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君のそばにいさせて、製作発表・中編

遅くなってすみません。そして書いてたら長くなりすぎたので分割で。明日後編をアップします。

「六人でやる親睦会にしては、ずいぶんと張り切ったわね……」

 HAOTOの楽屋は私が使っているものよりも三倍くらいの広さがある部屋だった。

 もちろん五人が一緒にってことなのでこれくらいの広さは当たり前なのだろうけど。

 そもそも、彼らくらい人気になってくると一人一人個別の部屋になるんじゃないかと思いつつ。

 仲良しってことか、と少しだけ印象を上方修正することにした。

 こちらの中では、馨に迷惑かけた駄目なイケメンどもという感じなのだ。


「いちおーいろいろあったし、これからもあると思うんで、少しでも印象よくしとかないとって感じで」

 虹さんが苦笑ぎみにテーブルに案内してくれた。

 宅配をしてもらったにしては、立派なオードブルが並んでいる。

 サラダ、揚げ物、煮物に、定番のピザとかデザート類も置かれている。

 って、これからもあるってどういうことだろうか。


「まあまあ、珠理ちゃんもドリンクもってもって」

 ノンアルコールにしてあるから、ほら、と持たされたそれは、見た目シャンパンみたいな色をしていてしゅわしゅわと泡を立てていた。ジンジャーエールだろうか。

「では、撮影一緒にがんばりましょーってことで」

 乾杯、となし崩し的にすすめられた音頭につられて、私もグラスをあげておく。

 ここで、だが断る! だなんて言うほど私も空気が読めないわけではないのだ。

 ちなみに、この単語は、エレナから教わった。なんか、こういう所でいうと盛り上がるらしい。


「……ケータリングなのに普通に美味しい」

「いや、ケータリングは普通に美味いだろ」

 とりあえず唐揚げを一ついただいて咀嚼した。口の中に脂がふわっと広がって、おまけに熱々である。

 出前系でここまで温かいものはあまり見たことがないので驚いた。


「今回は、この時間に合わせて用意してもらったしね。唐揚げは確かに俺も驚いたかな」

 はむはむと虹さんがからりと揚がった唐揚げをいただきながら、あったかいのいいよねと緩んだ顔を浮かべていた。

 馨なら、虹さんのレア写真ゲットとか言ってシャッターを切ってるのだろう。


「で? ここまでのものを用意して親睦を深めようとか、裏しか見えないわけですが?」

 はむはむと、今度はサラダをいただきながら、不審そうな顔を向けておく。

 確かに今回のドラマは、ヒロインと王子様達の呼吸があってないといけないわけだけど。

 それなら、関係者を呼んで大々的にやればいいものだ。歓談をいろいろと監督とかも交えてやればいい。

 でも、こんなところでやるのだから。それなりの意味はあるのだろう。


「裏はないよ。君と親睦をもって、良いドラマ作りたいっていう気持ちに、嘘はないんだ」

「ただ、それをするにあたって、ちょいと問題があるってのが今だな」

 虹さんが苦笑混じりにいう言葉尻を蜂さんが真面目にひきうけた。


 それはこちらも全面的に同意だ。決まってしまったのなら腹はくくるさ。いい芝居をして、いい映像をお茶の間に送りたい。

 それには、キャスト同士のいさかいなんてない方がいい。


「お互いに言いたいことを言い合って、もっとお互いで憎しみあおうという会で良いのかしら?」

 あらためて憎まれ役を買ってでると、みなさまは嬉しそうに、いいえと返事をくれた。

 まあ。趣旨としてはそうなのだろうけど。


 HAOTOの面々とあたしが本心で仲良くなれる未来が見えないのだけど、これはどうすればいいだろうか。


「そんなに怖い顔しないでもいいじゃんよう。今までいろいろあったけどさ。同じ役者同士上手くやってこうよ」

 そう言われて、お前ら何をやってきたのかとゲンナリした。


 なので、本心を聞いておくことにする。

「じゃあ、聞くわ。今回のハーレムもの。ヒロインはルイいったく」

 さぁどうぞ、というと、よっつの手が上がった。やっぱりそうじゃないの。

 あげてないのは蜂さんで、周りにあがった手をみて、わたわたしている。ちょ、お前らという声はむなしく響いた。

 そりゃ、ルイをHAOTOの面々が囲んでいるのはリアルでそのまんまなのだし、絵柄的にみて、なんて逆ハー!? って思ったりはする。翅はもうルイちゃんラブーを隠そうともしていないし。

 ……もう。馨ったら、どうしてそんなに同性から好かれまくる見た目なのか、本当に一晩説教してやりたい。

 え、一緒に泊まれる勇気はこれから作ります。


「あたしも、恋愛ものならルイとやりたいなって思ってる。Lもので誰か脚本作ってくれないかしら」

 実際は、男状態の馨といちゃいちゃしたいのだが、それはまだ言える状態にはない。

「珠理ちゃんとルイちゃんの二人でLもの……それはそれで一定の需要はありそうだな」

 ごくりと喉をならす音が聞こえたので、そちらに睨みをきかせておく。

 その先にいたのは蚕くんだった。ふむ。どうやら彼は馨のことは本気ではなかったのかもしれない。


「リードしてくれて、時々凜々しい顔とかしてくれたら最高なんだけど……まあ、無理か」

 あーあ。と残念そうに声を上げた。

 少ししょんぼりしたので、手近にあったアップルパイに手を伸ばした。順番としてはちょっと違うのだろうけど、甘いものが欲しかったのである。


「っん。ちょ、これ……シフォレのアップルパイじゃないの」

 一口食べて、広がった食感はよく食べたことがある、アレなのだった。さくさくしていてとても美味しい。

 そしてリンゴの甘みが広がっていくのである。


「師匠が美味いって言ってたから、スタッフさんに買いに行ってもらったんだ」

「……結構遠いでしょうに」

「だって、ルイちゃんも大好きなスイーツだって言うしさ。一回は行ってみたいけど、女性同伴じゃないと入れないっていうし、あんなところに俺らが行ったら……大変なことに」

「そうね。でも、こいつら二人は行っていたようだけど?」

 ちらりと視線を蚕と蠢に向ける。わざわざ女装してまで店に行っていたことは、今でも記憶に新しいところだ。


「まじか……俺その話きいてないけど」

 翅がえぇぇ、なにやってくれてんのと、目を見開いていた。

「しかたないじゃん。ちょっとショッキングなこと聞かされて、他の人には内緒ね? とか人差し指口にたてていわれちゃったら、もう、行った事実から隠蔽しないとって感じで」

「くっそ。俺もルイちゃんと一緒にシフォレいきてーー」

 あ。誰と行ったのか、まで言ってないのに、翅ったら脳内でルイと一緒に行ってる風に補正をかけてる。

 確かに正解は正解だけど、半分といったところか。


「珠理ちゃんはそこまで詳しいとなると通い詰めてるのかい?」

 虹さんがグラスを傾けながら聞いてきた。彼とはお店で会ったことはないし、女装スキルもきっとないのだろうから少しだけ安心してしまう。


「ええ。月一回はね」

「ということは、ルイちゃんと毎月会ってるのか?! それずるいだろ」

「ずるくないし、会ってもないの。あたしはただスイーツ食べに行ってるだけだもの」

 というかルイと会ってもあんまり意味ないし……というと、ええと、とみなさんの顔が怪訝なものになった。

 ええと。


 春先の件でHAOTOの連中は、ルイ=馨を知ってるのよね。だったらその意味も理解して欲しいものだけど。


「えっと、珠理ちゃん。シフォレは男性のみの入店は禁止だろ? だったら馨が一人でいけるわけないじゃん」

「……ええ。知ってるわよ。だからあの子、絶対ルイとしてしかあの店に行かないもの。あとは他の女がくっついてる場合がちらほら」

「それって、エレナたんじゃなくて?」

 こそっとピザをほおばる虹さんから、あの名前が出る。

 翅だけじゃなくて、まさか虹さんとも面識があるのか、あの子は。


「いろいろね……あいつ。地味に女友達は多いから」

「そして珠理ちゃんのことも、女友達の一人と思ってる、と」

「うぐっ……」

 しれっと、チキンナゲットをはむつきながら、翅が毒を放ってきた。

 その一言はかなりぐさりとささった。


「そういうあんた達はどうなのよ。壁ドンとかしても、うへへとか言われて写真撮られた翅さん」

「くっそ……かなり本気で口説いたのに、あいつときたら……口説く顔もステキっ、だが被写体として、みたいな感じでさぁ」

 ったく、全然恋愛オーラがでやしねぇと、翅は悔しげにサーモンの寿司を口に放り込んだ。

 ま、あいつはそういうヤツだ。残念だがあれくらいでドキドキするのなら、こっちだっていくらでも腕をとったりして胸に押し当てたりとかしようじゃないか。絶対、え? 暑いよ珠理ちゃんとか言ってくるだろうけど。


「そういや、蚕くんも告白してたわよね。男相手に」

「それはほら、前のマネの差し金っていうかさ。誰かに告白しろっていうから、問題にならなさそうな相手にしたんだよ」

「……問題大ありでしょうが。そこらへんの女の子に声をかければよかったじゃない」

 うん。これに関してはこちらの意見がまっとうだと思う。男同士という関係性はまだまだ世の中では、特殊に映るのだ。もちろん個人個人で責任を持ってやるなら構わないのだけど、芸能人のスキャンダルとしてはおもしろおかしく書く記者がいるのが現実である。


「しかたねぇだろ。それで本気になったりされたり、後腐れがでたら困るし。その点、馨なら上手くさばけるだろうしさ」

 もともとスキャンダルを起こすのが目的だったし、そういう意味では大成功だと蚕は投げやりに言った。


「上手くさばくって、あの子春先はずーっと女装してたっていうじゃないの。それで日常も女子でいっちゃえってなったらどうしてくれるのよ……」

「あの……それいうと、もう元から手遅れなんじゃね?」

 翅の一言にうんうんと一同から同意のうなずきがきた。

 くっ、まだだ。まだっ。


「でも、男子だしってあいつよく言うわよ。普通の生活はあくまでも男子としてっていうのがスタイルだもの。そりゃ……カメラやるとき=他の生活の全部はルイだけど」

「あの自然な笑顔が、日常でも発揮されたらとても良くないか?」

「きっと、大量の男から告白されて、気付いたらその一人といい仲になって、ハラポテエンドね」

「ちょっ……珠理ちゃんよりによってなんてことを」

 虹さんが驚いて目を見開いていた。そんなに珍しいことだろうか。エレナに借りたゲームをちょっとプレイしたらそんなのがでてきただけのことである。


「あいつが日常も全力で生活してたら、確かにもてるだろう。そして一緒にいれるやつらのほうが有利だってのもわかる。俺、大学受験しようかな……」

 翅がなんか変な事を言い出した。一緒の学校に通おうとかそういったことなのかもしれない。


「一緒にいてもカメラ優先で被写体としてしか見ないわよ」

 ご愁傷様、と言ってあげるとだよなぁとだうーんとした素直な返事が来た。

 いちおう相手も、ルイの難易度の高さはわかっているらしい。

 お互いに前途多難だなぁと思いつつ、プリンを口に入れると、その甘さがじんわりと体に染みた。

書いていたらつい長くなってしまい、収拾がつかないのでとりあえずパーティー前半できりのいいところまでアップしました。後半は明日の朝予定です。9割かけてるから多分いけると思います。


久しぶりに一日おくれになってしまいましたが、まぁなんというか、日帰りクエストが安くてついぽちってしまったのがいけなかったのかなと。

はい。まあぼちぼち書いていこうかと思います。

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