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369.ルイさんをカタる会1

320部分のルイさんが新妻になったら、どんな子になるか、まとめ と340部分の看板娘のルイさん疑惑について。の掲示板会の面々が登場するお話です、「疑惑」は後から挿入した話なので、未読の方はそちらをごらんになってから、お願いします。

「おぉ、木戸氏-、なんだか久しぶりな感じでござるなー」

「ああ、長谷川先生、こんにちは」

 おうふっ、と相変わらず大きな体を揺らしている彼と前に木戸として会ったのは七月の末あたりだっただろうか。

 とはいえ、こちらとしては夏のあの祭典でルイとして会っていたりするので、久しぶりな感じは実はあまりしていなかったりするけれど、それはこちらの話である。


 夏休み終わっちゃったよねとは思うものの、どうせ休みだろうと学校があろうと、木戸の生活は変わらない。 

 撮って、撮って。撮るだけだ。


「ところで木戸氏。明日の夜とか時間ない?」

「明日ですか……バイトは休みの日ですが」

 まあ今日はその分働くので、帰らないといけないのだけど、うーん。

 特撮研の方次第という感じだろうか。


「大撮影会を銘打ってやるの、うちの学校は秋なんしょ? もーちょっと色づかないと背景としてあんまりつかえないっしょ」

 渋い顔をしていると、実は顧問でもあられる長谷川先生が意外に特撮研の内実を知っていて、かなり驚いた。


「とはいっても、学園祭に向けての撮影ってのもありますし」

「あー、今年は両方になるってわけかー。それなら連絡とってもらって、それでおっけなら是非よろ」

「ヨロって言われても、どこに連れて行かれるかわからない段階でどうこう言えないですよ。変なところだったら嫌ですからね」

 連れて行かれると言われても、ほいほいと変なところに行くわけにはいかない。

 そんなの、HAOTO事件の時で学習済みなのである。


「僕がよく行ってるスレッドのオフ会なんよ。一緒に参加予定だったツレが病気で寝込んじゃってさ、明日無理そーなんだよねぇ。かといっていまさら明日の人数減らすのもなんか申し訳なくって」

「それで、俺に声がかかるところがよくわからないわけですが」

「えー、木戸氏も十分オタクっしょー? それにカメラも大好きとなれば話には十分はいれるからさ」

 問題ないから、さぁさぁと言われて、あぅ、とたじたじとなってしまう。


 長谷川先生のはぁはぁという巨漢の圧力はそうとうなもので。これ、男子でもきょどっていいところだと思う。

 女子なら、下手すれば警察呼ばれても言い訳できないレベルだろう。

 まあ、先生もそういうのはわかってるだろうから、「これが男子に対する距離感」なんだろうけど。

 ああ。先生ったら、男扱いしてくれるだなんて。


「おや。木戸氏。なにをにやにやしてるのでござるか? オフ会と聞いてなにか……はっ。まさか最近の若い子はオフ会という単語を知らず、おっふする会とか思ってるでござるか?」

 美少女は来ないでござるよ? と言われて、どんな会だよと思ってしまった。オタサーの姫みたいなそんな感じだろうか。

 自分が囲まれてる未来しか想像できない。やばい。


「ま、そんないかがわしい会ではないでござるよ。会場は普通に居酒屋の個室でござるし? これでも拙者、教育者でござるから、もちろん未成年に酒などのませぬでござるし」

 ああ、木戸氏二十歳になったでござるか? とにこにここちらの年齢を聞いてくるわけだけど。

 残念。木戸さんの誕生日はほとんど十二月の十一月末尾なのでした。あと二ヶ月だからっていっても、駄目なものはダメなのです。


「ああ、でも一つだけ、ちょっと変わったルールがあるんでござるよ」

 そういうの嫌じゃなかったら、是非来て欲しいでござる、と長谷川先生はいいつつ、最後の口説き文句を言ったのだった。

「もちろん無理に来てもらうから会費は僕持ちでござる。大人の財布をあてにするといいっ、若人っ」

 びしっ、となぜか敬礼を決めてくださる長谷川先生の言葉に、貧乏性の木戸さんがなびかない訳はなかったのだった。



「で、こうなるのは定番か」

 本日の木戸の装いは、男子のそれではあるものの、いつもと違うのは黒縁眼鏡の上に、紙でできたアイマスクのようなものをつけている点だった。

 高校三年の卒パみたいな感じといえばいいだろうか。あのときはルイとしての参加で、マスクつけててもわかるわ、とみんなに言われたけれど。今回は一緒に黒縁眼鏡もかけてるのでたぶん顔はちゃんと隠れるだろう。


「ほら、ケイ氏、早くこっちくるといい。そろそろルイさんをカタる会はじまってしまうお」

「カタる……」

「そうでござる。語る、そして騙る会。このまえのルイさんスレでちょっと、偽ルイさんごっこが流行ってね。その流れでじゃーかたろうってオフ会になったでござるよ」

「だからアイマスクですか」

 ほい、これ名札でござると、渡されたそこには、臨時人:ケイ氏と書かれていた。

 長谷川先生のを見ると、必死な人:ひっしすと書かれていた。


 ええと。これ、あのハンドルネームとリンクしてるのかな。

 ということは……


「あの、長谷川せんせ? ネットだと口調ちがうんすか?」

「お? ケイ氏、もしかしてルイちゃんスレみてるん?」

「一応はチェックしてますよ。……同じカメラを使うものとして、ね」

 うん。なんか自分のスレッドを見るのもどうなのかなとは思うのだけど、変な事書かれてると困るので、いちおうチェックをしているのだ。ちなみにエレナのスレッドの方が数は多い。当たり前だけど。


「それなら、今回のカタる会にも上手くなじめそうでござるな」

 重畳重畳と、長谷川先生は否定せずに、話を進めた。

 ふぅん。必死さんといえば、早めにスレに参加してて、結構な情報通の人だったような気がする。翅との件とか、男の娘の件とか話をしてた。


「ちなみに何人くらい参加する予定なんですか?」

「いちおー、新妻さんと、元気さんと、動物さんと料理さんと、美男美女さん、ああ、この方は女性ですから粗相のないように」

「へぇ。あんなスレで女の人もいるんですね」

「まあ、それだけルイちゃんかわいいってことだお。あ、それであとは、男の娘さんもくるって」

 んーと、あと誰かが妹さんも連れてくるとか言ってたかなぁと長谷川先生は視線を上に向けた。

 ほほう。なんだかんだで結構な人数が集まるらしい。


「ちなみに主催は、料理さんだお」

「へぇ。あの人、遠いっていってませんでした? ナムーさんカレーの時」

「その通り。遠いけど今日は頑張ってきてくれたんだお。みんなこっちだっていうし明日明後日は銀香にいって、ルイさん探すって意気込んでた感じ」

 ……まじか。いちおう明後日は出没予定だけど、どうしようこれ。

 ま、今日の成り行き次第にしようかな。どんな人かわからないし。


「さて。そんなわけで、ケイ氏。料理の方も期待していいでござるよ? 彼が選んだ店でござるからな」

 ほい。到着、と通された個室には、ルイさんをカタる会様、と書かれた表示があった。

 えっと。居酒屋でこういうの表示しちゃうってどうなのかな。料亭とか旅館とかだとこういうのはあるだろうけど、普通の店では初めて見た気がする。


「もしかして、結構高かったりします? 会費」

「まー、そこらへんは、大人にどんとまかせるでござる。ケイ氏はなんも心配せず、もりもり食べて、もりもり育つといいでござる」

 ちんまいですからなぁ。はっはっはと、長谷川先生は大盤振る舞いだった。

 でも、ちんまいはちょっと言い過ぎじゃないかな。男子としては華奢だと思ってるけど、そこまで小さすぎるわけじゃないってば。きっと八瀬ならそこで、はい、ちっちゃくないよ! っていってねとか言うんだろうなぁ。


「おまたせでござるー。おっ、もしかして拙者らが最後でござったか?」

 個室の扉を開いて中に入ると、すでに席のほとんどが埋まっていた。

 残っているのは上座のほうの席だ。

 えっと。どうしてそこあけちゃうかな。

 会社の飲み会とかならある程度考えなきゃいけないけど、これ、趣味の集まりでしょ。なら最後に入る人が楽になるように入り口を開けておいて欲しいよね、ほんと。


「我々もさっき来たばかりですよ。って、ひっしすさんリアルだとその口調なんすか」

「おはつにござる。これでもネット弁慶なのだぜ!」

 いえい、と長谷川先生はたぷたぷのお腹を揺らしながら、奥の席に侵入していった。


「えっと、ごめんねー、ちょっと通りますね」

 その後に続いて木戸もあいている席を目指して進んで行く。

 いくら個室とはいってもそこまで広さはないので、ちょっと座ってる人達につめてもらっての通行だ。

 はぁ。トイレ行くの面倒な席なんだよねぇ、これ。まじで下座がいいんですが。


「おっ。声の感じから若い子きたこれー。えっと、ケイくん?」

 はて、と、おねーさんがクエスチョンマークを浮かべていた。美男美女さんだね、彼女が。

 ルイに粘着されたことがある、という話だったから、レイヤーさんなのだろう。結構なプロポーションをお持ちだ。

 あいにく、アイマスクをしているせいで、いつどこで撮った人かはわからない。


「若いでござるよー。まだ未成年にござるからして、大人なみなさま、無理に酒は勧めないように」

 きりっ、といいきりつつ、ようやっと席に到着。

 お隣になったのは、これまた女子の参加者だ。たしか誰かの妹さんがくるとかどうとかって話をさっきしてたから、スレッドの住人というわけではないのかもしれない。


「おっ、じゃー、よーこと同じだな」

「って、にーさん。私はもう二十歳になったの。この前。お酒もたばこも解禁なんだから」

 いつまでも子供扱いするなんて、ほんとミステリーなんだよ、と隣に座っている男性に膨れている。

 つい、いつもの癖で、カシャリと一枚それを撮ってしまった。

 まあ、アイマスクつけてるから表情まではあんまり撮れないのだけど、まあしかたない。


「へぇ。ケイ氏、カメラ持ちか。それでひっしすさんが呼んだってとこかな」

「実は、急遽きてもらったでござるよ。本来なら別のルイちゃん大好きな友達を連れてくるところだったんだけど、病気でね」

「でも、ケイ氏だってなんか、カメラ持つ姿が様になってるし、実は個人的な知り合いとか」

 ああ、そういう展開だったら、熱いのに現実にはそんなんないんだよなぁ、と動物さんがしょぼんと肩を落とした。

 す、すんません。知り合いどころか、本人です。はい。


「さて。初めてのオフ会ということでみなさんテンションあがるのはわかるけど、とりあえずドリンクオーダーして、始めようか。あ、ケイ氏にはアルコール厳禁。で、よーこさん? は、アルコールどうする?」

 いちおう、無茶はおすすめしないよ、と料理さんがやんわりと若者に忠告めいたことを言っている。

 ま、二十歳なりたてだと羽目を外して飲む人が多くて、そのままつぶれて危険という事態もあるって、あいなさんが言ってたし、そういう意味でなのだろう。


「あー、じゃあ、弱めの一杯目ちょこーっと飲むだけにしときます。カルーアミルクで」

「おっ、女子っぽいねぇ。かーわいー。あたしはがつんと日本酒で」

「乾杯はビールで、という空気は欠片もないでござるな……老兵はただ、消え去るのみでござるよ……」

 美男さん……ビーナさんは料理の内容が和向きなのをみて、いきなり日本酒に走るようだった。

 飲み放題のメニューを見て、おっひょー、いっぱいそろっとるよーと大喜びだ。

 あ、これは酔っ払いさんだなぁと、ちょっと苦笑がもれてしまった。


「あー、ビールの人は手を上げてねー」

 料理さんはいちおう一番人気があるであろう飲み物の個数をチェックする。

 五つ手が上がったのを見ると、ビール派は長谷川先生だけじゃなかったようだ。


「んで、ケイ氏はどうする? ソフトドリンクもカクテルとかけっこーあるから、そういうのもいい……って、男の子にそれ勧めるのもちょっとアレかな」

 この店、甘めのカクテルしかないし、と料理さんが苦笑を浮かべた。

 アルコールが入っているなら、ちょっとすっぱい感じのカクテルもあるけれど、ソフトドリンクは全体的に甘いものベースらしい。


「なら、まずはウーロン茶からですね。ご飯を食べつつその後は決めようかと」

「おっけ。んじゃ店員さん呼んじゃおうかね」

 とりあえずオーダーが決まったところで、ボタンを押すとしばらくして男性の店員さんが扉を開けた。

 じろりとみなさんの視線がそちらを向いて。

 一斉にアイマスクがそちらを向いて、店員さんは少しびくりと体を震わせた。

 まあ、確かにこの姿は怪しいだろうけど、ハロウィンみたいなもんだとか適当に納得していただきたい。


「お飲み物は九つですね。料理もお出しし始めてよろしいですか?」

「あいよ。お願いします」

 料理さんはかなり手慣れた感じで場を仕切ってくれている。まあ自分で作る側だから勝手をよく知ってるというのもあるのだろう。


「しかし-、男の娘くんったら、自分も実は女装してきまーすとかって展開になるかと思ったら、案外普通にイケメンっぽくてびっくりだわ」

 とりあえずおしぼりで手を拭きながら、ビーナさんが向かいに座っている男の娘さんに声をかけた。

 確かに、あれだけ、実はルイさんについてたらよくないっすか! とか、エレナたんは絶対男の娘だ、といいはったりとかするくらいだから、自分もそうなのかな、と思うのもうなずけることだろう。

 けれど、目の前にいるのは、髪の毛さらさらのイケメンさんだ。

 線が細いから女装はしやすいとは思うけど、まあ、どう見たってただ男の娘が大好きな男子大学生というような感じだった。


「いやぁ。まあ僕も女装してきても良かったんですけどね。アイマスクとかあるし、女の子だって思われるのもなぁと思って」

「声でわかるだろ。いくら見た目を変えたってさ」

「知り合いで声まで変えれるのがいるんで、僕も頑張ればできるんじゃないかなーとか」

「まじか……すげぇな。でも、できるわけじゃないんだろ?」

「そりゃ……まあ」

「あ、あたしも知り合いに、両声類の人います」

 はい、と手を上げてにこにこそんなことを言い始めているのは、よーこさんだった。

 ふむ。男の娘さんもよーこさんも知り合いにいるとは、なかなかに両声類の人も世間には多くいそうだ。

 あれだけ鈴音さんが大々的にやっているから、マネをして覚えようという人もいるのかもしれない。


「おまたせしやしたー、ドリンクおもちしましたっ」

「お、きたね」

 まずはビールががつっと運ばれてきたので、それが人々を経由して配膳される。

 残りは、カルーアと日本酒と、梅酒と、ウーロン茶だ。


「ノンアルコールはグラスに線引いてあるので、間違えないようにしてくださいね」

「わかってますって。最近いろいろ厳しいし」

「あはは。同業者さんですかね」

 では、よろしくお願いしますといいつつ、その店員のにーさんは帰っていった。

 うん。未成年にお酒を飲ませると、飲ませた方が処罰されるらしいからね。

 間違いが起きないようにお店の方もしっかりと注意をしているというわけか。


「では、とりあえず、皆さんグラスを持って」

「っていっても、何に乾杯するん?」

 長谷川先生がビールを片手に、うむぅと悩みこんでいた。


「そんなの決まってますって。ルイちゃんが結んだこの縁にっ」

「「乾杯」」

 こうして、ルイさんをカタる会は始まったのだった。

オフ会! 最近あんまり聞かれなくなったオフ会!

というわけで、どのハンドルの人を出すのか、書き込みを元にどんな性格なのかの設定がちょいと大変でした。

そして長谷川先生ったらネットだと言葉遣い違うという(苦笑)


内容としては、思い切り巻き込まれ系でした。ケイ氏。誰もあんたがルイだとは思うまいよ……どんだけ彼がカタるのか。後半も書き下ろし……orz

他にもいろいろしこんでまいりますので、よろしくなのです。

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