表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
170/794

162.新入生懇親会3

気がついたら朝でした!10.2更新分です。いちおう3日分も更新予定です。

「この状況をどうすればいいのかと」

「……んあ、むにゅ……」

 現在午前三時半。目の前に男がいる。

 まあ、宴会をやっていたわけで?

 朝までの無茶ぶりな会なわけで。若さってのはそんなもんだよとか、そういうのを言われるわけだが。

 クラスメイトが膝の上で寝てるっていうのは、さすがにどうかと思うわけだ。

 うとうとしてたのは知ってた。寝るなら壁際か、全力で寝るかしろよとすすめてはみた。

 実際、現場は死屍累々だったし、壁を背もたれに寝てる女子とか、おおぅふと、そのまま地面とオトモダチという人達もいる。

 でも、こともあろうにこいつは限界まで喋ったあとで、木戸の身体にもたれかかるようにすると、肩に頭を寄せたと思ったらそのままずるっと膝の上へ。

 これで相手が八瀬や青木なら全力で頭をはたくところだけれど、さすがに赤城ではそれもできようはずもない。

 別に年上とかは気にしないでくれよと言われてるし、そこで遠慮はしないけれど、別に意図的にこうなってるわけではないというのはわかるだけに、無理に引きはがせないのだ。

 異性であるなら、全力で引きはがせるのだが。

 というか、これで引きはがしたら自意識過剰な人みたいになってしまうではないか。

「これが、びぃーえる、と言われるものなのねっ」

 ふふっと声がかかりつつ、かしゃりと一枚。むぅ。まぶしい。

 写真を撮ってきた相手もやはり一年生だろうか。エントリーモデルのカメラではあるもののいちおうは一眼という装備はしている子なのだが、思い切りフラッシュが焚かれたところをみると初心者なのだろうか。それともばっちり光を使いこなせる玄人なのか。どちらなのかはちょっとよくわからない。

「なっ。さすがにこの写真を撮るのは、なしなのでは?」

 むぅと、出来たであろう絵面を想像して、膨れておく。

 こんなものが出回ったらまた、男色がどうのという話になってしまう。

「うそうそ。一応撮ったけど個人所有でありますって」

 ああ、私は花涌杏美はなわきあずみ。と彼女は改めて自己紹介をしてくれた。

「そうしてくれるとありがたいんだけど。くっ。そんなことを言うならさっき寝顔を撮っておくんだった……」

 一応悩んだのは悩んだんだけどねというと、寝顔は恥ずかしいなぁと小柄な彼女は苦笑を浮かべていた。

 実際は、姐さんに守られていた彼女には手出しできようはずもなかったわけなのだが。カメラを構えてこそこそ移動するとぎんと睨まれたのだ。こいつなら撮りかねないとか思われてたんだろうか。

 ちなみに今の懇親会の状態はといえば、お膝元ですーすー寝息を立ててるやつを見てもわかるように、さっきまで騒いでた連中は力尽きて寝ているのが多い。中には眠そうにしながらも話をしているのもいるけれど、どちらかといえばしっかり仮眠をとった木戸とか、女子グループのほうが元気な様子だ。杏美さんもそのうちの一人でだいぶすっきりしているようだった。

 もちろん姐さんはすーすー夢の中だ。さっきまでの険しい顔は無くて本当にかわいらしい顔をしているけれど、さすがに異性である自分(、、、、、、、)に撮られて嬉しいかはわからない。

 ここでルイとして参加してるなら遠慮なんか毛の先ほどもしないのだが。

「木戸くんもなんかさっきカメラいじってたみたいだけど、どんなの使ってるの? ちょっと興味があるんだけど」

「あー、見せてもいいのはいいんだけど、この状況じゃ身動きが……」

 これ、どうすりゃいいんだろう? と赤城の頭をぽふぽふ軽くなでながら言うと、ああ、と彼女は納得したようで、ちょっとまっててと近場から座布団を取り出して二つに折った。

「首を持ち上げるから、そのすきに身体動かしてこれを突っ込みましょう」

 いけるいけると、言うとおりするっとスライドするように赤城の頭は座布団の上に収まった。

 いろいろいじっているけれど、赤城が起きる様子はまったくなかった。熟睡状態である。

 これで狸寝入りだったらマジ殴りしているところだ。

「さて、それじゃ、カメラカメラっ」

「はいはい。今日は見せちゃまずいの入ってないし」

 特に問題はないだろうという判断で、彼女にカメラを見せる。

 彼女はおぉっとちょっと目を見開きながらそれを見た。

「かなり新しい……ってことは木戸くんも割と初心者?」

 ん? とほぼ新品状態のカメラを見て、彼女からはそんな反応が来た。ううむ。も、というからには彼女自身カメラを始めたばかりの人ということだろうか。

「いんや。こいつはこの前買い足したやつだから、写真歴自体は三年くらいあるよ。一台目の反省とかを踏まえて選んだからそうとう俺ごのみの設定ができる一品であります」

 いちおう中級機って位置づけのですというと、ほほーと彼女はまずカメラの外観を眺めているようだった。

「では、失礼をして」

 電源ボタンをいれると背面パネルに画像が写る。あまり大きくはないけれど、それでもまあまあ十分だろう。

 今日そのカメラに入っている写真は、この会の間のものと、始まる前のものだった。早めに赤城に集合時間の前に連絡を寄越すように伝えていたのだけれど、うっかりそれがなかったらすっぽかすくらいには熱中して撮影できたのである。

 学校も人工物に入るけれど、大学の場合は自然のバランスもいいので、撮影スポットとしてはわりと面白い風景が撮れる。

「おぉ。これは……小さいっ」

「そりゃ背面パネルだしな。なんならタブレットもあるしそっちに移してからみてもいいけど」

 さんせーといわれたので初心者の相手をするはめになってしまった。

 リーダーをさしてタブレットへ移動準備をする。基本風景の写真はRAWで撮るようにしているので彼女のスマホには転送は無理だろう。ちなみに人の撮影をするときはjpegにするのが木戸スタイルである。

「じゃあ、私のスマホにもカモンです」

「えと、それ、jpegしかよめないよね?」

「は? じぇいぽっぷ?」

 だめだこいつ。早く何とかしないと。

 けれど、説明する気にはならず、さっと自分のタブレットのほうにデータを移動させた。

 もちろん木戸仕様のほうなので、余計なものがでてくることもない。

「おぉ、このサイズになるとなかなかいいじゃないっすか」

 木戸仕様のほうのタブレットに釘付けになりながら彼女は、おおぉっと興奮気味にページをめくってくれていた。

 こういうのはちょっと嬉しい。友達と一緒にできた写真をめくるのもいいけど、あんまりこっちの世界に入りたての子に評価されるのは少ない経験なのでなんだかむずがゆい。

「こんなに撮れるんなら、木戸くん私と一緒にサークル入らない?」

「うーん。花涌さんのところがどんなところか次第かな」

 さて。今までがあまりにも学校生活をないがしろにしてしまった自覚はあるので、なんらかのサークル活動はしてもいいのかななんていうのは考えていた。毎日集まる熱血系だと困るのだけど、ほどほどに交流がとれると楽しいかもしれない。

 高校の頃は即却下だったけれど、これでも育っているのだ。それにわいわいやりながら撮影するのも楽しいことは十分に知っている。

「うちは……先輩から紹介されただけなんであれなんだけど。うちの大学はなんこか撮影系のサークルがあるんだってさ。その中の一つがおすすめだって話で」

「あんまりわかってない感じかな。まあ四月中は獲得祭みたいな感じだっていうし、一回見に行ってもいいかな」

「やったー! できる子はきっといろいろと、もてはやされるのだろうなぁ」

 あたしみたいな初心者は肩身がせまいよーと、いう彼女はこれからいろいろとやる気まんまんなのだろう。

 こういう子は将来どうなるのか楽しみだ。写真部の後輩もそうだけれど、やりたいってこが集まるのはいい。

「いやいや、俺なんて趣味でやってるだけだしさ。あんまり束縛辛くないところだったら良いなって感じ」

 バイトもあるんですしと、伝えるとそうだよねーと、彼女から相づちがきた。

「昔は大学はテーマパークだ! なんて揶揄されてたけど、どこもかしこも親の金で大学はいってぶらぶらできるわけではないと思うんだよねー。てかうちがそのパターン」

「お。杏美さん苦労人系かー」

「名前呼びになったってことは、木戸君もわりとそっち系なの?」

 にははと、彼女は明け方の妙なテンションで笑った。小さい身体を震わせてのそのすがたに思わずぱちりと写真を撮ってしまった。これを撮るなというほうが酷である。

「うちは、自分がしたいことは自分の金でしろ、大学費用はいちおう出すんで、って感じ」

 苦学生というには全然まったくですというと、そりゃそうだねぇと相づちが来た。

「あたしも費用はある程度親が出してくれるから、奨学金の子とかもいるし、そこらへんに比べると恵まれてはいるのかなぁ」

 周りがわりと豪遊系が多いもので、勘違いしないようにしないとねと彼女は自分を戒める。

「まあ、ともかくよかったら今度の勧誘会でそのサークルみにいこ?」

 さぁ連絡先をよこすです、という彼女はスマートフォンをじゃきんと取り出した。

「おっけ。っていっても、その日はある程度勧誘会全体の撮影もしたいから適当に呼び出してくれた方がいいかも」

「おおぅ。イベント撮影とかやっちゃうだなんて木戸くん本格的だなぁ」

「高校時代からの癖みたいなものかなぁ。それにせっかくその場にいるなら撮らなきゃもったいない」

 せっかくこいつも手に入れたのだしと、黒くて大きいこいつを軽くなでる。

 石倉さんにアドバイスしてもらって中級機を手にしてるわけだけれど、たしかにこいつにしたことで綺麗さなんかも格段によくなったと思う。被写体選びの発想はルイをしているときのほうが浮かぶけれど、あいかわらずあっちでは前のカメラのほうだ。

「そこまでどっぷりな人と一緒ってのもちょっと引いてしまうかもだけど……まあよろしくです」

 ぴろんと赤外線での個人情報が送られてくる。それを木戸側の友達リストに入れておく。そしてこちらからもメールを送っておいた。

 大学に入るに当たって、ルイ用と馨用で携帯の番号を二つ持つようにした。

 さすがに二台持ちはできないけれど、ルイとしての知り合いと馨としての知り合いがごっちゃになると困るということでの大英断というやつだ。もともとの携帯の電話番号とメールアドレスをもう一個ずつ追加できるサービスで追加料金はかかるけれど、電話がかかってきた瞬間にルイ声で対応するかどうかというのが判断しやすいのである。

 というか、いままでルイとしての活動は基本メールでということが多かったけれど、これからは自由度が増すので電話番号も公開していきたいよねなんて話になって、ならこういうのはどう? とエレナにすすめられて契約してみたのだった。もちろん仲がいい相手とはテレビ電話の方が頻度は多い。

「ま、これでも教えるのはそこそこ上手いという評判はいただいているので、サークルがいまいちでもいろいろ教えてあげます」

 その評価はルイとして後輩たちから受けているのだけど、それはもちろん内緒だ。

「えええ。いまからいまいち宣言ってのもちょっと。とりあえず良いところさがそうよ」

「そりゃもちろん」

 できればいい出会いをしたいものだと思いつつ、最後に残った枝豆をかじった。お開きまでに杏美どのとのカメラ談義になったのだが、さくらと話すのと着眼点がかなり違うのもあってなかなかに新鮮な時間だった。

 やっぱり自分はカメラ関係での話題のほうが楽しく過ごせるなぁと思いつつ、それでも男同士の友情も大切にせねばと改めて赤城の寝顔をみながら思った。


懇親会は今回で終了。あずにゃん登場です。大学ではサークル活動してリア充予定の木戸君なので、そこにでてくる子ですね。初期設定だとカメラ初心者のモブくらいな勢いだったのですが、書いてみるとわりと今まであまりいない低身長枠でありますし、かわええもんです。


そしてオールおつかれさま! 私が初めてオールしたのは新宿二丁目で19才の頃でした。まあ当時から女装とか大好きだったのでね! お店の人は同い年だというのにすごい大人っぽくて、おぉふと憧れたものでした。


さて。明日っていうか今日ですが、田辺さんのターンです。GWにイベントてんこ盛りなのですが、キャラ優先でいこうかと。コンビニの歓送迎会とかも四月なんですよね……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ