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420.恋愛相談1

一話で終える予定が、長くなりそうだったので(いえ、後半書き上がらなかったので)、二話構成です。

『いやぁ、馨くんから連絡が来るなんて珍しいね、なにかあった?』


 旅行から帰ってベッドに体を預けながら電話をかけた先は、姉様の将来の旦那様、新宮さんのところだった。

 ここのところ、なんというか、頭にいろいろとちらついてしまって、あーとかうーとか、漏らしてしまう毎日なのだ。


 いちおう、クリスマスのお仕事はなんとかこなした。店長からは笑顔がぎこちないっ、と一度ほっぺたを引っ張られたのだけど、いひゃいれふぅと答えたら、おぅ、すげぇー引っ張っても女の子、とかわけわからないことを言われてしまった。


 ちなみに、翅からクリスマスプレゼントが家に届いたりしたのだけど、あれはとりあえず見なかったことにした。

 というか、翅のやつは、会えないっていうのもあって、なんだかんだでプレゼント攻勢というものを仕掛けてきている昨今だ。

 もちろん誕生日当日にも、割と大げさな花が届いた。

 気まぐれな君にこれを、なんてカードがついていて、あーあ、と思いつつ玄関にしばらく飾らせてもらった。花に罪はないしね。その写真は撮ったけど、それを送り主に送る勇気はなかった。

 さすがに一ヶ月は持たなかったので、お正月前の今は年末飾りというような感じに切り替わってしまっているけれど。ちなみに写真を撮ったってことは蠢経由で聞いてしまったらしく、たいそう彼は喜んだらしい。


 まじ、俺脈無しだから、そのまま開封されずに終わると思ってた! とか笑顔で言いまくってたそうだ。

 ……ひどいドMさんである。


 さて、それはそうと、今はこちらのことだ。

「実はその、相談に乗ってもらいたいことがあって、ですね」

『相談ごとかな。答えられることならいいんだけど』

 あんまり自信ないんだよね、と新宮さんはちょっと、戸惑った声を上げていた。

 どんな妙な質問をされるんだろうかと戦々恐々しているところだろうか。


 他の候補ではるかさんも上がったのだけど、あっちの恋愛事情をいろいろつっついてる手前、なんとなく話にくかったので、こちらになったのだけど。

 年上で経験が豊富な知り合いとなると、候補も結構絞られてしまうのだ。


 え、あいなさんには相談しないのかって? あの人に相談して、どうするのさって感じです。

 男の影ゼロです。ゼロ。青木にも、ねーちゃんは見た目いいのに残念だからなぁ。ほんと、きっと三十路すぎて街コンのカメラ係やって、そこで参加者じゃないのに良い人見つけるに一票とか、非情に生々しいことを言われていたのを思いだしてしまった。


 個人的には、仕事優先っていうのはとても素敵! って思ってしまうんだけど。


「えっと、新宮さん、まがりなりにもうちの姉と付き合ったり合コン企画したりする、りあ・じゅう、な人ですよね? そこで相談なんです。えっと、女の子から告白されたらどうすべきですか?」

『……女の子? 男の子からではなくて?』

 は? と一瞬呆けた声を上げたところはまあ、怒らないで置こう。

 彼との付き合いはどっちかというと、やっぱり馨でよりルイとしてのほうが多めなので、相手も自然と男の人が告るんだろとなるに違いないのだ。


「あの、義兄さん? いちおう、私、男ですからね?」

『説得力ゼロだっての。急に声色替えないでよ。別の人がいるみたいだろ』

 そう言われて、あせって男声に戻す。

 新宮さんがそういうからあえて女声に変えての反応だったんだけど。


「それで、新宮さん。告白された経験って?」

『んー、それはちょっと俺の手に余るかな』

「なっ。合コンの時の手慣れた感じもあったというのにっ」

 俺じゃ無理と言われて、ががーんと衝撃が走ってしまった。

 身近な男性の中で数少ない普通の人だというのに、相談に乗れないだなどと。


『ほれ、俺は告白する方なんだよ。牡丹にしろ他の子にしろ、こっちが好きになって告白すんの。つか、女子から告白されるとかレアい思いをする男なんてむしろ、イケメンくらいなもんだ』

 俺はイケメンではないからな、とぼそっという新宮さんが少し可愛く感じられてしまうのは、姉様に申し訳ないということでいいだろうか。


「俺もイケメンじゃないですからね」

『はいはい、美少女さんだよね。で、そんな相談の相手としてうってつけのがいるんだけど、そいつに相談受けてもらうってのでいいかな?』

「へぇ。モテモテで告白されまくりの知り合いがいる、と?」

『そんなところ。馨くんとも面識あるし、秘密も知ってるやつだから気兼ねなく話せると思うよ』

 場所はどこがいいだろう? と聞かれて、うーんと悩ましげな声を上げる。

 いちおう、ナイショの話なのであまり外でべらべらできる会話でもないように思うし。


『ああ、なら、君の家でどうだろう? いちおう真矢のやつも一回くらいは木戸家訪問してもいいと思うし』

 それがいいと電話越しに頷く新宮さんの口から出た名前を聞いて、あれ、真矢ちゃんって結構モテたんだ、と少しばかり意外に思ってしまったのは、前の旅行での印象が強すぎるからなのだろうか。


「まあ、それなら家でもいいですね。とはいっても時間指定させてもらってもいいですかね?」

 そしてそのあと、日程について話をつめて電話を切った。

 早く、思考を整えてすっきりしたいというのはあるけれど、あせっても仕方のないことだ。

 相談相手が同性ではない、ということに一抹の不安は覚えながらも、約束の日、つまり明日が来るのを心待ちにしながら、この前撮った写真の整理を始めることにした木戸さんだった。



「いらっしゃい」

 そんな新宮さんへの電話の翌日。玄関のチャイムが鳴ると、予定していた時間に真矢ちゃんはやってきた。

 外はまだまだ寒いので、がっちりコートとマフラーを完備という感じだ。


「おはようございます、馨さん。なんだかトラブルだという話を伺って」

「トラブルっていうか、相談っていうかね。寒い中ごめんね、来てもらって」

 ありがとう、と言いながらコートを受け取ってハンガーにかけておく。ん? という顔をされたけれど、父が帰ってきたときもするっとする仕草なので、特別おかしいと言うこともない。


「ええと、おばさま達は……?」

 居るならご挨拶をしないとでも思ったのか、彼女はきょろきょろと家の中を物色しはじめた。

「えーと、いちおううちらは冬休みだけど、父さんは仕事だし、母さんも今はカレーやのお手伝いだから」

 ナイショ話ということなので、良い感じの時間を選ばせてもらいました、と伝えておく。

 いちおう、あの母様のことなので、女の子から告白されたなんて話をしたら、話がこじれるに決まっているからね。孫はまだかい、と言われるのはイヤだ。


「おぉ……ルイさんと二人きり……ふふふ」

 なぜだか真矢ちゃんは、二人きりという単語を聞いてちょっと嬉しそうな声をあげた。

 別に、異性と二人だからって何があるってこともないとは思うけれど。


「あー、それとお昼時なので、作れるものならお昼ご飯はごちそうします」

 とりあえず、お茶とケーキは用意してあるので、手を洗って来てくださいなと、洗面所の方へと案内する。

 その間にこちらは、お茶の準備だ。

 そうはいっても、テトラパックのあいつの出番という感じで、そこまで気合いは入れてはいない。

 ケーキの方はちょいとばかり出掛けて買ってきたものではあるけれど。


「って、ケーキまでっ。えと木戸家は普段から用意しているものですか?」

「わざわざ昨日用意したってだけ。っていうか、急なお客さんに用意しているような描写がテレビとかではあるけど、来客のために用意しているおうちって滅多にないと思うんだよね」

 大きい邸宅とかならまだあれだけどさすがに普段から用意はしてませんと言うと、真矢ちゃんは、わざわざすみませんとかえって恐縮してしまったようだった。


 まあ、確かにわざわざ用意しましたとなると、重いかもしれないけど、それは今日の相談事に備えてというやつだ。

 もちろん自分で作ってもよかったんだけど、シフォレまでいって買ってきた。

 あら、今日は寄ってかないの? とかいづもさんに言われたけど、まあそれはそれだ。

 用事があるのでとそそくさ帰ってきた。

 いづもさんへの相談となると、また、あんたはもぅ、うらやまって言われそうだからね。それにさすがに古傷をがしがしえぐるように昔は女子にもてたでしょう? なんて話もできやしないのだ。実際いづもさんは美人さんなわけだし、きっとイケメンの部類に入っただろうし、男時代は大変モテたんじゃないかと思っている。


「これはお嫁さんに是非欲しい人材」

 なんて出来た奥さんだ、とか真矢ちゃんには言われてしまう始末だったけれど、お茶もでた頃なので座ってというと、はぁいと素直な返事をしてくれた。

 いつも食事をとっているテーブルの方へのご案内だ。


「さてと、落ち着いてもらったところで、さっそくいいかな? かーさんが帰ってくるまで、あんまり時間もないし」

 ちらっと時計を見ても、自分で認識してるそれとあまりかわりはない。

 母様が帰ってくるのは二時過ぎ。二時までが拘束時間でその先は、自由時間なのである。


「あ、はいはい。いいですよ。こんな美味しいものをいただけるなら、なんでも……いいえ。知ってることだけ、答えるわ」

 なんか最後、変なキャラ設定をもってきたけれど。

 そこらへんは彼女も二次元大好きな人ということだろうか。


「新宮さんから、真矢ちゃんはモテモテなので、告白もいっぱいされるって聞いて、おぉ、じゃあ告白されたときどうやって気持ちを整理しているのかとかそういうのを聞こうかと思って」

「……やだなぁ。あたしなんてルイさんの足下にも及ばないじゃないですか。告白された経験とか絶対、ルイさんのが多いでしょうに」

「ルイじゃなくて、俺がされたの。だからテンパってるっていうわけで」

 はぁ、とため息を漏らしながらお茶をいただく。

 彼女は、なん、だと、と愕然とした様子で眼を見開いていた。


 そして、うわぁ、そうかぁ、そういうこともあり得るのかぁ、とうーんとうなり出してしまった。

 いや、なにその、意外過ぎますという反応は。

 そりゃ、こっちも馨の方に告白とか、そんなことはないだろうと思っていたし、だからこんなにざわざわしてしまっているところはあるのだけど。


「こほん。えーとですね。とりあえず、アドバイスをする上で条件があります」

「条件?」

「正直、その、男の人と恋愛談議をする勇気がないので、ルイさんに着替えてきて欲しいのです」

 それもなるべく時間かけて豪華にお願いシマス! ときらきらした眼でお願いされてしまうと、うぅとという言葉しか出てこない。

 いちおう、馨としての相談だからこっちの姿の方がいいのだけど。

 まあ、でもいつか親戚になるといっても男女でそういう話をするというのは悩ましいということもあるか。


「んじゃ、手早く着替えてくるけどちょっとまってて」

「いえっ、手早くなくていいです。シャワー浴びたり、お化粧がっつりやったり、衣装どれにしようとか散々悩んでください」

「えぇー、なにそれー。でも、タイムリミットもあるから、さすがにシャワーまでは無理だから」

 まず、お湯はってないからシャワーだけだと寒いし、と答えつつ、紅茶をこくりと飲み干すと着替えに向かうことにする。

 母様が帰ってくるまでに相談事は終えたいのである。



 まずい。まずいまずいまずい。

 一人取り残された真矢は、かなりあせっていた。

 恋愛系の相談があるそうだから、木戸家にいってきてと、おにぃに言われて来てみたものの。

 まさか馨さんへの告白と、その対応への相談だとは思わなかった。

 ルイさんが告られたというならわかるし、実際あの人のことだからそうとうされているだろう。

 森では、撮影の邪魔だからお断りだよ! とかなんとか言ってたようにも思う。

 

 でも、それが今回ばかりは真剣に悩んでいるのである。

 だからこそ、告白された経験のある人、ということで真矢に白羽の矢がたったのだろう。


 いちおう、真矢とて男の人に声をかけられた経験はある。あるからあると、おにぃにも見栄をはったところはある。

 でも、それは実質、まやんたん萌えとか、もーちょっと足開いてほしいお、とか、レイヤーとして、カメコさんに言われた部分が大きい。

 あぁ、まやんたん俺の嫁になって欲しいお、とか半分冗談交じりに言われたことが多いというだけだ。

 実生活では、高校のころからとんとない。

 中学の頃は何回かラブレターをもらったことはあるけど、半分はいたずらで、残りは若さ故の過ちというやつだった。もちろん当時の経験が今いかせるのか、といえば違うと思う。


 なので。ちょっとこちらの思考を整理するためにも、馨さんには着替えてもらって、その間にちょっと落ち着こうと思ったわけなのだった。

 け、けして、ルイさんと二人きりになりたいから、とかそういうことではない。


「あぁ、モンブラン美味しい……」

 紅茶を飲みながら、モンブランの甘さにとろけそうになる。

 かなり幸せになれそうなケーキである。わざわざ買いに行ったというので、どこで売ってるのかあとで聞いておこうかと思う。


「さて……ほんと、私でお役に立てるのだろうか」

 あぁ、心配だ、と思いつつ、なるようになーれ、と真矢は最後に残していた栗を口の中にいれたのだった。

相談相手は誰にしようかーということで、真矢たんに決まりました。

同性の先輩ということで、特撮研の先輩方でも良かったのでしょうが、ふっ、恋愛とかしらねーよ、と普通に時宗先輩とか灰色で言いそう。

あとは、さくらさんとかも候補にあがりました。「恋愛感情の薄い恋愛」をしているあのカップルも参考になるかと。


さて、次話は当然後半の相談の内容に入ります。翅さんのクリスマスプレゼントもでてきますので、おたのしみに!

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