332.エレナさんの二十歳の誕生日4
ようやく誕生日パーティーも佳境に入ってまいりました。基本ぐーたら食べて話してるだけでしたが、ついに今回は、トラブルが置きますのでお覚悟を!
「……この感じは、実はエレちゃんの手作りと見た」
器に入った白ごまプリンをいただきながら、以前食べさせてもらった味の記憶を掘り起こす。
「普通この手のパーティーで自作の料理の提供をするのは、女の子のごく一部なのですが……まぁかの……いえ、彼の場合はやらかしそうですね」
「まあ、師匠がシェフさんなわけだし、そちらが作ってるっていうこともあるとは思うけど、こっそりお菓子くらいは作ってきそうな子ではあるよね」
正直、エプロン姿が似合いすぎる子なのである。もちろん最近は男子のエプロン姿も萌えるものではあるけれど、この子の場合ははっきりと女子ワンピ+エプロンとか、エプロンドレスとかのほうが似合う。
「うぅ。ルイったら、あたしに内緒でセカンドキッチン行きまくりなんだ。ずるいー」
「ずるいって、さくらは彼氏といちゃいちゃするのに大忙しだったじゃん」
まあ、正直、沙紀ちゃんたちを優先して、さくらにはあんまり声をかけなかったのも事実なのだけれど、それはそれだ。
「そういや、今までもちょっと思ってたんだけど、上流階級の誕生日ってここまで大人ばっかりなものなの?」
じぃと会場に視線を向けても同じくらいの年頃の子はほとんどいない。
小さい子もさっき絡んだ子くらいで、目に付くのは談笑をしている大人ばかりだ。
「普通はそんなことはないんだよね。ルイさんも経験済みだろうけど、この手のパーティーってね、親交を深めるためのものなわけだけど、一番手っ取り早く近づけるのってなんだと思う?」
「政略結婚? こんなご時世に?」
「恋愛で本人があつあつになっちゃえば、それはそれで、ね。なのでひっそりパーティーとかに来ておいて、つながりを持とうとするわけ」
まあ、宝くじを買うようなものかな。買わなきゃ、絶対当たらないでしょ、という沙紀ちゃんのたとえはなんかよくわかった。
そりゃ、恋仲になるかどうかは、出会わなきゃ始まらないものね。
「三枝のおじさまにはああ言ったものの、僕の来年のパーティーとか、はっきりいっていろいろ気が重いよ」
その時は、ルイさんに彼女役でもしてもらおうかなぁと思うのだけど?
ふふんと、からかうような笑顔を向ける沙紀ちゃんに、こちらは、ぷぃと顔を背けた。
絶対面倒な事になるに決まっている。
「まりえさんが騎士としてガードするしかないですね?」
「私とて守り切れるかは謎ですね。エレンさんちみたいに、すっきりとしたパーティーのほうが好きなのですけれど」
たいてい、年頃になるといろいろあるものなんです、とまりえさんはげんなりため息をついた。
「えっと、なら、なんでここは、親が連れてきた子供、がいないの?」
さっきの子は別として、つまりそういうのがいないってことだよね? とさくらから指摘がはいる。
そう。その通りなのだ。海斗のパーティーにはそれなりに同じ年くらいのもいたし、もっと小さい子もいた。
でも、ここ数年ここにきているけれど、同い年くらいの招待客というのはほとんどいなかったのである。
いたらいたで、ルイちゃんどーせ大変になるでしょ? とエレナならいうだろうけど、それ以前からこの状態なのだろう。おじさまは息子が同い年の友達をパーティーに連れてきたって喜んでたもんね。
「エレナさんのお母様の話は二人ともご存じです?」
まりえさんが顔を近づけてこそこそ話を始めた。内緒話なので、敢えてエレンという名前は使っていないようだ。
「あの子が小さな頃に亡くなったという話は知ってます。詳しい話までは聞いてないですけどね」
「それでその……あまりにエレンくんもパパさんも落ち込んでしまってね。直後はいろいろあったんだ」
「ええぇ。あたしには、物心ついてない頃だから、あんまりショックも無かったんだけどねーとか言ってたよ」
それはきっと、気を遣ったのでしょうと言われてしまった。
まあ、たしかにまりえさんたちと遊んでた頃はもう十分物心は付いているはずだし、その後ってことなら、そうなのかもしれない。
「それで、パーティーをやったわけですが、ずいぶんと内気な性格な子になってしまいましてね。今でこそあんなにぽわぽわしてますが、当時はパパさんの後ろに隠れて、挨拶もろくに出来なかった事があったんです」
「その姿があまりに痛々しすぎて、大人たちはざっくり商談の方を中心にして、子供同士の交流は控えたというわけです」
控えたというものの、腫れ物にさわらないようにした、というのが正しいことでしょうけど、とまりえさんが自嘲する。
「沙紀さんは仕方ないとして、まりえさんの姿も無かったようですが、そこらへんは?」
「親から言われていたんです。ほら、私の名前ってちょっとマリーおばさまに似てたりもしますし」
「マリ-、まりえ-、ってことか」
「とはいえ、それは間違いだったなって今にすれば思うんです。結局、ルイさんがひっかきまわしつつ、ああやって元気になったわけでしょう?」
すいと視線を少し遠くに向けると、会社員風の男性と話をしているエレナの姿が見えた。
うん。ほんと、男の人にもずいぶんとなれて、たくましいばかりだ。
「正確には、もうちょっと前から、ではあるけどね。でも、人と触れってってのは間違いじゃないと思う」
すでにルイが会った時、エレナは十分に元気はつらつだった。あの子を真に救ったのは男の娘という存在と属性であって、ルイさんはそんなにお仕事をしたわけではないのです。
それがなくてもなんとかなるっていう状態までにはこちらも手伝いはしたとは思うけれど。
「その機会を私は、エレンさんから奪ってしまって……」
うぅ、と幼なじみのまりえさんは後悔混じりにうつむいた。
なので、こちらはぽふぽふとその頭を撫でてあげる。おぉ。ゼフィ女では先輩さまーという感じだったけど、こういうことをするとこちらが年上という感じがして新鮮だ。
「まりえさんの場合は、沙紀さん優先になるのは仕方ないと思うし」
むしろこれからの事を考えていこうよ、ねっ、と微笑みかけると、カシャリとシャッターの音が鳴った。
「さ、さくらサン? どうしてそこでシャッターきっちゃうのです?」
もちろん、音の方を向くと思い切り幸せそうな顔をしたさくらの顔があった。
「だって、ほらー。なんか青春って感じのやりとりだったからさぁ」
撮りたいのがあればばしばし行こう、が我々の師匠の教えじゃないのさーと言うさくらは、撮影された写真を見てにまにましていた。
まあ、ちょっと自分でもこの光景はどうだろうかーと思ってたところはあるので、いいけどさ。
「ま。うちらとしては、カメラの音満載で、シリアスも楽しくしようって感じもあるからね。それにさ。今までの後ろめたさをなんとかするチャンスなんて、あの子ならすぐにでもくるんだから、そのとき手を貸してやってよ」
いっとくけど、あの子は、沙紀ちゃんより大変なんだからね? というと、さくらからすげー他人事だけどあんただって似たようなものじゃないというぶすっとした声が漏れた。
「う、うちはほら、親放任だしね? 自分で責任とれるならそれでいいって言われてるもん。そりゃ中学の頃は親呼び出しとかありましたけど……ねぇ」
「メガネの前のお話ですか。ここは、周り可哀相! って言っておけばいいんですかね」
ふふと、まりえさんがいう台詞に、ずぐぅと胸をえぐられた。
うん。あの頃はいろいろとまずかったんだと思ってます。でも、最近は女子としての隙も埋まってると思うんです。埋まって良いのかはわからないけど。
「そんなことより、沙紀ちゃん達の今時を報告よろしく。あたしは二人の大学生活あまりしらないんだし」
さぁ、時間もあるし、歓談しようぜぃというと、二人とも、いまさらかと渋い顔をした。
だって、ルイさんは二人の大学生活知らないのは事実だもの。ほれほれ、いろいろ話してくれたまえよ。
「あー、沙紀矢さんたちの大学生活は興味あるかもっ。なんか雅ーって感じするし。是非接写したい!」
「ご、ござるな感じで?」
さくらが乗っかってきて、カメラをもって迫ったのだけど、沙紀ちゃんはちょっと方向性の違う回答に行き着いたようだ。
ごめんなぁ。長谷川先生にも合わせた関係で、セッシャって単語がイコールでござるになるようになってしまって。
「はいはい、近くで接近して撮るでござるよ。沙紀殿はスキンケアも半端ないですからな。接写をしても毛穴なんて微塵も目立たぬでござる」
「ちょ、ルイいったいどうしたのよ……」
「きっとオタク語がわからなさそうなので翻訳。ちなみにさくらが言ってた、接写ってのは、接近して写すってことね」
いつか沙紀ちゃんたちもやられてしまうから、覚悟してね! というと、そういう接写ですか……と二人は目を丸くしていた。
「それで大学ではどうなの? なんか変な方向に思いっきり教養がいってしまっているようなのだけど」
「ええと、まぁ、その。面白い先輩がいましてね。木戸先輩というのですが」
「へぇ。木戸先輩ねぇ。どこかで聞いた名前だなぁ」
へぇ、ふぅんと、さくらがこちらをちらりとみながら、そんな反応をしてきた。
うん。初対面だからね。こういう確認作業は大切ということで。
「さくらさんもお知り合いですか?」
「ええ。男にコクられた、あいつの事を言ってるなら、昔、写真部に誘って断られた事があります」
ほんとさぁ、付き合い悪くて困っちゃうよね、とさくらはにんまりとこちらに視線を向けてきた。
「きっと、その人にもいろいろと事情があるんじゃないの?」
「ほっほー、ルイさんとしては、ああいうのが好みと。黒縁眼鏡っこ萌えと?」
「……いじわるだ。みんなしてからかって」
いいもん、白ごまプリンもう一個食べるから。
そう言いながら、プリンをいただくと、ねっとりしたごまの味が口に広がった。
これは、今夜は改めてみなさんに、ルイさんと木戸氏の関係をきちんと解説してわかっていただかなければならないようだ。
「お腹いっぱいになってきちゃったね」
それから沙紀ちゃんたちと会話をしつつ、パーティもあと三十分程度で終わりという頃合いになった。
「そろそろ夕飯と夜食の見繕いって感じかなぁ」
「さくらさん達は例年そんな風なんですか?」
さぁなにをお持ち込みしようか? とわくわくしているさくらの台詞に、まりえさんは口に手をあてて苦笑していた。
「そ。夜はたいてい、セカンドの方を中心に若者世代で集まるのがここのところの定番だね。まーお疲れ様会しようかって感じ」
おじさまはどうもお仕事でだいたいパーティーの日は夜いないし、というと、あぁと沙紀ちゃん達はなぜか納得顔をしていた。そちらのお宅もどうやらそんな感じらしい。
「かの……彼にしてもその方が気楽、といったところですか」
「ぼ、僕はやらないからねっ。何を言われたってやらないからっ」
まりえさんの言葉に反応したのか、沙紀ちゃんはわたわたと、主語を抜かした否定をしてみせる。
大丈夫。さすがに無理矢理女装させようとかそんなことは思っておりませんってば。
……説得力がないって? 大丈夫。よーじくんだってくるんだもの。
「基本、今夜食べきった方が良いものは夜食に、翌日以降までもつものはお持ち帰りにさせてもらってるの。ほら、うちら基本庶民なので。家族とかもここのお持ち帰りは評判よくて」
「さくらのところも評判かぁ。うちも割とそんな感じで、今朝もお土産期待してるからねーって母様にいわれちゃったよ」
「うちは、弟にせっつかれたわよ。パーティー連れてけーって。ねーちゃんばっかりずるいってね」
「あはは。あの弟くんか。別世界って感じでびっくりしちゃいそうだね」
前に会ったのは彼の中学の卒業式の時だ。実際にあってるのは木戸馨のほうなので、こちらでは初対面ということになるのだけど、このメンバーなら別にこんな話をしてしまっても問題はない。
「あの、お話、イイデスカ? おじょーさん」
そんなご飯話で盛り上がってる最中のことだった。
ちょっと片言な日本語で話しかけてきた人がいた。
そちらに視線を向けると、金髪碧眼の外国の男性が立っていた。
「私、バートラム、いいます。ゆーがルイ、サン、です?」
「ええと、こっちの子がルイさんね」
カメラをつっているのを見てそう思ったのか、その人はさくらの方に話しかけていた。
どうやら影になっていて、こちらのカメラは見えていなかったらしい。
「おう。失礼しまた。これはまた、ビューティフォー。妖精のようデス。日本の人、本当に美人さんばかり」
「ええと、バートラム、さん? 私になにかご用ですか?」
ちょっと日本語は片言ではあるものの、きちんと話はできそうなので、丁寧に返事をしておくことにする。
「おぉ。そでした。コスプレ? ゆーが撮った写真。見ました」
「それは、ありがとうございます」
「この写真集見て、日本興味モチました。ビジネスで来てるけど今日ここに貴女がくるきいて、是非彼女のこと、聞きたかった」
彼は、小脇に抱えていた写真集をとりだしてこちらに見せてきた。
一回目に出したエレナのコスROMだ。ブックレットタイプなので、そちらに印刷された写真が何枚かくっついている。
「このレディはどこにいます? 是非この子とお話してみたい」
美しいデスと、彼はうっとりしたようすで写真を見つめている。
「バートラムは我が社とも取引のある相手でね、商談の席の合間に君の話がでて、それなら会わせてあげようと思ってね」
「ああ、おじさま。外国の方ともお付き合いがあるんですね」
「まあ、そうだね。さすがにそこで君の話が出たときは、驚いたけどね」
しかも報道のほうじゃなくて、写真の方で話題にしてくるあたり、君もそうとうやるようになったってことかな? なんて彼はかなり嬉しそうな顔をしてくれた。
うん。こちらも確かにかなり嬉しい。
「ルイさん。このレディっ。会わせて欲しいよ」
バートラムさんはこの会場であってもまったくTPOをわきまえることなく、写真をがっと開いてこちらにエレナのコスプレ写真を見せてきた。その熱意たるやそうとうのものだ。
うん。その熱のせいでさっきの喜びより、やべぇという感じが強くなってしまった。
おじさま、今近くでこれ見てるんだもんね。大丈夫かな。ちょっとひやひやしてしまう。
「しかし……この子どこかで見たような気が……」
ああ、やっぱりあかん。じぃとその写真を見ながらおじさまが、うーんと首をかしげている。
この写真集はもちろん男の娘コスではあるものの、知らない人がみれば女性キャラのようにも見えるものだ。ROMの中にはちょっと男の子っぽさが強めのもあるけどね。なのですぐさまに自分の息子だということには気付かないでくれているらしい。
「あ、いや。この子はコスプレ会場に行けば会えますよ。ホームページアドレスも、ROMに入れてあります」
スケジュールはホームページで確認と伝えると、おぉーホームページあったですかー、とコスROMを見てないのかといいたくなる台詞が飛び出た。
「でも、私これ手に入れたとき、中のDVD入ってないの状態。偶然ジャパンの本やで見つけた。ルイもエレナも検索してもネットにでてこなかったデス」
「どこでこれを?」
装丁の不備などは出荷の時にしっかり確認している。ROMが入ってないものは一つもなかったし、きっちり商品は渡せているはずだ。なら……あとはROMだけとって転売ということだろうか。
たしかにエレナのコスROMの見出し扱いの写真は中に入っている。綺麗に保管できるという意味合いでルイはあのスタイルは好きだけれど、人によっては画像があればそれでいいじゃないという人もいるのかもしれない。
「古書店です。カンダ? ジンボーチョー?」
「彼は日本の古書店が好きでね。時々のぞいているみたいなんだ。でもよくそんなところにあったよね」
「ええ。実際1000部しか作ってないんです。それでも私たちがやってる同人活動規模だとしたら多いんですが、古書店で扱われてるというのは不思議です。若干悔しい感じもしますが」
それはお買い上げいただいた人の好みだからしょうがないと割り切る。コピーして売り捌くとかROMの内容を印刷して販売するとかそういうのさえなければこのさいしかたのないことだ。
「では、これをお渡ししておきます。私の名刺です。ホームページはこのアドレスからたどればいけると思いますが……」
日本語だけなのですよね、と言うと、だいじょーぶと彼はつたない日本語で答えた。
「よむの方が得意です。じゃぱんの本、興味深いからどんとこいです」
「それとまだ秋葉原のショップに冬に販売したものが残っているはずです。そちらの一冊目もうちに数冊ありますからなんでしたら両方合わせて売ってあげてもいいですよ」
「わおっ。それは嬉しいサプライズ。ROMにはエレナさんの写真いっぱいです?」
ただであげると言えないのがルイの貧乏性といったところだろう。エレナの父の取引相手となると、ご機嫌取りの意味合いでプレゼントでもいいのだが、あくまでもこちらもビジネスである。安売りはできないのだ。
「でも、バートラムさん。彼女はみんなの憧れです。外国の方はその、情熱的だといいますけど、無茶はしないでくださいね?」
「この子はボクの天使よ。手を出すできない。ただ見ていたいよ」
うっとりしている彼は、優しい視線を写真集のエレナに向けていた。
自分が撮った写真で誰かが夢中になる。割とぞくぞくする経験だ。しかも外国の人にそんな反応をされてしまっては、嬉しくないわけがない。最初はなんとかおじさまをごまかそうと思っていたのに、いつのまにかバートラムさんとの会話に集中しすぎてしまっていた。
だからおじさまのうめきを聞き漏らした。
彼は、こうつぶやいていた。
マリー、と。
そして、そのままひどく憔悴した顔で、他のお客様の相手をしているエレンに向かう。
ぱぁんと場違いな音が鳴った。
「は?」
何が起きたのか。
正直、理解が追いつかなかった。
おじさまがエレンの頬を平手で打ったのだ。
「おまえは……なにをしているんだ」
「と、父様。なんで……」
突然のことで、エレナは素の口調でぽかーんとはたかれた頬を抑えていた。
「マリーの。おまえの母さんの若い頃にそっくりだ。これはお前だろう」
「落ち着いてください、おじさまっ。この場でそれは駄目です」
震えている背中を追いかけて、おじさまの動きを制止させる。
これ以上こんな公衆の場で話をしていいような内容ではないのだ、それは。
「君は……知っていたのか。いや知っていて当然か。モデルとカメラマンだ」
マリー。かすかなうめきとともに、彼の体が揺れる。
「旦那様!」
あまりに衝撃的すぎたのか、おじさまはがくっと体を倒した。
腕にかかる負荷がすごいものの、ルイの筋力ならなんとかささえることもできる。華奢な女の子の腕に見えて、ルイの腕力は平均男子にはやや劣る、という程度にはあるのだ。
とはいえさすがにドレス姿で妙齢の男性を支えるのは厳しいものがある。執事の中田さんがすぐに来てかわってくれたので助かった。中田さんはさすがに力仕事も十分なようで、旦那様を軽々と支えて背負うと奥の部屋へと休ませに向かう。
「みなさま、お騒がせして申し訳ありません。父はこのところ働きづめでお疲れのようです。私では代役はつとまらないでしょうが、せめて残りの時間をお楽しみください」
よく通る声でエレンが会場全体の驚きを吸収させる。
とっさの機転はさすがだ。最初にあったころの彼ではとうていできなかったことが今ではできる。
けれどその体はかすかに震えていた。
知られてしまった。
今まで隠してきたエレナとしての姿を父親に知られてしまった。
いつかは直面しなければならなかったことではあったけれど。
それが二十歳の誕生日パーティーの最中だなんて、まったく予想はできなかった。
やっと、アウティングの機会がまいりました。
バートラムさん、熱心なオタクさんな感じだけど、間がわるすぎるます。
ちなみに彼がルイとエレナを検索しても出てこなかったのは、RUIとELENAで検索をかけてるからです。ジャパニーズオンリーって書いてあるじゃぁないのよ! みたいな感じですね。あとは追加ワードで写真、コスプレくらいいれておかないと絞り込めません。
さて。それで次話なんですが。ちょっと荒療治に入る感じですね。
しっかり話をして、親公認になっていただきたいところであります。




