずつきあおっか、うぇーい」っていうキャラではもちろんないわけで。
無理だったわけだけれども。
月一のデートをしてみて思ったことはある。
あれ自体は特別嫌という感じはないのだ。もちろん撮影ができないスポットにとなると話はかわるだろうし、買い物となると……ルイとして行くのでほぼ女子同士でショッピングになりかねないところはあるけれども。
まあ、なんだ。
美鈴もね、ちょっとこう、お試し期間というか。
そういうのを作ってみてもいいんじゃないかとは思うのだ。
早見くんだってそんなに変なことをするような人じゃないわけだし。
「女神がいる……」
「あら、ほんと、バレンタインの女神じゃない」
さて、そんなことを考えていたら、にわかに店内が騒がしくなった。
お客さんじゃなくて、店員さんのほうからの声である。
だって、他にお客さんいないし!
「バレンタインの女神……ねぇ」
どこかで聞いたフレーズだなぁと思いながらとりあえず美鈴に頼まれたジャスミン茶と、アイスコーヒーのカップをレジに持って行く。
「うわ……やばい。女神きれい」
「あの、女神、というのは?」
さすがにそんなこと言われる覚えがないので小首をかしげておく。
他にお客さんがいないから、まあしゃべっていても問題にはならないだろう。
あともうちょっとすればお昼どきのラッシュがくるのだろうけど。
「す、すみません。えっと、うちと同じコンビニチェーンで働いてらっしゃいますよね?」
「……まあ、いちおう」
「それで、その、バレンタインとかクリスマスケーキとか驚異的な売り上げとか出してますよね?」
「驚異的というか、あれは店長が売れなきゃ自爆営業するしかないのっ! とか涙目だったので」
驚異的といわれて、ん? と木戸は首をかしげる。
たしかに予約はかなり取ったけれども、それがどの程度なのかといわれると正直ちょっとよくわからない。
そもそもあの町にはシフォレだってあるのだ。
バレンタインの参入はあんまりやってなかったけど、クリスマスはあっちという人だって結構いる。
店長がやべぇって言ってたのはケーキがあふれすぎててうちの売り上げやべぇってのが元だ。
「あはは。はぁ……普通はあんまり有効打が打てなくて、厳しいものなんだけどねぇ」
「ですっ。私なんて去年のケーキの予約が取れたの三件ですよ三件。女神は何件ですか?」
「えっと……三十はいってたかな……まあ、一昨年のミニスカサンタコスからの、話というか……バレンタインなんかもあったんで」
いろいろとお客さんにはよくしてもらってます、というといいなぁーというため息混じりの声が聞こえた。
いや。でもあれはかなり反則ぎりぎりというか、本来のコンビニでああいう売り方をするのはどうかと思うのです。
「っていうか、どうしてそんな話を知ってるんです? あたしあんまり他の店舗のこととか知りませんよ?」
「あれ。知りません? 店舗のホームページ作ってるじゃないですか」
「ああ、あれかぁ」
それは存じております。木戸の働いているところでは、月一企画でコンビニアレンジ飯なんていうのを更新していたりする。
おいしくいただいているのをしっかりと撮影もしているし、更新しているのは知ってる。
「ですです。あそこにクリスマスケーキの話も載ってたじゃないですか」
「……えぇー」
あれ。そんなの載っていましたっけ?
「え? なにかやらかしてるん?」
さて、ちょっと話し込んでいたのを聞きつけて、白沢氏が割り込んできた。
なぜか手元にはお菓子類が抱えられていたけれども。
「……まさかおにーさん、女神の彼氏……」
「ない! それはない!」
勝手にカップリングとかしないで! と言うとああ、すみませんと彼女はいった。
そしてもう一人の店長さんらしき人がタブレットを取り出して、コンビニのホームページを表示した。
「うわ、店長……イベント写真まであげてぇ」
「おおお、ミニスカサンタだー! ちょーかわいい! えっ、ちょ、かおたんなにやらかしてんの」
「不本意だったんです。っていうかあとで店長に抗議しときます」
うわぁバレンタインイベントのほうまで載せてるし、と木戸は情けない悲鳴を上げていた。
自分は撮る側であって撮られる側ではないのだ。
しかも、原則木戸状態では撮影されないようにというのが基本方針なのである。ルイさんの方は撮られてもいいんだけどね。
「かわいらしくていいと思いますけどね。まあ、真似はしたくないですが」
「です。かわいいです。でも、その脚線美があるからこそ、こういう格好も似合うんだろうなって思います」
うらやましい、と若い子の方が言った。
うう。今だってショートパンツは不本意なんだからっ。
「うーん。早見っちが傷心の美鈴っちをいたわるために、木戸っち連れてきた理由がよくわかったような気がする」
「その写真でわからないでもらいたい! っていうか、バレンタインはほんと、半分詐欺みたいじゃないって思ってるんだから」
っていうか、バレンタインはあたしじゃ駄目でしょうに、と言っても、店員さんたちは首をかしげるばかりだった。
まあ、企画自体が疑似バレンタインイベントみたいな感じあおりにしていたし、チョコだってプレゼントじゃなくて購入という形にしているわけだから、渡す相手の性別がちょっと違ったとしてもさして問題じゃないかもしれないけれども。
「今年のバレンタインは一応清純派系にしてもらったんですよ。その前がふんわり甘いロリータファッションだったので」
寒かったので! というと、あぁー冬の外販売はつらいですよねーなんていう話になった。
いちおう彼女たちも冬イベントの経験者ということで、販売業はつらいということで意気投合である。
さて、そんな感じで和気藹々と話をしていたわけなのだけど。
「ええと……みなさん、談笑してないでレジ終わったら、俺の買い物すまさせてください」
げっそりとした顔で、胃薬を持った早見くんがぼそっと言ったのだった。
「失礼しました。289円です。テープでよろしいですか?」
「すぐ飲みたいんで、はい」
彼が選んだのはドリンクタイプの胃薬で、お金を払うと速攻で飲み干していた。
ストレスでそうとうやられてしまっているようだ。
「んじゃ、仕事の邪魔しちゃ悪いし、俺のも会計よろしく」
そんな早見くんのことを気遣ったのかは知らないけれど、白沢氏はどさっとレジにお菓子の山をおいた。
駄菓子屋にでもきたのか、というような買いっぷりではあるけれど、まあ、気分は遠足かなにかなのだろう、きっと。
「ありがとうございます。あ、コンビニ飯企画は、うちも参考にさせてもらってるんで、今後も更新楽しみにしてます」
とりあえず白沢氏の買い物も終了して、店員さんにそんな声をかけられた。
あれは黒羽根店長がメインでやってるものだけれど、そんな話があったというのは伝えておこうかと思います。
「それじゃ、旅の記念にお二人の写真撮らせてもらいますね」
さあお仕事してますよ感のと、普通にポーズ付きをよろしくと言うと、店員さんたちは、えぇーといいながらも被写体になってくれた。
その間にアイスコーヒーのマシンは動かしておく。
コーヒーの香りがほどよく漂う中、店員さんたちの顔を押さえさせてもらう。
うんうん。旅先での出会いというのは、楽しいなということで。
木戸たちはコンビニでの買い物を終えたのだった。
告白に即答で答える人って、脈無しパターンだよなぁと思うわけで。
ちょいとばかり、美鈴さんには悩んでいただこうかと。
そして、お出かけ先のコンビニのお話。
ここら辺は職業病的なところもあるのかなと思いつつ、まあ寄りますよねということで。
次話こそ牧場に参ろうかと思います。