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387.母校の文化祭6

休みなのでちょい力はいっちまったい! 年末年始は休みあんまりないんすけどね、とほほ。

「なんか、まともにバンドというものに見入ってしまった」

 この場合は、聞き入ってしまった、なのかなといいつつ先ほどの体育館の写真を見てちょっとにんまり。

 先輩方は上から撮影してもいいですよ、といわれたので特別二階部分、とはいっても通路くらいしかないのだけど、そこに陣取らせてもらって、思い切り撮影をした。

 ヒカリちゃんは幸せそうに演奏していたし、他のメンバーもキラキラしてて、楽しもうという思いがびしびしつたわってくるステージだった。


「とかなんとかいいながら、シャッター切りまくってるんだもん。それで本当にきいていたのかって言いたくなるわよね」

「そういうさくらだって、思う存分撮ってたと思うけど?」

「まあ、あんな顔見せられちゃったら撮るしかないじゃない? っていうか、さっちんどうしてそんな顔?」

 一人、隣でこちらの掛け合いを見ていた佐々木さんは、なぜか謎を追いかけるミステリーハンターのような表情をしていた。


「二人とも趣味も性格も合致してるから、実はお付き合いしてるのかなーとか、そんなことを思ってみたり?」

「「それはない」」

 二人の声が一緒に響いた。

 確かにさくらとは仲良しではあるけれど、それはほとんど友情からくるものであって、付き合うとかっていう話にはならないのだ。


「でも、ルイ。声のことは澪に丸投げって、あんたにしては雑じゃない?」

「んー、そこはほら、澪も自分で教えるといろいろ発見があるだろうし、それに、あたしは女子扱いだし。声変わりしてる男子の声の面倒なんて本来見れないんだってば」

「んぐっ。そういわれて、まあそうよねって言いそうになる自分がやばい……」

「しかたないよー、このルイさんに、ボイトレ? ってあたしも思うし」

 それができちゃうところがミステリーなんだけど、と佐々木さんが声をかけてくる。


 バンドが終わった後、お疲れ様ーといいつつ、声でお悩みなら先輩さんにきいてみるといいよ、と澪の連絡先を彼女には渡しておいた。タックのやりかたのアドレスも添えてだ。

 澪にはすでに演奏が始まるまえにメールはしてある。

 え、なにその面白そうな素材と思い切り食いつきつつ、歌は無理っすよ、と素直な返事がきてた。

 まあね。話す声と歌う声は違うからね。それこそ歌のレクチャーってなったら、青木か? とか怖いことになりかねない。でも、あれはあのバンドに合わないだろうし。

 もう楽器に集中してもらうか、自己努力しかないだろう。会話の声がなんとかなるだけでも助かるはずだ。


「だから、あとは男の娘たちだけでしっぽりやってもらうとして……」

 じぃと、図書室の方に視線をむける。

 この先には卒業生だけが集まっているスペースがある。今、考えるべきなのはそこに自分が入って良いのかという疑問だ。

 ルイを作る上で、なりきるというアプローチがある。木戸の女装とルイは別人なわけで、やはりこの学校を卒業したのは、かおたんなのである。


「気にせず入っちゃえばいいと思うけどにー。あそこ、少なくともここ数年の卒業生はルイさんのこと知ってるし」

 上の方の人達も、あああの、と知ってるかもよーと佐々木さんが思いきり他人事で軽い台詞を言ってくださった。


「あの、ってどのよ。言っとくけど、芸能人と浮き名をとかひそひそされるのイヤだからね」

「じゃあ、いちいち否定してまわる? どーせあんた、翅さんとできてるんだろうし」

「おぉ。それはまた赤裸々な……スクープの香り?」

 わくわく、と佐々木さんまで悪のりで聞いてくる。

 まあ、彼女は虹さんを目の前で見ていたりするし、HAOTOの面々が最近、甲斐甲斐しくルイさんに対応している姿の一端は見ているわけなのだけど。


「そ、そういうさくらは、チューもしてないくせに」

「ほっほぅ、そういう返しでいいんだ? ふ~ん。ルイがはしゃいじゃうなら、あれね。あの写真を出すしか無いわね」

 どやぁ、とさくらが腰に手を当てながら言い切った。

 ちょ、ちょっと、さくらさん。なにそんな自信ありげにしてるんですか。

 正直、さくらには、こちらのいろいろな写真を撮られているので、「あの」といわれてもなんだかわからんですよ。


「風呂上がりのあれは無しだよ? 絶対封印。ってかできれば消去」

「消去はできないよね。さっちんにも今度みせたげるから」

 かおたんち(、、、、、)で同窓会やるときにね、と、彼女は小声でそう言った。


「い、いいもん。私は見知らぬ先輩さんたちとの交流をなんとかすませるから」

 さくらがいじわるだ、といいながら図書室の扉に手をかける。

 そのドアには、卒業生さんいらっしゃい、同窓生交流会なんていう文字が書かれてあった。


「そういう拗ねる仕草とかが、ホント可愛いのがたまらぬですね」

 佐々木さんが後ろでそんなことを言っていたのだけど、とりあえず今は図書室の中がどうなっているのかの方が大切だ。


 カラカラカラ。

 一応中に入るのも首だけひょこんと、こそこそ探りながらにする。

 これでかおたん状態ならば、ばばんと入ってしまってもいいのだけど、今はルイなのだ。

 だから、この対応が正しい。

 

「お? おおお。これはルイさんじゃないですか!」

 そんな感じで、こそこそしていたわけだけれど。

 唐突に、男の人に声をかけられた。

 はて。どちらさまでしょうか?


「その節はありがとうございました。もうイベントも盛り上がって、あの後も卒パはコスプレが定番になるほどだったんですよー」

「ああっ、生徒会長さん!」

 誰だろうと思ったら、高校二年の時、初めてルイとしてコスプレイベントに参加することになった時の会長さんだった。普段交流のない相手だからあんまり顔も覚えてなかったけど、確かにこの人である。

 そして、その背後には、副会長さんの姿もある。

 話しかけてはこないものの、こちらのやりとりをじっと見守っているようだった。


「覚えていてくださって嬉しいです。それでルイさんは……ああ、さくらくん達と一緒ですか」

「はい。写真部の後輩のことも気になってましたし、さくらに誘われて来てみました」

「学校で、錯乱、狂乱そろいぶみとはほんと豪勢です」 

 副会長さんは後ろでうんうんと感慨深そうに頷いていた。彼はコス業界どっぷりだしなぁ。


 さて。そんなやりとりをしながらルイさん実は、図書室のほうに視線を向けていました。

 彼との話も大事だけど、他に誰がきているのかが気になるところだからね。

 ちらっと見たところ、同学年の人達が数人。あとは結構年齢が高い人達がそれぞれという感じ。

 これなら、普通にいつも通り部外者風に話をしていけばいいかな、なんて思った矢先。

 視界の先には、あの三人組の姿があったのだった。


「どうです? うちの文化祭も割とみんな頑張っているでしょう?」

「そうですね。バンドとかカフェとかいかせていただきましたが、本格的で、しかも楽しそうにやってて良かったです」

 いいもの、撮らせてもらいました、と笑顔を浮かべると、おおぅ、これが日常のルイさんかっ、と副会長さんはなぜか頬を緩ませていた。

 はい。さんざんホームページの紹介でも、ルイさんはコスプレ専門のカメコじゃないんです、と書いてきたけど、実際の日常の姿を見たことがある人ってあんまりいないから、実感はわかないみたいでね。どうしてもレイヤーを楽しく撮る人みたいに一部の人には思われていたりするから、これを見せると、あああの話は本当だったんだーって感じになるらしい。

 副会長さんは在学時はこの学校のレイヤーさんの調整役というか、コミュニティの運営をしてたみたいなので、どっぷりそちらの方だ。


「そう言ってもらえると嬉しいですね。あ、せっかくここにも来ていただいたので、他の方々とも話をしていってくださいよ。ルイさんの話を聞きたい人は多いと思うので」

 僕らで独占しちゃうと先輩方に怒られてしまう、と彼らは軽い挨拶だけして、別の席へと移っていった。


「さってと。じゃー、あたしは知り合いの方々にご挨拶してくるよー!」

 そいじゃにー、と佐々木さんは一人で挨拶に向かっていった。

 ミステリー大好きな彼女は、あれで人との付き合いの幅は広い。

 ミステリー研究会のこともあるし、それ以外でも知り合いは多く、学校関係者の中では顔が広い。

 

「で? ルイはどーすんの?」

「とりあえず見知った顔があるので、そこにご挨拶に行こうかと思ってるけど」

 さくらもくる? というと、心配だからついてくわ、と彼女は保護者気取りの返事をしてくれた。

 えと、さくらさん。別に騒動を起こそうとか、可愛い子がいたら女装させようとか思ってないですからね!

 それに見たところ、この会場には女装してる人とかいないですし。

 八瀬とかが来てればとも思ったけど、あっちはあっちでお店が忙しいのだろう。


「あの、牡丹先輩っ。ご無沙汰です」

 三人で話をしてるところに、割り込むように挨拶をしておく。

 そう。図書室で見つけた三人というのは、木戸姉の三人グループである。

 まさにルイの生みの親とでもいえる三人組。

 木戸牡丹、おっぱいのでっかい姉。木村聖、おしゃれなショップ店員。そして野々木美里、おっぱいの可哀相な自由人。


 さて。なんでいきなりこの三人にアタックをかけたかと言えば、まあ、保険のためだ。

 木村姉は別にいい。聖ねーさまとか呼んであげたりしてもいいくらい、こっちの事情も知ってる。

 木村のクマさん事件の時に、こちらのカメラマンとしての顔は見せているし、お互い秘密を握り合っている仲である。

 けれども、諸悪の根源たる野々木さんは違う。

 ここのところ会う機会も無かったし、きっちり説明する機会もないまま、ずるずるときてしまった。

 でも、この人、かおたんが水着姿をしたところを見ているし、眼鏡なしの状態も見ていたりする。あのときは、ルイって呼び名、姉様いってたっけ? 千紗さんと話した時どんな感じだったけ? という感じで。

 おまけに子供の頃のあれそれに関してももちろん写真込みで持っていたりするし。


 となると、春先の報道だとかでテレビに映ったルイを見て、どういうことを思うのか。

 牡丹先輩がきちんと事情を説明しているか……といえば、まあしてなさそうなんだよね。うちの姉は義理堅いから、話すなら本人の口からとか言ってるに決まっている。


「あら。ルイ。まさかこんなところで会うなんて奇遇ね。同じ学校じゃなかったと思うけど」

「いちおうほら、ここの写真部にご厄介になってたので」

 それ絡みで遊びにきてみました、というとさくらにつんつんされた。

 誰なんすか、このおっぱいはとでも言いたいのだろう。

 うん。崎ちゃんは姉様にあったことあるけど、さくらは初めてだもんなぁ。


「あ、それでこれが写真部の友達です。遠峰さくらさん。んで、こっちが噂のかおたんのお姉さんです」

「……そういう紹介になるのか」

「ご心痛お察しいたします……」

 なんか、初対面なのに、さくらさんったら、うちの姉様とやたらわかり合ってますみたいにうなずきあってるんですけど、なんでなんでしょうね。


「お姉さんのことは紹介はしてくれないのかなっ。どうなのかなっ」

 木村姉がそんなやりとりに混ざってくる。いつもなら野々木さんがここで声を上げるところだけど、彼女は今回は空気を読んで静かにしてくれてるらしい。というか、どうしていいのかわからない感じなのかな、これ。


「あー聖さんは、時々買い物にいくショップの店員さんで……ほれ、このクマさん売ってる店の人ね」

 ほれほれ、とさっき瑞季ちゃんもつけていたのとおそろいのクマさんを見せびらかせながら紹介をする。

 聖さんの一番の売り文句は、クマの姉である。


「クマっていうと、前にあんたクマのショーに出たんだっけ? 妖精二号とかそんな話で」

「……ルイ。おねーちゃん、そういう話聞いてないんだけど?」

「わざわざ遠くにいる先輩(、、)に触れてまわることでもないですし」

 うん。おねーちゃんに対してだって、全部つまびらかに事件報告なんてしないですよ。さすがに春先のHAOTO事件は心配だろうから、事情説明はしたけどね。


 さて。そんな二人の紹介はおわり。

 最後に残った女性に視線を移す。えっと、どうしようかな。

「最後が……ええと。ノノ先輩、でしたっけ?」

 実はあまり交流がなくて、というと野々木先輩は、がーん、自分だけその扱いかーとしょんぼりしていた。

 でも、ルイとして会ったことってないんだもん、しょうがないじゃない。


「うぅ。あとで交流深めるから別にいいし」

 あとで覚えていなさいと野々木さんが拳を握りしめて、背後にゴゴゴと音がでそうなオーラをだしていた。

 はいはい。いいですよ。どうせ夜は近所で宴会でもやるんだろうし、そこに混ざってあげてもいいですってば。


「ところで、ここって何をやってるところなんです?」

 とりあえず紹介は終わったところで、ちらりと図書室に視線を向けた。

 勉強をするための大きめなテーブルがいくつか置いてある上に、軽食やお菓子が置かれてあるけれど、特になにかのイベントをやっているという感じはうけなかった。


「同窓生の交流って感じかな。同じ学校の卒業生で実は仕事関係者とかってケースもあるし、せっかく同じ学校出身って縁があるのだから、もっと交流、しよ? って感じなわけよ」

「牡丹先輩は、就職する気とかあまりなさそうですけれどねぇ」

「な、なにその、しらーっとした目は。あたしだって就職は考えてますー。まああと一年あるけど、やりたいとやれると、求められるが混ざったようなところを目指して根回ししてるんだから」

 写真撮ってわいわいにこやかにやってるあんたと違って、こちとら大変なんだから、と結構まじに言われてしまった。

 う。姉様のこと、おっぱいな人だとしか思ってなくて申し訳ない。


「ちなみに、佐伯さんもここの卒業生なんだってさ。同窓会には……っていうか、この時期、文化祭とか学園祭の撮影の仕事がごろごろ入るから、なかなか来れないみたいだけど」

「へぇ、それ、石倉さん情報?」

 ほぅ、と感心したような声を漏らすと、う、うぅ、そうですけど? とさくらがちょっと照れたような顔をしていた。うん。可愛いので一枚撮っておこう。

 

 にしても、たしかにこの時期は去年にゼフィ女の撮影にも行ったし、メインイベントみたいなものだから、カメラ屋さんの需要もあるシーズンなのかもしれない。そんな中で一昨年はきてくれたあいなさんに感謝である。


「お? さくらちゃんもしかして彼氏いる感じ?」

「ぐぬっ。勝ち組がここにもいるのか……」

 聖さんは興味深そうに、野々木さんは悔しそうにさくらに視線を向けた。

 あー、野々木さん相変わらず、良いお相手に恵まれないのですね。

 っていうか、ショタ好きだからいけないんだと思うけど。


「あー、いちおー師匠兼って感じですけどね。甘いことなんてまーったくない関係です」

 ほんと、どこかの誰かよりはマシなんでしょうが、となぜかさくらさんがこちらを見ています。

 そして姉様たちもなぜかこちらを見て、うんうんと妙なうなずき。


「ルイさんは浮いた話ばかりだったようだけれど、誰が本命なんだい?」

 ん? なにかいいたまえよと、野々木さんがこちらに標的を絞って迫ってきた。

 えっと、さっきの雑な紹介を根に持ってしまわれたのかな。

 周りの声がちょっと、静かになった気がします。

 さっきまで周囲でも歓談されてたはずなんだけど、みんな聞き耳を立ててますみたいな感じ。


「本命はシフォレのパイと写真撮影ですが」

 それ以外になにかいります? というと、あからさまに安堵のため息を漏らしながら周りの人達は歓談を始めた。

 えっと、そこまでルイさんのお相手って気になっちゃうことなんですか?


「……ふうむ。そんな感じにしてたら、ショタイケメンも虜にできるわけか……」

「野々木さんの場合は、まずその犯罪臭のするショタイケメン狙いってのをやめるのが先だと思います」

 あ。女装が似合う男の娘がいいんでしたっけ? と言い換えると、そうなのっ! 知り合いがいたら是非っ、と手をきゅっとつかまれてしまった。


「こらこら、ノノ。いくらなんでもルイにそれを聞くのはまずいって」

「え? なんで? いいじゃんいいじゃん。ノノに彼氏とか絶対できないって思ってたのに、ルイさんの紹介ならワンチャンあるかもだし」

 わたわた止めに入ろうとしている牡丹姉様と、いけいけな聖さんはまったくもって正反対の反応をしていた。

 まあ、彼氏ができるならいいんじゃないの? とでも言いたいのだろう。


「この子が手がけたら、だいたいどんな子も、女装が似合う子(、、、、、、、)になっちゃうから」

 聖お義姉さんって呼ばれたい? と姉様に言われて、聖さんは、まじか……まじだな、となにかを想像してへんにゃりテーブルの上にへばりついた。

 想像してみたら、ああ、とあのことを思い出してしまったのだろう。

 自分の弟が、がたいがほどほど良いはずの弟が、それなりに美人さんに写しだされた現実を。


「ちょこっと趣味が可愛いものが好きな人を見つけて、その人に徐々にその……すすめて行けばいいんじゃないですか?」

 てか、ノノさんはもうお仕事してるんですか? といまさらながらな質問をする。

 聖さんはショップ店員をしているけど、野々木さんが普段なにをしている人なのかは、ルイも木戸も知らないことだ。


「あー、IT業界で事務してるよ? どうしてそこに入ったかって? ふっ。ばしばし落ちたからさ……」

 哀愁ただよう新人さんは、少しだけ残念そうなうつろな表情になった。

 そんなに就職活動大変だったのだろうか。


「って、受かったときは、やったーこれで、ちょっと線が細い系男子が一杯いる業界だーって大喜びだったじゃない」

「春がきちゃうかも。とか言ってたよね」

 まあ、すでに秋なんだけどねー、と聖さんが笑いながら言った。

 うん。なかなかにかわいそうである。


「でも、一人も女装な人なんていないのさ。世の中女装日照りだよ。もう、この学校が異常なだけなんだから」

 うちらの代だって、ここまで多くは無かったさ、とノノ先輩は怨みがましい顔をこちらに向けた。そしてそのままぐりんと視線を牡丹姉様に向ける。なにか言いたげな表情だ。


「あー、うちの弟はダメよ? 女装の似合う伝説のかおたんだけど、ダメだからね」

「知ってます-。ああもう、かおたんがうちの会社に来てくれたら社員さんが一日毎に、女装を始めたりとかないかなぁ」

 じぃ、と野々木さんはこちらに視線を向けてきたわけだけれど、当然それに真っ向から反論などはできないわけで。


「まー、あの人、感染源だからきっと、その会社で女装しながらキーボード叩く職員が日に日に増えるんじゃないですか?」

「……言いたい放題だね」

 その尻馬にのって、さくらまでもがどうよ? とにこやかな笑顔をこちらに向けてくる。

 うぅ。今は反論できないからって、そういう攻め方はどうかと思います。冗談でからかってるだけなんだろうけどさ。

 でもさすがに、日を追う毎に女装社員が増えてく会社とか、ホラーだからね? さすがにそれにかおたん貢献なんてできないからね?


「まあ。ルイ。あれね。自分の小さな胸に手を当てていろいろ考えてみなさい」

 ホント、この学校の現状を見たときの衝撃たるや、と姉様が天を仰いでいたのだけど、そんなことを言われても困ってしまう。

 小さい胸に手を当ててみたけど、別にちょっと女装したりさせたりしただけじゃないか。


「うぅ。もう、なんかあれなんで。三人でほれ。並んでくださいな」

「え? 何始まっちゃうの?」

「仕返しです」

 ほれ、並べ、さぁ並べと、カメラを両手に迫ると、その迫力に押されたのか、三人はうぐっ、と声を詰まらせながらもこちらの言うとおりにしてくれた。


「はい、ノノ先輩は椅子に座る、牡丹先輩ちょい左向きで外向く。窓のああ、あそこ。木が立ってる所あたり視線ね。聖先輩は軽めにノノ先輩の肩に手を置く感じで」

 はい、チーズうまー、と言いながらカシャリと一枚。

 うん。とても戸惑い気味の、一枚が撮れたので、さらに行こう。


「んじゃー、次は聖先輩、ノノ先輩に後ろから抱きついちゃおう。牡丹先輩はまだ窓見ててねー」

「えっと、さくらちゃん……これって、どうなっちゃうのカナ?」

 姉様がさくらに突然の出来事を疑問する。

 まあ、強引に行っちゃってるから、そりゃね。


「この子が満足するまで、でしょうね」

 大変だぞ-、ガンバレーと、さくらは投げやりな一言を発した。

 そして、こそりとこちらが作った構図を、想像してるようだった。

 

「さて。では、お写真を一枚お取りさせていただいてよろしいですか?」

 にこりと言ってあげると、三人はそろって渋い顔で、一枚じゃないーと不満を述べてくれたのだった。


男の娘のボイトレを女性ができないか、といえばNOです。三月の学会でトレーナーのねーちゃんきてたし、教え子の声も話し声、電話の声ともにGOODだったので、教えられるものだね、とは思いました。

ただ、その先生の声の響きが綺麗すぎて、おま。素材の違いなの? って先生の声が綺麗すぎてがっくりきた経験があります。

ただ、お姉さんとの秘密レクチャーより、澪先輩のが、いろいろわかってそうだよね、というのはあるので、すっぱりゆずりました。


さて。同窓会の部屋ですが、「知ってる人と知らない人」そして「知ってるかもしれない人」が入り乱れるという、危険地帯なわけで。キョロキョロしちゃうのショウがないかなと。

同窓会な感じーということで話はしましたが、まあこれだけで同窓会なわけもないので。


次話も、図書室のお話はつづきますよー! ひいひいいってるねーさま達からスタートなのです。

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