457.大撮影会打ち上げ1
「では、無事に大撮影会の終了を祝って」
かんぱーい! と、やや広めの部屋を使って、みんながグラスを掲げていた。
いちおう立食スタイルにはなっているものの、座る席も十分にある会場だ。
もちろんその姿も木戸は抑えておく。
え、自分は乾杯に入らないのかって? それはそれ。
いちおう、左手でグラスは掲げましたよ。
片手でもぶれないで撮れるくらいの明るさなのでね。
「無事に完成してよかったですね、部長」
「……あんまり人多いと、俺、しぬる」
「同感。私もこの人の多さについていけない」
さて、今回は前に打ち合わせをしてきたメンバーに追加で、他校の他のメンバーもそろっていたりする。
クロやんとノエルさんのところからは、編集と背景加工をがんばった部長さんや、他のキャラをやったモデルさんや撮影の方。
そしてもう一つの川面の会の方からも、かなりの人数が来ていた。
あっちは女性会員が多いみたいで、とてもみていて華々しいように思える。
特撮研のメンバーは男女混成なので、そこまで華々しくはない……ない。うん。たぶん。
「馨にぃにも紹介しておこうかな。これ、うちの部長で来年四回生になるんだけど」
ああ、どうもどうも、と自己紹介を軽く済ませる。
いちおう、ルイの方でも会ったことがない相手だった。
割とコスプレ関係が好きってなると、レイヤーさんだったり、実はルイの知り合いってケースもあったりするんだけど、今回はまったくの初対面である。
「ノエルさん、男の人苦手っていってませんでしたっけ?」
「部長は、男として見てないからだいじょうぶ」
そういえばノエルさんって、男の人ダメなんじゃなかったっけ? と思い出して聞いてみると、割とひどいコメントがきた。
っていうか……えっと?
「それは、部長さんも女装する……とか?」
「ははは。さすがにクロくんみたいには成れないよ。アレは選ばれしものが究極の技術を持って到達する領域。俺なんてとてもとても」
これでもノーマルな技術屋だよ、という彼は、まあ身長はあるものの肉付きはそこまでという感じではなかった。
確かに、顔の形は男っぽいかなとも思うけど。
ちょいと、クロやんをひっぱりだして、ひそひそとナイショ話をしておく。
「あの部長さん、実は女装に憧れ持ってるとかある? したいけど諦めてる系というか」
「……うん。馨にぃ。とりあえず女装なんて普通できねーっていう人全部が女装願望あるとか思うのやめようか」
いちおう聞いておいただけだというのに、クロやんから残念そうに肩をぽふぽふされてしまった。
「うちは女装できる人が多いので、いろいろと考えてしまうんですよね。それでテクニック的にいろいろあるんで、手助けができるならってな感じで」
「ほう、君も女装スキルもちかい? クロやんと知り合いでそれだけ華奢ならいけるんだろうが……」
「馨の女装も至高。というか女装を越えた女装、女装2を見せて欲しい」
なんですか、ノエルさん女装2って。
「いえいえ、部長さんくらいの体格の人、女装させたこともあるんで、別に全然いけますって」
「クロくんを越えるテクニックか……興味がないではないけど、まあ俺はいいかな」
見てるだけで幸せになる感じだし、あとは画像加工して楽しむ派なんで、と断られてしまった。
って、画像加工でどうするっていうんだろう。
「部長は、ちょっと変態。そこらへんの女の子の写真を加工して、男の娘に仕上げるのが趣味」
「……変態か」
「ああ、これは俺も最初は引いたよ……」
「でも、馨も良い感じに変態だと思う」
ぼそっと最後にノエルさんにひどいことを言われたけど、うーん。
さすがに、画像加工でおいたをするのは、本人の同意を取ってからのほうがいいと思う。
「ちなみに、この前はルイねぇの画像に生やしてたから。本人には内緒にって言われてるけどな」
「ほぅ、それはちょっと詳しく聞いてみたいものですね……」
ふふふふ、と女声で言ってあげると、ふぉっ、すげぇと部長さんはこちらをガン見してきた。
おっと。あんまりやり過ぎると良くないな。
「でもさ、君もクロくんに馴染むくらいだからそうとう男の娘好きなんだろ? だったらわかるはずだっ!」
くわっと、部長さんは目を見開いてこちらに詰め寄った。
「あまりにも、この世には男の娘が少ない……少ないんだよう」
うぅ、リアル男の娘が見たいんだよぅ、と部長さんはテーブルにへたりこんだ。
あらま。珍しいなぁ。三次は惨事っていうのが通説なのに、リアル男の娘大好きだなんて。
「そして、ぶちょうは、おもった」
ノエルさんが定番なのか、ナレーションをいれた。
「おらぬなら、生やしてしまえ、男の娘」
「うわぁ……」
「引くだろ? うちの部長」
「良い感じにぶっ飛んでんな……」
いやぁ、それほどでも、と部長さんは照れて頭を掻いた。
つまりは、長谷川先生と同じようなタイプということだろうか。
まあ特撮研の人達も濃い人達が多いわけだし、それと仲良くするのであれば、まー多少普通じゃないほうがらしいのかもしれない。
「っていうか、俺も自分の趣味はさすがにちょっとアレだなって思って、交流はノエルとクロくんに任せてたんだ」
「どうしてそれをここで言ってしまうのか……って、もう酔ってます?」
さっき乾杯したばかりだったわけなのだけど、部長さんはちょっとろれつが回ってないようにも思える。
お酒を飲むと気持ちが大きくなる人っているからなぁ。
「特撮研の話を聞いてたら、大丈夫かなぁ~って思いもあってな」
酔ってるのも確かだけど、と言いつつ部長さんは隣に置いてあったグラスにミネラルウォーターを注いで飲んだ。
「ま、それだけ馨にぃ達のことは身内みたいに思ってるってことだな」
「あんまり直接は交流してないけど、共同作成でできた絆、みたいな?」
「たぶん、それ。あと馨は、なにげに撮影上手い」
良い刺激になった、とノエルさんはかすかに笑みを浮かべてくれた。
迷い無くそれは撮ったけれど。
「って、ノエルに突然カメラ向けるのは……」
「いい。馨なら。なにも問題ない」
「くぅ、男嫌いなノエルにここまで言わせるとは……木戸くんっ、さぁ今からお着替えの時間をっ!」
「ぶちょう、きもい」
ぷぃ、とノエルさんは部長さんから視線をそらして、打ち上げようのポテトをはむついた。
ちなみに今日の料理はそれぞれの学校から料理できる子があつまって、ホットプレートやガスコンロでいろいろと作っている。
ええ、もちろん木戸さんもしっかり駆り出されましたとも。
志鶴先輩にもお手伝いをお願いしたら、だから男の娘が料理好きという設定なんて御免こうむる! と断られてしまったのは予定調和だ。
「しかし、こんな変態さんで、しかも自分は女装しないっていうのに、ノエルさんは大丈夫なの?」
いちおう、男の人じゃん、ととりあえず気になったので聞いてみる。
しかも、クロみたいに男装女子扱いができそうなタイプにもあまり見えない。
まあ、木戸さんが本気だせば違和感のない女装をさせてあげますけれど。
「ぶちょうとは幼なじみ。怖くないのわかってるから、なんとか……変態だけど」
「って、変態っていうなよー。そりゃ希少な趣味だってわかってるけど、こう、普通じゃない感がまた萌えるというか。そう! 性欲を除いた先にある感情っていうかさ」
俺、これでノーマルだし! と部長さんはドヤ顔で言い切った。
ええと? クロやん説明求む。
「ああ、この人ね、恋愛対象として好きなのは女の人なんだけど、萌え対象としては男の娘っていう面倒な性格してんの」
「なるほど。それで性欲の先にある、なわけか」
通常は、性欲のほうが先に出るものらしいけど、好き、がいろいろと上回るのはちょっとシンパシーを感じなくも無い部分かもしれない。
「だって、綺麗なものは純粋に愛でたいだろ?」
「そして、それがいつしか恋慕の感情になって、めくるめく……だが、断る!」
わしっと絡んで来たのは、奈留先輩だった。
ほんのり頬を染めていて、彼女もちょっとほろ酔い状態らしい。
「我らがかおたんはあげられまへんなぁ」
「しのさん状態だと、男の人の理性がぶっ飛ぶ可能性が……」
そしてひさぎさんと花ちゃんまで合流。
「いえ、むしろ、女性扱いになって特別視しないに一票」
そんなことを言ってのけるのは、入会したときにもろにしのさん状態を見続けた、一つ年下のさゆみちゃんだ。
「そんなことより、今回の大撮影会を振り返りつつ、今後なんのキャラのコスをやるかでもりあがろーではないですか!」
かおたんの話題はまた今度! と奈留先輩はいいながら、こちらにちらっと視線を向けてきた。
助けてやったぜ、今度みっちり撮影してね、とでも言いたいのだろうか。
「それはいい。私も次のコスはなににするか決めあぐねている」
「ノエルはんには、やっぱりショタっこやろなぁ。今期や来期でなにかあったやろうか」
「ひさぎ先輩は社会人になっても衣装つくるんですか?」
「あたりまえやわ。ほぼ生きがい! これなくして生きていけるだなどとっ!」
今回の衣装作りも楽しかった、とひさぎさんは一年を振り返った。
うん。まあ彼女の言い分はもっともで、みんながしみじみと肯いていた。
ハイスピードでばちばち行くのももちろん楽しいし、腕のいい人達とやっていくのもすばらしいことだけど、このメンバーでまったりと撮影して、楽しんでというのも、十分に充実した一年だったと思う。
「またやれたら良いけど……来年はちょいと厳しいかな」
とりあえず、今回は後輩にしっかりといろいろ楽しかった話、してあげましょうと奈留先輩はしみじみと言ったのだった。
その言い分はもっともで、さすがに今回の大撮影会は手探りすぎた感があったのである。
「さてさて、宴もたけなわとなったわけでございますが、私ども特撮研から、ちょーっとしたお知らせがございまーす!」
会場のちょっと高くなってるところに立った時宗先輩は、それぞれで騒いでいるメンバーに話しかけた。
一気に視線がそちらに集まっていく。
「おぉー、なんすかー」
「いまさらサプライズで、全データ飛んだーとかじゃないですよねー」
みなさんかなりできあがっているのか、楽しそうな声がいろいろなところから上がっている。
それは、特撮研のメンバーからもだった。
当然木戸も、サプライズの内容を聞かされていない。
「サプライズは二つ! まず一つはうちの次代会長! 花ちゃんに決定しました! 今後ともよろしゅう!」
「え?」
みなさん、ぽかーんとした顔をしたものの、一番ぽかんとした顔をしているのは指名された本人だった。
「ちょ、ちょーーー! なにを突然いいだしてるんですか!? ほぼ初心者の私なんて、ダメじゃん。どう間違っても会長なんて」
本人の申し出に、先輩方はみなさん目を伏せた。
ああ、思いっきり伏せた。
その姿がおかしかったので、記念に数枚撮らせていただいた。
「あー、そんなに気張らなくてもいいよー。あたしですら会長やれたくらいなんだし」
ほれほれ、りらっくすーと、花実先輩は卒業間近な、無責任な声音で言い放った。
卒業ももう間近で、仕事に就く前の彼女は、千紗さんと同じく自分の時間をたっぷり持っている状態だ。
就職浪人でもしていれば、また焦り方も違うのだろうけれど。
「いちおう、来年の二回生、三回生から選ぶ方針なわけだけど、ねぇ」
なぜか先輩方は、今度は反対の方に視線を向けた。
えっと、なんなんだろうか、その反応は。
「最初は、私に話が来たんだけど、それ断ったの。撮影に集中したいからって」
だから、ごめんね、花ちゃん、と鍋島さんが軽く胸の前で手を合わせた。
いちおう鍋島さんはこれで、レイヤーとしての仕事も忙しいし、自分でもカメラを持つ人だ。
サークルをまとめるというよりはそちらを取ったらしい。
「じゃ、じゃあ、木戸君は? 私なんかより断然撮影上手いし、指示だって的確だし。むしろ師匠! って呼びたいくらいなんだけど」
あわあわと、花ちゃんが嬉しいことを言ってくれるのだが、周りはしらーっとした反応だった。
「……本気で言ってる?」
「無理だろ……木戸にゃあ無理だろ……ってか、女装部になっても知らん」
あ、後半は時宗先輩だ。
うぅ。たしかに朝日たん爆誕とかことある毎にいってたけど、別にそんなに好きで人様を女装させたりしてないですって。
本人が望んだとき、そっと手を貸すのがしのさんクオリティです。
「そもそも。木戸くんじゃまとめる前に本人が、わはーって撮影にでちゃうもの。それじゃあ長は収まらないの。好きに撮影させて、それでできたものを他の人が加工するってスタイルが一番でしょ」
「まー、あのしの氏ですからなぁ。ふふ。長とか絶対無理そう」
奈留先輩まで、無理判定をだしてくる。うぅ、そりゃ向いてないとは思うけど、その、手綱にぎってないとぶっちぎっちゃうっていう認識はどうなんだろう。
「あの、長谷川先生? なにか弁護などありましたら嬉しいのですが?」
端っこの方で、いちおー保護者でござるーと、存在感を隠して飲み食いしていた長谷川先生に、ちょっと弱々しい声を向けて見る。たしかにかなりの点で図星なのだけど、ここまでの集中砲火というのはちょっと傷つくのだ。
「ん? ああ、ケイ氏ならどう考えても、サークルのまとめ役とか無理にござるよ。煙が立たないところにもっくもくのトラブルを呼び込む体質ゆえ……」
冷凍パスタをずるずると食べてる長谷川先生が、口の中に物を入れながら、もごもご答えた。
ええと、口の中に物をいれながら話しちゃいけないって教わらなかったのかな。
っていうか! トラブル体質とか思ってたんですか!?
いつだって、トラブル持ってくるのはそっちだよね!?
んー、ここは一つお仕置きをしておかないといけませんかね。
こそこそと、眼鏡だけ変えて、軽く髪を手ぐしで整える。
「まさか、長谷川先生にそんな風に思われてるなんて、私、思っても見ませんでしたっ」
ちょっとかがんで視線を伏せながら寂しそうに長谷川先生の前に立つと、完璧な女声で寂しそうに言いのける。
まあ、こちらもちょっと完成のお祝いのテンションにやられてるとでも思っていただきたい。
普段なら、滅多にしないんだからね。
「相変わらずだなぁ、馨兄ぃ」
「すごい。やっぱりしのの声、最高」
でも、演技はちょっと棒、と、日頃棒台詞連発のノエルさんの声が聞こえた。
「おっふ。いいでござる。いいでござるなぁ、ケイ氏! それでこそ拙者が見初めた才能! さぁ! ケイどの。一緒に男の娘コスを極めようではないでござるかっ!!」
「そうやなぁ。前に着せた和服の女装は似合っておりましたしなぁ」
「って、ひさぎさんは黙っててくださいよ! てか、卒業間近のこの時期に、ふらふらしてるだなんて……」
ちょっとシュンとしてる演技なんてまったく無視で、長谷川先生は見事にがしぃっと木戸の手をにぎりこんで、空いているもう片方の手でびしぃっと空を指さして、言い放った。
そしてそこに絡むのはひさぎさんだ。
確かに、大撮影会に入ってから、衣装合わせというか、すっごいミニの衣装着させられたもんね。
って、その原作そろそろ完結とかって、本屋で見た気がする。
和服……嫌いじゃ無いけど、さすがにあそこまでミニなのは、着る方としてはちょっと遠慮したいところだ。
もちろん、撮る方としては大歓迎だけど!
だ、だって、ほら、ミニスカやっぱり可愛いんだよ! ふともものラインが良い感じに出て、健康的なふとももはとてもきらびやかですばらしい! 絶対領域に男としての興味はあまりないけど、被写体としてはあのバランスは良い物だと思う。
もちろん、ニーソも、ハイソも黒タイツもいいんだけどね。
足の美しさが表現できるというのは、それだけで幸せなことだ。
え、断然おっぱいだろって? そんな。胸と足論争なんて、しりませんがな。
胸も被写体としていいと思うのです。鎖骨から胸にかけてのラインと、胸から腰までのラインと。
ここら辺がきれいになってると、おぉっと思ってしまう。
「それをいったら、私もになっちゃうんだけど?」
花実元会長は、ほれほれ、まだまだ準備期間っすよーと、プレ社会人の時間を楽しんでいるところらしい。
「くぅ。新人研修いっぱい受けて、せんのーされて立派な企業戦士になってください!」
「あら、木戸くんは進路どうすんの? もうそろそろ進路確定してなきゃいけない頃合いじゃない?」
「それは、時宗先輩にいう台詞かと……」
まだ大学生活も順当に行って二年はある。さすがにこの折り返し地点で、就職どこにすんべと考えるのは早すぎではないだろうか。
そもそも、もう仕事自体はしているわけだし……
「朝日はそれシッパイして、思いっきり特撮研に入れ込んじゃったから、今があるわけさ!」
さぁ、エントリーシートの書き方からがんばろー、とぽんぽん肩を叩かれているのだけど、そんなに時宗先輩って就職やばいんだろうか。
あ、でも本格的に始まるのって、六月とかそんなもんだったよね、確か。
「映像にかかわる仕事はしてみたいなって思うけど、現場で技術的にどうこうなるのってやっぱ、専門でやってるやつらなわけで、そこで上手くやれるかっていうと……」
「なら、先輩っ。一回見学に行かなきゃですね?」
インターンシップとかもあるし、と女声で言ってあげると、朝日先輩は、お、おぅ、ときょどったように、肯いた。
「今回の大撮影会。メインで撮影して撮ったのは我々ですが、いろいろサポートしてくれた四回生のみなさん先輩達です。朝日先輩がスケジュール管理もぐだぐだのダメダメなところをきっちりフォローしてなんとかこうして形にしてくださったわけで」
「……しのさん、あんまり朝日たんの心を折らないでやって」
だいじょーぶですっ、とちょっと女子度を上げて時宗先輩に笑顔を向けてあげたら、奈留先輩に、そりゃあないぜと肩をぽんぽん叩かれて首を振られてしまった。
ちなみに奈留先輩は、ある程度就職先のめどは絞っているのだそうだ。受かるかはわかんないけどねーとへらっといってたけど、まあこればっかりはなるようにしかならないかなと思う。
就職とは、出会いと縁である。と誰かが言ってたけど、まあそうなんだろう。
「そんなわけで、トラブルの放火魔の二つ名を得てしまった木戸氏は、残念ながら、長の器ではなかった、ということなわけだ」
こほんと、時宗先輩は咳払いをして、話題を強引に戻した。
さんざん人をからかいやがって、こんちくしょーと、時宗先輩から温かい言葉をいただいたのは言うまでもない。
「となると、消去法で花涌になるってわけだが、わかったか?」
っていうか、俺でも出来たんだし、別になんとかなるからと、先輩は残念なフォローをしてくれた。
花ちゃんはその言葉でやっとやる気になったようで、ガンバリマス、とぐっと拳を胸元で握り閉めた。
まあ、来年は他の学校との折衝とかもないだろうし、学内で撮影しまくればいいだけだと思うし、ある程度楽にやれるとは思うのだけど。
ああ、でも新入部員の獲得とかはがんばらないとなのかな?
「で、次のサプライズなのですが、志鶴先輩入っておいで」
打ち上げが始まったときは姿を見せていた志鶴先輩は確かに、後半になってから姿を消していた。
それがサプライズと言われて、またなにかゴージャスな格好でもしてくるんだろうかと、ふと思った。
たぶん会場のみんながそう思っていたと思う。
それこそ、巨大衣装でご登場ということだってありえそうだ。
けれど。
「おまたせ。さて、この会で私的な報告をするのは気が引けるのですが」
「ちょ……へ? え?」
扉を開けて入ってきたその人の姿を見て、みんなはざわっと驚きの声を上げた。
「私こと、沢村志鶴は、女装を卒業することにしました」
だって、そこに立っていたのは、思い切りメンズの服装をした、志鶴先輩の姿だったからなのだった。
分割すると少なくなるし、いってまえということで久しぶりに長めです。
気がついたら、こいつら喋りすぎるって感じで。
やっぱりノエルさんの棒台詞突っ込みが好きです。
そして、男の娘スキー多めな当作品で、三次元ラブな方が登場です。
いちおうそういう人もいるよ! ってなわけでちょい出な感じになりました。
どうしてエレナたんのそばに来ないのかは、エレナたん女の子派だからです。
さて、次話はサプライズ二個目のほうの、どうしてそうなった!? な話です。
木曜日までにかけるのかな……




