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411.温泉街に行こう1

 ぐっとアクセルを踏み込む感触が助手席にいてもわかった。

 車は広々とした車道をしっかりと走っていく。

 対向車はぽつぽつだろうか。

 都会で走るのに比べて本当に台数は少ないと思う。


 ときどきエレナが後ろの車があおってくるんだけどーとかいうものの、さしたるトラブルもなく、目的地へと我らは向かっているところだった。

 

 さて。なんでルイたちが遠出をしているのかといえば、十一月も終わりのころにエレナに、十二月の後半で誕生日プレゼントあげたいな、と言われた話から始まっている。

 さすがに二十歳の誕生日にかなりのものをもらっちゃったから、こっちとしてもお礼も兼ねてお返しをしたいというのが彼女の言い分だ。

 

 まあ、エレナとおじさまが和解というか、女装の件を納得した切っ掛けは例のコスROMなわけで。

 偶然が重なりはしたけれど、いちおうはアレが良い感じに誕生日プレゼントになったということなのだった。

 もちろんそれ以外のプレゼントも渡してあるけどね。


 そして、そのお返しがこれ。

 二泊三日の温泉旅行ということになったのである。


「でも、二泊三日でお休みとか、ルイちゃん的に大丈夫だった?」

 カーラジオをかけながら、ハンドルを握るエレナに問いかけられる。

「いちおう、ね。クリスマスの日だけは絶対仕事でろって言われてるから、これくらいは休ませてもらわないと」

 世の中の若者達はクリスマスで盛り上がるようだから、というとエレナはくすりと苦笑を浮かべた。


「ルイちゃん目当ての人がわんさとくるんだっけ? まったく自分は舞台袖みたいな台詞をいう人とは思えないよね」

「うぅ。あればっかりは仕方ないよ。去年もやらかしてるし、今年もよろしくーくらいな勢いで」

「それでミニスカサンタコス、か。ふふ。きっと可愛いんだろうなぁ」

 今年は写真お願いね、という彼女に渋い顔を返しておいた。


「エレナはクリスマスはどうすんの? よーじくんとイチャイチャするの?」

 羨ましい限りでーとお返しに言ってあげると、それがねーと、エレナは笑顔のまま少し目を細めて苦笑を浮かべた。


「父様が、今年のクリスマスは家でパーティーしようって。いつもはほったらかしだったからってさ」

「あー、和解したが故のというのもあるんだねぇ。そこによーじくん呼んじゃえばいいのに」

「……そんな恐ろしいことはできないって言ってた。まだ無理、心の準備がーってね」

 あの六月の一件からまだ半年しか経っていない。そしてエレナパパさんの様子をみる感じだと、今まで以上にダダ甘状態なのだ。

 もちろん今までだって、甘かった。誕生日パーティーの時とかの様子を見ればよくわかるし、車とかだってほいほい買って上げていた。

 

 でも、今の方がもっとひどい。マリーさんの件をなんとか乗り越えたパパさんは、エレナと一緒にいる時間を増やす方向で最近は動いているようなのだ。


「そっかー、そうなるとよーじくんは、(さい)ちゃんとのクリスマスだね」

「お? もしかして彩ちゃんと会ったの?」

「うん。ゼフィ女に行ってきたからね。よーじくんの話題でかなり盛り上がったよ」

 そして、エレ姉さまも素敵ですーっていってたというと、うわぁ、とエレナは恥ずかしそうな顔をした。

 目の前で言われるのには慣れていても、人づてに聞くのは慣れていないのだろう。


「でも、いいなぁ。ボクもゼフィ女は行ってみたかった」

「あはは。エレナなら沙紀ちゃんの友達枠ってことで入れて貰えるんじゃない?」

「んー、正直、うちが咲宮のお家並ならできただろうけど、ちょっとそれは無理かな」

 男の娘で堂々とあそこに入れるなんて、ほんっと珍しいことなんだからね、と言われても、実際やれてしまっているのだから、なんとも言えない。ルイとしても奏としてもだ。


「さて、それはそうと。そろそろメロディが鳴る道だから、速度合わせるね」

 うんしょと速度計を見ながら、エレナはその道の最適速度である40キロに調整。

 ほどなくして、地面から音が聞こえてきた。

 メロディラインというのは、道路に溝が掘ってあって、そこを走ると音がなるという道のこと。

 速すぎても遅すぎてもダメで、ちょうど良い速度で走ると鈍い音が聞こえるというそれだ。

 

「残念ながらそこまで綺麗な音とは言えないけど、面白いよね」

「眠気防止の意味合いもあるんだっけ? 夜とかだとここ、真っ暗になりそうだし」

 思い切り山道を走っているのもあって、周りに民家はあまりないし代わり映えのない景色と言われればその通りだった。

 まあ、ルイとしてはこういう景色は大好きだし、是非ともうろうろして撮影したいところではあるのだが。


「刺激の無い田舎道。カーブは多くて信号はなく、看板には狸注意とかだしねぇ。ドライバーとしてはうっかり油断をしないで走らねばって感じ」

「クマ注意とかじゃないだけアレだけど、とことこ走り出してきちゃったら大変だよねぇ」

 動物も撮りたいんだけどなぁ、と言うと、さすがに道路にはでてこないと信じたい、とエレナは悩ましげなうめき声を上げていた。

 車に乗ってて何がイヤかって、ひいちゃうことだよね。都会だと猫とかになるんだろうけど。


「そういえば、ルイちゃん。クマの彼とはその後どうなの?」

 思い出した、とばかりにエレナが出してきた話題は、以前エレナと会ったことのある木村の話だった。

 ずいぶんと前の話だというのに、覚えていたらしい。


「んー、そこまで会ってはいない、かな。お姉さんのお店はちょいちょい行くんだけど」

 バッグにつけられているクマさんをつんつんしながら、無難な答えを返しておく。隣の白イルカさんとなかよさげで微笑ましい。

 一応、前に会ったのは、キャラ博のときに助けてもらったのが最後だ。あのときは取材陣に囲まれてるところをすっとひっぱりだしてくれた。本当にいい友達である。


「そんなこと言いつつ、去年あたり思いっきり女装させてたよね。錯覚まで使ってびっくりしちゃった」

 その後大丈夫なの? とエレナが愉快そうな声を上げていた。

 うぅ。別に大丈夫ですってば。

 木村氏はちゃんと、男子としてクマ作りに励んでおります。


「ま、シフォレに連れて行ったりとかもあったし、若干乙女回路搭載になりかけな気もするけど、どっぷり足を突っ込むってのはないから、大丈夫」

 特に女装する必要がないのなら、しないからだいじょぶ、と言い切ると、えぇーとエレナが不満げな声を上げた。


「シフォレにつれてっちゃったのなら、もうそれ、自分で女装してお店に行くパターンじゃない?」

「いやいや、エレナさん? 誰も彼も、女性同伴限定のお店の前で、おぅっ、女装すりゃいいんだぜ! って答えにならないからね?」

 我らの方が特殊ですから、というと、エレナさまはきょとんとした顔を見せてくれた。

 もちろんその表情はいただきです。車内はちょっと暗めだけど、これくらいでも撮影はOKだ。


「でも、そのために彼女を作るっていうのも、なんか……どうなんだろ?」

「他にも仲の良い女友達つれてくとか、あとは聖さん……お姉さんとかもいるから」

 女性同伴してもらえばいけるんさ、というと、ホントにー? と疑わしげな視線を向けられてしまった。

 うぅ。どうしてこう、そんな疑いの目を向けてくるかな。


「まぁ、そこらへんどうなるのかも、楽しみにしつつ、とりあえず到着です」

 ウィンカーを出して、エレナがきゅっととりあえずの経由地である場所に入っていった。

 慣れたもので、駐車場にもすんなりと入れるあたりはさすがなものだと思う。


 さて、以前、音泉ちゃんのところに行ったときには高速を使ったのでパーキングエリアを楽しみにしたものだけれど、今回の旅行は一般道を使っているのもあって、こちらにある施設に行ってみようという話を前からしていたのだった。


 その名も、道の駅。

 道路上にちょっとずつ存在する、その地方の特産品なんかを扱っている旅行者用のスポットだ。

 場所によってはかなりの規模の所もあって、いろんなものを売ってるところもあるという。

 残念ながら、今回立ち寄るところは、まあまあというくらいの規模。

 というか、道路をはさんで反対にある建物のほうが、西洋風のメルヘンな建物でちょっとときめいてしまうくらいだった。


「なんか、日本でああいう建築みると、かわいーってつい思っちゃうよね」

 停めた方ではなく、反対の建物を見ながらカメラを構えて、はわーと声を上げる。

 撮影禁止マークはないし、人の写り込みもないから、とりあえず数枚抑えておく。


「そうだね。記念館の写真を見たときに、ついでに寄ってみたいって思ってたし」

 道の駅よりもまずは反対側に心を奪われているのは、なにも我々だけではない。

 さて、なんでここにそんな建物があるのか、と言えば、姉妹都市というものが海外にあってそこの紹介をするよ! とかいう建物なのだった。あとはこれから向かう町の恩人とか偉人とか、そんな感じの人の資料館みたいになっているそうなのだ。


「エレナんちも可愛いけど、こっちのもコンパクトで形が可愛くて良い」

「うちはどっちかというと、電車から見て、おぉ、洋館だーって感じだからね」

 大好きだけど、やっぱりミニマムな方が可愛いよねー、とエレナの声も弾んでいた。


「さて、あっちの建物も気になるけど、とりあえずはこっちで御飯、かな?」

「そうだね。エレナってばこういうところも大好きだし」

 オシャレなレストランとかは行き慣れているところもあるので、ちょっとB級なところのほうが喜ぶのだ。


「まあねぇ。チープな感じが好きというか。珍しいというか」

「それいうとあたしも外での御飯は珍しいよ?」

 いっつもお弁当なので! というと、エレナはなぜかくぃと背伸びをしながら頭をぽふぽふなでてきた。

 どうやら、不憫な子だと思われたらしい。


「おっ。君もカメラやる人? 結構なもん使ってるね」

 そんなやりとりをしていたところに、男の人の声がかかった。

 視線はこちらの胸元をじぃっと見つめてる。

 まあ、もちろん嫌らしい意味合いじゃなくて、カメラに視線を向けてるというやつだ。

 いちおうルイが使ってるカメラもかなりの高性能機になっているわけで、見る人が見ればそれなりというのはわかってもらえると思う。


「お二人もカメラをおやりになるんですか?」

 そして、こちらもちらりと二人がぶら下げているカメラに視線を向けた。

 ふむ。割ときれいな状態なところを見ると買い換えたばかりか、はたまた始めたばかりなのか。


「なんかしら始めたいって思ってこれだってなったんだ。今までスマホで写真は撮ってたけど、本格的にやろうって思ってね」

 年の頃は同じか少し上だろうか。

 最近のスマートフォンはカメラ機能もめっちゃいいという話ではあるものの、あの値段を出すなら本格的なカメラを買ってしまってもいいなぁと思うルイさんである。

 

「しかし旅先でカメラ女子と知り合えるとは。しかももう一人の子はモデルばりな可愛さとか」

「こらこら、あんまりがっつくと、お嬢さんたち緊張しちゃうから」

 あんまり興奮すんなと突っ込まれて、しょーがねーじゃんと反論していた。

 けっこう仲がいいようだけれど、ちょっと青木と絡んでた時のようなノリに近くてちょっと頬が緩んでしまった。


「どうかな? 記念に一緒に写真に写ってくれない?」

「……んー、エレナさえ良ければ、かな」

 どうする? と問いかけると、うーんとエレナは悩み込む。


「お誘いは嬉しいんですけど、きっとお父様がすごい形相で怒りそうなので」

 すみません、とエレナは軽く胸元で小さなお手々を合わせて申し訳なさそうにお断りをしていた。

 ふむ。男心も理解した上で、角が立たないように断る作戦。なかなかのお手前である。


「あらら。溺愛されちゃってる系か。でも、そこまでな美人さんだと溺愛しちゃうパパさんの気持ちもわかるなぁ」

 それなら仕方ないか、と二人は引いてくれた。

 少し心残りというか、まだ一緒に写りたいという思いもあったようだけれど、さすがに完璧な笑顔であんなことを言われてしまったら、無理というところだろう。


「それじゃ、私たちは御飯食べに行くので。また偶然あったりしたらお話しましょう」

 それではっ、とルイは手を軽く上げると軽食が売っている建物の中に入っていったのだった。



「ごちそうさまでした」

 胸元で手を合わせて、まだ汁が残っているわかめそばを食べきった。

 え、汁は塩分過多になるから残すようにするのが定番だ。

 ラーメンでも日本そばでも同じで、そこまで食べるとしたらコラーゲンたっぷり系な鍋物などに決めている。


 エレナはカツカレーをわくわくしながらほおばっていた。

 ちなみにキャベツは別皿で大盛りである。

 御飯を少なめにした分のサービスだとおばちゃんは言っていた。


「にしても、カメラをネタにしてナンパをするなんて手段もあるんだねぇ」

 ルイちゃんもどう? やってみる? と言われて。ちょっと渋い顔になってしまった。

 さっきのがナンパかと言われたらちょっと違うような気がするけれど、もしかしたら一昔前ならそういうのもできたのかもなぁなんていう風にも思う。


 現像できたら家に送るよっ、連絡先を教えて! なんて具合だ。

 今時なら、データをスマホに飛ばせるので、そこでデータ共有してはいさよならだ。

 技術の革新は、出会いの形も変えるということだろうか。 


「でも、エレナもどうして断ったの? いつもならほいほい撮られるじゃない?」

「んー、ちょいとこー、下心が見えちゃったからねぇ。カメコさん達の下心とは別件のね」

 実は男の娘ですっ、とか曝露したら絶対怒り出しそうな感じしたし、と笑顔で言い切るエレナさま。

 まあ、確かに視線が胸元に行っていたのは事実ではあるものの。

 下心ってのは、いまいちよくわからないです。


「さてと、それではこちらもごちそうさま。反対側の洋風な建物いってみよっか?」

 とりあえず、食器の返却口に自分でトレイなどを返してから、外に出た。

 なかなかに気温は低いので、息を吐くと少し白くそれが見える。

 結構な冷え込みなので、きっと今日の宿泊先ではギャップを楽しめることだろう。

 なんといっても温泉旅館である。しかも、温泉地にあるところの。


 温泉街。ああ、なんとすばらしき響きだろうか。


「だから、写真に写るのはイヤだっていってるんですっ」

 そんな夢想をしながら隣の建物に向かっていると、女性の声が聞こえた。

 ちらりと視線を向けると、そこには二十代半ばくらいのおねーさんがいた。

 ふむ。どちらかというと地味なタイプだろうか。


「えー一枚くらいいいじゃないですか。ほらお姉さん美人さんだし、旅の思い出くらい欲しいんですよ」

「ほら、あっちの建物を背景に一枚是非っ」

 それに絡んでいたのはさっきのカメラ二人組だ。

 あからさまに嫌そうな顔をしているところにカメラを向けているという感じだった。


 勝手にシャッターをきってないのは評価できるところではあるけど、ちょっとこれは注意したほうがいいかな。


「撮られたくない人を撮ってはいけない。写真をやる人にとってのマナーみたいなものです」

 カメラを構えつつ、二人にそんな声をかける。

 お写真一枚撮らせていただいても? というと二人は、びくりと体を震わせた。

 どうやら本人たちは撮られ慣れていないらしい。


「正論だけど、まさかルイちゃんの口からそんな言葉がでる日がくるとはねぇ」

 事後承諾で撮りまくるくせに、とエレナさんがじぃとこちらに視線を向けてきてるけど、知りませんったら。

 それに、事後承諾にするのは本当にごくたまにだ。基本的には声をかけてから撮影をする。

 写り込みもなるべく回避するほどに、ルイさんは人の撮影には細心の注意を払っているのだ。

 うそくせーって声が聞こえて来そうだけど本当。先に撮っちゃうのはほんとにその瞬間とてもいい顔をしている被写体がいたときだけ。


「ああ、さっきの子達か。君たちからも頼んでくれないかな。せっかくの旅先なんだしさ。思い出の一つっていうか」

「だから、イヤなんですってば」

 半ばムキになりつつ拒絶しているおねーさんに、あぁこれはあかんやつだーと少し目を細めてしまう。

 ときどきこういう人はいる。

 写真に写るという行為そのものが極端に苦手という人だ。

 

 以前、とある芸能人の卵さんを撮影したことがあったけど、あれが無意識だったのに対して、こちらは本心から撮られたくないのである。

 

「まあ、こう仰ってますし。ここはほら、思い出作りなら、ほれっ、二人とも並んで並んで」

「えっ、ちょ。まっ」

「強引だなぁ」

 半ば観念したような顔を見せながら、ちらっとエレナに視線で合図を送る。

 一緒に入って上げて、と言わんばかりのやりとりのように見えるように、だ。

 そして、男性達二人は良い感じの位置に落ち着いた。


「では、撮影会を始めますね」

 にこやかに、はーい、ではリラックスしましょうかーといいつつ、シャッターを切る。

 ちなみにエレナさんは彼らより二歩ほど横に離れているのだけど、こちらに視線を向けている男性二人は気付いていないようだ。


「では、旅の思い出ということで。スマホにデータ送りますので」

 お貸しくださいと、片方の男性からそれをお預かり。

 純粋に写真のデータだけを彼らに送る。データ形式はもちろんjpegである。


「……あの、お嬢さん、これ俺らしか写ってないんですけど?」

「旅の思い出に撮ってあげますと言っただけですけど?」

 それに、良い写真だと思うけどなぁ、というともう一人のほうは、やべぇ……こんなにいい顔で写ったこと、俺いままでねぇよ、と困惑した顔をしているようだった。

 ま、エレナたんと一緒に写真に写れるからってちょっとにやにやした顔してたからね。

 それがちょっと緩んだ表情に繋がっているんだと思う。


「いちおう表情の明るさ、光の入り方とか計算した上での撮影ですからね。気に入っていただけたならなによりです」

 では、我らはこれで、とその場を離れるように駐車場のほうに移動を始めた。

 さっきのおねーさんもそれにくっついてくるように、いそいそ駐車場の方に移動してくるようだった。

 記念館の洋風の建物も気にはなってたけど、まあ仕方ない。

 旅の帰りにでも寄りたければ寄ろうかと思う。


「あ、あの。ありがとうございました。わ、私その、写真って写るの本当にダメで」

「いえいえ、そういう方は時々いらっしゃいますから。ただ、まー男の人に強引に拒絶すると、逆ギレされることもあるので、断り方は覚えて置いた方がいいかもしれません」

 検索かければ今時はいろいろ覚えられますし、と教えると、そうしますと彼女はため息交じりに頷いてくれた。


「さて、それはそうとおねーさん。旅先で出会ったので、一枚お写真いかがでしょうか?」

 そんな姿を満足そうに見ながらそんな提案をすると、エレナさんは、ルイちゃんってばほんと……と、可哀相なものを見るような目を向けてくれた。

 おう、これが多くの男性を虜にしたと言われる、エレナたんの蔑みの目線。

 むしろそっちを一枚パシャリといただきました。


「ま、おいおい撮られてもいいって思えるようになったら、是非撮られてみてくださいな。あとはまあ、余裕があるなら撮る側にまわっちゃえば、写らなくて済むという発想もあるので、是非ご参考にしていただければ」

「はは。本当に元気だなぁ。でもそれも参考にさせてもらいます」

 ほんと助かりました、と彼女は車に乗って出発した。

 見たところ同行者もいないようだし、一人旅のようだった。

 女性の一人旅は絡まれやすそうで大変である。


 はい。女性ですよ? 別にどこでもルイさん、女装の人に会うわけじゃないですから。


「さて、じゃ、ボクたちもいこっか。お風呂が待ってるからね」

 ほら、さっさと、行こ? と言われてルイたちも車に乗り込んだのだった。

精神不調によりすこしお休みしてましたが、少し元気になったので、スタート。

気付いてしまったのです。幸せな気持ちでなければ書けないのではなく、幸せな気持ちになるために書いているのだと。

エレナたんやっぱ萌えです。


さて、本編ですがしばらくは二泊三日の旅行風景とあいなります。原案は一話分だけなので、更新ペースはちょっとスローな感じになるかと。

温泉街の雰囲気とか風景とかを切り取っていこうかと思っております。

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