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466.懐かしいメンバーと女子会4

遅くなりましたが更新です! 乙女四人で話させるのってちょー大変デスね。

 ぴぴぴっ。

 二時の五分前を告げるアラームがなった。


 どうしてこの時間だよ? といわれたら、まあ、母様が帰ってくるから、という以外にない。もちろん店主さんが、「しずーかさぁん! らっしーのもうねー!」とか誘ってたら遅くなることもあるのだけど。

 そんなのほぼ稀なことだ。

 あの店はいちおう軌道には乗ったものの、まだまだ経営的に余裕があるわけでもないしね。


 そんなことを思っていたら、玄関が開く音がした。

 う。予定より早いじゃないのさ。


「ただいまー、あら、まだお客さんいらしゃってたのね」

 玄関に靴がまだあるのを見て取ったのか、居間に戻ってきた母様は、ちらりとそこに集まっているメンバーを見回していった。


「お邪魔させていただいてます」

 ぺこりと、斉藤さんが軽く会釈をして挨拶をしている。

 さくらは面識があるようで、どもー! おばさま! と軽いノリだ。

 学校のイベントでかちあったりとかあったのだろうか。


「うわぁ……カレーやさんのホームページの写真より、綺麗……」

 いいなぁ、と一人うっとりしているのは佐々木さんだ。

 まあ、身内びいきかもしれないけど、静香母様はご近所でも有名な美人奥さんとして有名なくらいだ。

 そういう反応になってしまうのも仕方ないかもしれない。


「あらあら、嬉しいことを言ってくれるのね。でも、ちょっとカレーくさいでしょ?」

「いえ、スパイシーな魅力ということで!」

 全然問題ありませんと、佐々木さんはちょっと斜め上な風に答えた。


「さてと、ルイ。それじゃそろそろ約束の時間だし、あたしたちは撤収させてもらうわ」

 楽しい会場でした、とさくらから名残惜しそうな声が漏れたものの、母様が帰ってきてしまったのならば仕方がない。

 さすがに息子が女装して、女の子たちと一緒に騒いでいる姿を見るのはきついだろう。


「もう帰ってしまうの? 二時なんて中途半端な時間なのに」

 けれども、母様はその言葉を受けて、不思議そうに首を傾げた。

 母様。それ演技ですよね? 

 

「え? でもお邪魔ではないですか?」

 斉藤さんが不思議そうな顔をして、母様とルイの顔を見比べた。

 話が違うよ? とでもいいたいのだろう。


「そうね。居間を占拠となるとおばさんもちょっと居心地悪いというか、なんというかだから馨の部屋で二次会みたいにすればいいんじゃないかしら」

 見たところ、お菓子系はあるようだし、とちらりとめざとく母様はビニール袋の中身の話をした。

 まあ、みなさんが持ってきてはくれたものの、食事中心の会だったから、あんまりそっちに手を出すってことがなかったんだよね。


「かおたんの部屋……」

 ごくりと佐々木さんが変な音を出していたけれど、別に大したものがあるわけではない。


「それじゃ、部屋に移動して話の続きでもしましょうかね」

 洗い物はあとでやるから、そのままでいいからね、と母様に伝えると、はいよーと緩い返事がきた。

 にこやかにしながらも、やはり静香母様の本質はあまり変わらないようだ。



 とりあえず、みなさんを馨の部屋へと案内することにする。

 二階に昇って、扉をあければすぐの話だ。

「なにもないところですが、どうぞ」

「まじで何もないわね……」

 さくらが部屋を見回して、こぎれいすぎる……と変な声を上げた。

 とはいっても、ごてごてするのは好きじゃないしさ……

 せいぜいおいてあるのは、ベッドとパソコン用のデスク。本棚と……あとは全身が映せる鏡くらいかな。


「っていうか、あんたなら、ばーんって、こーめー先生の写真とか貼ってるのかと思ってたわよ」

 小梅田さんだって今も写真撮ってるんだしさ、と言われて、あー、と変な声を漏らしてしまった。

 まあ、そりゃ憧れの人ではあるけれども、ちょっと作風がなぁ。

 昔は自然の写真ばんばん撮ってたけど、最近表に出しているのは人の写真が多めなんだよね。


「あとは……息子さんのことがですね……」

 うん。興明さんのことは思い切り尊敬しているけれど、いろいろと息子さんのほうにはやらかされているのだ。


「へぇ。家族ぐるみの付き合いなんだ?」

「よかったらうちに嫁に来いとか、興明先生普通に言うからなぁ……」

 一回しかお邪魔したことはないです、といやそうな声を上げる。

 そんなとき、机の上に置いてあるガラケーが振動した。


「あ、メールだ。誰からだろ」

 ちょいとごめんよとみんなに断ってからチェックをする。

 仕事の依頼とかだと困るしね。


「うぶっ……」

 さて、折り畳み式のそれを開いて飛び込んだ内容を見て、思わずルイは噴き出した。

『かわいい子ばかりじゃない。あとで誰が本命か教えるんだゾ♪』

 ……ただの女子会だと言ったつもりなのだが。

 そのメールは母様からのものだった。


 興明先生といい、母様といい、どうしてこう恋愛がらみの話ばかりするのだろう。


「なんのメールだったの?」

「ん? 母様からね。せっかくなんだからしっかりエスコートしろとかそんな話」

 もうすでにかなりしっかりとエスコートはしたつもりなんだけどね、というと、ごちそうさまでした、とみなさんにこやかな顔を浮かべてくれた。まったく恋愛感情などかけらもなさそうな顔である。


「で、佐々木さんはどうしてほめたろうさんをだっこしてベッドにちょこんとしていたりするの?」

「それは、ほら、男の人の部屋に入ったらとりあえずやってみようみたいな?」

 ぬいぐるみだっこは確かにかわいいとは思うけれど、それはちょっとあざとすぎるような気がしてならない。


「はぁはぁ、かわいいよ、さっちん。ほら、視線こっちに。ちょっと見上げるように」

「さくらが撮影モードに入った……」

「まあ、撮りたくなる気持ちはちょっとは分かるかも」

 さっちんかわいいなぁ、と斉藤さんが朗らかな顔を浮かべている。

 こちらはこちらで、その顔を一枚撮った。大人な魅力が出始めて高校の頃とはまた違った雰囲気である。


「しっかし、男の部屋か……うちの弟の部屋とかもっとごちゃーっとしてたり、壁に女の子の写真はってあったりするけど」

「見事に事務的というかなんというか……」

 まあ、ルイさんの部屋という風には到底思えないけどねぇ、と佐々木さんがぶつくさ文句を言い始める。


「ほめたろうさんは可愛いけど、ルイさんの部屋って言ったらもっとこう、しゃらーんとした感じというか、天蓋付きのベッドとかに部屋中ピンクって感じがしたんだけど」

 このギャップがミステリーと佐々木さんはほめたろうさんをぎゅむーっと抱きしめた。

  

「いっとくけど、あたし別に撮影のために女装してるだけであって、私生活まで乙女趣味じゃないよ?」

 部屋は実用第一です、というと、みんなから、はいはい、もーそれはいいから、と白い目で見られてしまった。

 うむぅ。事実だというのに。


「でも、確かに撮影のための部屋、というのは分かるかな。本棚とかほとんど写真関係の雑誌みたいだし」

「ほうほう。カメラの月刊誌なんてあるんだねぇ。うわ、これすっごいきれい」

 うわぁーと、佐々木さんが本棚に指を伸ばして、ぱらぱらと開き始めた。

 いちおう見ていいかどうか聞いてくれるといいんだけどなぁ。

 ま、見られちゃまずいものとか、まったくないですけどね。


「おぉ。なんだかんだいって、あんたも女の子の写真集とか持ってるじゃないのって、珠理さんのか……」

「うわぁ、あの子、こんな格好とかしちゃうんだ……超似合う」

 佐々木さんが見始めたからだろう。他の二人も本棚に熱中し始めてしまった。

 うーん。見られてもいいんだけど。いいんだけども……

 女の子たちが自分の部屋で、本棚をあさるというのは、なんだか初めての経験でちょっとそわそわしてしまう。


「ああ、それ、エレナたんのコスROMね。ちづはエレナたんに会ったことあるんだっけ?」

「うん。高校の文化祭に来てたじゃない? それをいえばまぁ、珠理ちゃんも来てたわけだけど……」

 写真集をお互いに見せながら、ポーズとるとすっごいねぇーと二人で言い合っていた。

  

「そういや、ルイ。エレナたんの次のコスROMはいつ出るの? ファン一同心待ちな感じなんだけど」

「いちおう春先のイベントあたりには出したいねって言ってるところ。ほぼ撮影は終わっててあとは印刷と編集かな。今回は二人じゃなくて三人でやってるからさ」

 ちょい、調整で時間がかかってるんだ、というと、さくらが、なぬ? と眉をあげた。


「あんたら二人の中に混じれるとか、いったいどこの誰よ?」

 ってか、もしや新しい男の娘かっ、とさくらは新しいモデルの登場を期待したらしい。

 けれど、残念。さすがにエレナたんのコスROMのモデルは一人なのです。


「さくらも知ってる人だよ。ほれ、馨と青木の合成写真事件」

「あ……あー。あれか。画像加工できる子」

 それで三人か、とさくらはそこで納得した。


「えっと、この写真集って、ROMの中に画像がいっぱい入ってるの?」

「こういう売り方なんだねぇ。てっきりこう珠理ちゃんのみたいに、紙だけだと思ってたけど」

 ほへーと、佐々木さんまで興味津々でエレナのコスROMに視線を向けた。


「いちおうプロの写真集ってなると、紙でしっかりって感じだけど、うちらの場合はなるべく枚数を入れたいってのがあってね。印刷代とかもバカにならないし、全部紙でやってたら原価だけでひどいことになっちゃうから」

 部数をいっぱい刷るならまだしも、こっちの方がローコストなんです、というと、そういうことまで考えないとなんだね、と言われた。

 いちおう、同人作品とはいえども、コスト意識というのはやっぱり大切なものなのだ。

 エレナのROMに関しては、十分以上に回収できるし、値段を下げることもできるだろうけど、始めたばっかりの人だったり、あんまり売れなかったりという場合は、コストは低いに越したことはない。


「ってことは、このROMの中に写真いっぱい入ってるってこと?」

 それは見てみたいですなー、と佐々木さんがちょっと上目遣いでお願いしてくる。

 うわ。別にいいけど、そんな視線向けないでくださいませんか。

 撮りたくなるので。


「ご希望ならパソコンつけるよ? 前に従兄弟にも見せたし、なんならエレナのROMだけじゃなくて、今までの写真も見ていただいても良いのですよ?」

 ふふん、と本棚のわきにある棚を見せながら、どうよ、とそこに置いてあるブルーレイのディスクにみんなの視線を誘導する。

 本棚の方に興味を持ってもらうのもいいのだけど、むしろルイとしてはこちらのほうを見てもらいたいものなのだ。


「うわ……これ全部、今まで撮った写真?」

「そ。いつからいつまで、どこで何を撮ったか、いちおう整理して保管してるの。さくらもやってるよね?」

「ん。やってるけど、さすがにこの枚数はないわ……」

 まじ、ないわー、とさくらはベッドの上にぽふんと体を預けながらこれで、何万枚になるのやら、と遠い目をしていた。

 でも、さくらさん。貴女だってもう何万枚って写真は撮ってるじゃないですか?


「じゃー、パソコンつけさせていただきましょー」

 ぽちっとな、と佐々木さんがなぜか微妙な掛け声をかけながら、パソコンに電源を入れる。

 いちおう写真をたくさん加工するわけでもないので、そこまで高性能というわけではないけれど、ブルーレイにデータを焼くくらいなら問題なくやれる相棒である。


「いちおう、極秘って書いてあるフォルダは開けないこと。ま、パスワードもかけてあるけど」

 家のパソコンであっても、万が一ということがあるので、公開不可の写真はそこに一括して入れてあるのだ。


「どんなのが出てくるか楽しみなんですが……」

 そういわれるとクリックしたくなるーと、佐々木さんがおどけた。

 まあ、気持ちはわかるけど、今日はエレナさんのコスROMとか風景写真集をぜひ見ていただきたいところです。


「うわわ、なんと凛々しい……」

「ほんと、それぞれのキャラで表情が変わるっていうか、入ってる(、、、、)感じ」

 こんな顔も出来るのか、と騎士の次に表示したドレス姿に、おぅと斉藤さんが声を上げた。

 いちおう面識はあっても斉藤さんはエレナとあんまり触れ合ってないしね。

 そのわきで、どうですよ、うちのエレナたんは、とさくらがなぜかどや顔をしていた。


「ちなみに、さくらが撮ったエレナの写真とかないの?」

「あいにく家にしかないわね。最近は動物とか中心に撮ってるし」

「じゃー、あとで手持ちのデータ見せてちょーだい」

 よしっ、動物さんだ! と目をキラキラさせてたら、わかったわよ、とさくらにげんなりした顔をされた。


「原作はわからないけど、なんか作りこみが半端ないってのはわかるね」

「普段のかおたんの写真も好きだけど、こっちのほうがなんかキラキラしてるねぇ」

 モデルが良いからなんだろうけど、と佐々木さんがエレナの写真に見入っている。


「なんなら、三人も卒パのときみたいになにか衣装きて、撮影とかやってみる?」

 どうよ、さくらさん、と声をかけると、彼女はふるふると首を横にふった。

「あたしは撮る側。写るのはそれこそちづとかにお任せというもので」

「ふふ。どこかの誰かさんのセリフにそっくりね」

 昔、そんなセリフきいたっけなぁと、斉藤さんがふふふと、意味ありげに笑った。

 どうせ似たもの同士ですよ。


「んー、私は絶対さくらちゃんと、かおたんが付きあうと思ってたのになぁ。今思えば、ルイさんとしても週末一緒に撮影に出てたっていうじゃない? それってまるで週末デートみたいだし」

 それでも恋仲にならないだなんて、ミステリーと、佐々木さんはルイとさくらを見比べながら首をかしげていた。


「こんにゃろーを男と思ったことなんてないわよ。週末は友達と一緒に撮影してただけ。それこそ女同士で撮影してただけ」

 恋愛感情なんて出るわけないって、とさくらが言うと、そっかー、ルイさんと一緒にいるとそういう感覚になっちゃうかーと、じぃと彼女はこちらに興味深そうな視線を向けてきた。


「二人と違って、私はルイさんとの関係がそんなに深くないから、やっぱりどこかかおたんの印象が強いんだよね。うむむ。深く付き合えばこの印象は変わるんだろうか……」

「なら、一日一緒に街歩きでもすればいいんじゃない? こいつの乙女趣味っぷりがわかるから」

 何が撮影のためじゃい、とさくらはひどいことを言い切った。

 そりゃ、多少は乙女っぽいお店が好きな自覚はあるけれど、そこまで言わなくてもいいと思う。


「おぅ、じゃー、かおたん……じゃなかった。ルイさん。今度予定合わせてデートしよう!」

 ルイさんとデートなんてしたら、きっとお(にい)たち、びっくりするだろうなぁとキラキラした目で言われてしまうと、あぁ、一日時間を作らねばならないか、と思ってしまったルイさんなのだった。

かおたんずルームにご招待! ということでいろいろわいのわいのやっております。

まだこの部屋の探索は終わってないので、次話もこの部屋からお届けします。


そのあとの男子会も、この部屋からお送りするんですけれどね!

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