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550.新宮家との会食2

今日はちょっと短めです。

「お待たせして、もうしわけありません! ああ、牡丹さんのご家族のみなさん、こんにちは! ご無沙汰をしています」

 さて。新宮家の面々が座敷の到着したわけなのだけれど。

 お父さんの口上を聞きつつ、どっかでみたことあるよなぁと、木戸はちょっと思っていた。

 

 ちなみに、真飛さんのパパさんは、四十代中盤かもう少し上のおじさまだ。名前を真治という。三兄弟の名前はここから一字もらっているのだろう。

 どこかで見たことはあるんだけど、果たして木戸がこの年齢の相手と絡んだ機会があっただろうかと、少し考える。

 芸能関係は違うし、銀香町も違うように思う。

 両方ともある程度主要なメンバーは覚えているし、そこで会った記憶はない。


「君が馨くんだね……はじ、いや、どこかで……」

「はい。僕もちょっとどこかでお会いしたなぁとは思ってるのですが」

 僕? と思ったみなさま。はい、さすがに姉さんの婚約相手のご家族相手には一人称くらい変えますって。

 それはともかく、どうにも新宮さんのお父さんに見覚えがありすぎる木戸なのだった。

 パパさんもそういう反応ということは、少なくとも男の姿で会っている可能性があるということだ。


 コンビニだろうか。いや、彼の視線がカメラとこちらの顔をちらちらしている。

 ならカメラを持ってる時にあってるということだ。

 大学関係者……を想像してみても教授連中とは違うし。


「ああ、三枝家主催のパーティ、か。撮らせてもらったような気が」

「ああああ、なるほど! あのときの子か! カメラ持ち込み禁止の中で会場の撮影していた」

「その節は、撮らせていただいてありがとうございます。木戸馨と申します」

 改めまして、よろしくお願いしますと挨拶をすると、こちらこそとおじさまは笑顔と一緒に挨拶を返してくれた。

 なので、そこで一枚カシャリ。

 まあ、今日の出会いの一枚としてはいいだろう。


「今日もカメラを持ってるんだね。好きなのかい?」

「それはもちろん。カメラを持ってないと手が震えるレベルで好きです」

「うわ、真守も一つの事に集中するとアレなんだが、君もかい」

 熱中できることがあるのはいいことだ、と彼はすんなり木戸のカメラ狂いの件を受け止めてくれた。いい人である。


「馨のはちょっと度が過ぎてるところはありますけど、悪い子ってわけじゃないので」

 よろしくお願いします、と姉さんが挨拶した。

 そしてみなさんそれぞれ着席である。

 ちらっと真矢ちゃんと目があったけれど、今日はある程度正式な会というのもあって、青いワンピース姿だった。

 あとで庭にでも立ってもらって撮影でもしよう。

 若い者達でやっててもらう間に時間くらいはあるだろう。


「しかし、なんだってあのときは撮影なんてしていたんだい? うちの社の人間ってわけじゃないのに」

「実はあのとき、合同で父の会社がお仕事一緒にやってたみたいなんですよね。それでパーティーに呼ばれて行ってみたら、みんな撮影禁止だっていって、びっくりしてしまい」

「そんなこともあったなぁ。にしても新宮さん、あのパーティーに参加されてたんんですね」

 全然気づかなかったなぁと木戸パパが言う。

 年齢的には木戸家のほうがちょっと下といったところだろうか。

 年上に対する礼儀という意味合いでも、父さんは敬語を崩したりはしていない。


「ああ、木戸さんも参加されてたんですね。知っていればご挨拶ができたのですが……」

「あの規模のパーティーですしね。参加者を網羅したのは馨くらいなものでしょう」

 こいつはこう見えて写真だけは上手いので、と父さんはこれでもかと木戸を持ち上げる。

 普段の対応とはまったくもって別で、えぇーという気分にもなるというものだ。


「男同士で話してないで、私ともお話して欲しいわ」

 初めまして、馨くん、と今度はママさんがこちらに声をかけてくる。

 新宮さんのママさんはそれはまあ……一言で言えば綺麗な人だった。

 真矢ちゃんに似ているところはあるのだけど、なんというか貫禄というか、華々しさが段違いなのである。

 

「亜矢子さん、でしたっけ。お会いできて光栄です」

 さてそんな相手を前にしても萎縮する木戸でもないわけで。にこりと笑顔を浮かべつつ無難に挨拶を交わした。

 姉様が遠くから、余計なことを言うんじゃないという視線を向けてきているので、無難な挨拶に留めた。

 正直なところ、メイク上手いですね! とか言いたかったんだけどね。


 そう。ママさんである亜矢子さんが華々しい理由は、すべてメイクにある。

 真矢ちゃんはまだそこまで化粧っけはないのだけど、亜矢子さんはしっかりとやっている上にとても上手なのだ。


「あら。やっぱりお姉さんがいると慣れているのかしらね。うちの真守も初対面の女性にそれくらい堂々と向き合えればいいのだけど」

 どうしてうちはこんなにみんな個性的に育ってしまったのかしら、とママさんは困ってなさそうな感じで上品に笑った。


「真守さんは女性相手にすると、がっちがちのおどおどになってしまいますしね。妹さんがいるっていうのに」

「たぶん、あんちゃんがいたら、リア充めーって言いますよ、馨さん」

 お久しぶりです、と真矢ちゃんが会話に入り込んでくる。

 馨として会うのは、子供世代で交流したあの山イベントの時以来だ。

 まあ、ルイとしてなら三月にも会っているわけだけれど。


「あまりリア充とは意識してないけどね。好きなアニメイベントに行ったりってのも十分充実してると思うし」

 好きなことがあるのは、良いことですというと、さすがに理解があっていいなぁと真矢ちゃんに羨望のまなざしを向けられてしまった。その先にあるのはルイの顔だろうか。


「さて、初対面の挨拶も終えたところで、一応本日の主役である、僕からみなさんに挨拶を」

 ちょっと言葉を交わしたあとで、真飛さんがそう切り出してきた。姉さんとタイミングを見計らっていたのはこちらからも見えていたし、話をしてなかったら撮ったのだけど、こればかりはしょうがない。


「本日はお集まりいただいてありがとうございます。すでにご存じのこととは思いますが、六月、我々は式を挙げることになりました。それに先だってお互いの家族交流を図ろうというのが本日の趣向です。料理などもおいしいと評判ですので、馨くんも是非楽しんでいってね」

「了解です。この景色の中でのご飯というのは、嬉しいものですから」

 さて、本日の主役の演説の写真を撮りながらもそう答えておく。

 ちょっと挨拶が堅苦しい感じもしたけれど、ある程度形式張ったものが必要ということでもあるのだろう。

 にしても、真飛さんは木戸のことをどうやら、食いしん坊キャラとでも思っているようだ。

 確かに美味しいご飯は好きだけれど、会話よりご飯と思われてるのはどうなのだろう。


 ちなみに姉様は、あんたはご飯より写真でしょ、とでも言いたげである。正しい。

 そんなやりとりをしていたら、失礼いたします、と料理の配膳が始まった。

 本日は会席料理ということで、コース形式で料理が運ばれてくるのだそうだ。

 いつも、ででんと一品物だったりということが多い木戸としてはさほど食べ慣れていないスタイルである。


「未成年の方は……」

 ちらりとお店の人がなぜか木戸を見てそんなことを言い始める。

 むぅ。未成年なのは真矢ちゃんだけなんですけれども。


「私、未成年です。なので食前酒とかはかわりのものをお願いします」

 すでに、最初から未成年の数は伝えていたらしく、リンゴジュースが真矢ちゃんの前にだけサーブされる。

 他は食前酒というやつだった。昼間からお酒飲んで良いのかな? とは思うけど、まあ食欲増進のためなので、これはこれでいいのだろう。

 出されたのは梅酒のソーダ割で、つぷつぷと泡が浮かんでいるのが綺麗だった。

 もちろんそれも先に撮っておく。


「では、若い二人の前途を祝して」

 新宮さんのパパさんがグラスを手に乾杯の態勢を取った。

 とりあえず木戸も左手に杯を持って、右手にカメラを構えておく。


「乾杯」

 食前酒で乾杯するのもなんだかな、とは思いつつ、ようは気分の問題かとグラスを掲げつつ、少し後ろから狙ってその掲げられたグラスを撮る。

 一番端の席というのはこういうときに素晴らしいと思う。全体をすっきり撮れるのである。

 かくして、宴会はスタートすることになったのである。

新宮さんちのご両親の名前はどうすんべ、とか、どっちかは顔見知りにしときたいなということで、こんな設定となりました。ちょー悩んだ!

そして次話は会席料理な感じです。

さー美味しいものを食べましょう。

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