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203.夏イベント三日目2

遅くなってすみません。推敲中に寝落ちてしまいました。

「ふぅ」

 つい、時間も忘れて味わってしまった。

 今回でてきたのは、シフォレでいつも頼む感じのものとはちょっと毛色が違う。

 シフォレは生地が違うといっていたのは、お菓子王子なわけですが、今回のデザートはムースでした。

 うん。皮というより泡。

 口の中にいれると、しゅわっと溶けてスイカの味が広がるのには、ちょ、まって。まってそれ、と普段食べ慣れない感じにちょっとときめいた。

 音泉ちゃんが、巧巳さんはすごいですっ、なんて前のめりでいう気持ちがわかる味だ。

「あんたも、あいつの味に負けた口か……表情緩みっぱなしだな」

「あ、えと。その。そうではなくって。貴方がこのお店のかたなのですか?」

「ま、こんな臨時スペースだけどね」

 それでも東京出店でありますと彼は誇らしげに胸をはった。茶髪のにーちゃんは巧巳くんのいうところの先輩なのだろう。

 そんな風に彼がいうのは、ここがきちんとした定位置の店ではないからだ。

 屋台、とまではいわない。

 イベントブースみたいな感じだろうか。店舗スペースは最後の一手間をかけるだけで開店できるような軽微な装備だし、販売するブースも中で作るというよりは作ってきたものを持ち込んでドリンクだけ中で用意するスタイル。客席はそれこそフードコートというくらいの簡素さだ。

「それで、今回いただいたこれ、周りの方があまり頼んでないみたいなんですが」

 じぃと周りに視線を向けつつ、同じものが並んでいないことに実は先程気づいた。今回のこれはムースだったけど、他の人はスポンジケーキだったりいろいろなのだ。

「メニューにのってんのはいちおー俺のもんなんだわ。で、お嬢さんのは巧巳のやつってわけで」

 それで、どういう関係なんすか。彼女いるって聞いてたけど、そうなんすか、とこそこそ彼はこちらに近寄ってひそひそしている。

「知り合いって言うか、出会って二日ですね。さきほど巧巳くんとばったり再会したんで、是非食べていってって引っ張られたんです」

「あいつ、それ、気に入った相手にしか出さないんですけどね」

 基本、俺の店なんで、あいつがこれはって相手にしか出さないんすよ、という姿は苦笑混じりだ。なるほど、販売の手伝いをする代わりに試食をしてもらおうというスタンスなのか。

 もしかしたらターゲットの年齢層とかで、反応とかを見ているのかもしれない。

「うえ、じゃあ、これ写真とってネットに上げるとか駄目な感じですか?」

「……うちの店の名前出さなきゃいいっすよ。ったく、巧巳のやろー密かにこんなかわいい子まで勧誘してるとか……彼女居るくせに、くそっ」

「あははっ。それはただたんにお客としてデスって。彼女さんの方ともこの前会いましたが、あちらともお友達になれそうです」

 ここでせっかくだから聞いておこう。世のもてない、彼女できない男性の考えってどんなもんなのだろうか。

「ちなみに、巧巳くんの彼女が実は男で、ってなったらどう思います?」

「へ? え? って、冗談のたぐい……って、ああ、そういやクラスメイトがどうの言ってたこともあったか……」

 え。

 ちょっとカマをかけてみたのだけど、なんか変な反応が来たのですが。

「なんか同じクラスにめっちゃくちゃかわいい男子がいるっていう噂でな。いまいち可愛い男ってのが俺にはピンとこないんだが」

 へぇ。同じクラスで、アルバイト先と使い分けてて巧巳くんはそれを知らない、と。

 ふふーん。面白そうな関係だ。

 次回会ったときにそこらへんをルイおねーさんが聞き出してあげよう。

 というか、にーさん。あなたの目の前にいるのがその、可愛い男の子ってやつなのですけれど。まあ言ってもせんないことですが。

「ちなみにうちの店の物はどうでしょう? オーダーをお待ちしていますけど」

「うっ。全力で金欠ではあるのですが……都会のスイーツ高いですし。でも、ここで頼まないのもなんか悪いので、一番安い物を是非っ」

「うっ、なんかすっげぇ悲しい。うちこれでもかなりリーズナブルなはずなのに」

 くっ、となぜか彼は拳を握りしめながら、敗北感を味わっているらしい。で、でもルイさんの金銭感覚は都会では通用しないのでありますよ。

「んじゃ、うちで一番安いっていったらシュークリームってことで」

 では、いただいておきますと言うと彼はいったん店舗のほうに戻っていった。

 くぁ、巧巳ばっかり美人侍らせやがってくそーという声が漏れたのだがとりあえずは聞かなかったことにしてシュークリームをいただいた。時間もないので心持ち急ぎ足である。




「おつかれさまでっす」

 ぎりぎり交代の時間に間に合った。現在一時。

 少し息が切れているのは走ったからだ。曇天なのに暑いからしっかり汗は流れてるけど、男子の姿だから別にこういうのもいいだろう。ルイとしてならすごく気を付けるけど、もっさりしたこっちなら誰も視線なんて向けてこない。

「なかなかに木戸くんもこのイベントを楽しんでいるようだね」

 でゅふふと長谷川先生ばりの笑いを披露してくれているのは桐葉会長だ。ブース管理でつかれているのか、それとも別の理由なのかはわからない。

「さぁ、はよ。店番かわるです。サッサトスルデス」

 どうしてカタコト。

「って他の二人はどうしたんすか」

「鍋っちも朝日くんも二人とも男の子の日を満喫中よ。ったくおおめに見るとは言ったけどさすがにこれだけ放置プレイはひどいんじゃないかな」

 鍋島さん、男の子の日なのにいろいろまわりまわってるのか。もしかしたらコスプレ広場で撮られまくっているのかもしれない。

「いいんですよーだ、どーせ椅子は二個しかないのだし、人数いてもあんまりどうでもいいしー」

 ぷんすかと一人、会場での行動を制限されている桐葉会長は子供っぽくすねた声をもらした。成人を過ぎてる娘さんとは思えないので、思わず一枚撮らせていただく。もちろん木戸用の高性能なカメラのほうで、である。

「はいはい。行きたいところがあるなら行ってきていいっすよ。そろそろ奈留先輩も、あ、花涌さんも来たみたいですよ」

 見たいものがあるならいってらっしゃいというと、彼女は鬼気迫る表情で、じゃ、いってくるですとどこかに向かっていった。あ、あの方向はトイレやん。

「おつー。木戸くんどうー楽しめてる?」

「楽しむもなにも俺、さっき来たばっかりっすよ」

 うん。木戸馨としてはね。嘘じゃないよ。

「なっ。せっかくのお祭りなのに朝から並ばないとかっ。そもそも昨日と一昨日は!? 来てないとか信じられない」

 奈留先輩が前のめりで、木戸の両肩をつかんでぶんぶか身体を揺すった。

 確かに、昨日と一昨日は来てないですけれどね。でもこれだけ広くて人がいないところで、来てないって断定してしまう彼女はどうなんだろうか。

「木戸くんなら、朝からコスプレスペースではぁはぁしながら撮りまくりだと思ったんだけどなぁ」

 花涌さんはすでにけっこう撮って来てるのか、カメラの背面パネルを見ながらにまにましている。なんだかんだでこの子も相当こっち側に馴染んできたと思う。

「志鶴先輩は?」

 残りの一人であるコスプレ要員の彼の姿が見えないので二人に尋ねる。午後の当番は木戸と目の前の二人と志鶴先輩で、コスプレ要員の奈留先輩達は半分自由で、ブースにいても良いしコスプレブースで宣伝してもいいことになっている。

「ここにいないってことは、コスプレスペースの方だね。ルイさん帰っちゃったけど、錯乱さんたちはいるに違いないとかいってうろうろしてるみたい」

「あー、さくらは今日はきてんじゃないかな。三日間張り付くって話みたいだし」

「へぇ、木戸くんったら、錯乱さんのことを呼び捨てですか」

 ふーんと、奈留先輩ににまぁとした笑顔を向けられても動じたりはしない。

「あいつとは一応高校の頃の縁がありますからね。写真部の勧誘はほんとひどかったし」

 ひたすら後を追いかけられたあの日々を思い出して苦笑が浮かぶ。結果的にルイとしてさくらとは撮影をするようにはなったけれど、ひたすら部には入れないと断り続ける日々は今だと懐かしく思える。

「そんなつながりがあったか……これは是非とも錯乱さんと懇意になるチャンス」

 ふふふと、奈留先輩が不敵な笑みを浮かべる。

 ううん。さくらもなんだかんだでコスプレしてる人には人気になってしまったよね。少ない専門の女子カメコさんという条件で言えばあいつだって、それに入るわけだから当然と言えば当然なのだけど。

「で。椅子なんですが、二人ともどうぞ。レディーファーストということで使って下さい。俺は後ろで立ってるんで」

「ああ、花ちゃんと木戸くんで使いなさいな。私は立っていた方が客引きとしてはいいだろうし」

 ひとり、お嬢様風のコスプレをしている奈留先輩はさぁどうぞどうぞと年下にパイプイスを譲ってくれた。

 なんかいいのかなと思いつつ、宣伝にはその方がいいという言い分は間違いではないので言われるとおりにしておく。

「それで、売り上げの方はどんな感じ?」

 パイプイスに座る二人の肩をぽんとつかみながら、どうですかなーと前屈みになる奈留先輩の胸が横目に見えた。

 まあ、普通である。でも今日は香水かなにかを使っているのかいい感じの香りがふわりと感じられた。

 こういうのに男子はやられてしまうものなのだろうか。いまいちわからないが。

「15部ってところですかね。弱小サークルとしてはまずまずかと」

 用意してきた100部はまだ売れ残っていて、半分を過ぎるかどうかというところでこれは、完売は厳しそうな感じだ。でも正直な話、エレナのコスROMが規格外なだけで、個人で出してるコスROMだって似たり寄ったりだ。

 被写体のネームバリュー。この会場ではこっちの威力の方が大きい。

 こちらとしてはどんな被写体であれ、写真の出来で虜にできるようにしてみたいものだけど、今の所それは無理な相談なのだった。

「あう。思ったより売れてない」

 花涌さんがちょっとしょんぼりしている。まあね、そりゃ頑張ったもんね。

「ということはーこのわたくしが、すちゃりと売り場に立って目立つしかないですな」

「そうですね、お嬢様。そのドレス目立つし客引きを是非お願いシマス」

 いちおうサンプルとしてA4で刷った写真を展示していたりもするのだけど、現物がいてくれた方がインパクトとしてはいいだろう。

「特撮研は有能な新人がいていいなぁ」

 同じく人があまりこないお隣さんからそんなぼやきが漏れた。

 お隣にいたのは。青葉の会のねーさんではないですか

 二年ぶりとなるわけだけど、まだ大学を卒業してなかったんか、この人。

「青葉のほうは、今年は新人さんいないんですか?」

 奈留先輩とは知り合いのようで、自然と会話が繋がっていく。

「残念ながら。いちおー会員は増えたけど、ごらんのように店番してくれる後輩はいないんだよねぇ」

 四年になったのに店番とか、せつなすというわりに表情は穏やかなのだからこの人も、販売自体は好きなのだろう。にこにこしながらお客さんが見本を手に取っているところに、どうぞーと声をかけている。

「それで、花涌さんは良い写真撮れた?」

「あ、うん。見る?」

 とりあえずお客も来ないので、彼女の成果を見せてもらうことにした。

 いろいろと教え込んでいるけれど、時々初心者ならではの、おっという写真を撮ってくるので、実は楽しみなのだ。

 カメラの背面パネルに表示されたものを見ながら、いろんなキャラを撮って来たなーとにまにましてしまう。ちなみに彼女はタブレットを持ってないので小さい画面での確認になるのだけれどしかたない。

「イベントデビューとは思えない出来、かな。結構遠慮無しに撮ってるよね」

「そりゃ、ほら、木戸君がぐいぐいいっちゃえっていうから、その……」

「さすがはまっさらなだけあって、吸収も抜群ですな」

 最後まで見終わって、ありがとうとカメラを返す。割と積極的に撮影をできているようだ。

 もちろん、本人の狙い通りに撮れてるかといわれたら、悩ましいところではあるかもしれないけど、あとは回数のような気がする。

「木戸くんは撮りにいかなくていいの?」

 店番はうちらだけでもいいよーと奈留先輩が言ってくれるものの首を軽く振っておく。

 なんの因果か特撮研に入ってしまった物の、木戸馨としてはあまりコスプレの写真メインではなく、風景とかのほうにいきたいのである。ルイとの差別化というのももちろんあるのだけど、男子カメコの前の女の子達っていうのがどうにも、こうあまりピンとこないのである。

 あきらかにルイとして撮影したときの方がカメラの性能の違いがあったとしても良い顔に写る。

「とりあえずは……あ、いらっしゃいませー。いかがですか。サンプル写真集だけでも」

 そんな話をしていたら、こちらにお客さんが来たのでコンビニバイトで培った対人スキルを発揮する。

 我らが特撮研のレイアウトは比較的に単純だ。DVDを二十枚分程度ならべて、3キャラほどA4で印刷した写真を張り出しているのとその脇にPOPとしてどんなキャラなのかの紹介をしてある。

 そして二冊ほどアルバムのようにしておいてあるのは、データの中にこんなの入ってますという見本誌だった。

 パソコンやタブレットで流しているところもあるけれど、うちにはそんな機材はないのでアナログである。

「へぇ……ほほう。良い感じな再現度。でもちょっとムラがある……かな」

 はい、存じております。その通りでございますとも。

 撮影班は現在四人。桐葉会長はモデルもやる人だけれど今回は撮影側に回った。モデルが三人確保できたというのが大きくて、現場指揮とあわせてこちら側なのだった。

 さて。そんな四人で撮影をしたのだけど、腕の差とか経験の差はもちろんあるわけで。

 これでもそうとうみんなを鼓舞して、引っ張った。でももちろん一日二日で劇的に上手くなるかといえばそんなことはないわけで。

 おそらく一番伸びたのは花涌さんだけど、彼女の場合はほとんど初心者からのスタートだったからそう見えるだけであって、やっぱり一番ムラがでてしまうし、まだまだな感じなのだ。

 先輩方二人は悪くないとは思うけど、ちょっと冒険にかけるというかもっとガンガン撮っていただきたい。

 ちなみに撮影担当に関してはそれぞれ割り振り制となっていて、六キャラのうち先輩方で四キャラ、そして一年はそれぞれ一キャラずつ担当ということになっていた。

 おまえのことだ、全部自分で撮りたかったんだろうとかなんとか言われそうだけれど、こっちとしては自動車の教習やエレナのコスROMの構想だったりとかいろいろ忙しかったので、一キャラだけを任せてくれるというのはそれはそれでという感じだ。鍋島さんの片方のキャラを担当させていただいた。

 一年生同士で、というような配慮なのかはしらないけれど、だいたい同学年のグループで被写体と撮影者が組む感じになったのだった。

「リルたんは文句なしに可愛いし、これ、決めポーズだよね。うわっ、ですぞポーズだっ」

 はぁはぁと写真をめくりながら解説してくれている彼が見ているのは鍋島さんの姿、つまり木戸が撮影したそれである。再現度に関してはもう、エレナとのやりとりでノウハウがあるから、そこら辺で一つ飛び出てる自負はある。

 決めポーズもばっちり原作を読みあさったし、アニメも静止画にしてチェックしたりもしている。

 鍋島さんからは、ポージングの指示がひどいとさんざん嘆かれたけど、これくらいのことでへこたれないでいただきたい。

「ぐっ。800円か……ちょっと考えさせてもらいます」

「ありがとうございます。是非よろしくお願いします」

 残念ながら購入までには至らなかった。すごく悩んでくれたみたいだけれど。エレナなんかは悩むならここでは買うべきだよっ、とかいうわけなんだけど、あれは金銭感覚がおかしい人だから基準にしてはいけないのだろう。

「うぅ、完璧な接客。これもしかして、私いらない?」

 花涌さんがそのやりとりに目を丸くしながら、なにこれと肩を落としていた。

「店番は慣れてるからやれるけど、おおむねトイレに行くときとかは二人いるのがベストだし、奈留先輩は看板娘ってことで、ね」

 必要であります、といいつつ、もう一つ付け加えておく。

「じゃあ、次の人が来たら花涌さん対応お願い」

 こういうのもやっぱり場数である。どれだけ話をしたのかというのでどんどんと慣れていくことができる。

「わ、わかった。やってみるね」

「うぅ、ほほえましい……うちも新人が欲しい……」

 そんなこちらのやりとりを見ていたのか、お隣の青葉の会のおねーさんが羨ましそうにつぶやいた。

「二人ともほんとうちの期待の新人なんですよー。師匠と弟子みたいな感じになっちゃってますけど。ってか木戸くんのイベントスキルが高すぎるせいってのもありますが」

 どこでこれだけ磨き上げてきたんですかねぇーと、意味ありげな視線を向けられてもこちらとしてはなんもいえない。

「そだ、イベントスキルというと、さっきルイさんとばったりお会いしたんです。なんかキラキラしててすっごいオーラがあるっていうか、はわーってなっちゃった」

「いや、オーラはさすがに先入観のせいじゃね? キラキラは日焼け止めのせいだしあんまり幻想いだくのも」

「もう、木戸くんは会ったことがないから、そんな適当なことを言えるのよ。この人があの写真撮ったのかなんて思ったらもう、テンションあがっちゃってまずかった」

「へ、へぇ。じゃあ今日ばったり会うようなことがあったら、しっかり観察させてもらおうかな」

 身を乗り出して語り出す花涌さんに少し引いた。というか自分の話を自分の目の前で、そうと知られないで話されるという展開はよくあるわけだけど、田辺さんの二の舞にならないようにだけ注意しておきたい。

「残念ながら、今日は用事があるとかでもう帰っちゃった。まったくもったいないことしたなぁ。っていうかルイさん目撃情報のツイートとかさっき初めて知ったよもう。これ知ってたら昨日とか一昨日とかに会いに行ってたのに」

「緊張で会えませんとか、きっと話せなくなっちゃうとか、いってなかったっけ、前」

「それはそれ。もう最初のご挨拶は済ませたから、次は大丈夫」

 ちょっとでいいから、撮影のこつみたいなのを教えて貰えると嬉しいなぁと彼女は朗らかに笑っていた。

 ほほう。ミーハーな気分というよりは、技術向上のためでしたか。

「でも、ルイちゃんに教わるなら、木戸くんでもいいんじゃないかな?」

 一人後ろで立って静かにこちらの成り行きを見守っていた奈留先輩が声をかけてきた。

 なぜか満面の笑顔を浮かべていたりするのだけれど、きっと営業用のスマイルというやつだろう。そう思っておくことにする。

「うーん。たしかに今回のでいろいろ教わったし、ルイさんに師事する前は木戸くん()いいか……」

 最低限できてないと、忙しいルイさんに申し訳ないし、と彼女は続ける。

 正直、ルイさんは忙しいのですが、それでも花涌さんが教わりたいというなら、時々ならいいよと答えてあげるのですが。

「あ、いら、いらっしゃいませ」

 そんなやりとりをしていたら、ふっと影がさした。お客さんの登場である。

 ちなみに、いらっしゃいませと言っているところは他にはないのだけど、どうもさきほどの対応を真似したようで、彼女もたどたどしくおでむかえの言葉をつげる。

 それからなんとか一人で対応をして、なんと、見事にお買い上げまでこぎつけてしまった。

 なんかしらないけど、これからも頑張って下さい! とかなんとか言っていく姿に、少しだけしょぼんとしてしまう。

 ええと。もさい男より、そりゃ女の子に対応してもらった方がいいってのはわかりますけれどね……

「あ、さっきのお客さん帰ってきたみたい」

 お客がいるときはそちらを優先。切り替えていかないと。

 よっし、がんばってお仕事をしましょう。

 外出してたので遅くなりました。銀杏並木とか見てきました。ギンナンの香りはあじわえなんだ……

 さて。三日目二話。

 店番をする木戸くんと仲間達という感じです。弱小サークルってだいたいこんな感じが普通で、エレナさんが異常なのです。三話目は打ち上げ予定です。

 あんまり絡まなかった特撮研メンバーとも交流をしないと。

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