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245.

「やぁルイさん。まさか来てくださるとは。これはもううちの事務所に入ってくれるということで決まりですね」

「今日はお祭りの成功おめでとうございます。でも事務所には入りません、ごめんなさい」

 いきなりHAOTOのマネージャーさんに声をかけられて、まじ勘弁ですと断った。

 ホテルの大広間を借り切っての空間には、事務所のお偉いさんやアイドル本人や、関係各所の人たちもいる。

 ドレスコードはないので、スーツだったりカジュアルだったりとばらばらだ。

 仕事関係でつながってる大人はスーツ、若いアイドル本人はカジュアルというような感じだ。

 目の前のマネージャーさんはもちろんスーツ姿で、乾杯の時につかったグラスを手にもちながら近寄ってきたのだった。

 会場は立食パーティーのようで、テーブルには食事が並んでいる。

 こういうパーティーだともちろんがっつくルイさんなのですが、とりあえずはアウェーなので食べていいと許可がでるまではこのまま様子見だ。あ、かものローストとかあるよ。

「それで、そちらの方は?」

 誰ですか? と問いかけられて、にんまりとルイっぽい笑みを浮かべる。

「はいっ。彼氏ですよー。アイドルに彼氏いたら大変ですから、アイドルはやりませんよー」

「って、彼氏じゃないだろ」

 さすがに新宮さんが突っ込みを入れる。

「だって、この人、もー二年ですよ? 二年もずーっとことあるごとに声かけてくるんですよ?」

「だってぇ、十代のうちに表にだしたいんだもぉん」

 こっちの声まねなのか、くねくねしながらいうマネージャーさんは激しくきもい。真似するならちゃんと女声を出してくださいよもう。

「そのくらいにしてやってよ。ルイちゃんめっちゃ困ってるでしょー」

 虹さんがマネージャーさんを牽制してくれる。とてもありがたい。

「めっちゃ困ってますー。だから虹さん助けてっ♪」

 かわいく言ってみせると、翅さんがむっはーと声を上げた。対して虹さんはクールにふっと笑うだけだ。この人男の娘ラブだから、ルイさんには興味はないですか。良いことです。

 んー、HAOTOのメンバーが全員そろってるところを改めてみると、みんなかっこいいよなぁと思う。

「やれやれ。今日はお祭りですしね。皆さんがルイさんと仲良くなって、良い結果を導いてください」

 それじゃ、他に挨拶してきますんで、とマネージャーは一人席を離れた。うん。よかった。

 これで、とりあえずは一安心というやつだ。

「やっ。蠢も今日はかっこよかったよ。よくあれだけ踊れるよね」

 ぐっじょぶ! とサムズアップをしてみせると、普段はあまり見せないほわんとした笑顔を向けてくださった。

「そりゃ、練習しまくりんぐですからな-。いやぁルイちゃんが見ててくれると最初から知ってたら俺もっとがんばったんだけどなー」

「僕は知ってたけど。だから最後引っ張り上げたんだし」

 いちいちテンションが高い翅さんを遮るように蚕くんが大好きっていってもらえて嬉しかったな、と甘い声でささやく。

 はぁ。なんか、マネージャーさんの相手だけでぐったりだというのに、とんだ乙女ゲー展開になりそうで怖い。

 田辺さん達には言ったけれど、主人公が男の娘の乙女ゲーはさすがにニッチすぎると思う。

「あれは予定調和だから、やらなきゃファンに殺されますって。まーやったの崎ちゃんにばれたら普通に殺されそうだけど」

「誰が、誰を好きで、誰を殺すって?」

 にこにこしながら、崎ちゃんもその話の輪の中に入ってきた。

 さっきから他の人から挨拶を受けてたみたいだけれど、どうやらそれが途切れてこちらに合流できたらしい。

「崎ちゃんが、あたしのこと大好きでしょうがなくって、男にとられるくらいならいっそ殺してしまおうとかそういう話」

 にひひと笑ってあげると、うぐっと崎ちゃんが息をのむ。

「はいはい。ああー、それでこちらがおねーさんの彼氏さんか……あ。確か結構前に、一度お会いしてますよね」

 おひさしぶりですーと、気さくな声をかけられて、新宮さんは完全にてんぱっていた。

 崎ちゃんの方は、おぉ、おねーさん続いているのね……ま、ルイのおねーさんなら、ころころ彼氏変えるとかしなさそうだけど、と少しだけ羨ましそうな声を上げた。

 恋より仕事です! とか言ってたけど、そういうのに興味があるのだろうか。

「そういや、おねーさんというと……やっぱりあれからも立派に育っているの?」

「あ、うーん。さすがにそろそろ成長はおしまいみたいよ。とはいえ……私にもあれの半分も胸があればいいんですがねぇ」

「ルイちゃんは別に今くらいでいいんでない?」

 みんなに囲まれつつ、胸の話で盛り上がっていると、崎ちゃんに脇腹を小突かれた。

 あんたほんとに胸欲しいとか言いださないわよねということだろう。わかってます。フェイクですってば。

「そうそう。ちょうどいいよ。あんまりあってもカメラ使うのにも不便だろうし」

 虹さんが。男の娘大好きな虹さんが胸を凝視しながら言った。

 ルイの胸は詰め物はしていても小ぶりなほうだ。彼からしたら胸はない方がいいのだろう。

 むしろ、パットが落ちて平らな胸がでてくるインパクトがたまらないとか言うかもしれない。

「虹さん。この前のアレどうでした? 忙しくてやってないとかそういうことはないんですよね?」

「ああ、あのときはありがとね。めちゃはまった。泣いた。そして……エレさんの再現はんぱねぇって思った」

 あー、そういやあの後エレナもコスプレやってたんだった。この人はエレナの素性を知る数少ない人だけれど、しっかりと黙ってくれているらしい。エレさんって呼び方は、エレンでもエレナでもいいようにってことなのかな。

「師匠のコスプレ? そういや新作上がってたけどあれの元ネタって結構人気だよね」

「エロゲの話をする男性アイドルというのは、なかなかに……」

 普通ですねぇというと蚕くんが、俺はやらねーと言い切った。正確には18歳になってないから、やれない、なのではないだろうか。

「そういえばルイさん。師匠の写真集そろそろ出るんだろ? 是非うちにも送ってよ」

「是非とも通販でお買い求めくださいませ。というかどこかでどうせ会うんでしょ?」

 翅さんはいうまでもなくエレナの弟子だ。一月は無理としても二月あたりにあるイベントで女装姿をさらしたりとかあるんじゃないだろうか。

「そうだけど、年末ライブで俺たちあのイベントいけねーもん。すぐに師匠の艶姿をみたいのです」

「それなら、この前見せてもらったわよ。サンプル画像先に見せてもらえばいいじゃない」

 こいつ、どーせ今ももってるわよ、と崎ちゃんにいわれると、その通りだった。

「でも、今は手荷物預けちゃってるから、打ち上げが終わったらですけどね」

「それはそうとして是非一冊。それやらんと売り切れるだろ?」

 何部つくったんだと翅さんが詰め寄ってくる。まあそこ気になるよね。

「1200部作って、会場に600もっていってのこりは委託と通販予定です」

 二年前に作ったときは、再プレスして1000部程度売れた。それを元に今回は最初からその数よりちょっと多く作った。販売告知はホームページでもやっていて、そこで買うよ! 表明してくれた人が400程度だったから、あながち無理な数ではないと思っている。

 そして今回は宣伝もきちんとやるし、売り子の確保もしている。作品自体のクオリティーだって前よりはいい。

「少なっ。それくらいなら三日くらいですぐなくなるよー」

「っていっても、男の娘コスのレイヤーさんなんてニッチすぎて、そう大量に作っても在庫のこっちゃうし」

 そもそも売り場が無数にある芸能界の感覚でいわんでくださいと反論する。

 崎ちゃんの写真集の売り上げは五万とか十万とかそれくらい軽く行く。

 それはHAOTOのものも同様だ。でもそれは売る場所がたんとあるからできる話だし、そもそも彼らには受け皿になるファンが多く居る。そもそも比較対象として成り立たないのだ。

「俺は普通に師匠のコスも、ルイの撮影法も大好きなんだけどな。きっと虹だってアレ見たら驚くだろう」

「作品しらなくても普通に、かわいいっていうより美しかった」

 うんうんと、蚕さんがうなずいている。あれ。それぽろりと言っちゃうといつ見たんだよって話になっちゃうような。

 でも、幸い翅さんは気づかなかったらしい。

「そう思ってもらえるなら、嬉しいですけど」

 それでもやっぱり販売部数は制限をかけないといけない。

 特に冬のイベントはお誕生日席ではあってもシマの中だ。そこにわっと人が集まってしまっても、周りに迷惑になってしまう。

 そんなことを思いつつ、話を今日のライブの話に戻した。

 時間はまだまだある。崎ちゃんからは、どーせ話よりご飯のほうが嬉しいでしょと言われて、テーブルに並んでいる食事にも手をつける。

 新宮さんにパーティーなれしてるなぁ、義妹どのはと関心されたりもしたけど、崎ちゃんが「この子はパーティー経験とかも豊富でドレス姿とかもすごかったんです」とか答えたりとかもして、まじで仲良しなんだな……とか謎の評価を受けてしまいました。

 そしてパーティーが終わって、荷物を回収してから今度のROMの写真をみなさんに見せたら、かわええぇとみんな興奮気味だった。初めて見たははずの蜂さんも、これはなかなか、と感心していた。

 特に、虹さんがやばい。この前プレイしたゲームのキャラも入っているし、再現度ははんぱないうえに、この人はエレナが三枝エレンであることを知る人。エレンがきっかけで男の娘好きに目覚めたくらいの人である。

 俺、ライブ休んで、ビックサイトに行くんだ、と駄々をこねる姿は好きで仕方ないものを見つけた子供みたいだった。

ルイさんはカメラと食い気でできています。

というわけで、パーティー会場といえばごっはん。ということで。

周りの芸能人よりもご飯を狙っています。

カメラは残念ながら、持ち込み不可だったのでした。かわいそうに。


イベント終了直後ということもあって、芸能人さんたちが緩んだ雰囲気です。事件なんかもなくすんなり終了の中で新宮さんだけ固まってる感じというか。

義妹どのすげーって感じですね。


 さて、次回ですが、よーやくコスROM販売ですが、書下ろしです。

 明日の朝アップは無理な気がしてます。夜……でしょうか。

 ここからしばらく書下ろし祭りです。

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