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572.男友達と、夏旅行2

久しぶりのメンツ過ぎて、だれかわからない! という声はあるかと思うので。

白沢くんは、運転免許取った時のテンション高い男子です。そして早見くんは成人式の時に下痢で出席できなかった、美鈴ちゃんラブな男子です。(小学生のころの同級生)

「おぉ、なんかでっかいかっこいい車がある」

 集合場所に到着すると、その駐車場には黒い大きな車がばーんと置かれてあった。

 大きいといっても、もちろん木戸基準の大きいであって、ワゴン車というわけではない。


 でも、なんというか。運転席の列とその後ろの列があって、さらにはトランクがそこそこの広さがあるという感じだろうか。

 ちなみに木戸家の車には、うしろのトランクのスペースがほとんどない。なので、それにくらべると車体の長さはこちらの方がずっと大きいのである。

 ちなみにセカンドシートを倒せば、後ろ部分はフルフラットになったりもするらしい。

 これだったら車内泊だってできてしまうかもしれない。

 

 ……ああ。これ、後ろに思いっきりカメラの機材とかおいて、撮影とかでたら楽しいかもしれない。

 ま、一人でおでかけするなら、ここまでのサイズは必要ないんだけどね。

 だって、トランクのスペースに椅子を出して、最大六人乗りとかできちゃうんだもん、これ。

 

「おー、木戸っちー! おひさしー!」

 どうよこの車! となぜかドヤ顔をしているのは、前に車の教習に行ったときに一緒になった、白沢くんなのだった。

 なにげにあれからあんまり連絡は取ってないから、ざっと一年半ぶりくらいという感じだろうか。


 相変わらずテンションが高いらしく、すげぇーいい車だよな! とかいいながらすさまじく嬉しそうにしている。

 ちなみに、今日のイベントの発案者はといえば、広いなぁ、と後ろの席をフラットにして、ごろごろとしていた。

 まったく、早見くんったら、どうしてそんなにゴロゴロしてるのだろう。

 むしろ、今日のゲストを迎え入れるまで、絶対びくびくしてるだろうと思っていたのに、なんか変なテンションになってるようだった。


「早見くんも、久しぶり。なんかめっちゃ車に首ったけになってない?」

「そりゃなるだろー。こんな車、俺今まで乗ったことないし。めっちゃ広くてしかも高級感半端ないんだぜ」

「まあ……良い車だとは思うよ? これ、レンタルでも結構高そうだけど」

「高かった。二日で四万ちょいだ。かなり奮発したよ」

 でも、よかったよー! と、早見くんはちょっと駄目な子になりながら、フラットシートに頬ずりしていた。


 二日で四万て……普通の軽とかだったら、その半分以下で借りられるんじゃないかな。

 ちなみにちゃんと買おうとすると四百万超える車らしい。衝撃的なお値段である。


 でも、ここまで頑張っちゃった理由というのはもちろんあるわけで。

「これなら、美鈴も気分転換になるかな」

 ロケバスとかで大きな車は乗ったこと多そうだけど、これはこれでかっこいいし、というと、だよなぁー、喜んでくれるよなー、きっとと早見くんは車のほうに首ったけだった。


 そう。先日早見くんから連絡をもらって、最初に言われたのは、今、テレビで話題になってしまってる友人と、ぱーっと遊びに行って気張らしでもしないか? なんていう提案なのだった。

 美鈴の、カミングアウトの件は、HAOTOの蠢の時のように、マネージャーが原因というわけではない。

 会社そのものは、比較的彼女には好意的で、バックアップもしっかりやってくれてるみたいだ。

 今回のは、素直に週刊誌がスキャンダルに仕上げただけのお話で、それを受けての会見というか、発表会となったという経緯がある。


 なら、別に今まで通り仕事すりゃいいんじゃね? と木戸なんかは思ったのだけど。

 うん。まあなんだ。

 予想外に、美鈴の件は炎上した。

 まあ、炎上というか、無記名掲示板にバンバン、ファンだったのにショックだとか、詐欺だこのやろうとか、結構な罵詈雑言が並んだのであった。


 蠢の時のカミングアウトの時はファンが味方になってくれた、というのがあったけど、美鈴の場合は男性ファンのある程度の数が、好意から嫌悪へと反転してしまった、という状態なのだった。

 エレナにそんな話をしたら、そりゃ、男性アイドルに女性が向ける気持ちと、女性アイドルとかモデルに男性が向ける気持ちは違うベクトルだから、仕方ないことじゃないかな? とあっさり返されてしまったのだけど。

 うーん、駄目なもんかなぁ。美鈴はあれで仕事はしっかりやっているし、頑張ってると思うんだけどな。


「でも、こんなに奮発して大丈夫なの?」

「それは、いちおう貯金もあるからさ。それに俺、いつでもデートに誘えるようにお金貯めてたんだよ」

 プレゼントの一つも買ってやれないと男の甲斐性ってもんがないしな、と照れたような顔で言われたので一枚カシャリ。

 さすがに美鈴に見せるつもりは無いけれど、デートを待ってる男子の姿ということでこれは押さえておくべき一枚なのであった。


「甲斐性ね……そこらへん、俺よーわからんわ。出かけても一緒に弁当つつくくらいの甲斐性しかない」

「……その話も聞きたいけど、ま、お前らしいっちゃらしいよ」

 デートでお手製の弁当を持ってく男子って、と言われてしまったけれども、崎ちゃんは美味しいっていって食べてくれるし、水筒に味噌汁まで付けちゃうくらいの対応はさせていただきたいところです。


「お? 木戸っちも彼女できたん? 俺、今フリーなんだわ。この前思いっきり振られてさぁー」

「白沢くんはもちっと落ち着いた方が相手の負担が減るんじゃ無いかと思う」

「おおう。それ元カノにも言われたよ。あなたと居ると楽しいけど、これが続くとなると無理って」

 そんなに俺、自由奔放に見えるかなぁと白沢くんが言うので、そこは、思いきり頷いておいた。

 なんていうか、早見くんはやると決めたらやるって感じのタイプなんだけど、白沢くんは何に対しても楽しそうと興味が行ってしまう感じなのだ。若干、白沢くんに引っ張られてるのかなとも思うけど、嫌なら嫌と断れる奴なので、そこらへんはいいコンビともいえるのだろうと思う。


「んで、木戸はちゃんと免許は持ってきた?」

「……いちおう。でも事故らないように気をつけたい」

 さて。本日は旅行ではあるけれど、見ての通り車での旅である。

 ドライブを中心としていろいろ回ろうというのがメインのイベントなのだった。どうして車なのか、といえば、美鈴のスキャンダル直後の今、電車に乗せると周りの視線が痛いだろうし、こっちなら景色を見ながらわいわい楽しめるだろうという考えがあったからだ。

 それに関しては木戸も納得したし、了解もした。


「って、おまえもしかしてペーパー?」

「いや。時々友達の車に乗せてもらってるけど、このサイズとなると未体験なので」

 かっこいいし、乗りやすいとは思うけど、運転は果たしてどうだろうか、とちょっと悩まし気な声をあげる。

 車体感覚というのが果たしてどんなものなのか、というのがいまいち未知数なのであった。

 木戸の運転経験というのは、時々エレナの車で近くに買い物に行く、くらいのものだ。

 どうして、そこでエレナさんの車なのですか? ということなんだけど、それはあいつが、たまには運転しないと忘れるよ? ザ・ペーパーになっちゃうよ? 大英図書館だよ? とかちょっとよくわからないことを言いだしたからなのだった。


 まあ、運転を忘れてしまうというのは問題だし、ときどきあの車を借りて食事会の買い出しなんかに行っているのだった。

 買い出しなど、我らが行きますのに! と中田さんとかは言うんだけど、お買い物も楽しいんだからっ! とあっさりエレナに言われて、うぅ大きくなられて、と中田さんはハンカチを片手に感動したりもしていた。

 ちなみに行先は、大きなショッピングモールであることが多い。あの会員権がないと入れないでっかいのが売ってるところである。


 それでも高速に乗る経験はないし、そっちに関しては正直自信がない。

 おまけになにか違反をして警察に捕まるのが一番悪い。

 なんせ木戸の免許証は写真が残念なのだ。メガネをかけない状態でプリントされてしまってるので、今の姿で提示を求められたらトラブルのもとなのである。


「それと、高速はだれかお願い。合流がそんなに自信ない」

 教習に行ったきりだから、といいつつ二人の顔色をうかがう。

 さて。彼女がいて、旅行とかも好きそうな白沢くんあたりはきっと、高速とかもばんばん乗れるのではないだろうか。


「そこは、はやみんがそこそこ慣れてるんじゃね? 親の車借りていろいろやってるみたいだし」

「へぇ。白沢氏のほうが車に乗る機会は多そうかなと思ってたけど」

「車好きなのははやみんの方だな。俺もときどき旅行で車使うけど、正直手持ちの車がないから、今回みたいなレンタルでって感じになるし」

 しかも、こんな高い車をレンタルしたことはない! と彼は楽しみであることを隠そうともしなかった。


「そこはじゃあ、お任せしようかな。それと事故は絶対に起こさないようにお願いします」

「おまえなぁ。最初から事故起こす気で乗るやつなんていないって」

 大丈夫だ! 難しいところは、俺と白沢で運転するから、と早見くんは車への愛撫を続けながら言った。

 うん。そういうことならぜひともお願いいたします。


 本来ならば、運転は全部おまかせ、と言いたいところではあるのだけれど、今回に関して言えば、運転は交代制というのは最初に決めたお話でもあった。

 運転手と、助手席と、そして後ろ二つの席を使う感じになる。

 後ろの席の一つに美鈴を置いて、ローテーションしようというのが取り決めなのだった。


 つまりは、早見くんが自然に美鈴の隣に座ってお話できる状況を作った、というわけなのだ。

 もちろん、ずっとその席順で、というわけにもいかないので、彼ももちろん運転はするんだけどね。

 べったりではなく、ほどほどに一緒という方が彼としても気軽だろうし、それに、美鈴にしたって男子とばかり隣同士というよりは、木戸と隣り合わせのほうが安心だろう、というような配慮がされているのだった。


 女子呼ばないの? という話は最初にしたんだけど、これに関しては却下になった。呼ぶとしたら美鈴の友人二人という感じになるんだろうけど、ちょっと騒がしくなりそうだし、それに……まあ。なんだ。早見くんのチャンスを最大限に生かしたいという考えのもとなのだった。


 白沢くんは賑やかし要員という感じで、暗い空気をぱっと明るくしてくれるし、木戸に関していえば……まあ、あれだ。

 美鈴のフォローはお前が一番できるだろ、ということなのだ。

 あんまりこっちでフォローしまくっちゃうと、早見くんの恋路の邪魔になるだろうから、やりすぎはよくないだろうけれど。


「で、美鈴はまだ来ない感じ?」

「そろそろ待ち合わせの時間だから、来ると思うよ」

「って、待ち合わせの時間別にした感じ?」

 は? なんで? と首をかしげると、おまえなぁと早見くんはあきれたような顔になった。

 いや、みんな一緒に集まって、ぶーんって車に乗ればいいんじゃないだろうか。


「そりゃそうだろ。俺たちは姫の出迎えをするんだよ。だから早めに来てもらったってわけ」

「姫の出迎えか……でも、出迎えがその車に頬ずりしてたら、引くなぁ」

「まだ大丈夫だろ。俺はちょっと高級車の感触というのを楽しんでいるんだ」

 いつか、稼いでお前を家においてやる、とかなんとか言っていたのだけど。

 これは、異性じゃなくてもちょっと、どうなのかという絵面なのだった。


「あっ、羽屋(はやー)やっほー!」

「って、ちょっ。なっ!?」

 はい!? と彼はがばりと起き上がって、きょろきょろと周りを見回した。

 なんという変わり身の早さなのだろうか。

 さっきまでのぐでっとした感じが一瞬で吹き飛んだ。


「はっは。きどっちにからかわれたなー。まだ来てないぜ」

「ちょっ、そういうたちの悪い冗談はやめてくれよー」

 うわー、心臓に悪い、と彼は頭を抱え始めた。

 いや、なんかそんなに反応するとは思わなくて。ごめんなさい。


「おはよう、みんな。今日は誘ってくれてありがとう」

 さて、そんな感じでわいのわいのやっていたのだけど、そこに遠慮がちにかけられた声は、相変わらず可愛いあの子の声なのだった。

 ほんと数分差というくらいのタイムラグしかない感じである。


「あ、はやー。おはよう。今日はまた、一段とこう……いい太ももですね?」

 ちょっと遠慮がちにしている美鈴に、木戸は遠慮なくカメラを向けた。

 崎ちゃんあたりなら、あんたね、勝手に撮らないでよとか、言ってくるわけなんだけど、美鈴のほうがそこらへんはおっとりしていると言っていいのではないだろうか。


「開口一番、ふとももの話題になる木戸っちこえぇな……」

「いや、あれが木戸クオリティだ。ちくしょう。ああいって相手がまったく問題なし判定するのはいろんな意味で卑怯だと思う」

 さて、背後からそのような男二人の話声が聞こえるのだけど、今はとにかく美鈴のほうである。


 夏に入るこの時期に合わせて、ということかはわからないけれど、膝上くらいのダークブルーのワンピ姿というやつで、けっこうな勢いでふとももさんがちらっと覗いているのである。

 まあ、もちろん女子高生のミニスカレベルではないのだけど、動くたびに少しずつふとももが見えるというのは、ポイントが高いと思う。


「その挨拶が通用するのは木戸くんくらいなものかもね。それで、荷物はどうすればいいの?」

 一泊っていうから、ちょっと荷物多めになっちゃったけど、だいじょうぶ? と美鈴はちょっとだけ心配そうな顔を浮かべた。

 今まで引きずってきたのであろう、キャリーバッグがしっかりと握られている。

 ライトピンクな可愛い感じのやつである。


「それくらいなら大丈夫。後ろに積んじゃうから」

「あ、ありがとう」

 あ、必要なのは……いや、この車なら、いつでも取り出し自由か、といって早見くんはバッグを預かった。

 後ろを開けて、積み込むわけだけど、四人分の荷物を入れてもまだ十分に車には余裕があるようだった。


「じゃ、まずは、俺から運転な。美鈴っちー! 初対面だけど、俺ともいろいろ話してくれると嬉しいぜ!」

 燃えてきた! と白沢氏は相変わらずなテンションでニカリと笑って見せた。

 お、おおう、と美鈴がちょっと引いてるけど、まあちょっとしたら慣れることだろう。


 こんな感じで、最初は、白沢氏が運転席、早見くんが助手席、そして残り二人が後部座席という形で、ドライブ旅行は始まったのだった。

車! 作者あまり車に興味なかったんですが、このクラスの車となると、ちょっと乗るの楽しそうって感じはします。

さーって。そんなわけで、美鈴ちゃんをはげます会! はじまるよー!

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