チェックメイト
彼に呼び出された。
「私、なんかしたかなぁ?」
非常階段を上り、鉄の扉を開けた先に彼はいた。
逆光で表情がよく見えない。
「どしたの?」
彼は一言も発さない。
……怒ってる?
バン!!
気が付くと、目の前には彼、後ろには扉。
もしかして、危機的状況!?
鋭く甘い瞳と、口元からのほのかなミントの香りが
私の意識を朦朧とさせる。
「……昨日」
「ヘっ!?」
突然の事に私は、思考回路が機能しなかった。
「......ハァ」
彼は更に私を押しつけた。
目の前が真っ暗になった。
息が苦しい…...
やっと解放されると、彼は笑っていた。
「昨日、なんであいつと喋ってたんだ?」
え~これは……
「嫉妬?」
すると彼は顔を微かに赤らめた後、開き直るように
「悪いか?」
と言った。
「全然。嬉しかったよ」
彼は更に私をきつく押し付け、囁いた。
「チェックメイト」
……もう、俺からは逃げられない