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めざめ
初めからわかっていたわけじゃないけれど、
自分自身の中で消化しきれない何かが存在ったのは事実で、
そしてそれを認めるには私はまだ世界を知らなかった。
『世界を知る』ということは新しい『何か』を得ることだけど、
それと同時に何かを手放すことでもあって、
私は世界を知ったことによって確信を得、思い描いていた未来を失った。
世界は優しいほど残酷で、それでいて痛いほどに美しい。
世界は知れば知るど浅く、逃れたいと思えば思うほど深い。
世界は与えるだけで何も奪いはしない。
ただ与えられたものがそれを受領するために手の中の何かを棄ててしまうだけで。
ひとの掌は万能ではないから。