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540.千歳さんの大学訪問3

さあシリアス回だ! けれども重苦しい重圧が苦手でちょこちょこやらかしております。

6.22ト指摘をいただいてトランスのパーセンテージのミスを修正。同性愛に比べるとまじ少なくて、まじびびったわ。そりゃ町中でトランスさんにあわねぇよなと……

「無茶ぶり来ましたね。どうして俺がその会をなんとかできると思いますか、この人は」

「いやー、だって君ならどんな形であっても、どうにかしちゃうかなーって」

 ほれ。やるだけやってみよー、と言われて木戸はげんなりした顔を浮かべた。

 いや、そんなに投げっぱなしにされても困るのだけど。


「私も木戸さんならなんとかできるような気がしますけど」

 ちょちょいとやっちゃってくださいよ、となぜか千歳までが無茶ぶりを押しつけてくる。

 なんでそんな話になるのか。


「木戸くんに加入してもらうのが一番なんだがな……」

「それなくして、盛り上げるなど、見当もつかない」

 ほらほら、LGBTの会の人達もお手上げって感じじゃないですか。

 木戸が入れば盛り上がるってのは、しのさん人気を狙ってなのだろうけれども。


「さて。じゃあとりあえず現状の確認から。三人はどうしてその会に人が入らないと思いますか?」

 さぁ、答えてください、と迫ると三人は、えぇっ、といきなりの振りに悩み始めた。

 いや、一番この分析はやらなきゃいけないことだと思うのだけど。


「ええと、純粋に、LGBTが少ない、とか?」

「しのさんの影響で、女装に興味を持つ人はいたとしても、絶対数が少ないのかも」

「……まじでその発想になるのか。センセはどう思ってます?」

 いろいろ声かけとかもしてダメだったし、きっとこの学校には当事者がいないんだという彼らに木戸は一人大げさなため息をついた。

 そして、足立先生に協力をしてもらう。

 専門家なのだから、詳しい数字は知っているだろう。


「いや……まぁ、トランスに関していえば、戸籍の変更までいってるのが五千を超えているし、実際はオペまでいかない人を入れても四万人を超えるのでは、なんていう風には言われてるわね」

「で、同性愛の発生頻度は2%から13%ってデータが外国にあったりします。トランスが0.04%程度ということであれば合わせて最低でも2.04%は該当がいるはず。ではこの大学に何人LGBTがいるのでしょうか?」

 改めてみると、同性愛とトランスの人数比やべぇなぁと思いつつ、それでも彼ら(、、)のためにうちの大学、割と学生数多いですよ? とお伝えしておく。

 学部もそろっているし、単科大のそれに比べると学生数はかなりのものだ。

 一つの学年だけで最低でも千人は超えるんじゃないだろうか。それが四年まであるわけで。

 

「百人近くはいてもおかしくないってか」

「ですね。ええ。少なくとも俺の知人で二人います。トランスも、そのパーセンテージでも知り合いでいますしね。ああでも志鶴先輩はどっちになんのかな」

 いや、あれもトランスヴェスタイトというか、いろいろこじれてるけど、ノンケなのか、レズビアンになるのか……と少し考え込む。

 斉藤さんと付き合うようになってから、果たしてどう転ぶのか。今のところさっぱりわからないのである。


「ま、バイの人とかは正直、恋愛感情がどうなるのかで変わりますから、まだ気づいてないって人も多くいるでしょうけど。で、そんな彼らが会に参加したがらない理由ってなにか思い当たります?」

 さて、おそらくこの学校にもそれなりに同性愛な人はいるだろう。トランスは正直、あれだけ派手にしのさんが動いていてもアクションがないので、千歳みたいな埋没勢か、はたまた言い出せないで悩んでいるかといったところなのだろうけれど。

 ちなみに女装だけしたいレイヤーさんなんかもTにいれるのであれば、特撮研の新人もその仲間に入ってしまう。

 まあ、入りたいかどうかといわれれば、どうでもいいとクロやんにしろ彼にしろ言うだろうけれど。


「……どうだろう。そりゃうちに悪い噂があるのは知ってるけど……特になにも悪いことしてるわけじゃないし」

「だよな。俺たちはただ健全に、集まってぐーたら話をしてるだけで」

 他のサークルとあんま変わらない、といわれて、ぐーたらですか……とちょっと木戸は半眼になった。

 いや、いいのさ。大学のサークルは緩いところは緩いわけだし。

 でも、方向性もなくなにもしないで、だべるだけというのはどうなのだろう。

 いやでも、マイノリティだから集まる場所が必要だ、ということであれば意義はあるのかな?


 ううむ、と腕を組む木戸を見かねてか、足立先生は苦笑交じりに声をかけてくれた。

「いろんな噂が流れてるよね。君たちのところは男だとみれば勧誘して喰いちらかすとか」

 実にひどい言い草である。けれども言い方は悪いけど、そう思われてるっていう部分は否定しきれないのが悩ましい。


「それは先生の偏見もあるでしょうよ! さすがにそこまで一般的なゲイフォビアやめて欲しいんですけど」

「あら。でもそういう噂は流れやすいし広まりやすいわよ。貴方たちがどうであれ、ネットの情報だったりも照らし合わせるとね。それに実際同性愛者の中には性感染症が多いのは事実でしょう?」

 そこ、医療が介入するところだと思うのよね、と足立先生は医者としての顔を覗かせた。

 へぇ。性感染症の率が多いとか知らなかったよ。


「でもそれは適切な対応をしてれば防げるじゃないですか。俺たちだって検査は受けてるし、病気対策はしっかりやってますよ」

「そうですそうです。いくらなんでも病気になりやすいなんていう偏見はやめてください」

 だからゲイフォビアやめて! と三人が不満そうな声を漏らした。

 けれども、足立先生はため息交じりに言ったのだった。


「いえ。事実だもの。貴方たちは大丈夫でも、同性愛者の特性上、移りやすいのはたしかでしょ? 出会いが少ないから焦る。それで既成事実なり、身体のつながりを求める。私の知人は自分はゲイじゃないって思っていたけど、友人達と一緒に鍋をつついて宴会したあと、ちょっと未成年には言えないような状態になってたらしいわよ」

「うぅ……そういう人がいないではないでしょうけど、俺たちは健全です。それにゲイの人はなんとなく見ればオーラでわかります」

「ですよ。ノンケの人を好きになるなんて面倒なこと、一回目だけで十分ですって」

 それを言えば、木戸くんはゲイじゃなさそうだ、となぜかがっかりしたような声を上げられてしまった。

 いやいや、ゲイだったらどうだっていうんですか、貴方たちは。


「……さすが恋愛系は知識に乏しいから、先生の解説は頼もしいなぁ」

 ほほう、と先生の説明に納得しながら、そっち関連の話は丸投げすることにする。

 だって、わかんないし。


「同性愛のざっくりした人数の統計とかしってる子が、知識に乏しいとかわけわからないわね」

「そこはネットでいくらでも載ってることですし。でも、実際のところはまだまだわからんことばかりです」

 そして、知らなくても友人関係ではいられるんで、というと、えええぇ、とLGBTの会の人達は驚きを隠しようともしなかった。


「知らないでもいいって、んなこと肯定的(、、、)にあっけらかんと言われたの初めてなんだが……」

「だよな。お互いわからないから、知り合わないと一緒にいられないって言われてきてるし」

 だから、俺たちはこの会に入ったし、隠すのはやめようと思ったのに、と困惑したような声を漏らした。

 もっと自分たちの存在をアピールして、理解してもらわないといけないと思ってるようだ。


「隠し事がまったくない関係なんて、それこそ双子くらいなものではないですか? 親にだって嘘や隠し事くらいありますよね? 俺は……まあ、割と包み隠さず言う方ではありますけど、いろいろやらかしているので言えないこともいくつかありますし」

「いくつか、ではなく、たっぷりだと思うのですけど」

 ぼそっと、千歳から突っ込みが入った。いや、けして木戸は隠そうとしてもいろいろ大事になるので、隠しようがないわけですけれどもね。


「でも、さっきのゲイフォビアもそうだけどあれは放置しておいていいはずないじゃないか」

 一方的に変な印象もたれるのは嫌だ、と彼らは首を振った。

 まあ、そうだよね。確かに木戸も男性カメラマン=卑猥なことをしているとか思われたら全力で抗議はするだろうし。


「まったくなーんも知らなくて、変に誤解をしている人には、誤解を解く努力はするべきでしょう。でも、なんていうかな。友人関係って、そんなに腹の底まで全部知らなきゃなれない関係ではないと思うんです」

 カメラを向けて、語り合えばそれで友達ですっ、というと、タハーと、千歳と足立先生は頭を押さえた。

 あれ。でもこれ、前からのスタイルだし。


「先輩だけですよ……それで通るのは」

「それで通りそうなのが、木戸くんの恐ろしいところね……」

 千歳と足立先生がひどい感想を言ってのけた。


「まあ、それは言い過ぎとしても。良い面も悪い面もあるのが人間でしょう? その悪い面が一人歩きして、ゲイフォビアになってるなら、良い面をアピールして発信するのはありだと思います。ただね……」

 うーん、と少し考えながら言葉を選んでいく。

 

「トランスはともかくとして、誰が誰を好きになろうが知ったこっちゃないじゃないですか。同性だと油断してるところを不意打ちするとかそういうのが気になるにしても、友人の恋愛事情に普通は口つっこまないでしょ。趣味悪いなとか、そういうのは有ったとしても」

 よっぽど危ない火遊びみたいになってたら、心配はするだろうけど、基本友達の恋愛にとやかく口を挟むものではないと木戸は思っている。

 日本には馬に蹴られて死んでしまうという言葉もある。

 恋路は当事者同士の話であって、たとえ友人であろうとそれに干渉などあまりするべきではないのだ。


「確かに木戸くんのいうことも一理はあるかな。私だって四十過ぎて独身とか、親や親戚に散々結婚はまだかとか、恋人はとか言われまくってきたけど、うるせぇおめぇら! って言ってやりたくなるもの」

 そのとき好きになった相手がいなかっただけなんだよなぁと、足立先生は肩をすくめた。

 研究の方が楽しすぎて、恋愛が残念な感じになってるらしい。


「だとして、やっぱり同性愛者だって話をすると変な顔されるのは、嫌だけどな」

「だよな。好きな子の話とか仲間内で話してると一人だけ混ざれなくてさみしいみたいなのもあるし」

「それな。グラビアとか見てても、可愛いとかわからないし」

 ほんと、男同士の交流としては、あれは痛い、とLGBTの会の人達は口々に言い始めた。


「グラビアを見て、写真の撮り方がどうとか言い始めた人もいましたけどね……」

 あれ。千歳さん。どうしてそんなジト目でこちらを見てらっしゃるのか。

「そんなの当たり前じゃん。さくらとだってそんな話し散々したし」

「……女友達とグラビアを見る男子高校生は普通はいません」

 これだから先輩は、と千歳はやれやれと首を振った。


「まあグラビアの話はおいておくとして。一番問題だと思うのは、自分は普通ではないと思った上で、自縄自縛になる人が多くいる、ということです」   

 LGBTの会にみんなが入会しない一番の理由は、赤城も言っていたとおりカムアウトをすること自体が難しいからだ。

 入会することがイコール自分自身がそうであることを告白することになるのだから、近寄りたくないと思うのも納得というものだ。


「三人とも、自分が同性愛者だと告白する時、そうとう勇気が必要だったでしょ?」

 俺の友人もカムアウトするのにかなりの勇気を必要としたようですよ、と言うと、それは……と三人とも言葉を失っていた。


「ちなみに、俺の知人がこのサークルに入らないのは、自分がゲイだというのを公表したくないからだそうです。変な目で見られたくないし、関わりたくないそうで」

 会に加入するとなれば、それはすなわち「そういう人」というレッテルなり肩書きなりができるということだ。

 自分の所属サークルがなんであるか、というのは、少なからずその人物のイメージに影響する。


 木戸とて、特撮研に入っていることで、カメラやるの? という風に思われることはある。

 まあいつもカメラ持ってるからそれ以前に、あぁカメラの人ね、と思われてるだろうけれど。


「それか……」

「カムアウトするの大変っちゃ大変だもんな」

「まさかそんな落とし穴があったとは……」

 そりゃ会員増えねぇーわ、と三人はがっくりしながらつぶやいた。

 無茶なことだという自覚が、彼らの中にもあるらしい。


「ふむん。木戸先輩がそういう認識をしているのに、少し驚いていますが」

「俺だって、いろいろと交流をしてるしな。それにおまえの時とは状況が全然違うし」

 自信を持てとかつてのルイは千歳の背中を押した。

 可愛いは正義ということで、一歩を踏み出せないこの子の背中を思いっきり押した。

 それを思えば、マイノリティであることを怖がることを理解している姿に、いろいろ思うことはあるのだろう。

 でも、こちらだって赤城のあの怯えるような顔を見せられては、あっけらかんと気にせずはっちゃけようとは言えないのである。


「それで? 現状だとLGBTの会は会員を増やすことも、顧問を得ることも難しそうっていうのはわかったけれど、なにか解決法でもあるのかしら?」

 上手くいくなら、顧問の件、考えて上げてもいいけれど、と足立先生が突然言い出した。


「って、まじですか!?」

「うわ、さっきはあそこまで嫌だって言っていたのに」

「だって、どうせ三人しかいないなら、正式なサークルとして成り立たないし」

 それに介入する余裕なんてなかったのだもの、とへらっと足立先生は言った。

 ええと、この大学はサークルの登録が会員五人から、だったかな。それを思えば三人しかいない今は顧問をつけたとしても、正式に受理されないわけか。


「えっと、今はもうLGBTの会って、存在しない扱いなんですか?」

「前期の間は猶予をもらってるところだ。その間に規定人数をそろえるのと顧問をつけるのが条件」

 これで人数だけそろえば、いける……と彼らの目に希望の光が見えた気がした。

 でも、その人数ってのが問題だと思うんだけどね。


「だったら、いっそ名前を変えてしまいましょうよ。さすがに踏み絵過ぎるし」

 ホワイトボード使ってもいいですか? と足立先生に許可をお願いすると、木戸は元、LGBTの会という文字と右矢印を書いた。

 なんとなく講義をやってるような形になっちゃっているけれど、文字に書いた方がいいかなと思っただけのことである。


「って、名前変えちゃおうって……創始者の人に申し訳ないというか」

「それでやってきてるから、それはちょっと」

「ダメです」

 おどおどと名前の変更に消極的な男性達に、ぴしゃりと敢えて女声で言ってやる。

 いきなりの切り替えは、相手にインパクトを与えるのでこの場では効果的だろう。


「いいですか? 大切なのは、内輪で終わらないこと、です」

 ぺしぺし、とホワイトボードをつつきながらそのまま女声で言うと、はぁい、と困惑した声が聞こえた。

 ちなみに、足立先生はにやにやした顔をして見守っている。


「この名前はあからさまに当事者だけで引きこもってる印象を与えます。前から思っていたんですけど、ちょっちLGBTの人達って自治組織とか、自助グループとか、うちうち過ぎません?」

 もっとこうオープンな会にこの際なりませんか? と女声のまま切り出しておく。

 この会がなんとかなるには、今のままではダメだ。

 かといって、当事者を加入させることは難しい。


 ゲイな友人はいるし、彼らに頼るということもできないではないだろうけど、さすがにそこまでしてやる義理もない。

 なら、自ずとやれることは見えてくると言うものだ。


「な……」

「つまり、当事者以外も会にいれろ、と?」

 ええぇ、と会の三人は愕然とした顔を浮かべる。

 それって大丈夫なの? という不安でも混じっている感じだ。


「別に、変な話じゃないと思うんですけどね。スポーツ系のサークル、部活なら、選手とマネージャーがいるでしょう? だったらLGBTの会に、当事者と支援者がいたっておかしくないじゃないですか」

 ちょっとみなさん、あまりにも世間に絶望しすぎじゃないですか? と言うと、いやでも……と目を伏せられてしまった。


「木戸先輩らしいな、とは思いますが、それ本気で上手くいきますかね」

「千歳にまで不審げな顔を向けられるとは思わなかったけど」

 そんなにダメかなぁ、このプラン、と頬をかきながら答えると、だってと千歳は自分の身体を抱きかかえるようにして震えていた。


「えいっ」

 ぴしんとデコピンをしてやると、千歳は顔を上げる。

「そんな落ち込んだ顔はしない。っていうかちーちゃんがそれだと、いづもさんが泣くから」

 ほれ、毎回言ってるけど、自信もて。というと彼女は、あうー、と情けない声を上げた。

 ちなみに、LGBTの会はなぜ彼女がそんな反応をしているのかいまいちわからない、というようすだった。

 それだけを見ても、自信をもっていいと思うんだけどね。


「上手く行くかじゃないでしょうに。上手く行かせるの。不安要素をなるべく削って、ピーアールして、人を呼ぶ。とあるマネージャーさんの言い草に習うみたいで嫌だけど、この状況を打破するためにはやれることはやらなきゃ」

 ほれ、がんばれと言うと、彼らはちょっとずつその言葉を受け入れていったようで、困惑から徐々に回復して行っているようだった。

 ちなみにさっきから女声でしゃべっているけれど、彼らからは特別な反応はない。

 しのさんだよね、みたいな感じなんだろうか。

 すっかりなじんでいる辺り、ここ二年でいろいろやってきたよなぁと、ちょっと感慨深くもなる。

 

「おお、そう言われると確かにそうだな。珠理ちゃんの事もあるし」

「今や同性愛への興味はある意味、最高潮でもあるしな」

「あれ。蚕×MのMって、木戸くんじゃなかったっけ」

 わいわいと、LGBTの会の三人組は少しだけ前向きになれたようで、現状に少しだけ希望が持てたようだった。

 でも、そこでその二つの話題を出されるのはちょっとどうなんだろうか。


「そこで、あんたがげんなりした顔を浮かべるのが謎だけど。ま、面白い試みなんじゃない? どうやってみんなをひっぱるのかっていうとアレだけど」

 さぁどうなるのやら、とおどけて言う足立先生は先ほどのやりとりにある程度満足してくれたようだった。

 方向性としては、彼女が思い描くものとある程度一致しているのだろう。


「あとはあなた方の頑張り次第、というところですが……さてさて、まだ今週末のイベントに空きはあるのやら」

 さあどうなるのやら、というと問題の男子三人は、はっとその情報を思い出したようだった。

 今週末には、新入生歓迎会がある。

 すでにエントリーしているというのならば問題はないのだけれど、この反応ならきっとなーんにもやってなかったんだろうなぁ。


「よっし、今から自治会いってこようぜ! なんとかブース押さえて、新生LGBTの会のアピールしないとな!」

「なんとかして、新入部員ゲットしようぜ!」

「どっちにしろ、だな!」

 たとえ、仲間でも支援者でもだ! と言いながら彼らは足早に自治会がある建物の方に向かっていった。

 まことに慌ただしいばかりである。


「あ、そういや、新しいサークル名、結局決めてないや……」

 そんな彼らを苦笑交じりに見送りながらも、結局空白のままのホワイトボードのその部分をみて、木戸は一人、あーあとがっかりした声を上げた。いちおう候補はいくつかあったのだけど。


「それは彼らが決めてくれるでしょう。ほら。時間もあまりないし、こっちはこっちの要件をすませましょうか」

「……はい。よろしくお願いします」

 そちらの姫君も待ちくたびれているのでしょう、と足立先生に言われてちらりと千歳の顔色をうかがっておく。

 変な事に巻き込んでしまって申し訳なかったかもしれない。


「思いがけず、楽しい現場が見れたのでいいですが。本題のほうも是非付き合ってくださいね」

 そっちは先生の独壇場になるとは思いますが、と千歳は楽しそうに言うと、では先生よろしくお願いしますと改めて頭を下げた。

 さて。ここからは、性別を超越するためのお話である。


LGBT系のサークルに入るのって、学生期だとそうとう勇気いりませんかね? というようなお話でした。特に同性愛のアイデンティティって固まるのいつ頃やねんみたいな。

にしてもとある研究ではLGBTは十三人に一人はいる! みたいなのありますが、さすがに実感としてそこまでいる感じはしないなぁということで。

海外の最小値の方を今回は採用しています。それでも2%はでかいですよね。


学校主催の新入生歓迎会は今年の分の描写をするのかは悩み中です。しのさんの女装イベントが審査員になってるので、書かなくても……というようなモチベでござい。


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