表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
331/794

320.キャラクター博覧会4

冒頭海斗くんの一人称からスタート。

ここで終わる予定だったんですが、決着つかなかったので、海斗&冬子の決着は次話になります。

 目の前で、女子二人がじぃと展示されていたぬいぐるみに見入っていた。


 冬子の方は昔からそういうところがあるのは知っている。外ではちょっと悪役令嬢のような感じを見せてはいるものの、まだまだ可愛いものが大好きな女性だ。

 もう一人の、撮影係としてよびだされた女の方も、波長があうのか全力ではうはうしていて。

 

 正直、少し意外だった。

 冬子の友達といえば、だいたい取り巻きといえる少女達だった。

 彼女の家はそれなりに格式のあるところで、お近づきになっておいた方がなにかとよいということで、親から言われて交友をしているやつらが多い。

 まあ、それと釣り合うと見なされてるうちもそうとうなのだろうが。


 なのに、今日のカメラ係とのうちとけっぷりといったら、なんだろうか。すさまじい気の抜きようでこちらも驚いてしまうくらいだ。

 ああ。名前は確かに知っている。

 変な風に目立っているやつだし、まあまあ美人なほうだと思う。

 もちろん、テレビの向こうの人なのだから、まあそんなもんだろうというくらいな感想だ。あの手のものには美人かイケメンか個性的な人に限るというものがあるからな。

 

 そんな相手と、冬子の間に何があったのか、はちらりと聞かされた。

 冬子が満面な笑みをたたえながら、お正月に大切なキーホルダーを無くしてしまったときに、拾ってもらってから友達になったのだという話をしてきたのだった。いつもつけてるぶさいくな鳥のキーホルダーだ。


 まあ、女同士ならそういう出会いもあるのだろうな、きっと。

 俺にはよくわからないが。


「可愛いですわっ。ここのところあまりこのようなイベントはチェックしておりませんでしたが、やはりいいものですわねぇ」

「ですねぇ。ああっ! ツノカエルンですよ! デフォルメされててかわいー!」


 まあ。今回のファンシーイベントは大人も入れるをコンセプトとしているわけで。

 オシャレな中に可愛さを詰め込んだ姿勢になっているから、二十歳前後の女子がきゃーきゃー言ったところで特別恥ずかしくはないのだろう。

 いつも以上にテンションが高くて正直げんなりする。

 

 冬子は高校に入るあたりから、ファンシーショップにはいかなくなったそうだ。

 可愛いもの大好きには違いないのだろうが、子供っぽいとかいう理由で周りについてきて欲しいといえなくなったという。


 そんな話をしていたら。隣のルイさんには、え? 可愛いものが好きでなんで悪いんです? ときょとんとされてしまったものだ。

 天才肌というやつなんだろうか。周りの感覚というものにあまり影響されない人らしい。

 男女でぬいぐるみから卒業する年齢というものは違うだろうが、ここまでおおっぴらに大好きと言える人を見るのは久しぶりである。

 

 そして、ひたすら写真を撮る。とる。トル。

 いちおう俺はこれでも記念写真だといっていろいろ撮られてきたし、二十歳の誕生日の時はかなり撮影も多かった。

 隣にいた、しのさんは、羨ましい……とまさに指をくわえそうな状態だったけれど。あいつもカメラ大好きだしな。


 あのときよりも撮影枚数は多いような気がする。

 冬子とセットで撮影もあるけれど、純粋にぬいぐるみだけを撮ってたりもして。

 これが撮り放題だなんてと、本人は大喜びをしていた。

 おまけに俺もそのフレームの中にいれさせられた。最初のうちは冬子とペアでというのは避けていたようだけれど、だんだん遠慮がなくなってきて、ほれっ、一緒に両サイドからだっこで! とか、変な丸っこいぬいぐるみを抱えさせられて撮影なんてのもさせられた。

 なんてバカップルだよって感じにも思ったものの、不思議とルイさんの声で指示をされると抵抗なくそうしてしまうのが悔しい。


 悔しいのだが、ここまで上手く行っていてほっともしていた。

 正直、彼女がいなかったら、今回の参加は悲惨きわまりないものになっただろう。

 冬子との外出は半ば義務のようなものだった。

 婚約は解消されても、それでもしがらみというやつは残る。


 おまけに、お付き合いしているということにした、しのさんのことも問題の一つだった。

 両親はやたらと、次はいつ会うんだだの、順調なのかだの聞いてくる。

 そりゃ、跡取りのこととかも気にはなるのだろうけどな。

 ほいほいとしのさんを召還できるわけでもない。

 木戸のやつもなんだかんだで大騒ぎだったし、なにかと忙しいやつなのだ。


 そんなわけで、両親としては可能性を持たせたいということで、冬子からのお誘いを一切断らせない姿勢なのだった。

 そんなことをいっても、やっぱり女を好きになるという感覚は、ない。

 ないのだが、なぜだろうか。


 ちょっとだけルイさんの事はひっかかる。

 たしかにとても美人なのだが、女特有の嫌な感じがないのだ。

 それに。

 これをいうと彼女に失礼なのかもしれないが、どことなく初恋の相手にも似ているように思う。

  

 俺の初恋は小学五年の時のことだ。男の恋愛話を聞かされても楽しくないだろうからざっくりいくが。

 体育の着替えの時に、ちらっと見えたその背中に、なぜか引きつけられたのだ。

 滅茶苦茶綺麗だった。

 本当に男とは思えない華奢な体をしていて、女みたいに無駄な肉もついていなくて。

 世の中にはこんなに綺麗なヤツがいるんだって思ったものだった。

 

 そいつは女っぽいとか、女々しいとかいろいろ言われて、その度にしょぼんとしながら、それでも相手をにらみ付けていたりして。

 そんな姿もかっこいいと当時は思った。

 そいつが今何をしているのかは俺も知らないけれど、まあそれから、美人な男子に惹かれるようになったというわけだ。ちなみにごつい系男子はちょっとストライクゾーンから外れる。

 男なら誰でもいいというわけではない。


 そこらへん木戸はしっかりわかっていて、あいつもそうとうにセクシャルマイノリティの世界にどっぷりだよなぁなんて思わせられたものだった。

 そういう木戸はストライクゾーンなんじゃないかって?

 そこがちょっと悩ましい。

 確かに、普段のモブ姿はあれとして、しのさん状態は綺麗だった。

 ただ、綺麗すぎたといってもいいかもしれない。

 女子に寄りすぎということもある。正直男として美人(、、、、、、)というのならドストライクなのだが。

 あの姿を見せられると、本当に男なんだかよーわからんというのが本当のところだ。

 正直、木戸の小学生時代とか、大丈夫だったんだろうかと心配になる。あいつも女っぽいとかいわれていじめられてたくちなんだろうか。


 おっと。そんなわけで、今の俺は絶賛、恋人募集中。

 でも、なかなか出会うのすら難しいのが我らのようなものだ。

 そもそも同性同士のカップルなんて存在しうるのか? ネット上のねつ造なんじゃないのか、とすら思ってしまう。

 高校の頃にコクったら、普通にどん引きされたことがある。

 あとは。冗談だよな。なにいってんだといいつつ。自然とフェードアウトしていったやつもいる。

 正直女同士の方がカップル成立はしやすいんじゃないだろうか?

 それこそ、冬子とルイさんの今のテンションのまま良い雰囲気になったところで、違和感はないと思う。

 男同士の場合、なかなかあんなテンションできゃーきゃーいうなんていうことができないだろう。

 エロいビデオ見るときくらいか? まあそれとて趣味が合わないので、ろくに一緒に見たことはないのだが。


 と、俺の事はどうでもいいんだった。

 今は、目の前で展開されているファンシーな世界とお付き合いをするばかりだ。


「んじゃ、海斗さんこっちに視線よろー。背後のネズミたんと一緒に」

 カシャリという音を今日は何回すでに聞いたのだろうか。

 もうわりきって、撮影会に付き合う以外に俺に残された道はないのだった。




 さすがはキャラ博というだけあって、食事が終わった後もいろいろなコーナーで、ぬいぐるみや原画なんかをみつつ、全力で撮影にいそしませていただいた。通常は展示だけなところも本日のみは撮影もだっこもオッケーというのだから、業者デーというのは特典付きで幸せである。


 つい先ほどバッテリーが点滅を始めたので交換済み。

 冬子さんには、バッテリーの換えなんてもってくるんですの? と聞かれたけれど、一日まるっと撮るならちゃんともってきますよーとさらっといったら、おぉーさすがですわーと感心されてしまった。

 ううむ。こちらとしては常識なんだけれど、冬子さんとしてはあまりカメラマンと長いこと話をしたことがないのかもしれない。


「では、準備も万全ということで、ふれあいコーナーにまいりましょう!」

 さぁ、是非海斗さんも触れあってくださいね、と自然な笑顔を浮かべると海斗もしぶしぶ頷いてくれた。

 最初の堅さに比べればかなり改善してきたように思う。

 恋人同士というのは無理だろうけど、やっぱり友達同士では居て欲しいからね。


 そんなわけで、ふれあいコーナーにきたわけだけれど。

「……すごいですわ。ワンホールまるまるイベント会場ですわー」

「うわわ……まさか。まさかー!」

 ふれあいコーナーは文字通りキャラクターたちとふれあえるコーナーだ。

 広さは学校の教室四個分くらいと言えばいいだろうか。まあまあ中規模な会議室くらいで、自由にさわさわできる小さめのぬいぐるみも点在しているわけだけれど、それ以外のインパクトがすごかった。


「わー、等身大のほめたろうさんだー!」

 わーい、とあのでっぷりした鳥さんに思わず、ダイブ。

 そりゃ、ほめたろうさんの公式設定は四十センチとかそれくらいなので、人のサイズがあるという時点で等身大ではないのだけど、それはそれである。きぐるみサイズなのだった。

 だきついてみると、ふわふわの毛並みが抜群に気持ちよくて、うっとりしそうだった。おまけにお手々にあたる羽根できゅっ、ぽふぽふと背中を叩いてくれたりしてくれている。

 いつも抱きつくだけのほめたろうさんにまさか、抱きしめられるとは!


 なんかもうね! 翅さんの壁ドンの比じゃあないね! すんごい幸せ!


 なんて思っていたら、カシャリとシャッターが切れる音が聞こえた。

 こちらのカメラはくるっとわきにずらしてあるのでそれがなったわけではない。


「いい顔してたから、思わず撮っちゃったっ」

「あ、あいなさん!?」

 カメラを構えながらふふふんと笑っているのは、まごうことなきあいなさんだった。

 今日は個展ではないので、ラフな格好をしている。


「もぅ、撮るなら撮るって言ってくださいよー」

 もう、恥ずかしいんだから、と言うと、えーいまさらその台詞なの? と苦笑されてしまった。

 しかも、抱きついたまま言っているものだから、かっこがつくわけもない。


 さて。あいなさんがなぜにここにいるのか、というのは言われなくてもだいたい想像はつく。

 そこそこの規模のイベントなのだ。そこに撮影も抱きつきもオッケーなスペースがある。

 そうなれば、そこに起用されるカメラマンも必要ということなわけで。


「あの、ルイさん? そちらのかたは?」

「ああ-、そちらの方は写真仲間でー、せんせーで、先輩で-、クラスメイトのおねーさんでー」

 はわぁとほめたろうさんの感触を存分に味わいながら、冬子さんの質問に答えておく。


「いや、最後の一言は危ないから。ルイちゃんさすがにとろっとろすぎるから」

「えー、でもぉーこの感触ですもんー」

 わふーともさもさしていると、何枚かカシャカシャ写真を撮られた。

 まあ、この感触を味わってる間は好きに撮らせてあげますさ。

 じっくり堪能してから、ほめたろうさんに頭をぽふぽふされてようやくその体を離した。

 次のお友達の所にいくのだろう。


「なんだか、いけないものを見てしまったようですわ……」

「やべぇな。翅もきっとあんな顔にやられたんだろうな……」

 こそこそと海斗たちが何かを言っているけれど、とりあえず今はあいなさんにご挨拶するのが優先だ。


「相変わらずぬいぐるみ大好きっこなところは変わらないようね。今日はどうしたの? って聞くまでもないか」

「はいっ。友達に誘ってもらったんです。カメラマンとして雇ってくださったくらいで」

「おぉー、それはいいじゃない。正直その……この前の事があってから、心配はしてたのよ」

 あのときはあまり力になってあげられなくてすまぬ、とあいなさんは少し申し訳なさそうな顔をした。

 言うまでもなく、HAOTO絡みの件だ。彼女はこちらの素性をしっかり知っている人だから、そういう思いにもなるのだろう。


 もちろん、こちらからは事情を伝えるメールをしておいたんだけど、その時この御方は北海道で撮影をしていたのだそうで。

 その時送ってもらった空の写真にはかなりなぐさめられたものだった。


「いちおーどっちも片付いたので。あとで、たんまり写真見せてもらえれば元気になります」

 よろしくお願いシマスっ、というと、あいよーという軽い返事が来た。

 正直、今から北海道の写真鑑賞会は楽しみである。

さーほめたろうさんをもふもふしたルイさんですが、写真を撮るといったらこの御方です!

お久しぶりのあいなさん登場! なんかちょー久しぶりな気がします。


あ、いちおー書いときますけど、海斗くんの初恋の相手は別の人ですからね! 馨くんは女々しいとか言われても? それってかわいいってこと? って言っちゃう子なので。


さて。次話でやっとキャラ博が終わるご予定です。二人がいくらか前進するといいなぁ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ