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279.

2016.4.7 よーじくんについての反応を修正

「さー、それじゃールイちゃんのお持たせお菓子をご解禁であります」

 紅茶を入れ直してくれつつ、エレナはお皿にじゃらっとカラフルなお菓子を補給した。

 はい。ルイさんお手製、マカロンでございます。

 この前の母校の卒パのときに差し入れた材料が残っていたので、どうせだったらこっちでやらかしてしまおうと思ったのだった。

 そしてなにより、マカロンを受け取ったときの反応を見たかったというのもある。


「ふわ、オシャレなお菓子ですね」

「ご自分で作れる人を初めて見ました」

 うわーと、お二人はとても女子らしいコメントをしてくださいました。

 沙紀ちゃんは正直、もうちょっと違う反応をするかなぁとは思ったんだけど、さすがに女子高に通っていただけはある。


 ちなみに、写真部の後輩男子に渡した時は、ルイ先輩のお手製……でも、なんか見たこともないお菓子? 緑? みたいな反応だった。

 まあ、男子高校生ですし? 確かに青いお菓子ってどうよって思う気持ちはわかるのだけどね。

 普通お菓子といえば、白、茶、焦げ茶がメインだし。

 そこらへん、沙紀ちゃんの反応は女子っぽいと言えるのかもしれない。まあ育ちの問題もあるのかもしれないけど。


「他のお菓子も美味しいから、ちょーっと自信はないんだけど……サクサクいただいていただければ」

 ふぅとお茶をいただきながら、アーモンドが練り込まれたクッキーをいただく。これはエレナの愛用品でサクサクした食感の上にこりこりしたアーモンドがたまらないものだ。

 他にもお菓子のたぐいはいくつか置かれてある。


 うん。全部お皿にあけられてあって、包装紙のたぐいは一切ない。

 ここらへんの気遣いはエレナらしいよなぁとしみじみ思う。

 これでさくら達とだと、普通に袋からぽりぽりいただいたり、コンビニポテチとかが並ぶだろうし、あいなさんの場合は、スルメや柿ピーなんかのおつまみ系が並ぶ。

 そっちはそっちで楽しいのだけど、こういうちょっと高級でオシャレな演出というのも良いものだと思う。


「ホントに、さくふわって感じで。普通にお店で売ってる味ですね」

「いづもさんにちょぴっとアドバイスをいただいたりもしてるからね。まー、あのお店のマカロンの味は出せないんだけど」

 こっち側にきたら、教えてあげる、と今回も言われたわけだけど、どっち側です? ととぼけておいた。

 

「いづも、さん?」

 ん? と新しい名前を聞いたぞという感じで沙紀ちゃんが首をかしげた。

 結局、今日のアップルパイの購入の際は、沙紀ちゃんをシフォレの中には入れていない。

 だって、一発でばれるもの。そんな恐ろしいことなんて出来るわけが無い。

 お持ち帰りでアップルパイを預かった時には、あら、あのときの子ね、とまりえちゃんの制服を見て、いづもさんはにやりと笑顔を浮かべていたものだった。

 新たなお得意様がこないかな、とでも思っていたのかもしれない。


「さっきのアップルパイの制作者ね。あたし達が懇意にしてるパティシエールさんで、時々お菓子作りを教わったりな関係です」

「へえぇ。ルイさんはカメラばっかりな方だと思っていましたが……意外な一面ですね」

 まりえさんが失礼な台詞をさらりと言ってくださった。

 確かに写真が第一ではあるんだけど、可愛いモノとか美味しいモノとかも大好きですよ?


「さて。あたしの話ではなく、あまーいあまーい女子高ライフのお話をそろそろお聞かせいただきましょうかね?」

 ぽりっと、クッキーをいただきながら、話の方向を変える。

 本日のメインといえば、沙紀ちゃんたちの思い出話なのだから、さっさか話を聞かせていただきたい。


「甘いかどうかは、なんともですが……」

 にこりと普段より甘めの笑顔に沙紀ちゃんはちょっと引き気味に視線をそらした。

 純粋に、どういう時間を過ごしていたのかに興味があるだけなんだけどな。


「じゃー、転入からのおトイレ事情とか、プール事情とか、健康診断事情とか、そういうイベントの話を是非」

「沙紀ちゃん、学園祭の時ですらトイレに緊張してたよね?」

 うーんと半年前くらいのことを思い出して、あごに指を当てる。

 あの様子なら未だに慣れてないんじゃないだろうか。


「エレナさんはトイレは……あ、いえ。ルイさんと同じくですよね」

 はぁとなぜかこちらの顔をみて、深いため息をつかれてしまった。

 いや、でもほら、トイレなんてもんは別にそんなに恥ずかしいものではないし、意識のしすぎなのではないかと思う。

「え、ボクはルイちゃんと一緒じゃないよ? 極力まんべんなく両方を使うか、多目的があればそっち」

 まさか常時女子トイレだなんて、できませんとエレナさんはにこにこしながら言い切りました。

 あの、貴女のは性別バレを防ぐためのキャラ作りでしょうに。


「それでプール事件とかはどうしたの? あたし高三のプールは、諸事情で免除になったけど、さ」

「……どういう状況なのかイマイチわかりませんが、プールに関しては私も免除していただきました。胸元に傷があるので……と」

 まー受理するのは、あの母なので通った力業ですけど、と沙紀ちゃんはぼそっと呟いた。

 ゲームなんかでは水着は一つのイベントとして、いろんな解決法をするものだけれども、実際だと入らないというのが一番選択肢としてはありなのだろうと思う。

 千歳も入ってなかったしね。


「プールをサボる理由を探すのは大変そうだよね。素行が不良の子ならただサボって追試とかですむだろうけど、生徒会長さんがそれだと困る-みたいなの、よくあるよね」

「それで、敢えて大げさな理由になっちゃいました」

 一時期は、おかわいそうお姉様なんて、同情の目を向けられるたびに申し訳なさが……と沙紀ちゃんが遠い目をしていた。

 でも、胸元に傷がある設定は確かに、良い設定かもしれない。

 奏は「胸が絶望的にないから」っていうことで更衣室を切り抜けたけれど、傷となれば着替えの時に絡んでくる子は減るだろうしね。


「入ってしまえば良い、というのがボクの見解ではあるんだけど……まぁ無理なのかなぁ」

「さすがに無理なのではないですか?」

 まりえちゃんが、首をかしげるようにしながらマカロンをはむついている。美味しくいただいてもらっているようだ。

「んー、たとえば、ルイちゃんだったら、どう?」

 エレナにそう問いかけられて、んーと、軽く考える。

 奏をやったのは冬だったからプールとは縁がなかったけれど、実際に入るとなるとどうしようかとなる。 


「更衣室だけがネックかなー。家でタックしてくるでしょ? んで、ビキニタイプならまー、下だけ先に穿いてきて、上だけ手早くつけちゃえばいける、とは思うけど、問題は出るときかも。奏は絶望的におっぱいがない宣言をしていたから、みんなの視線は集まらないだろうけど、それでも濡れてる水着を脱ぐときは下が無防備になるからねぇ」

 タックで固定してるテープとかが見られたらさすがにマズイかなぁと答えると、ゼフィ女の生徒会コンビはきょとんとしてしまった。


「……入れる前提ですか?」

 無理でしょう水着は、と言われてこちらはエレナと目を合わせてぱちくりしてしまった。

「んー、だって、タックを使えば下の方は大丈夫だし。実際水着経験は、そこそこしてるしねぇ」

 学校では着る機会はなかったけど、やれと言われてできないとは言わない。十分やりこなせると思う。


「ねぇ、沙紀。そっちにはいかないよね?」

「行きません。行けません」

 ぷるぷると沙紀ちゃんがなぜか震えながら首を振っている。

 おかしい。タックなんてネットにいくらでも情報が載っているし、難易度は高くてもいけるはずだというのに。


「えー、本日のゲストがいろいろアブナイので、次の話題に行こうかと思います。健康診断ネタとかはいかがなものでしょうか?」

 ほい。ドキっ、女子高生の柔肌から目をそらせ、健康診断ーと、言うところで、ずばっと沙紀さんから答えがきた。

「転校前に診断書を書いてもらって提出しました」

「えー-、つまんないー」

 二度目の理事長パワーにエレナが不満げな声をもらした。

 言い分はわかります。女装潜入の醍醐味である、ドキドキもハラハラもなくてつまらないと言いたいのだろう。


 もちろん、今回のミッションは「女子高で胆力を鍛える」ことなわけだから、安全弁は何個でもつけるだろうけど、この肩すかし感はちょっとどうなんだろうか。

 コレジャナイ感というか。エレナはいろいろわくわくして過ごしていたから、がっかりしているのかもしれない。


「エレナはどうだったの? 男子校で健康診断とかみんな上半身裸とかで受けるんじゃ無いの?」

 とはいっても、そんなゲームみたいな生活をリアルにできるわけもないわけで。さすがに沙紀ちゃんにそれを求めるのは酷だと思ったので、別の話題を振ってみることにする。

 

「さすがに高校になったら、脱ぐ脱がないは個人の自由だからね。それにボクのクラスメイトたちは脱がない人ばっかりだったし」

 特別大きな混乱とかは無かったよ? と言われて、あぁこれ、周りの子達が気を遣ったんだなぁとしみじみ思ってしまった。あそこの学校の男の子達は紳士だからね。


「それじゃー、ばれそうになってひやひやした経験。行ってみようか!」

 気を取り直して、とエレナは沙紀ちゃんに抱きついた。さぁ楽しい話をきかせてよーとねだる姿を横目で見てると、今が一番沙紀ちゃんはひやひやしてるのではないだろうか。


「ばれそうになった……毎日ひやひやはしてましたけど、どうだったんだろ。まりえは周りから見てどうだった?」

「そうですね……写真部の部長さんとはちょっと揉めましたけど、寮の子達とはそこまでは無かったんじゃない?」

「寮……かぁ……」

 うーんと、沙紀ちゃんは悩ましげな声を漏らした。

 なんかさっきまでの流れで、波瀾万丈の女子高生活を伝えられなくて、申し訳なく思っているのかもしれない。


「お風呂は時間で入ってましたけど、同じ寮の子が忘れ物を取りに来たりは、ありました」

「なっ。沙紀、全然そんなこと言ってなかったじゃない」

 なっ、と口を開きながらまりえさんが驚いた声をもらした。どうやら知らないことだったらしい。


「ちょうど背中を向けて浴槽に入っていたので、問題にはならなかったのですが、沙紀おねーさまと一緒にお風呂に入れなくて残念ですーみたいなことは言われました」

 個人的に叱っておきましたけどね、と苦笑を浮かべているのは、今だからこそだろう。

「胸元の傷設定がここでも生きてくる……かぁ。女子高生としては見ちゃいけないものって意識は強いだろうし、お風呂も一人で入れる、と」

 けっこうな最強設定だなぁとエレナは、マカロンに手を伸ばした。黄色いあいつをもくもくいただいている。


「ちなみに、他の女の子が入った残り湯で、変な気になったりとかは?」

「……っ!? それはさすがにっ。ないですっ。そんなことはしてないですって」

「怪しいなぁ。否定の仕方が、なんかありましたーって感じだよね」

 実際はどうだったのかなーと、エレナが満面の笑みでたたみかける。

 残り湯がどうのーというのは、いくらなんでも発想が変態よりではないかと苦笑してしまった。


「沙紀ちゃん。そういうときはね、慌てず騒がず、なんて変態設定ですかっ、て逆に冷たい視線を向けてあげると、切り抜けられたりするよ?」

「うぅ。エレナさんからそんな言葉がでるとは思わなかった……」

「あはは。エレナはこれでエロゲいっぱいやってるから、そういうのはネタとして結構知識持ってるんだよね。イメージの問題があるから、外ではあんまり言わないけど」

 男の娘ネタになったら、いろいろ振り切れちゃうのは勘弁してやって? というと、はぁと、二人とも曖昧な返事をしてくれた。


「まあ、それはともかく、実際のところ女子高に行っていて、自制がきかなくなっちゃったとか、恋に落ちちゃったとかなかったの?」

「かわいい子はいっぱい居ましたけど、正直それどころでは無かったです……」

「沙紀のちょっとかっこいい所に惹かれてた女子は多かったとは思いますけど、一線は引いてたと思います」

 ルイさんに会ってから、ちょっと女子度があがったのもあって、そこからは憧れのお姉様っていう印象の方が強くなりましたけど、とまりえちゃんはこてんとベッドに身体を倒しながら、盛大にため息をついた。

 ちょっと自信をもってもらっただけなんだけど、そんなに出会ってから変わったのだろうか。


「実際、この前のバレンタインも、例年の生徒会長と同じ感じでのプレゼントラッシュでしたからね。本気チョコとかはなかったですし」

 とはいえ、数が数だったので、数日あの対処でつぶれましたが、と沙紀ちゃんは疲れた顔をしていた。

「本気っぽいかどうかって、どうやって見比べるもの?」

「……手作りかどうか、とか、ラッピングの凝りっぷりとか、あとはメッセージカードとかでしょうか」

 とりあえずもらったものからは、イベントだし乗っかっておこうというような感じが見受けられたらしい。


「手作りで義理チョコを作ってる人がここに一人おりますが……」

「うん。ルイちゃんのはしょうがない。というかルイちゃんのクラスメイトが(いさぎよ)すぎるんだと思う」

 ぽんぽんとエレナに肩を叩かれたけれど、なぐさめられているのだろうか。

 沙紀ちゃんたちが、どういうことという顔をしていたので、高校二年と三年の時の出来事を話してあげた。


「男子として生活しているはずなのに、クラスメイトからチョコをねだられるって……」

「むしろ、(わたくし)の一年より、ルイさんの通常の高校生活の方が男装潜入ものですね」

 うふふ、と沙紀ちゃんがわざわざお嬢様口調を強くして、微笑んでいる。

 あの。男装っていうか、潜入ですらないんですが。通常業務だったんですが。


「というか、エレナの学校はねだってくるやつとかいなかったの?」

「んー、まあそこはほら、がっつくのかっこ悪いっていう風潮もあったし……それにほら、冗談でもそんなことを言ったらよーじが怒るのは周りも知ってたからさ」

「ああ。噂のよーじさんですね。きっと素敵な方なのでしょうね」

 まりえさんが起き上がってきて、疑問を告げてくる。

 男の子の名前がでてきてちょっとまりえさんも反応したのか。学院にいたころは、異性など……ときりっとしてたけど、気にはなっているようだ。


「まりえさんは会ったことはないんだっけ?」

「ええ。話は以前伺いましたけど、ちょっと興味はありますね」

 たしかに、潜入したあとのパーティーで話はしたけど、その後は交流してなかったし、外部の男性と会っているはずもないか。

 そうなったら、顔くらいは覚えておいてもらってもいいかもしれない。


「こんな感じの子だね。エレナの元同級生で、現恋人です」

 ほいと、写真を見せてあげると、二人ともうはぁと変な声を上げていた。

 ふむ。女装潜入を終えてなお、同性愛にはちょっとした抵抗のようなものを感じますか……話はしてあってもビジュアルで見せられると思うところもあるのかもしれない。


「というか、エレナがむしろ女子と付き合ってる方が想像できないし、二人とも楽しそうな顔してるんだから、これでいいかなってあたしは思ってるんだけど」

 ダメかな? 軽蔑とかしちゃった? と神妙そうな顔で問いかけると二人は、うーんと難しそうな顔をした。


「正直、すぐに理解しろ、と言われてもピンとこないです……特に沙紀はともかく、私はずっとゼフィ女ですし、いわゆる男性同士っていう感覚がよくわからなくて」

「私は、男に襲われる自分というのを想像したら、ちょっと……」

 ふむ。それぞれの感想は、そこそこありそうなものだと思う。

 特に沙紀ちゃんは、意外に男の子なんだなぁという感じだ。そうでなければ咲宮家の次期当主レースになんて参加できないのだろうけどね。

 大きなおうちは子孫繁栄とかも大事だろうし。


「あたしは、あまあまなあの二人の空間を見てるから、するっと納得してるのかな。恋愛自体がよくわかんないところあるけど、エレナ達は普通に仲良しだし、お似合いだと思うよ」

 実際もう丸二年以上お付き合いをしているし、性格的にも合っているのだと思う。


「それに沙紀ちゃんは、自分が、というところより、このエレナが男子とデートしてる場面を想像してみて。たぶんしっくりくると思うから」

「あっ……なるほど」

 そう言われると、確かにそうですね、と目の前の存在を見て納得したらしい。

 男という言葉の記号だけで考えるとネガティブでも、実例となるといけるっていうケースは多々あるものだ。

 まあ、本音を言えば、同性愛そのものを丸呑みできる度量が欲しいものだけれど、忌避感がでてしまうのは本能的に仕方が無い所もあるだろう。


「マイノリティーっていうものは、実際目の前で見てみると印象ががらっと変わるものだ、なんていう話もあるしね。とはいっても、エレナは女子っぽすぎて同性愛なのかどうか怪しいし、他の例に会った時はあまり参考にしないほうがいいだろうけど」

「んー、まーボクも同性愛者でーすって触れ込みをするつもりはあんまりない、かなぁ。自分でもよくわからないんだけど、よーじの隣にいるのが一番ほっとするからそうしてるだけだし」

 別に、男と付き合いたいーってわけでもないよ、とエレナは恥ずかしそうに紅茶をくぴりといただいた。可愛いので一枚カシャリと撮影。あとでよーじくんにあげよう。


「それで、沙紀ちゃんは、自分がこの人の隣にいた方がいいって思った子はいなかったのかな?」

 さぁどうだ、とエレナがお返しとばかりに、満面の笑顔で問いかける。

 さっき一度否定されてるのに、めげないなぁ。


「だから、そんな余裕はなかったんですって。そりゃ茶道部の子とか、図書館の子とか、個人的に話を聞いた子はいますけど、あくまでも聞いただけです。せめて学院にいる間だけは支えてあげようとしか思いませんでした」

 先輩とはそういうものでしょう? と言われて、まあそうだよねと頷いた。

 そうそうドラマティックな出会いというものはあるものではないということだ。

 エレナたちのが劇的すぎたから、いろいろ期待はしちゃうところだけど、実際、女装潜入はいっぱいいっぱいの状態で、なんとかこと無く終わればいいというのが実情なのではないかと思う。

 ゲームだと消極的すぎてバッドエンドになるやつである。


「危なっかしい子の面倒は見てたけど、深入りは避けてたってのが一年の印象ですね」

 そうしないと本人が一番危ないっていうのは自覚してたわけですし、とまりえさんが補足してくれる。

 だからこそ、ルート分岐もしなかったということなのだろう。


「そもそも、高校生で恋愛に落ちる子の方が数は少ないんじゃないかしらと思うのですが、ルイさんはどうだったんですか?」

「え? あたしは写真の方が中心だから、恋人持つとかは無理だよ。男子に告られたりはしたけどさ」

「……するっとすごい事実がでてくるのはどう対応すればいいんでしょうね」

 まりえさんが遠い目をしながら、チョコをぱくりと口にいれていた。

 

「男子高校生はモテたい、彼女欲しい、ってのが多かったけど、一緒に居たいっていう思いまではいかず、女子は軽い感じで付き合う子と、恋愛とかわからんって子に分かれるんじゃないかな? 恋愛以外のなにかに熱中してたらそっち優先にもなるだろうし」

「モテたいと思っても、あの状況でモテてもどうしょうもなかったですしね」

 はははと、沙紀ちゃんは乾いた笑いを上げていた。

 ほほう。モテ願望自体はこの子もあったのですね。


「ですが、これからはいろんな意味で始まります。もちろんこの一年も初めての経験をいっぱいしましたけど、再出発って感じでしょうか」

「女心が妙にわかるプレイボーイにだけはならないで欲しいものです」

 はぁとまりえさんは、深いため息を漏らした。

 すさまじく心配そうな顔をしているのは、幼なじみだからこそなのか、他の感情がこもっているからなのかはわからない。


「さてー、それじゃ、今度はまりえちゃんの赤裸々な、百合体験を告白ということでっ」

 いえーいと、エレナはしんみりした空気を茶化すように、まりえちゃんに詰め寄った。

 そ、そんなことはさすがに、と引いたまりえちゃんの姿を撮影しつつ、その後もしばらくちょっと変わった恋バナは続いたのだった。

赤裸々な学院生活がーとか、思っていた時代が私にもありました! というわけで、沙紀ちゃんはどのルートも選ばなかった子なので、ゲームにのっとって話を想像していたエレナたんは全力で肩すかし。

理事長先生がゲームやってた理由は、半分くらいが予習の意味合いを込めているので、ばれそうなシチュエーションは最初からとっぱらっちゃってます。

そもそも高校で恋愛成就するのって、どれくらいの割合がいるのかっ! と思う昨今です。


おっと。もうちょっと練りたかったところではありますが。休日出勤なので。次話公開予定は1~2週間後ということでよろしくです。

たまゆらの最終話も見に行かねばなりませぬしね!


よーじくんについてのまりえさんたちの反応が前話と異なっていたので修正しました。

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