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486.3枚目のコスROM2

本日は短めにございます。

「はい。二冊ですね。3000円ちょうどいただきます」

 開場から、さあどうなったかといえば。

 にこやかにルイとエレナが応対をする間に、未先ちゃんがあわわ、あわわと言いながら商品の補充をしてくれていた。


 告知の効果なのか、以前のように最初はゆったり、なんてこともない。

 いきなりここを目指してやってきてくれる人達もかなりの数がいた。

 とはいっても、お隣の長蛇の列に比べればまだまだ、といったところではあるのだけど。


「うおぉ、ルイたんからの手渡しとは……これは、今年はこれで戦える!」

 けれど、なぜだろうか。

 お隣は普通に販売しているというのに、こちらにくるお客は時々こういうのがまじる。

 エレナに販売してもらって、にこりとされれば、それでもう夢心地になるのはわかると思う。ROMの中の人でもあるしそれ目当てだもの。

 でも、ルイさんはあくまでも撮影者なのに。


「二冊と、ルイさんのコスプレを一つ」

「当店では、エレナの新刊しか扱っておりません」

 はい、二冊ですね、3000円ですと、カタる会で一緒になったメンツから声をかけられたので、ちょっと冷たい視線を向けてあげたら、ご褒美だと喜ばれてしまった。

 うぅ。さぁ後がつかえていますからね、ばんばん売っていきますよ。


 いつものコンビニでの販売はビニール袋にいれるまでがお仕事なわけだけど、ここは圧倒的にそのまま手渡しである。

 その分時間はかからないはずなのに、列がどんどんできていく不思議。

 まあ、一人一分として、一時間で二人でさばけるのは120人。

 あ、三十秒くらいでさばかないと駄目じゃん。

 撮影しにいけなくなるヨ!

 もしくはみなさん二冊ずつとか買っていってくれると嬉しいな!


「三冊と、ルイさんのスマイルを!」

「それくらいでしたら。はいっ、500円のお返しです」

 うぉおっ、と列からなぜかざわめきが起きた。

 スマイルくらいなら無料でつけてあげますけれども。


「明らかに、ROMの内容より売り子さんに注目が集まってる……」

「くっ、有名人効果恐ろしい……」

 お隣から、そんな反応をされてしまったけれど、お隣だって十分な集客だと思う。

 ばんばん新刊が売れているし、楽しみにしています! とか熱い言葉をもらっているしね。

 たしかにROMの内容についてはまだそんなにお客さんから話が来ないけれども。


「久しぶりのROM楽しみにしてました! 今夜はじっくり堪能させてもらいます!」

「ありがとうございます。今回は新しい試みもいっぱいやってますから」

 さすがにエレナの方にはROMの話題のほうがちらほら入っているようだった。

 ま、撮影場所の話とか詳しく話し込むような時間はないからいいんだけどね。

 

「やっと順番まわってきた。六冊お願いしますルイさん」

 ごぶさたですー、と次に現れたのは花ちゃんだった。

 特撮研のメンバーも何人かきてるとは思ってたけど、まさかこっちにまで並んでくれるとはありがたいことだ。


「了解です。他の人の分もってところかな」

「はい。みんなルイさんの写真好きですから」

 それじゃ失礼しますね、と花ちゃんは後ろの列を気にしながらさっさと身をひいてくれた。

 なるほど。どうやら特撮研の中で代表して買いに来たらしい。

 六冊となるとけっこうな量だけれど、いちおう上限十冊の中に落ち着いているので問題なしだ。


 制限をつけたのは、転売を防ぐ意味合いからだ。

 なるべく多くの人に見てもらいたいし、なにより例の古本やの件で少なからず我々はショックを受けているのである。

 サイトの方にもエレナからのお願いということで、転売はやめてもらえるようなコメントをのせている。 


「こちらはエレナお嬢様のコスROM列最後尾でございます」

「うわ、執事……まじ執事かっけぇ」

「クオリティぱねぇわ。すげぇー」

 さて。そんな感じで販売をしているわけだけれど、列の整理に関してはやっぱり人手が必要な事態にはなってしまった。

 前回は最後尾の人に看板を持ってもらってたのだけど、それならばわたくしめが、と中田さんがすっと動いた時には、仕事ができる執事さんだ! とどきりとしたものである。

 販売に追われてなければその姿は是非撮っておきたかった!


「あの! エレナさんってやっぱりお嬢様なんですか!?」

「あのお風呂のやつ見ました。あんな温泉行ってみたいです!」

 そして中田さんは会場の女子に密かな人気で声をかけられていた。

 そうそう。今回のエレナ本の購買層は、男女比7:3くらいである。

 やっぱり、実は女の子ですという印象が強くなったせいで、男性客の数がわっと増えたのだ。

 そんな中での女性客がきゃあきゃあと中田さんに声をかけているのであった。


「あそこは確かによい宿ですよ。お値段もそこまでではありませんから、是非足をお運びください」

 中田さんは嫌な顔をせずに、きちんと対応。

 彼にとってはお嬢様のお客様なので、雑に扱うなんてことはまずしないのである。


「アルバイトの時間長くしなきゃなぁ」

「楽しみのためと思えば仕事もがんばれるね!」

 今度の目標は国内旅行だ、と言いながら彼女達は列を進んでいった。

 うん。確かにいい宿だったから、是非とも行って欲しいものだ。


「ルイどの! エレナたん本3冊お願いするでござる!」

 列が進み、現れたのは長谷川先生だった。

 なにげに知り合いも結構買いに来てくれているので、現れるかなぁとは思っていたけれど、三冊お買い上げとはなかなかなものだ。


「はいはい。三冊ですね。保存用、観賞用、布教用ですね」

「そうでござるよー。ああ、あとはケイ氏にでも布教しておくでござる」

 かわいい教え子は大事にしたいでござるからして、といいつつ彼はお金を払って列の脇にそれていった。


 あの、長谷川先生……ケイくんに布教してもあんまり意味ないですってば。

 まあでも、大切にしてもらえると嬉しいです。


 そして販売は黙々と進んでいき、残り段ボール二個くらいになったときだった。


「こんにちはー! 大盛況ですねルイさん」

「あ、真矢ちゃん……と、そちらは以前お買い上げいただきましたよね」

 ちらりと真矢ちゃんの隣にいる男性に視線を向ける。

 ほう、彼女が連れてくるということは、つまりこの人が、新宮真守さんということになるだろうか。

 そう。ルイの姉の婚約者である新宮さんの兄というわけだ。

 

 なんというか、似てない兄弟だなぁというのがルイの感想だった。

 真飛さんは、なんていうか……ほっそりイケメンだ。うちの姉と並ぶと普通にいいカップルに見える。


 でも、真守さんはまあ、ぽっちゃり系のオタク殿という感じなのだ。

 ルイとしてはどちらも被写体として同じくらいって感じだけど、兄弟でここまで違うかという感じはする。


「は、ははは、はじめまして。真矢の兄の真守といいます。その、いろいろ話を聞いて今日くるか悩んだんですが、エレナたんの本欲しくてその……」

「買いに来てくれてありがとうございます。真守さんのことは、私も覚えていますし、初めてではないですよ。今後ともよろしくですっ」

 あわあわと、うまく言葉がでない彼をフォローするために、ちょっとやわらかい笑顔を浮かべながら、ぺこりと頭を下げる。


 そう初めてではないのだ。

 相手は、たぶんルイが彼の事を覚えていないと思ってるかもだけど。

 

「だからいったじゃん。ルイさんが家族になる人を忘れてるはずないよって」

 ざわ。

 真矢ちゃんの一言に、並んでいる人たちから変な雰囲気が立ち上った。

 さらには、ひそひそと、家族ってなに、とか、なんだ……と? なんて声があがっている。


真守(まも)あんちゃんだって、しばらくすれば、ルイさんに普通にお兄さんって呼ばれるんだよ?」

 今から慣れないでどうすんのと、真矢ちゃんはぱんと彼のちょっと丸まってる背中をたたいた。

 列にならんている人たちから、ざわざわと、お兄さん!? なにそれと声が上がる。

 まさかルイちゃん結婚するのか!? とか、ああ、新妻ってより幼妻だ……相手ちょーうらやましい、とか。

 なんかもう、普通に大混乱である。


「はい、ルイちゃん。なんか騒がしいから釈明をよろしく」

 ボクもぜひ聞きたいので、と販売の手を止めたエレナからも言われてしまった。

 エレナが対応していたお客さんまで、こちらにじっと視線を向けているくらいだ。


「うちの姉がこちらのご兄弟と結婚する予定なんです。なので真守さんは義理の兄、そして真矢ちゃんは義理の妹ということになります。私は結婚なんてしばらくしません」

 相手もいませんし、恋愛よりいまはカメラの向こうの君に夢中ということで。

 指先でフレームを作ってみなさんに向けてみると、列を作っていた方々は、おぉお……と、なぜか感動したような、ほっこりしたような顔を浮かべてくださった。


「さて、じゃあ、販売再開ということで」

 お二人とはまたあとでじっくりお話をしましょう、と新宮兄妹に言うと彼女たちはそれぞれコスROMをお買い上げして列から離れていった。


 うぅ。なんか大した騒ぎになってしまった。

 そのあとの販売でも、お姉さんいらっしゃったのですね!? とか、お姉さんも美人さんなんだろうなーとか、主に姉の話題中心で声をかけられまくった。

 これで、あのおっぱいだ、なんてのがばれたらみなさまは、尊い……とかご参拝しはじめるのではないだろうか。

 ルイさんはおっぱいないですからね!


「にしても、結婚式までに騒動が終わるといいのですが……」

 段ボール箱をべりっとあけた未先ちゃんがなにやら不穏なことを言っていたのだけど、この時のルイにはそれがなにを意味しているのか、よくわからなかった。

販売はじまりました。壁販売はなんかもう、話してる余裕なんてないよって感じだというのが私の印象です。もちろん新刊が終わってしまえばそれで列も終了て感じですし、壁だけど新刊おとしちゃった! なんてことなら、まぁ、お察し……でしょうけど。

もーちょいお客さんにしゃべらせたかったけど、列の後ろを考えると……


未先ちゃんのセリフがやっぱり不穏でございます。

けれども次話もイベントが続きます。まだコスの撮影とかも行ってないですしね!

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