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240.反省会2

少し時間かかってしまいました、

「さて。そんなわけで食べながらで申し訳ないんだけれど、二人の事情はそれぞれわかったところで、これからどうするか。話しといた方がいいと思うんだけど、どう?」

「あ。その前に……木戸さんがどうしてここに私たちを連れてきたのか、それを聞いてもいいですか?」

 まりえさんから、遠慮がちな質問が出る。

 ああ。なるほど。エレナの男の娘コスの写真を見せたのはあくまでもルイである。

 だから、まりえさんと沙紀さんがエレナの知り合いだというのを木戸は知らないということになっているし、その質問も当然出るわけだ。

「エレナはね、お父様には女装のこととかコスプレのこととか話をしてないの。お父様のほうもなんというかコスプレってサブカルチャーでしょ。接点がないみたいで全然ばれる様子はなくって……」

 ああ、それはきっとゼフィロスの子達も同じだと思うし、社交界の人の目は触れなかったみたいで、と付け加える。まずはここに連れてきた二個目の理由から伝えておく。

「それに、いくら何でも性別変えてるって可能性はまったくもって視野にいれないからね。どっかで見たけど誰だろうっていう風にしか思わないんだよ。よっぽど親しくないと」

「たしかにそうかも……ボクがあの写真見たときに気づいたのだって、自分がこんな格好してるからもしかしたらって感じだったし」

「エレンくんだーって思って見たら、ああたしかにーって感じだったよね」

 すんごい美人さんでびっくりしちゃった、とまりえさんはあの写真を思い出す。 

「でも、それを何で木戸さんが知ってるんです?」

 あれ? とまりえさんが不思議そうな声を上げる。あれはたしか、と。

「ん。それはさ、ほら。あたしが見せた写真だったから、だよ」

 お久しぶり、お二人ともと眼鏡を外して二人ににひっとわざとらしい笑顔を見せる。

「ルイ……さん? えっ? えええー!?」

 二人の目が驚きで見開かれてまん丸になった。本当にまん丸だ。

「黙っててごめんよ。でもこっちもゼフィロスでお仕事を堂々とやっちゃった手前、実は男ですとか言えないじゃん? それこそ写真館とかあいなさんに迷惑かかるし、内緒にしとかないとなーって」

 でも。と話を続ける。

「エレナの正体の露見もできれば避けたいし、二人と友達になりたいならあたしも秘密を明かしましょうってところでね、それで連れてきたの」

 それにはもちろん、餌付けも含めてだけどね、と少しテンションを高めの状態で二人に向き合う。

 冗談までが簡単に出るのはルイとしてのスイッチが入った証拠だ。

「あのとき沙紀ちゃんに、秘密を守るために協力しようと言われたときにさ、ちょっと思ったんだよね。いつかエレナも交えて話をしたいなって。信じてないわけじゃないんだけど、自分のネタと友達のネタとなると対等じゃないし、それなら私も二人に、というか三人に自分の秘密も教えちゃって、お互いの秘密を知った仲になれないかなって」

 ちなみに、あの時写真を請け負った業者の人たちはあたしの性別知りませんから、と一言添えておく。

 いちおうあのとき一緒にいたあいなさんは全部をしった上で起用してくれているので、責任問題になったらあっちにも責任はあると言えるのだけど、別にそこまであいなさんたちに迷惑もかけたくないのでこの対応でいいだろう。

 佐伯さんたちと変な風に揉めるのも嫌だしね。

「一応言っておくけど、秘密がばれちゃったときは何が何でも連絡してってお願いしていたのはボクの方からだから、勝手にここに招待したことは許してあげて? それに沙紀ちゃんの秘密は今日のさっきまで聞いてなかったから」

 まあ、一目見てわかっちゃう自分もどうなのかと思うけどと、エレナは少し苦笑ぎみだ。

「そんなわけで、秘密の共有のために、一つやらなきゃいけないことが、あります」

 はい、おわかりの方は視線をどうぞ、というと三人の視線がまりえちゃんに向かった。

 は? あたし? と彼女はきょとんとする。

「それぞれの秘密を告白し合って結束を高めましょうということなので、まりえさんもなにか、コレ知られたら生きていけないよっていうような秘密を一つどうぞ」

 ないならないで仕方ないんだけどねーと付け加えつつ、答えを待つ。

「むー。むむむ。秘密……そりゃ、秘密がまったくないってことはないけど……」

 三人の秘密に比べると言える秘密なんて……と彼女は尻込みする。

 まあ、そうか。沙紀さんのことは考慮してないにしても、ルイとエレナの話は秘密としてわりと重たい。それに釣り合うとなるとさすがにそうそうないんじゃないだろうか。

「一番無関係で体はってる馨ちゃんのためにもなにかない?」

 エレナからそういわれて、しかたないなぁと遠い目をして彼女は話し始めた。

「ちっちゃいころ、家の花瓶が割れたことあったと思ったけど」

 覚えてる? ほら三人で遊んでた時に、と言われて、エレナと沙紀ちゃんはうんとうなずいた。

 さすがは幼なじみである。

「お屋敷でかくれんぼしてて、そしたらぱりーんって。猫の仕業だって話だったよね。窓からはいったんだろうって」

「覚えてる。メイドさんたちが、坊ちゃん達は危ないから触らないでくださいって怒られて」

 でも、それがなにか? と二人は首をかしげる。

「あれ、猫の仕業じゃなくて、私がその……走り際手をひっかけちゃってその……」

「花瓶くらい誰でも割るんじゃない?」

 結構深刻そうな顔で話しているけれど、陶器やガラスはいつかは割れるものだ。小さい頃に食器を割るなんてわりとどこにでもある光景だろう。

「いやぁ。あの壺600万するからさすがに、ねぇ?」

 エレナに言われてうぐっと息をのんだ。

 そりゃあ口をつぐみたくなる気持ちもわかる。

「いちおう、保険かけてあったから多少は回収できたみたいな話だったけど……さすがにばれちゃ怒られちゃうねそれ」

 だからこそ、その秘密はみんなで大切にしようと納得してもらう。

 実は性別詐称してるより、壺の件の方がグレード高いんじゃないだろうかと庶民のルイとしては思ってしまう。

 それでも、これで内緒話はとりあえず終了だ。

「では、そろそろ、お待ちかねのアップルパイと参りましょー」

 ひゃっほー、とエレナがテンション高めにテーブルの空になったお皿を片付けてから、冷蔵庫に入れておいたパイを取り出した。

「ほ、本当は一人で食べようと思ってたんだからね? みんなに振る舞うのはその……今日が記念日だからなんだからねっ」

「はいはい、お約束お約束」

 といいつつ、ルイとしてお茶の準備をする。割とここにはたっかい茶葉がいっぱいあって、どれにするか悩むのだけれど、選択はエレナにやってもらう。あとはお湯とポットとカップの準備くらいなものだ。

「うわ、きれいなアップルパイ」

「でしょー。お気に入りのお店なんだ。遠くないところにあってありがたいよね」

 うまうまです。とアップルパイの欠片を口にいれてもぐもぐしていると、みなさんもわーと大喜びだ。

「ちなみにまりえちゃん、コレは合コンにあたりますか?」

 異性とテーブルを囲む、どうでしょうか? と聞いてみるとふるふる首を横にふった。

「端から見て、どーみても普通に女の子同士のお茶会でしょこれ」

 その実三人が男子とは……改めてまりえさんは頭を抱える。我らとしては良く見慣れた光景だけれど、沙紀ちゃんだけはその光景が新鮮のようだ。

「い、いちおう、その、僕は……しかたなくやってるだけだよ? この二人と一緒ってわけじゃ、ないよ?」

「おおう。そういやそうだったね。沙紀ちゃんは割と無理矢理だもんね」

「そう言われると、自分から進んでって人にしか会ったことないね。強制女装ってマンガとかだと結構あるけど、実際だと相当なヒエラルキーの差がないと実現不可能なんじゃないかな。ちっちゃい頃に親とか姉とかに女装させられて、みたいなのは実際あるもんだけど」

「お。ルイちゃんの実体験コーナーですな。ボクにもそんなおねーさんが近くにいればもーちょっと早くに世間デビューできたものを」

 くぅーうらやましいとなぜかエレナがうめく。いやいや。確かにあの女装の下地が今の原点だけれども、よかったことかどうかと言われたらそんなことはないよ。

「いちおー、再確認のために言っておくけど、あたしだって別に女の子になりたいから女装してるわけじゃないよ? 全部写真のためだもん。柔らかい写真っていうか、寄り添える写真を撮るにはこっちのほうが絶対にいい」

 今日出た写真だって、男の姿で撮ったらみんな頬をぴくぴくさせて写ったに違いないよと言ってあげると、そりゃそうですがという納得の声がまりえさんからきた。

「えっ。ルイさん写真撮ったの? 今日のってことは学校にカメラ持ち込んで?」

 他方で、あの会議に参加してなかった沙紀ちゃんからは、その写真みたいみたいというオーラがでていた。

「データの持ち出しはできなかったから、学校に置いてある。写真部の人に言えば見せてもらえるだろうけど、まりえさんに話をきいて、それをみたいと思ったーなんて話になっちゃうと、会議室での内容が漏れてるのがばれちゃうから、なにかしら言い訳はないとね」

「それは考えてみます。写真部の部長とは仲がいいし」

 学園祭の時のはすごく好評でしたから、きっと今回もすごいの撮ってるんでしょうと彼はきらきらと目をきらめかせる。

「美しさでいえば、あいなさんに負けると思いますけど、同年代の気安さという点ではわりと評価いただいてます」

「そうだねぇ。うちに来たときもルイちゃん、お仕事してたもんね。あれもみんな嬉しそうで楽しそうな写真だった。まールイちゃんの色香に鼻の下伸ばしてた男子もいたけど」

「古傷だって、アップルパイですぐに回復」

 うん。エレナの学校に行ったときは、女子だ……女子がいると、よーじくんにまで鼻の下を伸ばされましたもの。別に男の人に見られるために着飾ってる訳じゃ無いんだけどな。

「別に男の子にもてるの、傷じゃないと思うんだけどなぁ。ルイちゃんはもーちょっと男の子に見られる喜びをですね」

「それはさすがに無理がありますよ」

 くすんと、つっぷすと、沙紀さんがなでなでと頭をなでてくれた。ここ一年でやりなれているのか、なでかたに慣れが感じられる。

「そーいえば沙紀さんは地毛なの? まりえちゃんと前に鹿起館の話をしてから気になってたんだけど」

「はい。それもあって準備期間をいれて四年は社交界に出られなかったわけです」

 毛が延びるのを待っていたといわれて、むしろこちらが、は、となってしまった。

「ショートとかでも十分だと思うんだけど」

「イメージがあります。お嬢様とはやはりロングな印象です、とうちの祖父が」

 たしかにかわいいよ。似合ってるよ。でも……なぁ。そこまでしなくても十分に女子で通りそうなのだけれど。

「最初話をきいたときは万全を期すためには必要なことだと思っていたんですが……」

 まりえさんが腕を組みながらうーんと目をつむってうなってしまっている。改めて髪の長さを再検討しているのかもしれない。

「ルイさん見てたらウィッグでもかんけーないじゃないって思いました」

 最近のウィッグはすごいですねぇとそのできをしげしげ眺めて目を細める。

 たしかに、今回の潜入で使ったウィッグはルイのときと同様に割といい品である。

「何個かウィッグ持ってるけど、その中でも質がいい方に入るからねぇ。今回はさすがに気を使ったので」

 なんせ女子高だ。髪の毛に詳しい人もいるかもしれないし、その中にはウィッグなのを見破る人もいるかもしれない。

 かといって地毛で、というのもさすがにボーイッシュになりすぎる。

 え。ボーイッシュになりすぎるってだけで済んでしまうのは異常ですか、そうですか。

「一週間も本当に申し訳ないのです」

「あははっ。まあこっちも楽しかったし、よしということで」

 紅茶を軽く鼻先で回しながら、ほんわかしていると、ふと夏の出来事が頭に浮かんだ。

 あのじいさまが、沙紀さんのおじいさまなのだよね。その話もいちおう振っておいた方がいいだろうか。

「そうそう。潜入を指示したおじいさま、なんだけど、実はね、夏の花火の時に別邸を使わせていただいたときに、お会いしてまして」

 がさごそとタブレットを取りだしてその時の写真を表示させる。

 花火を背景に二人の写真を撮ったものだ。

「うわ……ほんとだ。お祖父様とお祖母様だ。毎年離れに行くのは知ってたけどこんなリラックスした表情は最近あんまり見てなかった」

「うわぁ、咲宮のご当主さまといつの間に知り合いになってたの?」

 画面をのぞき込むエレナから、きれいーとうっとりした声を漏らされてしまった。

 いつも撮ってあげているクオリティとそこまで変わらないと思うのだけど、二人で寄り添ってーみたいなのにちょっと憧れみたいなのもあるのかも。なんならよーじくんとのデートに密着してガンガン撮影してもいいのですよ、エレナさんや。

「夏のイベントが終わったあたりで花火いかない? って誘ったじゃない? そのときにね」

 どこかの誰かさんは燃え尽きてて、花火は無理かなーとか言ってたけどね、というとエレナはしょぼんとした。

「うぅ。この光景は見てみたかったなぁ。あ、でもボクが咲宮のご当主さまと会うといろいろまずい」

「うちのお祖父様なら、きっと大喜びだと思いますけれどね。孫にこんなことをやらせるお祖父様ですし」

 しつけのためって言ってるけど、絶対本人楽しんでるでしょうこれ、と沙紀さんは不満そうに唇をきゅっと結んでいる。いや、でもあのお祖父様そんなに男の娘マニアというわけではないと思うよ? ルイさんだって普通に話をしただけだし、別に、なんてかわいいんじゃー! 男の娘はいいのぅ、さいこーじゃのうとか言われてないし。

 まあ、ルイさんの性別を指摘できる玄人なんてそんなにいないのですけどね。

「でも、ま、沙紀さんはあと四ヶ月くらい過ごせばいいのでしょ? それくらいなら割とぱーっと過ぎちゃうんじゃないかな」

「そうでしょうか……今でも二月のイベントとか怖いのですが……」

「あはっ。女子高のバレンタインイベントね。その手の潜入ものでもネタになってたけど、チョコでタワーができちゃうとか」

 頑張って食べないとねーとエレナがからかうように言うと、沙紀はそんな怖いことにはなりませんと、ぷぃとそっぽを向いた。ちょっとはそうなるかもと思っているのかもしれない。

「異性に対しては厳重な我が校ですからね……同性に対してのチョコに関しては大目に見てくれるんです」

 去年の生徒会長のおねーさまは、そりゃあもう紙袋何個ってレベルでもらってたっけなーとまりえさんが遠い目をしていた。

「ホワイトデーとかってどうするの?」

「んー、リスト作って、お返ししてたみたいですよ。……今年はそれを自分でやるかと思うと……」

 まりえさんはリストアップは自分の仕事で当たり前ですというような態度だった。

「だから、それは僕もやるってば。まりえに押しつけるわけにはいかないよ」

「でも、沙紀はその頃受験じゃないの。私はもう推薦取っちゃってるからいいけど、沙紀はちゃんと受験しなきゃでしょ」

「……あの。履歴書とかって女子高卒業って感じになるんでしょうか」

 おそるおそる手を上げて、二人に踏み込んだ質問をしてみた。

 だって、気になるじゃない! 性転換でもしてる人じゃないとそういう履歴書にならないよ。

 ……暁斗さんの話だと、割と女子高出のFTMさんはいるというけどね。

「うちの場合は、もともと行っていた高校の方に出ていた(、、、、)扱いで統合して卒業証書が貰えることになっています。莫大な寄付金と理事がうちの親類だからなせる力業ですが」

 反則っぽいことですが、学院側も内申書はお互いの学校の学力レベルから試算するし、そもそも受験をするにしても、テストがものをいうものしか不可という条件もつけられていますとのことだった。

 AO入試とか、推薦入試とか、そういうのは受けさせませんということだろう。

「……システムを管理する側だと無茶もきく……かぁ。確かに沙紀ちゃんが女子高出なのが記録されてしまうといろいろまずいよねぇ」

「もちろん証書自体は、ゼフィ女のものもいただけますけどね。一人だけ卒業式にでないとか、授与式で別の学校の証書を貰うとか、そんなことはできませんし」

 読み上げたり、渡したりするのが学院長ならそれもできるかもしれないけれど、いくらなんでも現実的ではないし、一年しっかりすごしたのなら愛着みたいなものもあると思う。それならゼフィ女の証書はもらっておいてもいいのかもしれない。

 あ。卒業で思い出したけど、あの件、話しておかなきゃ。

「卒業したら、メールアドレスの交換をしよう? ラインはタブレットでできなくはないけど……ガラケーなんで」

「どうして卒業後? 今でもいいじゃない」

 沙紀ちゃん達とは、今後もそれなりに交流を続けたい。そういうのもあって持ちかけた話だった。

 けれども、エレナさんから不思議そうな声があがる。

 むしろ後とは言わず、今交換しちゃおうよという感じだ。

 ま、エレナと沙紀さんたちのパイプ自体は家同士であるのだろうし、幼なじみだからエレナが交換するのはありなのだろうけど、ルイさんはさすがにそうはいかない。

「ゼフィロスは異性交遊禁止なの。そこに男子のアドレスがあったらまずいですってば。まあメールのやりとりでうちらが男子だと思われることはまずないだろうけれどね?」

 そういうこと考えると、実は女子名で登録してあって、メールの内容は全力で女の子なんだけど、実は彼氏とかっていうこともあるかもしれないね? と二人に伝えてみる。

 正直メールだけならいくらでも偽装は簡単だ。リアルで女装して完全に隠し通すのは無理でも、ネカマとよばれる人たちだってさんざんいるのだし、口調を変えるくらいはわけはないんじゃないだろうか。

「お二人とも、普段からそんな感じのメールのやりとりなのですか?」

「いちおー、ほら、まりえちゃんは、あたしの男子バージョンも見てるじゃん? だからわかると思うんだけど、男子の時は男子の時って感じだよ。エレナはもーそっち九割って感じだけど」

 お父様の前でも割とふわっとした感じだと言われて、最低限男らしくしようと思ってるんだけどね、といいつつ最近演技が面倒くさいと彼女は嘆いた。

 さっさとカミングアウトしてしまえばいいのにと思うのだけど、とりあえず基盤を固めるまでは無理と前に言われたことがある。木戸家は放任主義で羨ましいよ! ともね。

「エレナさんとならすぐにアドレス交換してもとがめられないかもしれませんね。ただ木戸さんとは少し時間をおいた方がいいかもしれません」

 それで男性的なメールって想像もつきませんが、とまりえさんに肩をすくめられてしまった。

 食事会の時はソフトな語り口をしていたけれど、これでもメールの文面は男性的、なはず、だよ。

 そりゃルイ宛に来てるメールには全力で女子な語り口調になるけれどさ。

「それじゃ、卒業式が終わって落ち着いたらうちで改めて卒業パーティーやろっか。一年間お疲れ様ってことで」

「うわっ、それは楽しみです。あまりそういう意味を含めて祝ってくれる人が少ないので」

「その時改めて、苦労話とかいーっぱいきかせてもらうからね! なんなら泊まり込みでもいいからね!」

 エレナが食い気味で沙紀ちゃんの両手を取ってぶんぶか振っていた。

 ……あの。エレナさん。男の娘潜入ものも好きだからって、さすがにそのわくわくが隠せないモードははしたないかと思います。

「ええと……泊まりとなると、寝具はどうなるのでしょう?」

 まりえさんがおそるおそるそんな質問をした。聞かない方が良いのにね。そんな決まり切った話。

「女子高の話を聞くのだから、ネグリジェパーティーじゃないかな? ルイちゃんも当然くるでしょ?」

「当然参加はするけど、普通のパジャマがいいです。エレナみたいに似合うならいいんだけど、さすがにあれだけ可愛いのは勇気がいります」

「えー、似合うのにー」

 ぷぅーと膨れられてはしまったものの、生活水準というか、生活スタイルが違うので普通にパジャマパーティーにしてください。

「あ、でもまりえさんとかはネグリジェ派ですか?」

「うえ……あ。いちおう家ではそうですが……」

 ああ、目の前のやりとりに、ちょっと頭の中がおかしくなりそうでしたと、まりえさんは頭を押さえているようだった。

「じゃー、日程は後日打ち合わせと言うことでー。パジャマパーティーを開催しまっす! いーっぱい思い出話を聞かせてね」

 それと、そこでちゃんと話せるようにあと四ヶ月は波瀾万丈な学園生活をお過ごしください!

 全力で笑顔を浮かべているエレナさんはとてもつやつやしていた。

 そんなに大好きならエレナさんが女装潜入すればいいのに、と思ったけれど実際にこの子ならやりかねないから、苦笑いだけ浮かべて、そのつっこみはしないでおいた。

 実際にやられてしまったら、三枝家として大スキャンダルになってしまう。

 けれど、自分にやれてエレナに出来ないわけもないか、とも思うので、やっぱり言わないで正解なのだと思うことにした。

 女子高潜入はなにかと楽しんではしまったけれど、危険が危ない行為なのである。

反省会後半は、秘密を守るための儀式と、女子会ということで。

エレナさんがつやっつやしてて、とても可愛かったです。

男の娘が、女装潜入ってだけで、その手のものが大好きな人からすればもう、なにっ、なんなのっ、て大興奮です。

そしてアップルパイ登場。幸せの味です。紅茶と一緒にどうぞです。

パジャマパーティーフラグも立ったし、この二人はエレンさん二十歳の誕生日にも参加していただくので、きっちりとレギュラー予定です。その時沙紀さんは男装ですが、髪は長いままです。お約束ですね!


さて。次話ですが、一週間休んでいたので大学に行きます。

ディベートの授業です。一年生ですしね、この手のはきちんと学んで置いた方がいいかと。(作者はとったことないですけどね!)

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